ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

社会保険料を減らす方法のまとめ

こんにちは、らくからちゃです。

散々お客様には、ペーパーレス化を一緒に推進しましょう!なんて言っている割に、ずっと紙の給与明細を配りつ続けていた弊社でも、やっとこさ個々人専用のフォルダにPDFを配置する方式の電子化に切り替わりました。

電子化していただけますと「そういや先月と比べて少ない気がする」なんてときも、ぱっと比較できるのが良いところですね。なーんか、ちょっと少ない気がするぞ。妖精さんが持っていったのかな?と思ったので比較したところ、10月分からまたアイツの金額が変わっていました。

社会保険料です。

あなたの給料から引かれているもの

受け取っている給料に比べ、振り込まれている金額がずいぶん少ない。そう思っているひとはかなり多いんじゃないでしょうか。その一方で、何にいくら払っているのかをキチンと把握している人は少ないような気がします。

昔かいた記事に、入社2年目の頃の給与明細の内訳なんてものが有りました。最近のだと色々と生々しい(?)ので、こちらを元に見てみましょう。

項目 金額
基本給 246,000
時間外手当 63,509
健康保険料 -7,680
厚生年金保険料 -26,259
雇用保険料 -2,038
所得税 -7,240
住民税 -11,200
共済会費 -732
寮費 -35,000
振込額 219,360

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大きい順に並べていくと、

  1. 厚生年金保険料
  2. 住民税
  3. 健康保険料
  4. 所得税
  5. 雇用保険料

になります。金額はひとによって異なりますが、年収400〜600万円くらいだとこんな感じの順位になるかと思います。

飛び抜けて金額が大きいのが厚生年金保険料ですね。これだけで天引きされている金額のほぼ半分を占めます。次に大きいのが住民税ですね。年収が低い人ほど所得税よりも住民税の負担のほうが大きくなる仕組みなのですが、それはまた後ほど。また健康保険料も所得税に負けず劣らず大きな金額です。

こうやって見てみると、税金よりも社会保険料の負担が重たいことが分かるでしょう。

社会保険料の計算方法

この金額を見ると「なんとか少しでも払う金額を減らしたいなあ」と思うひとは多いでしょう。その具体的な方法を考える前に、まずは社会保険料の計算方法がどうなっているのかについて抑えてみましょう。

年金保険と健康保険*1「標準報酬月額」という、そのひとの平均的なお賃金に対して保険料率をかけて計算されます。

この標準報酬月額は、通常4月から6月のお給料の平均値で計算します。この金額をもとに10月から次の10月までお給料から天引きされる社会保険料の金額が決まります。この期間の残業代が多いと、その分標準報酬月額が増えて支払う金額も増えます。「4月から6月は残業しないほうがお得だよ」なんて言う人がいるのはそのためです。

標準報酬月額は、

  1. 基本給
  2. 残業代
  3. 通勤手当
  4. 社宅・社食などの現物支給代

などが対象になります。お給料だけじゃなくて、そのひとが会社から貰っているもの全部が対象ってことですね。

現物支給分は、会社に出して貰った部分から自己負担分を差し引いた金額で計算します。ただし実際に会社が負担した金額ではなく、基準価格分をもとに計算します。基準価格は、昼食代なら一食230円などかなりの激安価格ですので、無料の社食がある場合などでなければ該当しないひとが多いように思われます。

標準報酬月額にはボーナスの金額は含まれませんが、ボーナスの支給額に対して保険料率をかけた金額が徴収されます。昔は、標準報酬月額一本で計算し、ボーナスから社会保険料は取っていなかったそうですが「賞与が多い会社とそうじゃない会社でバランス悪くね?」ということでこうなったそうな。

ちなみに雇用保険は、毎月の支払額ベースで決まりますので、ちょっと計算が異なります。話が長くなるので、全般的に本記事からは割愛させていただきます。

社会保険料はいくら払うのか

では標準報酬月額に対して、いくらの保険料率が掛かるかみていきましょう。まずは一番額の大きな年金からですね。

2019年現在の厚生年金保険料率は18.3%でございます。給料の2割近くも持っていかれているのですが、そんなに高かったっけ?と思うのは、半分は会社負担なので本人負担分は9.15%ですね。

