こんにちは、らくからちゃです。
毎日寒い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。なんとなく涼しくなったマネーフォワードの資産残高を眺めながら、これからの資産運用どうするかなあと考えていたら、半年ほど前にわたしの不用意な発言(?)が晒し上げられていたのを思い出しました。
問題の発言がコチラです。
子供の頃、教科書に「南無阿弥陀仏と唱えるだけで極楽往生に行けると信じられていた」と書いてあったのをみて首を傾げてたけど「S&P500に積立投資してれば老後は安心」と言ってる人を見て納得したな。 / https://t.co/2FR1HZ08Rl
— らくからちゃ@年子育児1年育休マン (@lacucaracha) 2022年6月29日
わざわざご丁寧にS&P500の過去の推移までご用意いただき、マネーリテラシーを疑われ、コメントを眺めていると精神の正常性まで心配して貰っていました笑
今更ですけども、レスポンスをさせていただきますと、
そこじゃねえんだよ
かなあ・・・。
どうも世間では、科学的に最善の資産運用ツールであるインデックス投資に懐疑的な態度を示していると判断されると『ネギ背負って証券会社に入っていく可哀想な仔』『衰退通貨の預金握りしめて沈没するのかな』『ダーツでも投げてろ猿』などなど随分な言われようをします。
確かにインデックス投資は非常に優れたツールです。
S&P500のような時価総額加重平均型の指数に連動した投資信託やETFは、資産形成を考える上でとても頼れる武器になります。私も良い感じに購入時より2倍に値上がりしてたので昨年末そのままロールオーバーした怪しげなETFもS&P500連動ですし。
自分が売りたくなったときに、取り崩しが増えてきたら大丈夫かな?とか、地球上の富の半分を握る上位数%の人が株式市場から資金を土地や美術品にシフトしたらどうなるのかな?とか、S&P500のパフォーマンスをリードしてくれてきたトップ5のようなユニコーンは、今後も株式市場という大草原に森から出てきてくれるのかな、とか。
いままで200年間株式市場は上がり続けて来たんじゃ!といっても人類の長い歴史の中では、数百年単位で停滞したこともあったわけで、同じことがこれから起こらないとも限らないしね。
そういうぼんやりとした市場全体への不安は無いわけではありませんが、株式市場に資金を突っ込むなら、我々のような庶民に取れる選択肢としてはインデックスを使うのがベストでしょう。
インデックス投資は現代の金融技術が生み出した聖杯であり、最も合理的かつ科学的な投資手法であり、それを正反対の南無阿弥陀仏なんぞと並べ称するとは何事ぞ。
とかく最近は「宗教」というと評判もよろしくないですし、喩えられただけでも全否定されたと感じる人もいるのでしょうけど、何も存在そのものを否定するつもりは毛頭なく「有用なものであるが故に上手に付き合わなきゃ駄目だよね」と思うんですよね。
そもそも現代人はなぜ資産運用をするのでしょうか。
「お金を増やしたいから」では不十分ですね。もう少し厳密にいうと「お金を増やしてよりよい暮らしがしたいから」でしょう。
もっと言い換えると「資産運用とは、収入と支出のタイミングをずらし、その期間お金を働かせることで、収入から得られる支出の価値を高めること」とでもなりますでしょうか。
有名な72の法則に従うと、7.2%の利回り(!!)で複利運用できれば10年で資産は2倍になります。
2倍という数だけみると随分豊かになった気がします。しかし10年待つ対価としては十分なんでしょうか。そんなことを考えるにあたり、ぜひご一読いただきたい本があります。
この本が掲げるテーマは、タイトル通り「資産を最大限効率的に使い切ってゼロで死ぬためには何をすべきか」です。
はじめてこの本を読んだとき、今まで自分が考え、悩んできたことと、あまりにそっくりでびっくりしました笑。
