ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

父親だけど育児休業とってみたら最高の時間だった

こんにちは、らくからちゃです。

早いもので、坊やがお家にやってきてから1ヶ月とちょっとが過ぎました。ミルクもオムツもお風呂も、もうすっかり慣れましたが、未だに慣れないのが

「えー!!半年間も育休取るんですんかー??凄いですねー、育児に積極的なんですねー、イクメンパパですねえ!!」

みたいに言われたときへの返し方です。

こちとら自分の息子のお世話してるだけですよ。仕事を続けながら同じことをしている人も居るのに、仕事を休んだ上に雇用保険からお金まで貰っているのに"イクメン"だなんて言われるのは、嬉しさを何周か通り越して、もしかして試されてるのか?と思うくらいです。

おそらく挨拶みないたもんだと思うので、あまり深く考えず「皆様に支えて貰いながら頑張ってますぅ」と定型文を返してますが、できればこの言葉は、嫌な顔せず笑顔で送り出してくれた職場の仲間や、育児休業のシステムを作ってくれた先人たちにでも言って欲しいところであります。

ただどうも育児休業を取得する父親というのは、トキワの森のピカチュウかサファリパークのハッピーくらいの希少動物の模様です。データで見てもこんな感じ。

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(取得:2019年度の育休取得率:女性は83%、男性は増加するもまだ7.48% | nippon.com)

直近で7.48%ですか。10人に1人も取得していない感じですね。ここ、試験に出る大事なところなのですが、

  1. 育児休業は男性(父親)でも取れます
  2. 配偶者(奥さん)が専業主婦でも取れます
  3. もっと言えば配偶者も育児休業取ってても取れます
  4. 育児休業期間中は雇用保険から給付金も支給されます

これ世界的に見てもメチャクチャ恵まれてるんですよね。ただ有給休暇と同じで、日数だけでいえば世界トップクラスなのに、実際の取得状況でみると世界ワーストクラスというお寒い状況です。

これだけ殆どの人が取らないのは、何か取らないだけの理由があるのかもしれない。そんな不安を抱えながらスタートした育児休業でしたが、現段階の感想を一言でいうと育児休業は多少ムリしてでも取ったほうが良いです。

実録!乳児育児24時

育休未取得の諸先輩方からは「男が育休なんて取ったところですることねえぞ」や、真逆に「仕事してたほうが絶対マシだと思うくらい辛そう」なんて有り難いご意見を頂戴いたしましたので結構身構えていましたが、いま思うのは「地上の楽園に居るのかと思うくらいの人生のボーナスステージじゃないか」ということです。

育児休業に入ってからこなしているミッションは、

  • ミルク
  • オムツ
  • お風呂

などに加えて、空いている時間で、夫婦のご飯を準備したり洗濯したり買い物に行ったりなどなどです。

うちは妻の飲んでる薬の都合等もあり、完ミ(粉ミルクオンリー)なので、ミルクはどちらでもあげることができます。

哺乳瓶を洗ったり、ミルクを準備する作業って案外面倒くさいのですが、哺乳瓶をまとめて洗うようにしたり、煮沸済みの水を事前に冷やしておきレンチンして粉ミルクを溶かすようにしたりする等、諸々工夫しておけば大したことではなくなりました。

坊やには、2時間から3時間おきにミルクをあげます。夜中は12時→3時→6時みたいな間隔になり、誰かが起きてお相手する必要があるので、基本は私(体調が悪かったり疲れてるときは妻)で対応しています。

飲み終わるのにそこそこ時間も掛かりますけど、ご機嫌なときは哺乳瓶ホルダーさんに御願いしておけば、別の作業を進めることも可能です。

ぶっちゃけ大変だったのはそれくらいですね。オムツやお風呂は、面倒くさいといえば面倒くさいですけど、何もそんな言うほどのことじゃなく、手洗い・歯磨きくらいの面倒くささ。

感覚的には、1.5人月の作業って感じでしょうか。一人でやれば150%働かなきゃ駄目だけど、2人だと75%ずつで余裕もある感じ。なので、することが無いわけでも、死ぬほど大変ってわけではない。

