こんにちは、らくからちゃです。
「一年の計は元旦にあり」なんて言葉もありますが、年始は今年一年をどう過ごすかを考えている人も多いんじゃないでしょうか。特に、お金の使い方・貯め方・殖やし方をどうしようかなーなんて悩まれている方も多いんじゃないでしょうか。
我が家の場合、NISA(無印)を私と妻とで2口分利用させて頂いておりました。年末年始に色々と考えて見た結果、つみたてNISA+高配当株戦略に切り替えようかなーと思いました。上手くいくかどうかは分かりませんが、個人的なメモも兼ねて、そう考えた経緯を書いてみたいと思います。
配当の多い株は損か得か
最初に抑えておきたいんですけど、別に配当金を出そうが出すまいが企業の価値そのものは変わりません。
例えば、100万円利益を出した会社がありますよね。そこから配当金10万円を出したとしましょう。一旦税金は無いものとして考えると、10万円分のお金が株主の財布に転がり込んできますが、その分、会社の預金残高が減ります。
配当とは、既に株主に権利のある会社のお金を、株主の口座に移す行為でしかありません。配当を出して会社の資産が減った分、(理論上)株価が下がります。その意味では、別に配当を出そうが出すまいが株主としては損も得もありません。
ところが税金を含めてみると、少し話が変わってくるんですよね。
配当金は確定申告したほうがおトク
株を売買して利益が出たときも、配当を受け取ったときにも、証券会社のほうで自動的に税金を引いておいてくれます(源泉徴収)。その税率は、譲渡・配当ともに20%(復興特別所得税除く)です。もう少し厳密に言えば、所得税が15%、住民税が5%ですね。
この税率って、確定申告をすれば変わるケースがあります。
所得税の場合
まず所得税のほう。配当金として受け取ったお金(配当所得)は、給料などと合算した「総合課税」の対象にできます。また総合課税にすると10%分の「配当控除」も使えます。
給料他にかかっている税金が少ない人であれば、配当に掛かる税金も安くできる。ってことです。どれくらい安くなるのか。配当所得と合算した課税所得が330万円以下の場合、本来の税率は10%です。そこから10%が差し引かれるため所得税はなんと驚きの0%になります。
「課税所得」が曲者で、これは各種控除を差し引いたあとでの金額になります。人によって使える控除の種類や社会保険料の保険料率などが違うので、一概に言えませんが
- 所得は全て給与所得
- 社会保険料率は14.4%(介護保険は払っていない)
- 配偶者控除・扶養控除なし
のケースで計算してみました。
すると給料+配当金の合計が643万円未満であれば、課税所得は330万円以下になり、配当に対する所得税はかかりません。統計的には8割以上の人が確定申告さえすれば、配当に対する所得税は掛からない計算になります。
細かい数値は、下記の記事も併せてご参照ください。
住民税の場合
おっと、もう一つの税金を忘れていました。住民税ですね。
住民税は確定申告をすると、一律10%の住民税から2.8%の配当控除が使えますので7.2%の税率で計算されます。確定申告しない場合は5%ですので、税金が増えます。また住民税は各種行政サービスを利用する際の「貧乏人かどうかを判断する基準」にも使われているので、人によっては損をする可能性があります。
ところが、誰を慮った結果かは分かりませんが、
- 所得税→確定申告する
- 住民税→確定申告しない
ということができるようになりました。
まとめるとこうかな。
こうした仕組みは、株を売買した場合(譲渡益)にはありません。利益を配当で得るのも売買で回収するのも理論上同じとすると、年収600万円前半のひとなら積極的に配当に回す会社に投資したほうが相対的にはおトクな選択になります。
配当は出さずに内部再投資したほうが良いのでは論再考
「なるほど税金の面では配当を出したほうが良いのがお得なのは分かった。でも配当金を出さずに、企業の中で新しい事業に投資して増やして言ったほうが良いのでは?」という意見もあるでしょう。
現に、配当を出していない会社の有価証券報告書を読むとだいたいこんなことが書いています。
②配当政策について
当社グループは、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。しかしながら、現在当社グループは成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に充当することにより、更なる事業拡大を目指すことが株主に対する利益還元につながると考えております。
将来的には、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。マネーフォワード社2018年 有価証券報告書より
またいくら税率が低いとは言え、定期的に税金を差し引かれればその分のリターンを毀損するという話も聞いたことはあるでしょう。
例えば、以下の条件で比較してみましょう。
- 企業の自己資本利益率(ROE)は15%
- 配当に掛かる税率は20%
- 5年間、配当性向(利益の何割を配当に回すか)を変化させて検証
そうすると5年間で受け取れる配当金(手取り)と5年後の自己資本の金額を合算するとこうなります。
- 配当性向 100% ・・・160万円
- 配当性向 50% ・・・178万円
- 配当性向 30% ・・・187万円
- 配当性向 0% ・・・201万円
ほーら、配当なんか出して目先のお金を吐き出すよりも長期で投資したほうがお得じゃん。という結論になりました。うーん、でも何か抜けているような気がしません?だって別に、配当金を支払った分資金が減るのならば、会社で借入を行って資金調達すれば良くない?
