ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

ふるさと納税でポイント還元は流石にアカンのとちゃうの

こんにちは、らくからちゃです。

今年も無事に業務終了しましたが、気温が下がらないせいで、あまり年の瀬という感じがしませんな。しかし至るところで駆け込み需要を狙った(?)ふるさと納税のCMで一年の終わりを感じております。

返礼品目的のふるさと納税は、居住自治体の財政を悪化させるだけでなく、国全体の税収を押し下げ、かつ住民税を多く払っている高所得層ほど総額でリターンが多くなる点から、関わらないことに決めております。

www.yutorism.jp

とはいえCMなんかは勝手に目に入ってしまうわけで、最近はこういう宣伝文句を目にすることが増えた気がします。

ふるさと納税の最新レギュレーション

寄附とは対価を求めない金銭の贈与であり、返礼品とは?と常々疑問には思うわけですが、総務省の方からはレギュレーションが設定されています。

最新のルールでは

  1. 返礼品の(自治体の)取得原価は寄付額の3割以下にすべし
  2. ふるさと納税にかかる経費は返礼品も含めて5割以下にすべし
  3. 返礼品は地場産品にし電子機器は(なるべく)やめよう。ギフト券は駄目

とかなんとかあるそうな。

ちなみに2023年10月から「経費」に含まれる範囲が厳格化・追加されたようで

今までの項目

  • 返礼品の調達費用
  • 配送料
  • 広報費用
  • 寄附金受領証の発行
  • 追加項目

発送費用

  • ワンストップ特例事務の費用
  • その他の付随費用
  • 仲介サイト事業者への手数料も全て経費対象

になるんだとか。

(参考:2023年10月改訂!ふるさと納税の制度の魅力と改訂内容を解説!【クレジットカードのことならCredictionary】

前々から、事後的に発生する経費については含まれてないものも多いんじゃね、的な話もありましたけど「仲介サイト事業者への手数料」は含まれてなかったの?マジ?

それはさておきCMで流している「ふるさと納税でポイントゲットしよう!」みたいなものの原資は、自治体が直接負担している"返礼品"ではなく仲介事業者への"経費"の中から出てるんでしょうね。

どう考えても、地場産品じゃないですし散々怒られたギフト券そのものですし。

ところでいま、ふるさと納税の経費ってどんな塩梅なんでしょ。

ふるさと納税のお金の流れ

国全体でのふるさと納税のお金の流れについて、やや古いデータですが2021年のデータをもとに、ニッセイ基礎研究所がレポートを作っていたので眺めてみましょう。

www.nli-research.co.jp

中でも興味深いのがこの表です。

【図表2】 ふるさと納税の資金の流れ

ふるさと納税により国・居住自治体は税収が流出することになり、寄付先では税収が増える。合算で2834億円のマイナス。

事業者全体では3851億円受け取って、2267億円分の返礼品を寄付者に送っている。差額は1584億円。一方、寄付者は返礼品8302億円払って、各種税控除が7286億円でこの段階では赤字ですが、返礼品の2267億円を加えると1250億円の差益となります。

返礼品で受け取った額より各種事業者のほうがお金を受け取ってる計算になります。

自治体が払った金額ベースなので「利益」ではなく「売上」ベースでしょうけど、我々は、ふるさと納税なる仕組みのために国全体の総税収を減らした上、その金額の半分以上を各種事業者に落としていることは覚えておくべきでしょう。

またこの数字の中には今まで入ってなかった経費も加えると、もっと状況は悲惨なことになりそうですな。

ふるさと納税でポイント還元は流石にアカンのとちゃうの

しかし「ポイント還元」は、関係者にとっては非常に都合が良さそうですね。

宮崎県都農町が、格安のお肉を返礼品にしてみたところ申込みが殺到し、困ったため原価無視で代替品をかき集めた結果3割ルールに触れてレッドカードを貰った事案がありました。

www.asahi.com

また先日の高島屋のケーキみたいなことがあれば、自治体全体の評判を下げる危険もある。だったら返礼品なんてやめて、その分、事業者に経費上乗せしてポイント配って貰ったほうが、自治体担当者としては大変ストレスが減るでしょう。

また受け取る寄付者の側としても、冷蔵庫を専有して食べ切れるかわからない農産品が届くよりは、普段の買い物に使えるポイントを配って貰ったほうがナンボかマシです。

加えて事業者側としても、余計なアレコレを考えることなく、自分の運営する「経済圏」の中にお金が落ちてそこでも手数料が取れるなら、一粒で二度美味しい。

当事者の中では、三方よしに見えるんですが、さてそれで良いんでしょうかね。

返礼品で釣って集めた寄附金に頼るようなやり方はしないほうが良いのは言うまでもないわけですが、それでも都市から地方にお金が動き、返礼品で産業振興ができて、普段は手に取らないような商品が売れるのは、一億歩譲って価値はあると思うんすよ。

ところがそれがポイントで回るようになれば、流出した税収は日常の生活費をカバーするのに使われ、運営にかかる経費は大手事業者に吸い上げられる。どうせこんなことになるだろうなーとは前々から思っていましたけど、なんか最近より悪化してません?

www.yutorism.jp

Amazonギフト券で怒られが出てたことは、まだ皆さんお忘れではないと思いますが、「返礼品としては渡してなくて、事業者に渡した経費から勝手に出てるだけ」なんて、パチンコ屋みたいな理論になってるとしたら、それどうなんやと思うわけです。

個人的には「返礼品」なるものをサッサと辞めさせたほうが良い気がしますが、少なくとも、このあたりだけはもっと先に締め上げておいても良いんでねえのと思う次第です。

ではでは、今日はこのへんで。