でもこれらの作業を1人でやろうとしたら、多分死にそうになると思いますよ。

だいたい妊娠・出産で体力を使い切った母親にやらせられる仕事じゃないです。うちも家内が産後1ヶ月ほど右腕が麻痺した状態になってしまい、ミルク・オムツ・お風呂は、私中心に対応しましたけど、テレワークができたとしても一人でできる作業量じゃなかったですね。

育児休業取得で得たもの失ったもの

それでも育児休業を取得しない父親がいるのって、失うものへの恐怖感があるんじゃないかなあと思うんですよね。以前下記に細かく書きましたが、育児休業中は会社からお賃金は支給されない代わりに雇用保険から

  • 0ヶ月〜6ヶ月:貰っていたお賃金の2/3
  • 6ヶ月〜12ヶ月:貰っていたお賃金の1/2

が支給されます。 

www.yutorism.jp

ポイントはこの金額が「非課税・社会保険料免除」ということです。 

皆さんのお給料からは、厚生年金・健康保険料を筆頭に諸々の社会保険料が天引きされているはずです。これだけで月収の14%くらいは持っていかれていきます。所得税・住民税の金額は、所得や各種控除等によって異なりますので一概に言えないため、ざっくりになりますが、社会保険料も含めた「天引き率」を整理すると

  • 年収400万円・・・21%
  • 年収500万円・・・22%
  • 年収600万円・・・23%

くらいになります。

www.yutorism.jp

額面から21〜23%減→33%減になるので、育休給付金で貰える手取金額は額面基準で1割ちょっと減ったくらいと考えれば良いでしょう。(ついでに言うと、年金は払わない分だけ将来貰える分は減ります)

あと大きいのが賞与(ボーナス)ですね。

育休給付金の「貰っていたお賃金」に、賞与は含まれません。育休中の賞与の扱いは、お勤めの会社の内規にもよると思いますが、弊社の場合は『育休中も賞与は支給されるが、育休期間分の日数は賞与に含めない』という形になります。つまり半年間育休を取得すると、半年間分のボーナスがなくなります。

私の場合、月額報酬がだいたい38万円(固定残業込)で、標準賞与が2.5ヶ月なので、

  • 月収の10% * 6ヶ月   ・・・22.8万円
  • 賞与の手取り額(80%)・・・76万円

となり、半年間育休を取得すると100万円ほど現金収入が無くなります。正直これは痛い金額です。ただ見方を変えると、この期間は一切労働をしなくとも雇用保険からお金が貰えます。その金額は

  • 月収の66% * 6ヶ月 ・・・ 150万円

になります。育児休業といっても、なにも24時間子供の面倒を観ているわけではないので、空いた時間はある程度自由に自分の時間を使うこともできます。

とはいえ、先立つものがないとどうにもならないご家庭も多いでしょう。住宅ローンなどの出費の状況や、出産を機に奥さんが仕事を辞めたりする場合、この規模で収入がなくなることは家計にとって致命的な人も少なくないと思います。

我が家も、「100万円なんて端金www」と言えるような裕福な世帯ではないので、迷いもありましたが、思い切って取得して良かったと思います。お金のことは、あとで幾らでもどうにでもできます。でもこの一番大事な時期に、母親と子供の側に居る機会は、一度失ったら一生取り戻すことはできません。

 世の中では里帰り出産なんていって、子供が産まれてから暫くの間は、父親は家に残して母親と子供は母方の実家で過ごすなんてスタイルもあるみたいなんですけど、こんなに可愛い時期の赤ちゃんと一緒に過ごせないなんて、父親虐待じゃないですか??

