ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

全国民が知っておくべき「育児休業給付金」の基礎知識

こんにちは、らくからちゃです。

先日、ウェブミーティングで部会を行っていたら、育児休業中の先輩が参加してくれました。久々にお顔を拝見すると、めっちゃヒゲを伸ばしていてびっくり。他の育児休業を取ったひともヒゲを伸ばしていたのですが、お客さんとの打ち合わせも無いので伸ばしやすいのかなあ?

さて世間では少子化の波が押し寄せているようですが、私の近辺では年代的にもベビーブームが来ています。

www3.nhk.or.jp

共働きが当たり前で、近くに頼れる親族もいなければ、保育園の空きもない。子供を産み育てるのが本当に厳しい時代ですが、父親の育児休業の取得者が続出という一筋の光が見えてくるようになりました。

わたしの身の回りでも同期が3ヶ月、先輩は9ヶ月、協力会社の社員はまるっと1年間ほどの育児休業を取得しました。

会社全体としても「父親の育児休業取得は当然の権利」といった機運も高まり始めており、私が入社した10年前の「22時過ぎてから本気出す」みたいなブラック労働が当たり前だった会社と本当に同じ会社かと目をこするレベルで空気が変わりつつあります。

ただ

「父親が何ヶ月も会社を休むだって?そりゃあ子供とはなるべく一緒に居てあげたいけど、働かないとお給料がもらえないしねえ」

そんな声があるのも事実。そこで大黒柱の育児休業取得中の収入の大きな支えとなるのが「育児休業給付金」です。

私も、なんとなく耳にしたことはあるけど、身の回りに受け取っているひとが居なかったため、なんだか良くわからない制度でした。でも少し調べてみただけでも気がづきました。

これ全国民が知っておくべきものだ。

と。

育児どころか交際相手も居ねえよ!!と思うひとも居るでしょう。でもパートナーができたあと、制度の存在すら知らずに子供を諦めたり、もっと楽に育児を出来るチャンスがあったのに投げ捨てたりしてしまうと、一生後悔することになります。

また自分自身に直接関係なくとも、部下をマネジメントしたり、プロジェクトのスケジュールをコントロールするにあたり、この制度は必修科目と言っても差し支えないでしょう。

ぶっちゃけiDeCoだのNISAだのは、知るのが1年遅れても大した差は生まれません。一方、この制度の知識の有無はライフプランニングに影響するので、一刻も早く頭に叩き込んでおくべきです。

御託はこのあたりにして、素人のわたしが調べた範囲のメモになりますが、「これくらいは抑えておくべき」と感じた内容をまとめておきます。

産休と育休の違い

まず似て非なる「産休」と「育休」の違いからおさらいしておきましょう。

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(出典:厚生労働省資料

どちらにも言える話なのですが、あくまで「休業」であって「休暇」ではありません。リフレッシュをしたり遊ぶためのものではなく、子供を育てるためのお休みです。職場の先輩は、最終出社日に出征兵士の如く見送られていきました笑

その期間は働かないことが労働者の権利として認められていますが、会社はお給料を払う義務もありません。乳飲み子を抱えてそんなご無体な・・・というわけで、その分のお金は、別途社会保険から出してもらう仕組みがあります。

産休(産前休業・産後休業)の仕組み

産休は、子供を産むためのお休みですので母親しか取得できません。細かい条件は諸々ありますが、出産予定日前6週間(1.5ヶ月)と出産後8週間(2ヶ月)はお休みできます。産休中に貰えるお金は、

  • 出産育児一時金
  • 出産手当金

の二種類があります。

出産育児一時金

なんとも不思議なルールですが、出産にかかる費用は、「病気でも怪我でもない」ということで医療保険の対象外になってしまいます。

それをカバーするのが"出産育児一時金"で、加入している健康保険組合から42万円ほど支給されます。国民健康保険でも同額がもらえます。例えば豪華な産院で入院費が高い場合など、諸々のケースはあるものの、これでほぼ出産の費用がまかなえるそうなので、安心ですね。

