ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

ふるさと脱税の対策に返礼品制限だけでは不十分な理由

こんにちは、らくからちゃです。

給与明細を改めてじっくりと眺めていると、天引きさえている諸々の項目の中でも、住民税の占める割合の大きさに驚かされます。色々と行政サービスを受けている身ですが、やっぱ出ていく金額を減らしたいよね、と思うのは皆様と全く同じです。でもいくら何でもこりゃやり過ぎでしょ。

静岡県小山町は、ふるさと納税の返礼品として、去年9月から先月にかけて、ネット通販大手「アマゾン」で使うことができるギフト券を提供し、今年度の寄付額が先月末の時点で248億8000万円に上りました。

寄付額は前年度の9倍で、今年度の町の当初予算およそ125億円の2倍にあたる額となっています。

総務省は、返礼品を贈る場合は寄付額の3割以下の地場産品にするよう通知していますが、ギフト券は寄付額の4割の額面のものが贈られていたということです。

アマゾンギフト券が返礼品 ふるさと納税249億円で総務相が批判 | NHKニュース

 ふるさと納税制度が、住民税を使ったオンラインショッピング化しており、実質的な脱税ツールに成り下がっている点については、すでに皆様ご承知の通りかと存じます。その問題点に関しては、過去記事にまとめたとおりです。

www.yutorism.jp

 この問題を解決するには、総務省が示しているような調達価格を3割以下に限るだの、地場産品に限定するだのだけでは不十分です。現状をざっとまとめるとこんな感じでしょうか。

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ふるさと納税という仕組みは、自分の住んでいる自治体とは異なる自治体に行った寄付金のうち、一定額が控除され戻ってくる仕組みです。一番大きな問題は、寄付を行うひとに対して返礼品を渡すと、国全体での地方税収は返礼品の調達原価分減少する点です。そして本来税金を多く払うべきひとほど多くの返礼品に与れるという点でも問題があります。

残念ながら、ふるさと納税を行っているひとの多くが、返礼品を目当てにしているのが実情でしょう。ですので、その内容を制限されてしまうと、返礼品を目当てととした寄付金を集めることは難しくなります。

じゃあこれで、めでたしめでたしなのかと思ってたら、向こうの方から別の声が聞こえてきましたね。

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返礼品の制限だけでは不十分な理由

年末から年始にかけてTVをつけると、ほぼいつでもと言って良いくらいの頻度でふるさと納税を支援するポータルサイトのCMが流れていました。代表的なのはこの2社でしょうか。

www.youtube.com

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「ふるさと納税した街をふるさとだと思えば良い」と言わせてみたりとか、荷物が届くのを待ち遠しくしているところを写してみたりとか、もはや「どこに寄付するかどかよりも何が貰えることしか興味のない人たち」のシーンを全面に出してくるところは、相当チャレンジングな内容です。

パチンコ屋のCMですら「街に笑顔を届ける仕事」とか、適当に言葉をごまかしているのに、もはや本音と建前を使い分けるつもりは無いようです。

大々的にCMまで出すということは、それなりに収益を得る手段があるということです。調べてみたら、さとふるの方は、寄付金額の1割を受け取る代わりに、返礼品の発送等を代行するビジネスモデルのようです。また直近では5億円もの純利益を計上しています。

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(出展:ふるさと納税サイト「さとふる」が4期目で黒字化 純利益が5億円を超える : 東京都立 戯言学園

返礼品の魅力がダウンし寄付金集めが難しくなるのであれば、今度はこうした代理店にお金を払って金額の維持を狙うことは想像に難くありません。食べログみたいにランキング上位に表示させたり、なんやかんやの名目を付けて「コンサルティング料」とやらを徴収したりするんでしょうね。

そうすると今度は、寄付をした人のポケットに落ちてた税収が、広告代理店のポケットに落ちるようになるという、なんともまあ地獄感あふれる世界の始まりです。

ふるさと脱税犯からはきっちり追徴課税して差し上げろ

ただ「返礼品の金額」であれば比較的明確に定義ができますが、経費全般も含めるとその線引は難しい。そう考えてみると、基本的には、ふるさと納税制度自体のスキームを根本的に見直す他対応策は無いように思うんですよね。

寄付金を集める自治体の立場としては、集めるために係るコストを上回る税収が期待できるなら、いくらコストが掛かっても構いません。そしてそのコストの内訳は、返礼品でも業者に渡す経費でも大きな違いはないのです。

でもコストが増えれば増えるほど、国内すべての地方自治体の財源の総額は減少します。新しい保育園を作ったり、小学校にクーラーをつけたり、児童相談所を作るのに使いたかったお金が失われてしまうのです。

そもそも、ふるさと納税の対象となる「寄附」とはなんでしょうか。

『寄附金とは、一方が相手方に対し、任意にしかも反対給付を伴わずして為す財産的給付をいう』主税局通牒 (昭和17年9月26日付主秘487号)

 事前に「後でこれやるよ」と言われたあとで行う金銭のやりとりが寄附なわけないじゃないじゃん。そんなこと小学生でも分かるでしょうに。それより噴飯物なのが、国税庁がキッチリと「ふるさと納税で受け取った返礼品は一時所得」と認めているところなんだよね。

www.nta.go.jp

てめー、ちゃんと申告しねえと追徴取るからな!とも息巻いているようですが、盗んだバイクで走り出した高校生を速度違反で取り締まるようなもんじゃね?いや、そこじゃないでしょ。同じことをNPO団体がやったら、重加算税まっしぐらなのに、何故地方自治体だと許されるのか。頭の悪いわたしには理解できかねます。

例えば贈与税について、110万円の枠内でも毎年定額なのは駄目とか、子供の口座にこっそり移すのも駄目とか、課税逃れ目的だから駄目みたいなイチャモンをつけてくるのに、何故ふるさと納税にはここまで甘いのか。やっぱりガースーのせいなのかな?

本音と建前という言葉は、本音はどうであれ建前の筋はきちんと通すという意味だと思っていたのですが、ここ最近は本音を通すために建前を歪めることが余りにも多すぎる気がするんですね。

全てが役人の胸先三寸で決まるのであれば、もはやこの国は法治国家とは言えません。

あるべき姿に戻すのであれば、公訴時効まで遡って「不正」と思われるものは、きっちり追徴課税を行い、建前を守るほうがええんとちゃうのかしら、と思わんでもないのですが、いかがでしょうか。

ではでは、今日はこのへんで。