とはいえ、会社負担分がなければお給料の原資が増えますので、実質的に2割近い保険料を払っていると考えて良いでしょう。そろそろこの「会社と折半」という仕組みは辞めたほうが良いと思うんですけどねえ。

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 厚生年金の保険料は2000年から毎年0.354%増えてきました。一応、一昨年には値上げが完了し、これから先はずーっと横一直線になる予定です。

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 次に、健康保険ですね。あまり知られていないような気がするのですが、健康保険料は勤務している会社や済んでいる都道府県で異なりますが、ものすごーく雑に言うと、健康保険料はだいたい10%(本人負担分は5%)と考えておけば良いでしょう。

ざっくり説明すると、「協会けんぽ」という、全ての会社が利用できる健康保険組合があり、その保険料は都道府県単位で変わります。また会社やグループ独自の健康保険組合が作れる場合、その組合の決めた保険料率を払うことになります。 

協会けんぽよりも保険料が高くなるようなら、独自の組合を立ち上げるメリットは有りませんので、基本的に独自の健康保険組合のほうが保険料率は安くなります。独自の組合を作ったほうが安くなる条件は、

  1. 若くて健康で医療費が掛かりにくい組合員が多い
  2. 扶養家族がおらず本人の医療費しか掛からない組合員が多い
  3. 組合員の平均年収が高い

などになります。この条件が満たせれば、一人あたりが負担する保険料は減らせますので、保険料も減らせるって仕組みですね。

最近だと単独の企業で作る組合だけでなく、似たような会社で作る組合も出てきました。ただ働き方によって明白な格差が出るのって、どーなの?と思うんですがねえ。

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社会保険料を減らす方法

仕組みが分かったところで、社会保険料を減らす方法について考えてみましょう。ただ税金と違って、個人でできることって、かなり少ないんですよね。会社にお願いするか、転職する際のポイントくらいに聞いて貰っても良いかもしれません。

1.保険料率の低い健康保険組合に加入する

まず健康保険オンリーですが、より保険料率の低い健康保険組合への加入の検討はひとつの選択肢になるでしょう。自前で健康保険組合を持つだけの規模でなくとも、同業他社で設立した組合への加入で、保険料が安くなる可能性があります。

例えば、東京都の「協会けんぽ」の保険料は9.9%(介護保険料抜き、本人負担4.95%)です。それが東京のIT系企業で作っている組合だと

となります。ざっくり0.5%くらいは安い。年収500万円だと、年間25,000円(社会保険料控除への影響等もあるのでそう簡単ではありませんが)くらいは安くなる。

会社負担分も減りますし、お安く利用できる保養所なんかも使えますので検討はしてもらっても良いやもしれません。

2.企業型DCを利用する

次に「年収そのものを下げる」ことができれば、支払う社会保険料を減らすことが出来ます。(゚Д゚)ハァ?と思われるかもしれませんが、要するに「給料」として貰わなければ良いんです。

個人で加入できる個人型確定拠出年金(iDeCo)は、給料そのものが下がるわけではありませんが、会社のお給料から天引きされる企業型確定拠出年金は、標準報酬月額そのものを減らすことが可能です。

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 利用できる金額枠自体も、個人型よりも大きくなっています。最近では、一律強制型ではなく、希望者だけが利用できる仕組みも広まってきました。人事部の人に「社会保険料が節約できるらしいっすよ」と耳打ちして導入して貰うのも良いかもですね。

3.社宅・社食を導入してもらう

これも先ほどの「年収そのものを下げる」に似たロジックですけど、

  1. 給料 * 社会保険料 → 手取 → 家賃
  2. (給料 - 家賃)* 社会保険料 → 手取

のケースだと、2番のほうが掛かる税金や社会保険料は減ります。税に関しては、会社負担分の半分は自己負担していないと、給料の「現物支給」と見なされちゃいます。一方社会保険については、「基準価格」から自己負担額が下回った金額が「現物支給」扱いになります。

