ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

知らないと損する:確定拠出年金(iDeCo&選択制DC)の見落とされ易いもう一つの効果

こんにちは、らくからちゃです。

消費税率も上がるというのに、弊社では一向にお賃金は増える気配はなく、それどころか健康保険料が値上がりするそうです。そろそろ「団結」って書かれた鉢巻でも発注しようかしらと思っていた矢先、人事部から「ほな代わりに」と言わんばかりに「選択制確定拠出年金制度導入のご案内」が発表されました。

確定拠出年金というと、近年「超絶お得な節税術」として紹介されることが増えてきた気がするiDeCo(個人型確定拠出年金)は広く耳目を集める機会も増えてきたと思います。

ただ「確定拠出年金」と言っても、"個人型"と"企業型"があるのはあまり知られていないか、知っていても違いがよくわからないひとが多いように思います。結論から先に言うと「企業型が使えるなら企業型のほうがオトク」なんですよね。

企業型DCのやり方あれこれ

 「確定拠出年金」で調べても、出てくるのは個人型確定拠出年金(iDeCo)の話だけで、あまり企業型確定拠出年金の話は出てきません。なんか余裕のある会社が福利厚生のためにやってるヤツでしょ?と思われてそうですけど、まずは

  • 個人型確定拠出年金:個人で加入して自分の口座から引き落とす
  • 企業型確定拠出年金:会社で加入して給料から差し引かれる

くらいの違いであると考えたほうが分かりやすいかもしれません。

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企業型の場合、あなたが直接証券会社にお金を振り込むのではなく、会社が勝手にあなたの年金用口座に振り込んでくれます。それだけ聞くと「なんて良い会社なんだ!」と思いますが「ローンを早めに返済したい」「子供の教育費が必要」など、現金で貰いたいひとからすれば、ありがた迷惑な話です。

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そうした不満に対応するため「マッチング拠出」という制度を利用するケースが考えられます。これは企業の拠出分に加え、自分で決めた拠出分を追加で給料天引きの形で拠出できる仕組みです。

全額会社支給のケースよりも自由度は上がりますが、個人拠出分は会社拠出分と同額が限度額に定められていることと、拠出可能な会社分+個人分の限度額は、全額会社支給の場合と変わらないので自由度という意味では、むしろ扱いづらい感じもします。さらに、マッチング拠出分は後述する標準報酬計算に含まれるため美味しさも少ない。

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で、ある種の抜け穴的に使われているのが、選択制確定拠出年金と言われている方法です。給与規則に「ライフプランニング手当」みたいな感じの名前の手当を設け、その金額は従業員が掛金として拠出することを指示した金額を差し引いて支給します。

この方法なら「給料から好きに決めた金額を天引きして掛金として拠出する」イメージになり、従業員からは何のデメリットもなく利用できます。

個人型DC(iDeCo) vs 企業型DC(選択制DC)

 基本的に、個人型であれ企業型であれ、同じ「確定拠出年金」の器を使うため、

  1. 運用益は非課税
  2. 受給時には課税されるが有利な控除が使える
  3. 60歳までは引き出せない

という基本的なコンセプトは同じです。じゃあ何が違うのかというと、一般的なケースで比較してみるとこんな感じかな。

  個人型 企業型
1.対象者 かなり広い 利用企業の従業員のみ
2.手数料 本人負担 会社負担
3.運用対象 証券会社から自分で選べる 会社が選んだ証券会社の取扱商品のみ
4.限度額 年間27.6万円 年間66万円
5.利便性 節税には確定申告が必要 給料から勝手に天引きされるので処理不要
6.節税効果 同額なら個人型が強い 限度額いっぱいなら企業型が強い
7.社会保険料 変わらず 減る(だけど給付額も減る)
8.会社の利益 事務負担が増えるだけ 事務負担や以上に社会保険料の節約効果がデカい

1.対象者:個人型の勝ち(加入できるひとが多い)

iDeCoについては、最近では専業主婦・主夫まで入れるようになりました。基本的に、公的年金を払っているひとなら誰でも利用できると思って良いです。ちなみに、企業型DCを利用している人も使えますが、個人型DCと併用する場合、企業型DCの限度額が減るイメージで考えて貰えれば良いです。(厳密には違いますけど)

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(出典:イデコをはじめよう|イデコ公式サイト|老後のためにいまできること、iDeCo|国民年金基金連合会)

2.手数料:企業型のやや勝ち

iDeCoを利用しようとした場合、加入時の初期費用や毎月の管理費用として手数料が請求されるケースがあります。

企業型の場合、基本的にそうした費用は会社負担です。ただ最近ではiDeCoでも無償の証券会社も増えてきましたし、たいした額ではないので、それほど気になる話ではありませんね。

3.運用対象:個人型の勝ち

運用対象は、何でも自由に選べるわけではなく、年金が拠出された証券会社が「確定拠出年金用」として取り扱っている投資信託や預金、保険商品の中から選びます。

個人型の場合、個人での契約ですので証券会社は自身で選べます。一方、企業型の場合、会社が契約先を選びます。そのため会社側がお付き合いで、クソみたいなラインナップしか扱っていない地銀の子会社の証券会社なんかを選んだら、各種メリットも減殺されることになります。

