こんにちは、らくからちゃです。
先週の木曜日は、2ヶ月に一度の年金受給日でした。我が家では、家内が障害年金を受給している都合上、一般の人よりほんのすこしだけ知識があるのですが、多くの『健康な人』にとって障害年金は未知の世界だと思います。
年金は大きく『国民年金』『厚生年金』の2つに別れますが、それぞれ年金の支払額は『国民年金保険料』『厚生年金保険料』と呼ばれます。そもそも年金とは、何らかの事情で働けなくなるなった時に、自分と家族の収入を保証するための『保険』です。『保険金』は、
- 老齢年金・・・一定年齢以上となった時
- 遺族年金・・・死亡した時
- 障害年金・・・障害を負って働けなくなった時
の際に、支払われます。年金の話題といえば、定年後に受け取れる(かどうかが怪しいと言われる)老齢年金の話が多く、障害年金について語られることは少ないんじゃないのかなあと思います。まあ、多くの健康な人にとって、障害年金は必要ないことが多い存在です。
ただ、自分がどういった『保険』に加入しており、どういった条件で年金が支払われるのかについては、その他の金融商品を検討する際にも頭に入れておいても良い話だと思います。そこで今回は、制度全体のごく一部分だけにはなりますが、障害年金の制度について、ちょこっとだけお話してみようかなあと思います。
年金の種類と受給額
障害年金は、老齢年金と同じく
- 国民年金・・・国民全体が加入する
- 厚生年金・・・会社員・公務員(旧共済年金)が加入する
の2種類のものがあります。その辺の話は、こちらにも書いておいて見ましたので、ご参考頂ければ幸いです。
まず皆さんが気になるのは『どのくらいの金額を受け取ることが出来るのか?』ということだと思います。2015年10月20日現在で、国民年金から支払われる『障害基礎年金』は、
- 一級:年額 975,100円 = 月額 81,258円
- 二級:年額 780,100円 = 月額 65,008円
- 上記に加え子供2人迄:224,500円/1人 3人以上:74,800円/1人
となっております。全員一律固定の金額ですので、わかりやすいですね。一方、厚生年金から支払われる『障害厚生年金』はもう少し複雑です。基本的な計算式は下記です。
- 平均標準報酬額×5.481/1000×加入期間(300ヶ月満たない場合300ヶ月に切上)
平均標準報酬額に賞与分が含まれて居なかった平成15年以前はちょっと計算式が変わるのですが、ややこしくなるので割愛致します。これだと良く分かりませんので、早見表にしてみるとこんな感じですね。(ざっくり計算なので正確性は保証出来ません)
25 | 30 | 40 | 45 | |
---|---|---|---|---|
150,000 | 320,625 | 384,750 | 513,000 | 577,125 |
200,000 | 427,500 | 513,000 | 684,000 | 769,500 |
250,000 | 534,375 | 641,250 | 855,000 | 961,875 |
300,000 | 641,250 | 769,500 | 1,026,000 | 1,154,250 |
350,000 | 748,125 | 897,750 | 1,197,000 | 1,346,625 |
横軸加入期間、縦軸が平均月収から計算した年額の受給額ですね。ポイントは、1ヶ月でも加入していれば、加入期間は25年以上加入したものと切り上げ処理されます。
上記に加え、
- 1級:上記計算結果の1.25倍+配偶者加算あり+国民年金分あり
- 2級:配偶者加算あり+国民年金分あり
- 3級:配偶者加算なし+国民年金分なし
となります。
障害等級
老齢年金には無くて、障害年金にのみ存在する項目として、『障害等級』という考え方があります。詳しい定義は色々とあるのですが、大雑把に説明すると
- 1級:介助なしにはひとりで生活することすら出来ないレベル
- 2級:なんとかひとりで生活はできるが働くことは出来ないレベル
- 3級:日常生活を過ごすことはできるが、働くことには支障があるレベル
とされています。比較的わかり易い例が指の障害ですが、
- 1級:両上肢のすべての指を欠くもの
- 2級:両上肢のおや指又はひとさし指又は中指を欠くもの
- 3級:一上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の三指以上を失ったもの
とされています。幸いなことに、両手とも指は揃っているので『想像』にしか過ぎませんが、指が全部無ければひとりで生活するのは大変そうだし、両手とも親指が無ければ生活は出来ても働くのは難しそうだし、指が3本もなければ働けるかもしれないけど、色々と支障がありそうですね。