なお東京都の場合、社宅・社員寮の基準価格は1畳あたり月額2590円になります。つまり6畳の部屋だと1万5,540円です。超安いですよね。この金額以上自己負担すれば、「現物支給は受けていない」ことになります。

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4.年俸制にしてもらう

最後にちょっとトリッキーな方法です。社会保険料は、標準報酬月額と賞与にはその都度かかります。

ただ標準報酬月額には上限があります。

  1. 厚生年金・・・62万円
  2. 健康保険・・・139万円

健康保険はさておき、厚生年金の62万円は年額にすると744万円となります。つまり賞与と合わせて750万円くらいのひとについては、賞与を給与にバラして貰うと、62万円の上限に引っかかるため、支払額を減らすことが出来ます。

会社は負担が減るのでハッピーでしょうけど、働いている側からすれば、将来貰える金額が減るので天秤に掛ける必要があります。

どちらかというとこの件が影響してくるのは健康保険ですねえ。健康保険の場合は、年収ベースで1668万円を超えないと関係しませんが、出産手当金・疾病手当金が標準報酬月額で計算されるのがポイントです。

これ・・・制度のバグみたいなもんだと思うんですけど、標準報酬月額には賞与の金額(厳密には3回未満の場合)が含まれていませんので、ボーナスで貰うより分割で給料に加算してもらったほうがおトクです。

もっともこの件だけで「年俸制にしてちょ」というのは無理がありますが、頭の片隅に入れておいても良いかもしれません。

なぜ社会保険料はイケてないのか

社会保険料は、それぞれの社会保険制度と結びついていますので、支払う金額を減らせば、その分給付に跳ね返ってきます。一方的に費用が減るだけの会社側としては、万々歳かもしれませんけど、保険加入者としてはそのあたりも踏まえて考えたほうが良いかもしれません。

ただね、健康保険は半分近くが保険加入者以外の支出に使われています

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 よく「民間の医療保険には半分近くは保険会社の人件費や宣伝代や経費に使われるから損!」というひとがいますけど、公的保険だって単純な損得勘定で捉えてしまうとどうなんでしょう。

公的保険で十分という点については否定しませんが、そりゃ会社負担込みで年収の1割近くも負担しているんだから、それ以上は過剰ってだけであって、決して「おトク」ってワケじゃないと思うんですけどね。

またこういうことを言うと、「いざ自分が必要になった時にありがたさが分かる」とか「弱者を切り捨てると回り回って損をするよ」みたいに言われることがありますがね。我が家は公的年金にも健康保険にも随分お世話になっていますし、制度自体は有り難いと思っておりますよ。

でも「お金の集め方」としては、イケてないよなあと思うんですよ。

所得税であれば、各種控除の制度や累進課税の仕組みがあるため、低所得者の負担は抑えられます。最近10%になってすったもんだした消費税だって、諸々の税金が引かれた後に残った部分で、家賃や医療費を除く一般支出の部分が課税の対象です。

一方、社会保険料は、有無を言わさず「年収の総額」から引っこ抜かれます。しかも給料天引きな上に、イマイチ何に使われているのか曖昧な中「あなたのためだから」と言われたら文句も言いにくい。

なので、しれっと「それ、税でやるべきじゃないですか?」ってことを保険料に混ぜ込んでくるような動きは、しっかり警戒する必要があります。そういや「こども保険」ってありましたけど、こうした動きは注視する必要があるでしょう。

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 話が脱線してしまいましたが、給与明細を眺めながら、こんなことを考えてみるのもまた良いんじゃないかなあと思う次第であります。あとあくまで"ド素人の戯言"に過ぎませんので、そのあたりも割り引いて読んでいただければ幸いです。

ではでは、今日はこのへんで。

 

*1:介護保険の話もありますが、これも長くなるので本稿では健康保険に含めて割愛