こんにちは、らくからちゃです。
先日、婚姻届の提出に伴って、色んな手続きをあっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら行ってまいりました。中でも一番大変だったのが『健康保険』。
まーなんか色々と書類を用意させられて大変でしたが、。なんとか保険証をゲットすることができました(๑•̀ㅂ•́)و✧
こういうやつね!こいつがあれば、病院にかかった際に、窓口で負担する費用が3割になります。では残りの7割はどうなるのかというと、毎月払っている保険料から払われるわけですね。
そういや、同じ『社会保険』でも、年金保険は話題になるけど、健康保険が話題になることって少ないような気がします。年金は生活に直結するけど、健康保険はそんなに頻繁にお世話になるものではないからかな?
今回手続きに際して、『そういや健康保険ってどういう仕組なんだっけ』ということについて改めて振り返ってみました。せっかくお勉強したので、誰かの役に立ったらいいな、と思いまとめさせて頂きます。
健康保険の種類
健康保険には何種類かありますが、基本的にどれかの保険に自動的に加入(または加入者の扶養者)することになります。
第5条 市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)の区域内に住所を有する者は、当該市町村が行う国民健康保険の被保険者とする。
第6条 前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者は、市町村が行う国民健康保険の被保険者としない。国民健康保険法
この6条の中に、ずらずらっと色んな保険の名前が出てくるのですが、そのどれかに加入しないかぎり、国民健康保険に加入することになるんですね。これを、国民皆保険制度というわけですね。そこで登場する保険をざっとまとめるとこんな感じ。
まず大雑把に分けて、『勤め人』の加入する被用者保険と、75歳以上の高齢者の入る後期高齢者医療制度と、それらに該当しない人の入る国民健康保険がある。
被用者保険はもうちょっと分けると、
- 大企業の会社員は、各会社の健保組合が運営する組合健保
- 健保組合が無い中小企業の会社員は、独立行政法人の運営する協会けんぽ
- 公務員や教員は、各共済組合
に加入することになります。
保険料の違い
健康保険証を病院で見せると、
- 小学生以下 ・・・ 2割
- 70歳未満 ・・・ 3割
- 75歳未満 ・・・ 2割(所得の多い人は3割)
- 75歳以上 ・・・ 1割(所得の多い人は3割)
となる。これは基本的にどの健康保険でも同じ。残りの部分は、毎月収めた保険料の中から負担される。収める金額は、月収✕保険料で決まります。もうすこし厳密に言うと、『月収』は標準報酬月額と言われるもので計算されます。標準報酬月額の計算には、全ての収入が含まれます。つまり、
- 基本給
- 家族手当
- 住宅手当
- 残業代
- 定期代
などなどが含まれます。残業代は、決まって支給されるわけではありませんので、4月から6月の平均額を1年間の平均とします。
厚生年金も同じ方法で計算した結果を使いますが、年金であれば将来貰える金額も増えるので微妙なラインですけれど、健康保険料はたくさん収めても何のメリットもないので、もしこの時期に残業をしないよう調整できるのであれば、そのほうがいいかもしれませんね。。。(とはいえ実際には難しいでしょうけど)
標準報酬月額は、誰でも同じ計算方法になりますが、保険料は人それぞれ異なります。
まず、組合健保。これは、それぞれの会社ごとに違います。
会社名 | 従業員負担 | 事業者負担 | 合計 |
---|---|---|---|
トヨタ | 3.000 | 5.300 | 8.300 |
日立 | 3.700 | 5.000 | 8.700 |
パナソニック | 3.510 | 5.490 | 9.000 |
日本電信電話 | 4.560 | 4.710 | 9.270 |
ホンダ | 3.320 | 4.980 | 8.300 |
東芝 | 3.680 | 5.320 | 9.000 |