まあ最近は金融庁も口うるさいので、極端な例は減りつつあるかと思いますが、ここは会社の担当者がちゃんとチェックできてるかどうかがポイントですね。

4.限度額:企業型の圧勝(企業型が2.3倍)

個人型と企業型では、積み立てられる限度額が異なります。細かなケースの違いはありますが、最も一般的なケースでは

  1. 企業型・・・月5.5万円(年66.0万円)
  2. 個人型・・・月2.3万円(年27.6万円)

とダブルスコア以上の差があります。

5.利便性:企業型の勝ち

個人型の場合、個人で加入するわけですが、加入資格を証明する書類を会社から出して貰う必要があります。

小さな会社だと過去に対応したケースもなく、年金基金などの外部機関とのやり取り等も必要になるため煙たがられることも多いそうです。中には「そんな余計なこと考えずに仕事しろ」なんて言われることもあり、イデコハラスメントなんて言葉も生まれるほどストレスフルな状況です。

企業型の場合、すでに会社側で証券会社と契約を結んでいますので、そうした手間がかかりません。

また個人型の場合、節税効果を得るためには年末調整または確定申告で、「小規模企業共済等掛金控除」を申告する必要があります。税務署は、いくら拠出したか知りませんから、それを使えて「税金返してちょ」と申し出る一手間が生じます。

企業型の場合「そもそも元から給料が少なかった」ことになっていますので、社員側で特別な対応は必要ありませんし、そうした処理はすべて会社側で完結させられるのでお手軽です。

6.節税効果:引き分け(同額なら個人型が強いが満額なら企業型が強い)

では次は皆様一番気になっている「節税効果」のお話です。

税率は年収によって変わりますので、仮に年収600万円の人がiDeco/選択制DCを利用したらどうなるか?粗いシミュレーションをしてみました(簡易の計算なので正確ではありません)

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iDeCoを利用すると、拠出額と同額を所得控除、つまり税金の対象となる「所得」を減らせます。iDeCo限度額いっぱいの27.6万円を拠出した場合、所得税・住民税合計で年間55,200円、支払う税金が減る計算になりました。

選択制DCを利用すると、拠出額分お給料そのものが下がります。限度額に差はありますが、条件を揃えるためにiDeCo限度額と同じく27.6万円拠出する場合で計算すると、35,880円、支払う税金が減ります。あれ、似たようなことをしているのにiDeCoのほうが節税効果が大きいですね。

なぜそうなるのか。額面所得が下がった分、額面所得に応じて計算される給与所得控除や、社会保険料が減少したことによる社会保険料控除が減るからです。

じゃあiDeCoのほうがお得かといえば、そうとも言えません。あくまでiDeCo限度額と同額を拠出したら、というシミュレーションでしたが、選択制DCの限度額である年間66万円を拠出した場合、85,800円、支払う税金が減ります。整理すると

  • iDeCo    27.6万円:55,200円の節税
  • 選択制DC 27.6万円:35,880円の節税
  • 選択制DC 66.0万円:85,800円の節税

となります。なので、どちらが良い!とは決めるのは難しいですね。

ところでこの話、「アレ?」と思った人はいませんか。そうなんです。選択制DCの場合、額面所得=標準報酬月額が下がるので、社会保険料も下がります。

7.社会保険料:基本的に企業型の勝ち

iDeCoと選択制DCの最大の違いは、iDeCoはあくまで所得控除に過ぎないのですが、選択制DCは額面所得=標準報酬月額そのものが下がります。よって支払うべき社会保険料も下がることになります。

これは何も、良いことばかりではありません。

  • 年金保険:老齢年金や何かあったときのための障害年金・遺族年金が減る。
  • 健康保険:疾病休業時に支給される手当などの金額が減る。
  • 雇用保険:失業時に受け取れる失業手当などの金額が減る。

と言ったマイナス面も受け入れなければなりません。

とはいえ、どれくらいインパクトのあるものなんでしょうか。ぶっちゃけ健康保険や雇用保険については、人によりけりですが、お世話になる確率も期間もそんなに長くないんじゃないかなーと思うんですね。大きいのは厚生年金ですね。

22歳から60歳まで厚生年金に加入した人が、平均年収600万円=標準報酬月額50万円から、選択制DCを限界まで拠出して平均年収534万円=標準報酬月額45万円に下がったケースで考えてみましょう。

支払額は、所得の下がる66万円に対して個人分の年金保険料9.15%をかけた6万0390円が手取りの増加額です。これを22歳から60歳まで39年間年金を支払っていた場合、約236万円支払額が減ります

受け取れる年金は

  • 標準報酬月額50万円:月額17万1900円
  • 標準報酬月額45万円:月額16万1200円

となり年間では12万8400円年金の受取額が減ります

65歳から年金を受け取るとして単純計算すると18年間以上年金を受取る、つまり83歳以上長生きするのであれば、選択制DCは損!という計算になります。

でもこれ単純に支払額と受取額を比較しただけですからね(笑)。経済学では、今日の10万円と、10年後の10万円なら、当然前者のほうが価値があると考えるます。年寄りになってから受け取れる年金が減ったところで、すぐに社会保険料が減る方がお得です。