実際に受給している人の理由を見えみると、こんな感じとなっております。
全体の比率でみると、精神障害が27.9%、知的障害が21.9%と上位を占めています。厚生年金と国民年金ではかなりカラーの差が出ていますね。一番顕著なのは知的障害はほぼすべてが国民年金での受給となっています。
国民年金は、受給事由となる障害の初診日が、20歳未満の時点であれば、未加入の状態でも受け取ることが出来ます。一方、厚生年金については(いわゆる)正社員として就職し、厚生年金を払っていないと受け取れません。その結果、知的障害など、生まれつきの障害を持っている人の厚生年金の受給率が低くなる結果となっています。
一方、厚生年金の一級での受給者を見てみると、脳血管疾患・視覚障害の比率が非常に高くなっています。また、腎疾患や循環器系の疾患の比率も2・3級で高く、これらの障害が、『働くサラリーマン』にとって無視できないリスクであることを示しているように見えます。
障害の種類と年金
障害の種別については、細かく分けると上記のような区別になるようですが、日本の制度においては、
- 身体障害者(1級/2級/3級/4級/5級/6級/7級 ※7級は計算上の区分)
- 精神障害者(1級/2級/3級)
- 知的障害者(A1/A2/B1/B2など、自治体によって異なる)
の3つの種類に分けられており、いわゆる『障害者手帳』も別々のフォーマットのものが支給されます。自治体によってデザインは違うのですが、東京都の場合、こんな感じ。二つ折りの手帳を見開きの状態にしたところの図です。
身体障害者向けの『身体障害者手帳』
精神障害者向けの『障害者手帳』
知的障害者向けの『愛の手帳』
だいたいどこの自治体も、色も含めてこんな感じです。一応、精神障害者向けの手帳に『精神』の2文字を入れなかったのは『配慮』らしいのですが、デザインを分けられたら、見る人が見れば一発だと思いますけどね。
年金の等級は、年金機構の審査になるため、手帳の等級と必ず一致するものでは有りません。また、年金の受給については所得制限は有りません。もっとも、精神障害であれば、『働けるということは、障害の度合いが低いということでは?』ということで、等級が下げられる可能性はあります。
年金・手帳の『等級』は、身体障害者については基本的に変わることが有りません。いきなり、指が生えてきたり、いきなり耳が聞こえるようになることは無いものとして考えられているからです。(だから佐村河内さんみたいな例が見逃されちゃうのですが・・・)
ただし、精神障害者については、病状が回復することによって『働けない状況』が変動する可能性があるため、2年に1度の更新が発生します。仕組み上仕方ないとはいえ、精神的に参っているひとが対象なので、なかなか大変なストレスですね・・・。
などの書籍がベストセラー・映画化もされるようになり、かなり身近な存在となってきた精神障害ですが、平成27年度版 内閣府障害者白書 によると我が国の精神障害者の総数は320万人。規模感でいうと、横浜市の人口と同じ位ですね。うち、精神障害での年金受給者が50万人ですので、年金を受給できているのは約15%ということになります。
なお、320万人の内訳は下記のようになるそうです。
(出典:精神疾患のデータ|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省)
年金の受給資格が発生する3級以上の障害者として認定されるためには、医師の診断書が必要になります。その際に、統一的な診断基準にもとづいたレベルが一定値以上でないと、年金の受給対象とはなりません。特にここ最近は、年金財政の逼迫のしわ寄せから、年金機構側の審査が厳格化しているという話もあり、より狭き門になりつつあるようです。
年金未納と免除
なお、障害年金に限った話ではありませんが、当然年金が『保険』である以上、払っている人しか受け取ることは出来ません。障害年金についは、受給事由となる障害について、初診を受けた日の段階で、収めるべき期間の2/3以上の納付がなければ、受給することが出来ません。
会社員であれば、給与の天引きとして勝手に徴収(会社が未払い出ないかぎり)されていますが、自営業者やフリーターは、自ら収める必要があります。しかし、ここ最近若干の改善が見られるものの、未納の人も多くいる現状です。
(出典:国民年金保険料、納付率は63.1% 3年連続の上昇 昨年度 - ニュース - アピタル(医療・健康))
他の理由もあるのかもしれませんが、払わない最大の理由は金額的な負担が大きいことですよね。月額1万5,590円の負担は、月々の手取り額が20万円に満たない人も多いなかでは大きな負担です。とはいえ、未納のままだと、万一障害を負ってしまったときに、年金を受け取れなくなってしまいます。