出産手当金

子供を産むのにお金がかからなかったとしても、会社で働けない期間の収入が途切れると大変です。

そこで、期間でお給料を受け取れなかった分は、"出産手当金"として、健康保険組合が休んだ期間、お給料の2/3程度を払ってくれます。なおこの制度は「勤め人」向けのものなので、国保のひとにはありません。

基準となる金額は、過去12ヶ月間(4〜6月ではなく)の標準報酬月額を基準に決めるようですが、

  1. 基本給
  2. 各種手当(住宅手当・役職手当など)
  3. 残業代
  4. 定期代

が含まれますが「賞与」はカウントにはいりません。

2/3とは少ないなあと思われるかもしれませんが、このお金は非課税で各種社会保険もかかりません。だいたいのひとが給料から2割くらいは引かれている天引きが無い分、手取りではいつもよりほんのり少なめくらいですね。

なおこうした手当は、加入している健康保険組合によって付加給付が貰えるケースがあります。

例えば出産手当金はトヨタ自動車健保組合だとこう。

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(画像引用:妊娠・出産した時|トヨタ自動車健康保険組合

例えば出産育児一時金はソニー健康保険組合だとこう。

 

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(画像引用:出産したとき | 健保の給付 | ソニー健康保険組合

大企業だと手厚い負荷給付がついていたりするので、いくら貰えるのかは、健康保険組合にてご確認ください。

育休(育児休業)の仕組み

一方で育休は、子供を育てるためのお休みですので父親も母親も取得できます。取得できるひとは、

  1. 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
  2. 子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと

といった感じで、産休よりも厳し目にはなりますが、要件さえ満たせば、いわゆる「非正規雇用」であってもOKです。

また取得できる期間がポイントになります。

  • 原則 :子供が1歳になるまで
  • 例外①:子供が1歳になる時点で保育園に入れない場合は1歳半まで
  • 例外②:子供が1歳半になっても保育園に入れない場合は2歳まで
  • プラス:父母ともに(一時的にでも)育休をとる場合は、1歳2ヶ月まで

となります。

一歳になるまでは無条件で取れるが、それ以上は保育園の空き次第、って感じですね。別に、パパとママふたりともとってもOKですし、ママが専業主婦でも問題ありません(これは割と最近緩和されたらしい)。

なおここ最近、父親の育休取得率向上を目的に、「パパ休暇」「パパ・ママ育休プラス」なる制度も追加されました。

パパ休暇

まずはパパ休暇(休業じゃなくてよいのか・・・)ですが、これは産後8週間のうちに育休を取った父親が、その後自由に育休を取ることが出来る仕組みですね。

初めての子供だし、とりあえず2週間くらいは休んでみようと思うけど、その後どうなるか分からない・・・。とはいえいきなり6ヶ月も休むのは不安だし・・・。

なんて人も、この制度を利用すれば安心です。

パパ・ママ育休プラス

つぎにパパ・ママ育休プラスですが、これは通常1年間の育休原則期間が、父母ともに育休を取ると1年2ヶ月まで延長されるという仕組みです。

これも「とりま父親もとっとけ!」というムーブメントを起こすための優遇措置ですね。

細かい取得パターンは下記がわかりやすいかな。

育児休業給付金はいくら貰えるのか

育児休業給付金は、直近6ヶ月間のお給料をベースに計算します。対象は出産手当金と同じで、残業&定期代はあり・ボーナスはなしですね。ちなみに、

  • 上限:449,700円
  • 下限:74,400円

となります。残業代込でもこれだけ行く人はあんまり居ないかな?

で、そのベースとなる金額を基準に

  • 6ヶ月間:67%(2/3)
  • それ以降:50%(1/2)

が雇用保険から支給されます。こちらも非課税&雇用保険除外になるので、数字よりは貰える額は大きい感じですね。豆知識として、ボーナス分の社会保険料もセットで免除になるので、ボーナス月にタイミングを合わせるとグッドだとか。

この6ヶ月間というのは「通算」になるため、①産後すぐに3ヶ月取得、そのあと3ヶ月働き、②更に6ヶ月また取得といったケースだと、①の期間は67%、②の期間の前半は67%で後半は50%といった塩梅になります(ややこしいね!)図にするとこう?