というわけで、NPV(正味現在価値)をもとに計算すると

  1. 利率0%・・・83歳
  2. 利率1%・・・90歳
  3. 利率2%・・・109歳

となりました。たったの利回り2%でも、十分資本効率は良さそうです。まあでも、障害年金や遺族年金なども考えると、一概に問題ないとは言いづらいと思いますので、ここは判断を迷う点ですね。

またそもそも、物価水準に合わせて受給額が変わる年金の損得を、いまの想定で計算すること自体どないやねんと思うところもあります。

ここは皆さんの中でしっかり試算して判断してほしいポイントですね。

8.会社の利益:企業型の勝ち

選択制DCの場合、健康保険料の算定に使う標準報酬月額が下がり、社会保険料が下がります。つまり会社が払っている社会保険料の事業者負担が減ります。(健康保険などは会社によりけりですが)ざっくりいうと、拠出額の15%くらい減りますので、66万円満額拠出してもらえれば年間10万円の負担減です。

確かに諸々の費用や事務負担は増えますが、社員側と違って、社会保険料が減ることによるデメリットはありませんし、これは見逃せない効果でしょう。

というわけで選択制DCを導入している会社にお勤めの皆様は、堂々と利用しましょう(笑)。

見落とされ易いもう一つの効果

いかがでしたでしょうか?iDeCoにも選択制DCにも、それぞれの大きなメリットがあります。というわけで、皆さん存分に活用しましょう!

ここまでは、各種パンフレットやブログなんかにも良く書かれていると思います。

「メリットがあるのは分かるけど、60歳まで資金が拘束されるのは困るしどうしようかなあ」と考えるのは当然です。ただこれまで挙げてきたこと以外にも、もう一つ、特に子育て世帯にとっては見落とせないメリットがあるんです。

ヒントは「住民税が下がる」ことです。

住民税が下がることで得られる分かりやすい具体的なメリットってなんでしょうか。その代表例は認可保育園の保育料が下がることです。

例えば、年収600万円 * 2 の夫婦が世田谷区で保育園を利用しようとした場合どうなるのか考えてみましょう。一人あたりの住民税は29.8万円、二人で59.6万円。どちらかが、選択制DCを満額拠出すると55.3万円になります。

前者はD24、後者はD23という区分になります。

  3歳児未満 3才児 4歳児以上
D24 ¥70,500 ¥37,200 ¥32,000
D23 ¥67,300 ¥36,400 ¥31,000
年間差額 ¥38,400 ¥9,600 ¥12,000

それぞれ年間での差額を比べると、3歳児未満の場合は3万8,400円も保育料が安上がりにつきます。 これは結構見逃せない金額じゃないでしょうか。(なお確定拠出年金を使うと、雇用保険の保険料をベースに決まる育児休業給付金も減りますのでご注意くださいな)

その他にも

  • 公営住宅の入居基準や家賃
  • 児童手当の所得制限
  • 自立支援医療制度の限度額

などなど自治体の行っているサービスは、住民税の金額が基準になっているケースが多数あります。あくまで境界線上にいるひとだけですけど、確定拠出年金、特に金額の大きな選択制DCを活用すれば、福祉サービスをお安く受けられる可能性があがります。合わせて明治安田生命の「じぶんの積立」なんかも利用し、生命保険料控除もつけるとなお良いかもしれませんな。

この話、お役所の出しているパンフレットには中々書けないでしょうね(苦笑)。

こうした仕組みは、本来は所得が少ない人を応援するための仕組みなのに、将来のために今の手取り額を減らしてでも貯蓄ができる人のための確定拠出年金制度によって有利になるってのは「それで良いのか」と思っちゃいますよね。

住民税基準のサービスは、たいていの場合、寄附金控除とか住宅ローン控除とか「お金があるからこそ受けられる控除」は除外して計算されます。将来的には、iDeCoを利用する際に受ける「小規模企業共済等掛金控除」も対象から外されてしまう可能性もあるのかもしれません。

ただ選択制DCについては、そもそも控除すらありませんから、市町村からは分かりようがありません(マイナンバーで紐づけて証券会社に問い合わせれば分かるかもしれませんが・・・)

まあでも、特に大企業に多いと思いますが、手取りの給料が少ない代わりに

  • 退職金の制度がある
  • 社宅が安く利用できる
  • 食堂などの福利厚生が手厚い

といった会社に勤めていると、住民税を圧縮しやすく、保育園を筆頭とした福祉サービスをお安く受けられる可能性があがります。なんだか筋が悪いような気もしますが、ひとまずiDeCoや選択制DCを利用する際には、頭の片隅に入れておいても良いかもしれません。

ではでは、今日はこのへんで。 

お金は寝かせて増やしなさい

お金は寝かせて増やしなさい