こんにちは、らくからちゃです。
先日、郵便物の整理をしていたところ「ねんきん定期便」なる葉書が届いておりました。中には、過去に払った金額と、今後受け取れる予定の金額が下記の通り記載されていました。
- 保険料納付額累計・・・3,717,885円
- 加入実績に応じた年金額(年額)・・・378,743円
ずいぶん払ってきたけど、今のペースなら10年間くらい受け取れれば元が取れるのかー、案外オトクなもんだなーと思って眺めておりましたが、1つ気がついてしまいました。
へえー、年金って10年受け取れば元が取れるのかーと呑気に感心してたけど、よく考えたら会社負担分が入ってないので、こちらも考慮したら損益分岐点は20年くらい。
— らくからちゃ (@lacucaracha) May 25, 2018
生きてるのかなあ(´・ω・`) pic.twitter.com/MH3hQinFQH
ここに記載されている金額は、被保険者負担額であって会社が負担している額は含まれてません。書き方からして「どや、結構貰えるやろ」みたいなニュアンスを感じたのですが、だったら会社負担分も含めて書いたほうが良くね?と思うんですがねえ・・・。
社会保険料高くね?
さて会社負担分を除いたとしても、お給料からたっぷり差っ引かれていく諸々の項目。中でも「厚生年金保険料」は、たいていのひとで一番多く払っているのではないでしょうか?
厚生年金の保険料は、2005年度から2017年度にかけて段階的に引き上げられてきました。その結果、本人負担分は給料の6.79%から9.15%となりました。お賃金の1割近くが持って行かれる計算です。
残業代等もコミコミで月収30万円の人が支払う厚生年金保険料は、10年ちょっと前では、2万円くらいだったのですが、それが今や約2万7000円です
会社も同額を折半で支払ってますので、お給料に対してかかる社会保険料率は18.3%と2割近い金額になります。
また年金とは別に健康保険料も別途必要ですね。
あんまり知られてない気がしますが、健康保険の保険料は、勤め先の加入している健康保険組合によって異なります。また負担割合は、厳密には折半ではなく「会社が50%以上負担すること」となっており、大企業では中小企業よりも社員の保険料は抑えられていたりします。
だいたい労使合計で10%、本人負担は5%くらいですね。この他に、雇用保険が会社負担0.85%、労災保険が会社負担0.3~8%(林業・鉱業など)が必要ですので、人を雇うには、給料と別に、給料の約15%くらいの社会保険料を負担しなければなりません。
ところで皆さん、この社会保険料の会社負担って仕組み、どう思います?
会社が負担してくれてラッキー!って考えるひとも居るかもしれませんが、給料の一定割合分の負担が増えるだけですので、ぶっちゃけ保険料分もお給料に上乗せして支給してもらい、全額自己負担とするのとでは、表面的な違いはないと思います。
じゃあここで「社会保険料もコミコミでお給料を支払って全額自己負担で払ってもらう」ようにしたら何がどう変わるのか?ちょっと考えてみました。
社会保険を全額自己負担にしたらどうなるか
例えば月収20万円のひとは、その15%の3万円ほどの社会保険料を本人・会社ともに負担していますが、お給料を23万円にしてもらい社会保険料を6万円にしたらどうなる?って話ですね。
直接、会社側から出ていくは、どちらにせよ23万円。労働者の手取りも17万円ということには代わりありません。ただ基本給をベースに決まっているものは当然変わりますよね。
1.残業代の単価が変わる
まずは残業代の単価。月給20万円で毎日8時間で一ヶ月20日勤務の場合、時給換算すると1250円になります(安い!)。残業時の賃金は、60時間未満の場合で125%にして計算するので1562円ですね。
社会保険相当額が額面賃金に含まれるようになると、基本給の増加分金額があがり、1796円となります。
まあそもそも、25%の割増賃金自体少なすぎじゃね?って話もあるのですが「会社負担」の名前のもと、基本給を抑え込めば残業単価を引き下げることができます。何も社会保険料だけでなく、注意してみていきたいポイントですね。
2.最低賃金が上がる
また最低賃金についても検討が必要ですよね。額面給与に社保負担もコミコミにするなら、最低賃金自体も15%くらい引き上げないと、いままでと整合性が合わなくなります。
最低賃金クラスで働いている人たちは、もともと会社負担がある社会保険に加入していないケースも多いでしょう。そうすると、額面以上の負担のある層との見えない格差があるのですが、それは普段見ていません。それが額面にきっちり反映されることで、そのぶんの格差も明らかになると同時に、最低賃金への反映が必要になります。
コミコミプランにすれば、格差是正にもつながるかもしれませんね。
3.税金が安くなる
あと最後に、税金についてはどうなるんでしょうか?
