ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

知らないと大損するかも?「上場株式等に係る所得の課税方式の選択」の廃止について

こんにちは、らくからちゃです。

IT業界で働いていると、お客様に言われてシステムを変更したのに別のお客様から「誰だ!こんな風に変えたのは!💢」と雷を落とされることが、稀によくあります。

「Aの処理を変えるとは聞いていたが、Bの表示まで変わるとは聞いていない😡」とのことですが、そこもご説明の上で変更を了承頂いたんですけどねえ…と思いつつ日々悲しい気持ちで仕事をしています。

何事も影響に直面して初めて気がつくことも多々ありますし、ひとまず弊社に非がないことをご納得頂いた上で、「さて困りましたねえ。どうしましょうねえ。😢」と一緒に頭を抱える毎日を過ごしております。

 

さて毎年色んな税制の変更がありますが、局所的に大きなトピックスとして、2024年度分の個人住民税より「上場株式等に係る所得の課税方式の選択」が出来なくなります

中央区ホームページ/上場株式等に係る所得の課税方式の選択について

どうです??自分に関係ありそうかどうか分かります?

特に子育て世帯は要注意かなと思うんですけど、理解されていないこと多いような気がします。また「2024年個人住民税」というと先の話のようですが、これは2023年、つまり今年どういう行動を取るかもすでに含まれます。

というわけで、「こういうことが起きるかも」「こういうところ注意点ね」と思ったことを、まとめてみたいなあと思います。

 

なお筆者は税理士ではありませんし、本稿は「一般的な税金の話」についての個人的なメモであり、内容については保証しかねます。細かいところが気になったら税理士さんか(今回は住民税の話がメインなので)市役所税政課まで!

株の利益を確定申告するのってどんなとき?

今回の影響が出るは「株や投資信託の利益を確定申告している人」です。

「そんなのやってないよ!」「やったほうがいいの?」というひとも多いかなーと思いますので、そのあたりからおさらいしましょう。

証券会社に口座を開設するときに、

  1. 特定口座(源泉徴収あり)
  2. 特定口座(源泉徴収なし)
  3. 一般口座

の3パターンのどれにするのか聞かれるかと思います。

年間利益が20万円以内なら、確定申告が不要な「源泉徴収なし」のほうがお得なこともありますが、よく分からない人向けに1が猛プッシュされます。

というわけで大抵の人が1の「特定口座(源泉徴収あり)」になってると思います。

(なんか9割くらいはそうなんだって)

株や投資信託を売買したり、配当/分配金を受けとった際には、利益に対して15%の所得税と5%の住民税。あわせて20%の税金がかかります(復興所得税は一旦除外)

「特定口座(源泉徴収あり)」を選んでいる場合、売買をしたり配当/分配金を受け取った時に、証券会社が天引きしてくれてるので、基本的には確定申告をして納税する必要はありません。

ただ、義務ではないものの確定申告をしたほうがお得になるケースはあります

  1. 配当金を総合課税扱いにしたいケース
  2. 住宅ローン減税の枠が余っているケース
  3. 外国税額控除を使いたいケース
  4. 損失を繰越したり繰り越した損失と合算したいケース
  5. 証券会社間で利益と損失を合算したいケース
  6. ふるさと納税を使いたいケース

みたいなケースです。

「上場株式等に係る所得の課税方式の選択」とは何か

上記の細かい話は、今回の本題ではないので、それぞれの記事やググってもらうとして、株式の利益に関する課税方法を整理すると下のような感じになります。

確定申告をすると、配当については「総合課税」扱いにすることが出来て、条件を満たした場合は納税額を減らせます。「申告分離」といって、納税額は申告不要(源泉徴収)と同じまま、住宅ローン減税の対象となる税額控除の対象として計上したり、損益通算の対象にも出来ます。

ただ総合課税であれ申告分離であれ、確定申告をした場合、その個人の住民税に課税額が加味されます。我が国では、行政サービスを受けるにあたって色んなところでこの「住民税納税額」が参照されます

そのため「確定申告したら税金は節約できたが保育料が上がった😭」みたいなケースが起こり得ます。

そうした事態を避けるために(?)、所得税は総合課税・申告分離として確定申告するものの、住民税については確定申告しなかったかのように見せかけるべく「住民税は申告不要とする」ことが出来る仕組みがありました。(それがキチンと決まったのはここ数年ですが)

e-Taxで確定申告したひとは見たと思うけどコレね!