ヤマトホールディングス | 4.430 | 5.570 | 10.000 |
よく『社会保険は会社と従業員の折半』というけれど、 必ずしも折半でなくともよいようで、それぞれの会社ごとによってカラーが分かれます。一番安いトヨタだと3%だけれど、そもそもここは全体の保険料から安い。
お次は協会けんぽ。これは、都道府県によって違う。ベスト3とワースト3を載せてみるとこんな感じ。
都道府県名 | 保険料率 |
---|---|
佐賀県 | 10.210% |
北海道 | 10.140% |
香川県 | 10.110% |
富山県 | 9.910% |
長野県 | 9.910% |
新潟県 | 9.860% |
協会けんぽについては、会社と従業員が折半して払うことになります。全国平均を取ると、概ね10%位でした。
共済は飛ばして国保。国保は計算の仕方がちょっと違います。更に面倒なことに、各市町村によって、計算の方法が異なります。
- 所得に応じた所得割
- 資産に応じた資産割
- 人数に応じた均等割
- 固定でかかる平等割
これを、①全て使う、②資産割は使わない、③所得割と均等割だけ使うというパターンが有るんですね。めんどくせー。しかも、それぞれの金額は市町村ごとに異なるので、比較が面倒なんだけれど、年収400万円と仮定するとこんな感じになるみたい。
サービスの違い
あと、各保険ごとに独自のサービスを行っていることもある。代表例が高額医療費の付加給付。これは、各健康保険組合が独自の判断で実施しているもので、一定の金額以上の医療費を支払った場合、差額分が支払われるそうで、その額はこんな感じ。
- トヨタ・・・2万円以上
- 日立・・・2万5,000円以上
- パナソニック・・・2万5,000円以上
おー、怪我をしても病気になっても、支払い上限額がこれくらいなら安心できますね。
一方、協会けんぽ及び国保が適用される『法定上限』はこんな感じ。
(出典:医療費が高額になりそうなとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会)
最も低い人であっても35,400円(゚д゚)!ある程度お給料を得ている人なら57,600円が限度額です。その他にも、出産で休業した場合の保証や人間ドッグなどのサービスについても大企業とその他の間には大きな差があります。
何故保険料に差がでるのか?
じゃあどうして各保険ごと、あるいは会社ごとの差が生まれるのだろうというと、保険に参加している人の属性が違うからなんですね。
一人あたりの保険料率は、ざっくりいうと、発生する費用を参加者で割ると求められます。ただし、保険料率を全員均等とすると、参加者の中に高所得者が入れば、それだけ全体のパーセンテージが低くなります。例を挙げるとこんな感じ。
- 医療費・・・年間50億円
- 加入者数・・・1000人
- 平均所得・・・500万円
とすると、50億÷(1000人✕500万円)=10%となる。所得は平均なので、中には1000万円の人もいるかもしれないし、300万円の人もいるかもしれない。それでも保険料率を全員一律と考えると、所得の高い人が余計に払ってくれる分、所得の低いひとの支払額は小さくなる。
もうひとつポイントになるのが、医療費総額。当然、健康で病気をしない人が多いほうが、全体の医療費は抑えられる。また、健保組合・協会けんぽでは、一定の所得未満の家族も保険の対象になります。そのため『健康で独身の若者』が多い組合のほうが、医療費は抑えられますね。
実際に統計データを見てみましょう。
(出典:全国健康保険協会 事業年報)
ひとりあたりのお給料は、組合健保のほうが多い。一方掛かっている費用は、協会けんぽのほうが高くなっています。
社会保険の逆選抜
我が国において、健康保険への加入が実質的に義務付けられているのには、複数の理由がありますが、そのひとつに『逆選抜への対応』という考え方があります。
保険っていうのは、基本的に『健康に自信のない人』が入ろうとします。一方、保険事業者は、リスクが上がると保険料を上げざるを得ません。そうすると、ますます健康に自信のない人しか入ろうとしません。このサイクルをほうっておくと、保険が成り立ちませんよね?