「お給料が上がったから、その分高くなるのでは?」というのは不正解。社会保険料は、全額給与所得から控除されますので、税金の計算上、社会保険料を支払ったあとの金額をベースに計算されていると思って「ほぼ」間違いないです。
ただ実はそれも厳密には誤りで、今のルールに則って計算をすると、実は多くの人の例で、税金は安くなります。ポイントは給与所得控除です。
- 年収500万円
- 配偶者・扶養家族なし
- 社会保険料15%
で、税額の変化をシミュレーションしてみると、下記の通り。
現行 | 変更後 | |
---|---|---|
額面給料 | 5,000,000 | 5,750,000 |
給与所得控除 | -1,540,000 | -1,690,000 |
基礎控除 | -380,000 | -380,000 |
社会保険料控除 | -750,000 | -1,500,000 |
課税所得 | 2,330,000 | 2,180,000 |
所得税 | 135,500 | 120,500 |
住民税 | 233,000 | 218,000 |
サラリーマンが受け取る給与所得には、その受取額に応じた「給与所得控除」が生じ、課税所得は額面の金額額より圧縮されます。
年収500万円台ですと、所得控除は「収入金額×20%+540,000円」となり、額面給与が大きい方が有利になり、税金は年額で住民税・所得税あわせて3万円ほど安くなります。
なお年収100万円ごとの影響額を見てみるとこんな感じ。わたしの手計算なので、若干違ってたらごめんなさい。
元の年収 | 社保コミコミ年収 | 手取増加 |
---|---|---|
3,000,000 | 3,450,000 | 20,250 |
4,000,000 | 4,600,000 | 18,000 |
5,000,000 | 5,750,000 | 30,000 |
6,000,000 | 6,900,000 | 30,000 |
7,000,000 | 8,050,000 | 31,500 |
8,000,000 | 9,200,000 | 36,000 |
9,000,000 | 10,350,000 | 30,000 |
10,000,000 | 11,500,000 | 0 |
給与所得の増加が打ち止めになる1,000万円以上の高所得者については意味がありませんが、それ未満の層にとっては減税効果があることになりますね。
不都合な真実を直視しよう
とまあ、現在のルールに当て込んで考えてみると、こんな塩梅になります。まーあくまでタラレバの話ですし、本当にコミコミプランにするなら、色んなルールも一新されるでしょうから、あまり意味のないシミュレーションかもしれません。
ただ制度的なものよりも、きちんと見える化することに意義があるんじゃね?と思うんですね。
まずは会社が従業員に支払っているコストがしっかり見えるようになります。『実は裏で色々負担しとるんやで』というよりも、きちんと額面給料に表示されたほうが、色々と納得感も高いでしょう。逆に『アレコレ負担してるから』という言い訳は効きづらくなっちゃいますけどね。
また社会保険に加入している人たちと、そうでない人たちの賃金格差もしっかり見えるようになります。時給換算すると同じ1000円くらいだったとしても、実際には法律に定められた負担分だけでも15%も余計に会社に出してもらっているわけです。そこがきちんと分かるようになりますね。
最後に、社会保険に掛かっている本当のコストが見えるようになります。いまでも十分高いなあと思う金額ですが、会社負担分も含めて見えるようになれば、その思いはもっと強くなるんじゃないかな。
例えば健康保険料が高い理由として、75歳以上の後期高齢者の医療保険の4割は、若者が納めた保険料によって維持されている点があげられます。
(出典:後期高齢者医療制度 | 健保のしくみ | 大阪ガス健康保険組合)
もちろん誰かが負担しなければならないお金なのですが、これを75歳未満の健康保険料から負担するのは、正しいのでしょうか?健康保険料には、所得税のような累進効果はありません。むしろ上限額が設定されているため、逆進性の高い制度です。
だったら多少消費税を上げても、若者の健康保険から後期高齢者医療に回すのはやめにしたほうが良くないですか?もちろん保険料の使い方の精査が必要ですが、しっかりと議論するためには、そもそもいま我々は、どれくらいのコストを負担しているのか?を正確に知る必要があります。
逆に言えば、これらの不都合な真実に蓋をするために、こうした制度になっているとも言えるわけなのですが、そろそろ制度を継続的に運用するためには、パンドラの箱をあける必要もあるんじゃないでしょうかね?
ではでは、今日はこのへんで。