ただ空いた時間で、たっぷり読書や勉強したりするべ!って目論見はうまくいきませんでしたね。何せもう、赤ちゃんが可愛くて可愛くて、気がついたらついつい眺めてしまって無限に時間が溶けてました笑

父親が育児休業を取れない会社は無い

お金のことは分かったけど、まだ社内で父親が育児休業を取得した例が無かったり、取得したことによって悪い評価をされるのが心配。というひとも多いでしょう。

最初に確認しておきたいのは、育児休業は各会社が個別に用意する福利厚生じゃなくて、一定の条件を満たした会社員であれば、どんな会社にお勤めの人でも取ることができる労働者の権利です。

なので「アイツ男のくせに育児休業とかウチの会社で取れると思ってんのかよwww」みたいに言うのは「はあ?人手不足なのに有給休暇なんて出すわけないだろ」とか「残業代全額出したらやってけるワケねえじゃん」みたいに言うのと違い有りません。うん、滅びたほうがいいね。

とはいうものの、人が居なくなるのは通常のルーチンに組み込まれていないタスクです。引き継ぎをしてくれる相手や準備を整えてくれる人には、きちんと礼節を持って接することが大切です。

妻のお腹の中に赤ちゃんが居ることが分かったのは、去年の3月頃のことでした。

まだ身近な人に伝えるのは気が引けたので、まずは人事部の人に伝えたところ「早めに上長にも言っておいたほうが良いよ」と助言をいただき、上長とその後の対応を話すことにしました。上長も快く「You,取っちゃいなよ」と言って後押ししてくれたので、とりあえず6ヶ月間で取得する方向で調整を進めました。

弊社は、企業向けのシステムの開発・導入をしております。私は、導入のお手伝いと、その後の活用支援なんかをさせて頂いております。数え方にもよりますが、3〜4人ほどのチームでの仕事ですので、半年間をかけてちょっとずつタスクを引き継いでいきました。

蓋を開けてみると、恥ずかしながら「職務規定のどこにも書いてないけど、気がついたら半分趣味でやってたような仕事」がワシャワシャ出てきて、多方面にご迷惑をおかけしましたが、逆に仕事の見通しが非常に良くなりスッキリとしました。

社員が居なくなるイベントは他にもたくさんあります。いきなりケンカ別れに近い状態で辞められたり、不慮の事故で亡くなられたりすると、準備期間ゼロで人が居なくなってしまいます。

これは知り合いの某社取締殿の受け売りなんですけど、育児休業の引き継ぎは

  • 数ヶ月以上前から計画的に行うことができる
  • 相手も帰ってくる前提のため、ある程度丁寧
  • 最悪聞きそびれたことがあっても会話は可能

のため、組織を健全に保つために丁度よい流動性が生み出せて良いと。帰ってくるときのために席をどうコントロールするのかといった問題もありますが、某社取締役殿いわく「組織をスケールする丁度良いチャンスじゃん。経験者採用でひとり入ってくると思えばヨシ」だとかなんとか。

その意見の是非は組織の内容にもよりけりでしょうけども、人が居なくなるイベントとしても増えるイベントとしても、真っ当な運用ができているかどうかの試金石にはなるでしょう。

そうはいっても、まだ育休を取得する男性社員が少ない中だと、体制づくりが大変なのは事実でしょう。でもこれ、逆に言えばチャンスかもしれません。

これから優秀な人材であればあるほど、育児休業が取りやすい体制が整っているかどうかは職場選びに置いて重要なポイントになっていくでしょう。「育休をとってよかった、取らないとヤバかった」みたいな声がネットに出てくればなおのことです。

育児休業中の給付金は雇用保険から負担して貰えます。半年間取れば、数十万円以上のお金を会社負担なく従業員はゲットできます。マトモに育児休業が取れない会社が多いのであれば、真っ当に法律にかかれている通りの権利を従業員が行使できるだけのことがアピールポイントになり得るんですよね。

ただ人事部や経営サイドが前のめりになっとところで、育休を取得した社員が居ない職場だと「男の自分が育児休業を取得して周囲の評価がどうなるか心配」という人も多いでしょう。

ちょっと耳にした話をお伝えすると「大変だった記憶は暫くしたら消えた。彼が勇気を持って第一号になってくれた記録はずっと残る。すくなくとも後輩たちからは"神"として評価されている」とのことだそうですよ。

ではでは、今日はこのへんで。