難しい理論や数式は出てきません。身近なテーマなので気軽にポチってみても良いでしょう。多分「ウォール街のランダム・ウォーカー」や「敗者のゲーム」よりは読みやすいですよ。
この本の中で取り上げられているのは『何に投資すべきか』といった「貯蓄の中でのバランス」ではなく『どれくらい貯蓄すべきか』といった「貯蓄と消費のバランス」についてです。
10年で2倍になる蓋然性の高い投資対象があったとして、それに投資すべきかは、10年間、消費することを待つことによって失うものとを比較してはじめて判断がつきます。
例えば、以下のような観点で考えてみるべきでしょう。
①思い出の配当の逸失
本書では「思い出の配当」という言い方をしていますが、お金を使って得た経験も株式と同様に「配当」を生み出します。
というとフンワリした感じになりますが、周囲の人に語れるような体験や、仕事にもつながる友人、学んだ技術なんかはそれ自体が複利効果を生み出すことは想像に難くないでしょう。
それを失ってまで貯蓄し運用に回すべきかは考慮すべきポイントです。
②その時しかできない経験の損失
個人的な話ですが、私の祖母は、いま老人ホームに入っています。幸い資産も十分に残っているためお金が足らなくなる心配はありません。一方で、ATMまで一人で行くこともできませんし、旅行どころか近所の買い物も一人では無理でしょう。
「お金」「体力」「時間」。この3つのバランスを考えていかなければ、資産が2倍になっても、かかる費用もそれだけ増えたり、そもそも使うことすら出来ない可能性もあります。
投資を回収するタイミングで、どう使うのか、そこも重要なポイントでしょう。
③先に自分の寿命が尽きるリスク
遺産相続の中央値は1600万円*1だそうですが、それはそれだけの金額を使い遺したまま亡くなってしまったということです。
元気に健康で過ごしていると忘れがちですけど、人はみないつか死にます。
子供に相続できればそれでヨシと思う人もいるかも知れませんが、亡くなってグダグダになるよりは、みな元気でお金を必要としているときに譲ってあげるべきでしょう。喜ぶ顔も見れますしね。
何に投資するのかを考える前に、貯蓄することで生じる機会損失を考えて、いくら貯蓄すべきかをしっかり考えなさいよ。というのは何も特殊な主張ではないでしょう。
ただ個人的には、DIE WITH ZEROの書き方は、ちょっと先鋭的というか、弱者へのいたわりが欠けている点はあるよねえとは思うんですよね。
著者自身、大きな成功を掴んだ人ですし『思い出の配当なんてもんより死ぬまで飢えないことのほうが重要なんだ』という人の立場を汲めていないんじゃないの?そういう人にとっては、手許の『鋳造された自由』が生み出す価値を分かってないのでは?とも思わんでもない。
個人の得られる情報や能力には限界があり、意思決定は限定合理性の中でせざるを得ない。その結果、ある程度は非合理でも貯蓄を増やす方向にマインドが傾くのは当然だと思うのですが、注意しなきゃならないのは「インデックス投資という宗教」に、そのバランスを乱されている人をチラホラ見るんですよね。
「いやいや投資と貯蓄のバランスは、資産運用以前の問題であって、インデックスへの投資を宗教に擬える必要は無いでしょう。」
恐らくそう感じる人も多いと思いますので、色んな所で良く引用される以下のページも見てみましょう。
標準的なインデックス投資の考え方について丁寧にまとめた良いテキストだと思います。「貯蓄と消費のバランス」なんて野暮ったい話はありませんが、アセットアロケーションやドルコスト平均法については触れられています。
インデックス投資と言ってもいろんな流派がありますが、本サイトが前提としている比較的原理主義的(?)考え方に則ると「インデックスの買い時はお金ができたとき。市場は常に最適なのだから、タイミングなんて悩まず買え」です。
(そういや私も昔書いてましたわ)
でもこの考え方を突き詰めていくと
- 上がった下がったなんてものに一喜一憂せずに、最低限必要な現金以外のすべての余剰資金をインデックスにしておくべし