そこで国民全員に、強制的に保険に加入してもらうことによって、全体のコストを引き下げようとしました。ただ、なんだかなーと思うのが、一緒の保険で助け合うべき仲間を、強制的に決められて、しかも弱い物同士が組むような形になってるのって、どーなのん?と思うんですよ。
例えば、以前話題になっていたこちら。
関東ITソフトウェア健康保険組合という、複数のIT企業(中にはあのソフトバンクとかもいます)の従業員が加入している保険組合があります。こちらが資金を負担していることによって、バーに大変お安くいける、という記事です。他にも色々とサービスが充実しているみたいですね。
どうです?あなたの会社もここに加入して欲しい。そう思いませんか?そう思って、加入基準を調べてみると、なかなか面白い記述があります。
- 著しい低報酬月額の被保険者 (※1) がいないこと
- 被保険者の平均年齢が40歳未満であること
- 扶養率については、当組合の平均を著しく上回らないこと (※2)
(※1)標準報酬月額 118千円(8等級)以下の被保険者
(※2)扶養率が1.0以上でお断りする場合もあります。ただし続柄が妻・子のみで事業所の標準報酬月額の平均が410千円(27等級)以上であれば扶養率1.5まで加入可能な範囲となります。
【扶養率=健康保険で認定されている被扶養者数/被保険者数】
おわかり頂けますか?ざっくり言うと、
- それなりに収入があって
- 年齢が高くなくて
- 独身のひとが多い
会社に参加してほしい。ということですね。この条件は、保険料を引き下げるのに必要な条件でしたよね?これってまさに、間接的な『逆選抜』が行われている状況にほかならない気がするんですけど、そこんとこ、良いんでしょうか?
自分の健康保険料にはもっと関心をもつべきじゃね?
トヨタの社会保険料と協会けんぽの社会保険料を比べると、2%くらいの差があります。この差は、かなり大きいですよね。年間で10万円の差になります。会社負担割合が大きいのは、福利厚生の一貫みたいなものなのですが、保険料率そのものが会社別に違うっていう保険制度は、なんか筋が悪いような気がするんですね。
例えば、健康診断やらウォーキングやらを会社全体としてしっかり取り組んで、みんなで健康になって保険料を下げていくというのは、終身雇用を前提とすれば理想的なモデルではあります。
でも雇用が流動化しているなか、効果が発揮するまでに時間の係る健康への投資は改修する前に転職されるかもしれないし、むしろ下手に検査して変なものを見つけてしまうよりは、放っておいたほうがいいんじゃね?というモチベーションにすら繋がるように思えます。
個人の雑感ですが、会社別の健康保険って時代にそぐわないような気がするんですよね。
加えて気になったのが国保の負担。会社負担が無いのはしょうがないとして(サラリーマンは見えないところでもっと稼いでるんですよ!)、随分若い世代に冷たいような気がします。
若い世代が健康保険で得をしたかったら、
- 高額所得者の多い、平均年齢の高い会社がいいですよ
- 仮に起業するなら、均等割が増えるので子供は生まないほうがいいですよ
- 加えていうならば、資産割が増えるので家は買わないほうがいいですよ
ということになっちゃう。自営業は経費で色々出来る分があるのは事実でしょうけれど、もうちょっと何とかできんのかなあと思うところはあります。
あと前掲しましたが、地域間の格差も大きすぎませんか?
更に、今の健康保険って、後期高齢者医療制度への支援金なども含まれていますからねぇ・・・。
例えば、同じ金額を所得から捻出するにせよ、段階的に税率のあがる累進課税を採用している所得税なら、もっと各世帯間の格差は減らせるはずです。また、税金を財源にするのであれば、たばこ税や酒税から回してくることだってできます。(たまに思うのですが、たばこ税は健康保険の目的税にできないのかなあ。)
少なくとも4割の支援金は、保険料からではなく、国庫捻出してもらえないもんなんでしょうかね。今の健康保険の仕組みは、格差を拡大する方向に作用する気がします。
消費税でドタバタするのもわかりますが、もう少し社会保険のほうにも、みんな関心を持ってもらっても良いんじゃないの?なんて思う今日このごろです。
ではでは、今日はこの辺で。
2016/06/09 更新 : 標準報酬月額等について追記