そこで覚えておいていただきたいのが、年金の免除申請です。
(出典:保険料を納めることが、経済的に難しいとき|日本年金機構)
所得が一定金額以下だと、年金は納付を免除扱いにすることが出来ます。免除された場合、老齢年金には支払った分の金額が加算されないものの、受給資格期間の算定には反映されます。
また、支払った期間に応じて国から出る補助金部分については加算される上、障害年金・遺族年金についてはペナルティ無しで全額納付したものと同じ扱いで反映されます。
なお、免除の基準は
- 全額免除:(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
- 4分の3免除:78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
- 2分の1免除:118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
- 4分の1免除:158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
となっております。年間158万円は、さすがにハードルが高い(低い?)かもしれませんね。
障害者福祉について思うこと
さて、つらつらと書いていってみましたが、障害者を巡る経済的環境はなかなか厳しいものがあります。フリーターが、少ない手取りの中から毎月1万5千円支払っていき、障害を負うようなことがあったとしても、受け取ることの出来る年金は一級でも月額8万円です。
年金は、就労状況とは無関係に受給できますが、実際には多くの障害者が働くことができないか、働けたとしても低い賃金となっております。
(出典:第1編 第1章 障害者の状況(基本的統計より)|平成25年度障害者白書(概要) - 内閣府)
その他に、『現金支給』として受け取ることのできるものは、国で行っている『特別障害者手当』があげられますが、こちらは相当重度の障害であっても月額2万6千円でしか有りません。(参考:特別障害者手当について|厚生労働省)
あわせても11万円には満たない金額ですので、ただでさえハンディキャップを持っている人が、これだけで生活していくのは実際には厳しいですよね。となると、家族の支援を受けるか、生活保護を受けるかということになってきます。家族の支援といっても、障害に対する生活支援を行うため、外で働くことが難しい状況もある中だと、結局家族全体で生活保護を受けざるを得なくなる場合も多くあります。
そもそも、我が国における社会保障制度の中で、障害者に対する支出は多く有りません。OECDのデータ(このへん)をもとに国際比較してみると、社会的支出は、対GDP比でOECDをちょこっと上回るくらいの比率となっております。
一方対象を、Incapacity relatedに絞ってみると、こんな感じ。
下から数えたほうが早い順位になります。ちなみに、老齢年金については、ばっちり高順位につけています。若干嫌味っぽくなりますが、グラフも載せてみましょう。なおデータはすべて、若干古くなりますが比較情報の多い2010年をベースにしております。
一生懸命少ないお給料の中から年金を払ったとしても、大した額が受け取れないのであれば、『万一のときは、もう生活保護でいっか』と思われてしまっても仕方がないような気がします。
ただ、生活保護というのは、審査の基準やらなにやらで非常に社会的なコストが重たい制度であり、可能な限り利用を避けたいものです。また、対象が『個人』ではなく『世帯』となります。以前問題にもなりましたが、『支えられる家族がいれば、その家族からの支援を得て、極力使うな』という建付けの制度になっておりますので、結局のところ責任が『家族』にいきます。
個人的な感想ですが、若者が結婚しなくなったり、子供を生まなくなったりする背景には、こういった障害者福祉の不足もあったりするんじゃないのかなあと思っています。つまり、義理の家族なども含めた『家族の範囲』が広がることにより、その支援の為、通常の生活が出来なくなるリスクを避けるために、家庭を持とうとしない若者も、一定数で存在するんじゃないのかなあ、と。
介護や支援に対する精神的・肉体的な負担はとにかくとして、金銭的な部分については、所得制限などを設けながらでもいいと思うので、もう少しなんとかならんのかなあと思う今日このごろです。
ではでは、今日はこの辺で。
※なお、本稿での『しょうがい』の字については、公的な表記に合わせてすべて『障害』とさせて頂きました。それ以上の理由もそれ以下の理由もございません。