この低金利のご時世ですので、会社が行う借入の金利はかなり低水準に据え置かれております。一方、個人が現金をゲットしょうとすると、消費者金融やクレジットカードのキャッシングなどを使えば2桁の金利が求められます。
また会社が借り入れた金利は、税金を計算するときの費用(損金)に含めることができます。我が国の実効税率は30%ほどですので、個人で資金調達をするよりもおトクですね。
保有している会社の配当可能な資産を自分の持ち物として考えるのであれば、「配当」という行為は会社と個人のどちらで借金をするのか?という問題になるんじゃねえのかなあと思うんっすよ。
「何いってんだコイツ。借金するくらいなら株を売れよ」という素直な感想を持つ人も多いかと思います。でもね「配当金が多くて振り込まれる金額が多いと安心感がある」みたいな、ふんわりとしたものだけでなく「配当を行うべきかどうかは、出す側と受ける側の資本コストの差で判断すべきである」って言ったほうがスッキリするような気がするんですよね。
企業間であればもっと分かりやすいですよね。親会社が資金繰りに困っているようなら配当を増やして上げたほうがグループ全体の資本コストは抑えられますし、逆もまた然り。
個人が、資金繰りに困るのは景気後退局面です。残業は減らされ、業績悪化からボーナスもカットされる。そんなときでも、企業の経営者は配当を維持しようとします。
巷で言われるように「配当をカットすると経営者としての評価が下がり、最悪解任されることもあるから」というのも当然あるのでしょう。でも敢えて穿った見方をすると、不況期はむしろ配当を積極的に出していったほうがおトクだからなのかもしれません。
リーマン・ショックみたいな破滅的な恐慌期は別として、一般的な景気後退局面であれば、中央銀行は金利を引き下げ資金供給を増やそうとします。企業にとっては借入がしやすい環境になります。とはいえ、先行きの見通しが立たない状況で安易に設備投資を増やしたくはない。しかし利益が減っていて株主はご機嫌ななめ。じゃあ配当維持のためにでも使う?という判断が成り立ちます。別に配当を増やしたところで利益は減りませんしね。
「うまく騙されている」感じもしますが、要は利害の一致です。財務レバレッジをどの程度にするのかが最適かは、事業の内容にもよりますが、借入での資金調達にコストが掛かる成長期の企業であればさておき、ある程度安定した収益を得られる安定期に入ったのであれば、その信用力を使ってうまく配当にまわしていくのも重要な「株主サービス」です。
まとめ
「内部留保を溜め込む企業とジャンジャン配当を吐き出す企業」とを相対的に比べてみた場合、一般的な庶民であれば税制上も配当戦略上も後者に優位性があるんじゃねえのかなあというのが本論のまとめです。
「そもそも貧乏人は種銭がねえんだよ」という話は当然あるでしょうし、個別の銘柄ないしETF等をどうやって選ぶかはそれぞれの戦略があるでしょう。例えば、高配当といえばタバコ株が有名ですけども、それを選ぶかどうかは個人のスタンスにもよるでしょう。
あと優待をどう捉えるかなどの判断もあるでしょうし、個々人で色々と研究していくと面白いかと思います。何か面白いネタを見つけたら教えて下さい(笑)。
ではでは、今日はこのへんで。