こんにちは、らくからちゃです。
先日、こんな記事を書きました。
お賃金の半分を税金として払うのは、いくらくらい稼いだ時になるんだろう?という素朴な疑問を調べてみたものですが、その答えは1億4631万8350円なんつー、規模がデカすぎてなんだかよく分からない金額になりました。
もう少し身近な話を言うと、年収が増えた時に手元に残る金額は
- 300万→400万 ・・・77万円
- 700万→800万 ・・・63万円
- 1100万→1200万・・・58万円
- 1400万→1500万・・・54万円
となりました。
年収300万円じゃあ生活するのもギリギリのラインでしょう。そんな人が頑張って100万円年収を増やしても、1/4近くは税金や社会保険料で取られます。いまのご時世年収700万円は高級とりに入るのかもしれません。それでも家族を養うには余裕があるとは言えない金額でしょう。そんなひとが一生懸命頑張って100万円年収を増やしても、1/3近くが税金や社会保険料に持っていかれる。
一方、年収1500万円を超えると、そこから先はだいたい50%代前半でほぼ固定になります。勿論、頑張った分の半分を持っていかれるのは面白くないでしょう。でも、生活へのインパクトと言う意味では、かなり小さいんじゃないでしょうか。
グラフにしてみるとこんな感じですね。
(筆者作図)
変動幅が見やすいように、敢えて最小値を50万円に指定いたしましたが1500万円を境目に急激に変動幅がなだらかになっていることが見て取れるかと思います。
こうやって見てみると、この国の税・社会保障のシステムは
- 低所得者:少ない所得であっても負担が大きい
- 中所得者:所得を増やしても急速に増加幅(限界所得)が減る
- 高所得者:半分は持っていかれるがそれ以上は取られない
といった傾向が強いのかなあと思うんですね。
社会保険料の負担が辛いワケ
こうした傾向が強いのは、以前の記事のコメントでも多数頂いた「社会保険の負担が重たいから」に他ならないからでしょう。他の税金と比べてみてみましょう。
社会保険料
まず社会保険料は額面の手取り額に対してかかります。比較のために、社会保険料率をが14.4%で年収が500万円の人であれば72万円を払わなければならない。非常に重たい負担です。また本人負担分とほぼ同額を会社も負担しています。「会社負担」と銘打っても、結局それだけ給料の原資が減ります。これは単なるレトリックに過ぎず、結局回り回って本人の負担になっています。
所得・住民税
所得税や住民税は、年収から各種控除を差し引いた所得に対してかかります。所得税と住民税で微妙に変わりますが、年収500万円の人であればだいたい半分の250万くらいが課税対象の所得となります。所得税と住民税併せて38万円なり。このレンジではまだ所得税の累進効果も聞いていますし、住民税の一律10%も重たい負担ですが控除による圧縮効果が効いています。また各種控除を使うことにより、金額は更に減る可能性もあります。
消費税
最後に消費税はどうでしょうか。そもそも消費税は誰が負担する税なのでしょうか。確かに名目上は消費者が負担する税ですが、増税時に「うちは値上げしません!」と掲げたお店が多かったことからも分かるように、売価を下げることで労働者や株主の負担している側面もあります。
まあそこは今回は深入りするポイントではないので一旦すべて消費者の負担という前提にして考えてみましょう。消費税は使ったお金に掛かる税金ですので、貯金に回した分は課税されません。いずれ使うときまで課税が繰り越されます。
一旦、借金も貯金もしない前提で考えると、消費税の金額は手取り金額に消費税率をかけた金額になりますわな。そこから医療費や地代など非課税の取引にかかった部分は差し引きますのが、年収500万円の場合は手取りは390万円。これが全部課税対象として10/110をかけた金額が消費税なので35万円ですな。
年収500万円の人の場合
- 社会保険料:72万円(+会社負担分)
- 所得住民税:38万円(-各種控除分)
- 消費税 :35万円(-非課税取引分)
となり、社会保険料の負担が圧倒的に重たい。また計算の前提を解きほぐしてみると、このようになります。
- 社会保険料:額面給料にまるっと掛かる
