ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

オータニサンの10年報酬先送りは「節税」なんじゃないのという話

こんにちは、らくからちゃです。

出勤前に、テレビでワイドショーを眺めていると、もうオータニサン一色ですね。

いやあしかし10年で7億ドル、年間100億円近くとは中々夢のある金額ですな。しかしその金額以上に「お支払いは10年後で」という前代未聞の契約内容にも注目が集まっているようで。

なんでもメジャーリーグにはお金の力でぶん殴ることを避けるために、選手の年俸合計額が一定金額を超えるとリーグに納付しなきゃならない「ぜいたく税」なる仕組みがあるようです。

あと払いにすることでそれを回避し、有力選手をしっかり集め、なんとしても優勝をつかみ取りたいオータニサンのファインプレー!みたいなコメントもありましたが、ただこれシンプルに国や州に納める税金を節約するための方法論な気がするんすよ。

オータニサンはいくら税金を払うのか

10年あと払いと聞いて、まず心配したのが「オータニサン、税金払えるのかな?」ってとこ。

アメリカという国では、所得にかかる税率は住んでいる場所ごとに違って、税率が高いことで有名なカリフォルニア州だと、連邦税37%+州税13%で50%持っていかれるそうな。

(出典:Tax Foundation)

じゃあこれ報酬を受取るタイミングでそもそも州所得税の無いテキサスや、なんなら所得税の概念の無い国に移住したらどーなんの?

と思ってたら、id:sds-page さんが面白いページを紹介してくれてました。

www.souzoku-zei.jp

ざっくり言うと

  • 州所得税の無い州に移住→連邦税37%
  • 所得税が無い国に移住→連邦税30%

になるそうな。

一応そういったことを防ぐために、移住した後の元住民から税金を取り立てる法律もあるみたいだけど、それを禁止する連邦法の範囲にもキッチリ収まるんだとか。

But the details of Ohtani’s contract that are publicly known appear to fit nicely within the confines of a federal law that specifically bans states from taxing the retirement incomes of former residents, said Kirk Stark, a law professor at UCLA who specializes in tax law and co-authored a textbook on state and local taxes.

That law, Stark says, applies to deferred compensation arrangements as long as the income is received in substantially equal payments over a period of not less than 10 years. That scenario seems to apply to Ohtani’s contract, meaning he could potentially avoid paying California income taxes were he to live outside of the state once his playing career ends.

Shohei Ohtani’s contract with LA Dodgers could include bonus | AP News

いやあ、よう考え取りますなあ。

金利不要も方便だったりして

またこれだけ長期の支払い延期なのにオータニサンは利息を貰わないそうで、会見の中で、そこも強調していたように聞こえました。

例えばイチローさんは、後払い分に5.5%の利息を設定したとかで、そういうことは一般的に行われている中、なかなか太っ腹な話です。で、いろんな人から割引現在価値について熱く語る記事が出てきたのも何個か読みました。

news.yahoo.co.jp

でもさ、オータニサンはとにかく、エージェントがそんなこと知らないわけないじゃん。

「金利手数料はジャパネットが負担します!!」って聞いたら、「なんて太っ腹な!!」「どれだけ損するのか分かってないのか!?」みたいに思います??それもコミコミの価格なんだろうなと思うのが普通じゃね?

じゃあなんでオータニサンは金利不要を強調する必要があったんだろう?

これは完全に私の想像ですけど、金利が発生しない=プレイ時点で債権が生じていないというのが、将来の節税を実現するために必要な要素だったりするんじゃねえでしょうか。

だって金利が生じてるってことは、カリフォルニア州内にいるうちに、権利を取得したってことになるっしょ。

会見で話す内容も、そのへんをしっかりエージェントにレクチャーされた結果としても、なんも疑問はないわけですよ。

私個人としては、色々と裏でプロがしっかりやってんだろうなあと思うし、別にセコいだとかズルいだとか全然思ったりしないワケですが、こうして別の角度から社会の仕組みを考えてみるのもまた、面白いなあと思う次第です。