- 資金が必要になれば売れば良い。その時値下がりしていても、効率的な運用をした結果なのであれば気にすることはない
- インデックスへの投資は理論上最善の投資行動であり、投資したこと自体に価値があるのであり、投資した瞬間にあなたはすでに成功しているのだ
のように価値や資産の増大どころか、「投資そのものが目的」みたいな感じになりかねないんですよね。宗教とはなんぞやといった深遠な問いについては触れませんが、なんだか南無阿弥陀仏にも似ている気がいたします。
もちろん壺や判子を買うよりは、来世ではなく老後の生活を豊かにしてくれる可能性は高いと思いますし、信仰が心の平穏に繋がるのであればそれはそれで良いことでしょう。
ただAmazonやGoogleマップで4.5以上の評価がついている商品やサービスを選ぶような安心感は、その他の消費に対する感覚を過度に保守化しすぎる恐れもあると思うんですよね。
「お金があっても買いたいものが無い」と自虐的に言う人に、稀によく出くわしますが、「やりたいこと」「ほしいもの」なんてものは、空から降ってくることを期待せずに自分で探しにいかないと、なかなか見つかるものではありません。
何にお金を使うのかは、属人的な要素も多く「とりあえずこれが鉄板」なものばかりではありません。合う合わないを試すために、リスクを取ることも時には必要でしょう。
「他の人と違うことをして失敗したくない」
そう考えるひとにとって、投資した瞬間に成功が保証されている(!!)インデックス投資はなんと居心地が良いのでしょう。更に「iDeCo」や「つみたてNISA」で「毎年これくらい投資したらええで」と指示(??)までしてもらえる。
うっかりお金のかかる趣味を作って生活が苦しくなっても困るから、お金を使うこととは極力距離をおいている。自分のような低収入の人間には、今を楽しむ権利などないのだから、すべて資産運用に回して老後死なないようにしている。
なんて自分で自分に呪いをかけているかのような人も少なからず目にしました。
無論こうした現象は、定期預金や個別株投資、住宅ローンの繰上返済なんかでも起こり得ますが、インデックス投資に帰依している人の抱いている「圧倒的正解感」から、より起こりやすくなってるような気がします。
さて話が長くなりましたので、そろそろまとめてきましょう。
- 稼いだお金を最大限合理的に活用するには"DIE WITH ZERO"を目標に、適切なタイミングでお金を使っていくことが必要です。
- しかし未来のことが分からない以上、貯蓄が過剰になるのは致し方なく、貯蓄の運用手段として株式インデックスを用いるのは有用です。
- ただ運用することそのものが目的となり、有効にお金を使うことを見失ってしまっては本末転倒です。
といったところでしょうか。
もちろん何にどうお金を使うかは個人の自由であり、いちいち口出しされることではありません。それは、家族や他人にとっても同じです。皆それぞれ正解の異なる「何にどうお金を使うべきか」という問いの答えを考え続けねばなりません。
その中でインデックスへの投資は、ある種の宗教のような「心の拠り所」にせず、あくまでツールとして活用する距離感を保ったほうがより良いお金の使い方が出来るでしょう。
そういや2024年から始まる新NISAでは、年間最大360万円の投資が出来るようになるそうです。
つみたてNISAは40万円でしたので、一気に9倍ですね。
この40万円という金額は、12で割り切れねえじゃねえかとよくキレられていましたが、一般的な庶民があまり深く考えずに満額埋めることが難しくない水準だったのでしょう。しかし360万円となるとそうもいかない人も多く、あらためて「どれくらい運用に回すのが最適なのか」を考え直す良い機会になるやもしれません。
インデックスでの運用ならば、時間もたいして掛かりませんしね。
ではでは、今日はこのへんで。
*1:相続人ベースなので、被相続人だともっと多いはず