- 住民所得税:額面給料から諸々差し引いた金額に掛かる
- 消費税 :手取り金額に対して掛かる
こうやってみると、社会保険料が明らかに1%の重みが重たいんですよね。雑な図にしてみるとこんな塩梅ですね。
健康保険の仕組みがイケてないポイント
まあ幾ら負担が大きいといっても、年金保険料はいつか貰えることになっているお金ですので、それを多い少ないというのは微妙な感じもしますね。むしろ社会保険料控除もついてくるので、非常にお得な運用手段といえるかもしれません。
問題は健康保険です。
健康保険料も、使うにせよ使わないにせよ医療費の負担に備えてかける保険なので、本来は高いから損だというのもおかしな話です。医療リスクが年収で増えるわけでもないんだから、それに応じて割引して貰ってるんだから貧乏人は黙っておれ!という論法も成り立たないわけではないでしょう。
でもなおイケてないよなあと思うのが、まず企業別組合の仕組み。
普段皆さん意識はされないと思いますが、会社員の健康保険料はお勤めの会社によって変わります。健康水準の高い大企業であれば、自前の健保組合を設立しておけば、保険のお財布が貧乏人と一緒くたにされるのを回避できます。
更に大企業でなくとも、健康な社員の多い会社であれば、関東ITS・TJKといった複数の企業で立ち上げられた健保組合に参加することもできます。保険料自体はさほど安くありませんが、関東ITSの場合
- ジム
- 保養所
- 旅行の補助
- 寿司
- バー
などなどが利用できます。まあ健康増進のためのジムの割引くらいは分からんでもないのですが寿司だのバーだのの運営に、社会保険料控除の対象になる健康保険料を充てるのは、ちょっと無理があるんでねえの?といつもドキドキしてるのですが、大丈夫なんっすかね?
また使いみちについても、いまいち首をかしげる状況です。
集めたお金がすべて加入者の医療費に使われるのであれば、人によって凸凹はあれど文句をいうような話ではない。でも集められた保険料の半分近くは、自分たちの医療費に使われていない。私たちの健康保険の半額近くは高齢者の医療保険の支援に使われています。
例えば、先程あげた関東ITSの最新決算(2018年度)を眺めてみると、こんな塩梅になります。ざっくり1000億円ほどを保険料として徴収し、うち470億円が医療費に使われている。そのほぼ同額が高齢者医療への負担金に突っ込まれています。
(出典:平成29年度 収入支出決算 | TJK)
だいたい加入者ひとり平均年間20万円くらいを高齢者の健康保険の維持に使っている計算になる。これをみると、寿司食ってバーで飲んで税金を多少ちょろまかしたところで、可愛いもんに見えますね。最近話題の外国人の医療費なんかも誤差の範囲でしょう。
健康保険のあり方って考え直したほうが良くない?
ますます少子高齢化が進む中において、高齢者の医療費の総額を抑える議論は大いに検討が必要でしょう。ただ並行して、どうやって負担するのが良いのかも考え直したほうがええんとちゃうんかなあ。
健康保険料は、どんなに稼いでも111万円が支払い上限額です(東京都協会けんぽ&本人負担分)。また控除の仕組みもなく、負担は収入に連動して増加していきます。明確に逆進性の強いシステムです。
健康保険は、応益負担の仕組みとして作られたはずですが、受給の関係の中にない支援金が半分も含まれてしまうともはや「保険」としての体をなしていません。そもそも本来、福祉の色合いの強い負担金の仕組みは、応能負担の枠組みの中で解決されるべき問題でしょう。
また終身雇用を前提とした時代であれば、会社が手動して医療保険制度を整備し、社員の健康にも責任を持つ仕組みは良かったのかもしれない。でも現代においては、医療機関により近い自治体側が受け持つほうが良い場面も多いのやもしれません。
その辺を勘案すると、
- 各種健康保険は国民健康保険と整理再統合する
- 自治体ごとの保険料は住民税を増税して賄う
- 高齢者医療制度はより累進性の強い所得税等の強化でカバーする
くらいの大胆な改革をしないと、一度くずれてしまった医療に関する連帯感は取り戻せないんじゃないのかなあ、なんて思うのですが、どうでしょうか。
ではでは、今日はこのへんで