それが「上場株式等に係る所得の課税方式の選択制度」です。これが2024年の確定申告、つまり2023年の取引の結果から使えなくなっちゃうの。

例で考えてみましょう。

あなたは2つ証券会社を使っています。A証券会社では合計100万円の利益が出ました。一方で、B証券会社では合計10万円の損失が出ました。損益を合算すれば、90万円の利益になり、10万円*20%=2万円相当の税金が帰ってくきます。

一方で、住民税の計算上、90万円*5%=4.5万円の住民税が余計に払える人と認識されるようになります。保育料は市民税(住民税の6割)で計算されますが、それくらい所得多めの人扱いされると、何個か上の階層に上がっちゃう可能性がありますね。。。

これ1階級上がって月額保育料が5000円増えれば、年間で6万円の負担増になったりしますからね。

その他にも、国民健康保険の保険料とか、こども手当の支給対象になるかどうかとか、自立支援医療の上限額とか、色んなものがこの住民税を基準に決まってきます。

じゃあどうすれば良いのか

という感じで、今後は株の利益を確定申告する際には、「それで住民税が上がってもOKなのか」を加味して判断する必要が出てきます。

取れる対策としては

  • あまり大きなリターンが無いなら諦める
  • 影響のないタイミングまで利益を繰り延べる

あたりですかねえ。

例えば10万円の損失が出ていても、損失の繰越は3年間は出来るはずなので、保育料等にもろに影響する時期にぶつけるのは諦めて、その後使えそうだったら使う、とかかな。

(損失を繰り越すには確定申告が必要だけど、その年度で利益が出ている口座があっても申告しないことはできるはずですが、税務署か税理士さんに確認したほうが良いかも)

またなるべく同じ証券会社内で、益出し・損切りを徹底して、確定申告せずに済むように年度内からしっかり対策しておく必要もあるかもしれません。

これでいいのか金融所得課税

弊ブログでは、度々この「上場株式等に所得の課税方式の選択」について批判的な意見を出してきました。

www.yutorism.jp

配当金で十分な所得があるのに、労働者よりも少ない税金しか払わない上、自治体には「住民税のない貧乏人です」と申告できる仕組みってぶっちゃけどうなん??と思うんすよ。

今回の改正は、ある意味、弊ブログと同じ意見を持つ人の声が通った結果なのかなーとも思うんですけど、なんか違う気がするんすよ。

確かに「総合課税」を進んで選ぶようなケースにおいては、住民税もしっかり払った認識にしたほうが良いような気もしますが「申告分離」はそもそも住民税に反映させなくても良くねえっすか??

そうすると「配当じゃなくて譲渡益で稼いでるタイプの資産家」は住民税上の貧困枠にとどまり続けることになりますけど、今回の改正でも結局確定申告しなければその枠にとどまり続けることは出来ます。

で、割りを食うのは、年度や証券会社をまたぐ損益を通算しようとして確定申告をする普通の世帯が流れ弾を食らうのってどーなん??でしょう。

もちろん、そもそも申告しなければ住民税としてカウントされない今の仕組みもどないやねんという話もあれば、というか支援が必要な世帯かどうかの判定は資産も加味してやれば??という話もあるでしょう。

そういった議論はどんどん進めていけば良いとは思いますが、ひとまずこの中途半端な改正はよろしくねえ気がするなあと思う次第であります。

ではでは、今日はこの辺で。