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またずーっと家に居ても気が滅入っちゃうし、どうしてもその人しかできない仕事があるので、ちょっとで良いから働いてくれ!という場合、

  • 就業日数が月10日以下
  • 就業時間が月80時間以下

のどちらかの条件を満たす必要があります。

で、働くならタダ働きは嫌ですよね?笑。でも育児休業給付金とお給料のどっちも貰ってしまうと贅沢すぎますな。そこで給料と育休給付金の合算が80%を越えた分は給付金が減額されます。

つまり、

  • 6ヶ月間:80%-67%=13%
  • それ以降:80%-50%=30%

を越えるお給料は貰い損になります。結構厳しいですね。。。なおこの67%という支給率は、80%に増やすことが検討されています。

www.sankeibiz.jp

少子化対策に向けて、いま色んな制度がより使いやすいように手が入れられつつあります。ですので、日々情報はアップデートしていく必要があります。

重要なのは細かなルールを覚えることより「自分や自分の親たちとは時代が違う」ことをしっかり認識することなのかもしれません。

ぶっちゃけ育休って取るべきなの?

制度の話はこのへんにしておいて、もうちょっとリアルな話をしましょう。ぶっちゃけ育休って取るべきなの?ってところですね。

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(出典:図12 専業主婦世帯と共働き世帯|早わかり グラフでみる長期労働統計|労働政策研究・研修機構(JILPT)

共働き世帯の数が、専業主婦世帯の数を上回ったのはもう随分も前の話で、いまや2倍以上の差をつけています。

これは子育てのために、両親のどちらかが休みを取らなければならない状態であることを意味するのと同時に、もう一つ付け加えると「祖母になるひとの就業率」も上昇していることを意味します。

つまり困ったときに「実家の母親」を頼ることも難易度が上がっているんですよね。こうした状況下で、母親へのプレッシャーは更に高まっています。またワーク・ライフ・バランスが大切にされる現代において、パパの育児休業取得を求める声は非常に強くなっています。

また政府「2020年までに 男性の育児休業取得率 13%」を目標に掲げており、今後取得率の公表の義務化の流れもあります。人事部門としても、採用活動でのアピールポイントにもなるため、可能な限り取得して欲しいという流れができつつあります。

そして重要なポイントは育児休業の取得は「認めてもらうもの」ではなくと「労働者の権利」です。条件さえ満たしていれば、会社は取得を拒否できません。しっかり法律にも書いてあります。

第六条 事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

とはいえ、一昔前であれば「何ヶ月も休んだら居場所がなくなる」会社は多かったでしょう。

でもこれだけ変化が激しい時代ですと、いずれにせよ常に新しい仕事を覚えねばならないんです。必要なのは、タスク管理やコミュニケーションなど、陳腐化しない根本的なビジネススキルなんですよね。

またビジネスの環境の変化に柔軟に求められる時代において、半年も先の予定の調整ができないようじゃ管理者失格です。

ぶっちゃけると、

  1. 働かなくてもお金もらえる育休取らないのはアホ
  2. 半年前からわかっていて調整できない上司はクズ
  3. 半年休んだ程度で途絶えるようなキャリアはゴミ

なんて価値観への変容を強く感じます笑 もはや時代の空気は「新生児が居る父親を仕事に縛り付けるのは、企業によるDVであり児童虐待の一種」みたいな方向にどんどん向かいつつあります。

ただその一方で、そもそも育児休業給付金が受け取ることができないフリーランスのひとや、取得を言い出せない人、子供を授かれない体の人や結婚をしない予定のひとからすれば、納得感を得るのが難しい状況も広がってくるでしょう。

「こんなに優遇しても良いのか」というのも一つの意見でしょう。そうした意見を出して貰い、多くの人に納得感のある「新しい子育て様式」を築くためにも、広く国民に周知されるべき事項じゃないのかなあと思う次第であります。

 ではでは、今日はこのへんで。