ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

障害があると障害者になるのは難しい

こんにちは、らくからちゃです。

わたしの妻は、統合失調症という病気を患っておりまして、精神科に通院しています。医者じゃないので正確には説明できないのですが、幻聴が聞こえたり、誰かが悪口を言っている!といった類の妄想から暴れてしまったり、逆に全く動けなくなったりと症状は多種多様です。

かつて治療方法は、閉鎖病棟に閉じ込めておくくらいしかなかったそうですが、近年では薬や様々な方法で症状を抑えることができるようになりました。とはいえ、寛解まで辿り着けるひとは稀で、多くのケースで10年20年といったスパンで治療を続ける必要があります。本人に病識(自分が病気だという認識)が無い場合も多く、家族や周囲の人たちの支援や理解は必要不可欠です。

そうした背景もあり、妻の通院している病院では、月に1度、土曜日の午後に患者会向けの説明会を行っています。現在の治療の動向や、家族が知っておくべき知識についての講習に加え、その内容を踏まえ医療関係者や参加者同士でディスカッションをする双方向的な交流の場ともなっています。

繊細な話も多いので、詳細のネット公開はできませんが、ちょっと皆さんにも分かってほしい話がありましたので、差支えのない範囲で書いてみたいと思います。

社会資源とは何か

今回は「社会資源をどう活用するのか?」がテーマでした。

社会資源というと大仰な感じになりますが、「病院」といった物理的なものから「医療保険制度」といった制度的なもの、「家族」「地域社会」といったアンオフィシャルなものも含めた患者を支えるもの全般を指します。

公的な制度としては

  1. 障害者手帳
  2. 障害年金
  3. 自立支援医療制度

が代表的ですね。

障害者手帳

障害者手帳は、みなさんも名前を聞いたことくらいはあるでしょう。各自治体によって発行されますが、「身体障害」「精神障害」「知的障害」の区分に分けられ、デザインもバラバラだったりします。持っていると、バスが割引料金になったり、動物園や美術館に付き添い1名も含めて無料になったりします。ただまあ"身体障害2級以上のみ対象"などとなっているものも多く、けっこう面倒なしくみです。そういや以前、利用できる場所を整理しましたので、良ければぜひ。

www.yutorism.jp

障害年金

障害年金も、どこかで聞いたことはあるけど、実際いくらくらい貰えるのかはご存知ない方が多いでしょうね。ざっくりいうと、国民年金だけなら1級で月額8万円、2級で6万50000円くらいです。勿論無いよりはあったほうが良いですが、年間で100万円にもなりませんので、これだけで生活するのはちょっと厳しい。またこの等級は、障害者手帳と必ずしも一致するものでは無い点も注意が必要です。こちらも詳細について下記にまとめていますので、ご興味があればぜひ。

www.yutorism.jp

自立支援医療制度

こちらは、前者と比べると縁のないひとには、馴染みのないひとが多い話かもしれません。通常、健康保険をもって病院にいくと、治療費も薬代も3割負担(など)になりますよね。ただ精神科に通院していると、そのままではかなり負担が大きくなるケースもあります。そこで特定の疾患に対して生じた医療費については、年収に応じて決められた一月あたりの負担上限額を超えた場合、自治体の公費負担によって支払いが軽くなる「自立支援医療制度」という仕組みがあります。

f:id:lacucaracha:20181021194425p:plain

ただこれは、通院にのみ使えるもので、入院した場合は別になります。その場合、健康保険の高額医療費の上限制度が使えるケースもありますが、これは各医療保険によって、結構金額が異なりますので、事前にチェックしておくと良いかと思います。

www.yutorism.jp

 障害があると障害者になるのは難しい

ざっと代表的なものを上げてみただけでもこれだけの支援の枠組みがあります。それぞれ申請する場所や、更新のタイミングや手続きの方法が異なります。結婚したときは、ほーんと大変でした。

www.yutorism.jp

また更に、各自治体での独自のサービスも沢山ありますし、会社の共済会なんかが用意している支援の枠組みもあれば個人的に直接お金を払って利用しているものの中にも障害者向けの割引もあったりします。お金に関わる話だけでなく、作業療法やら就労支援やらのサービスもあり、自分に関わるサービスを管理するだけでも一苦労です。

 更に、新しい仕組みが生まれたり、内容が変わったり、それをフォローする必要もあります。健康な人でも大変なこうした作業を、精神疾患を患っているひとがやるのは並大抵のものではありません。とはいえこうした煩雑な作業を行わないと、公的に「障害者」と認められないのです。

以前、妻がこんなことを言っていたのですが「障害があると障害者になるのも一苦労」というのは、言い得て妙なようにも思えます。

社会資源をどう活かすのか

患者家族同士の懇話会の中では、こうした社会資源をどう活かすのか。特に、どうやって本人や家族はつきあっていくのか、についてディスカッションをしました。

病院には、ソーシャルワーカーなどの専門家や、地域連絡室といった組織があり、支援を受けることも可能ですが、ひとりで手続きができない患者も多く、実際に多くを家族が委任状のもと代行して行っているのが現状です。とはいえ、何でもかんでも家族がやってしまうと、自分がどんなサービスを利用しているのかも分からなくなりますし、自己決定権を失うことにも繋がります。

更に「患者自身が乗り気にならない」という大きな壁があります。障害者手帳を交付されることを、何か劣ったものであるとの烙印を押される行為であると思う人や、働きもせず障害年金を受け取ることは恥ずかしいと感じているひとも多い。家族の中には、本人には伝えず、こっそり処理をしているという人もいたくらいです。

こうした背景から、せっかく仕組みを作ったのに、本当に必要なひとに支援が届いていないケースも多くあります。本来こうした制度は、使ってもらいたいからこそあるのであって、条件を満たすのであれば、何も恥じることなく徹底活用すれば良いのです。

国や自治体には、制度を使おうとしているひとだけでなく、使える制度があるのに知らない人、一般の市民に対しても、制度の趣旨や目的をきちんと伝え、より多くの人に意義を理解して貰うことも大事なんじゃないのかなあと思う今日このごろです。

ではでは、今日はこのへんで。