こんにちは、らくからちゃです。
私事ではございますが、家を買いました。なんてことない手狭な集合住宅ですが、新しいお家だと、あれこれ便利で快適です。諸々保有のリスクはありますが、細かいこと抜きにしてお家が過ごしやすいことのメリットはやはり大きいもんですな。
リスクと言えば、住宅ローンを組んだ銀行から「保険いかがっすかー」と大量にご案内をご送付いただきました。
あれだけこってり「入院中はローン返済なし!!」「ガンと診断されたらローンはチャラ!!」とマシマシ目の保証をつけてきたのにまだ保険に入れたいのかと、やや呆れちゃいました。
さてさて保険といえば「リボ払い」「キャリア携帯」と並んで、リテラシー低めの人が騙されて入らされる情弱向け金融商品であって、いくらでも叩いて良いかの如き空気を感じます。
保険なんて入っちゃ駄目🙅
あんなもの保険会社を儲からせるだけ😥
期待値マイナスで平均すると損するよ😩
それよりも株式インデックスで運用すべき👍
的なことを取り敢えずツイートしておけば、なんか無難にわかってる感出せるかなー、みたいな風潮があるようなないような笑
んまー実際問題、誰がはいるんだこれみたいな保険商品が多いのは事実です。
弊社の場合、入院等で一ヶ月で2万円を超える医療費が生じた場合は保険組合が持ってくれます(この辺はお勤めの会社で異なります)。万が一のことがあっても、遺族年金もあれば住宅ローンの団信保険もありますので、正直必要性は感じにくい。
でもなんつーか、その説明で良いの?みたいに常々感じていることについてツラツラ書いてみたいと思います。
不幸の宝くじ
一口に保険といっても、生命保険、損害保険、医療保険他さまざまな商品があります。本稿では、一旦そこの種別は問わず、どんな保険でも共通の事項について、損害保険で考えてみましょうか。
例えば、こんな条件の保険があったとしましょう。
1年間のうちに、ある事故に遭う確率は1%である。事故に遭った場合、10万円がかかる。ある保険に加入すると、その負担額がゼロになる。その保険の保険料は2000円である。
分かりやすくシンプルなストーリーにしてみました笑
さてこの保険、入ったほうが得なのか、損なのか。「保険の損得計算」をするのによく使うのが、期待値という概念ですね。
1%の確率で発生する10万円の損失を回避できる保険には、100,000*0.01で1000円の価値があると考えることが出来る。
それなのに、わざわざ2000円も払って保険に入るのはどう考えても損!確率的に言えば、手元に残しておいて資産運用して増やしたほうがおトク!!はい、QED。証明完了!!
まあ保険会社も平均して1000円の支払いが発生するのに、それ未満の金額で引き受けちゃうと、従業員のお給料も必要ですし成り立ちませんわな。保険は「不幸の宝くじ」とも言われる所以です。
んーでも、この説明だとちょっと物足りない感じがするんですよね。
保険に入るのは損なのか
いやあ勿論「保険は安心料だ」なーんて言うつもりはありませんぜ。確かに"安心感"みたいなものも大事だと思いますが、それは一旦おいておいて、あくまで損か得かで考えてみたい。
損得の件では結論が出たでしょ!と言う前に、もう一度冷静に考えてみてもらいたいんですよね。
確かにおっしゃられる通り、使わないお金は寝かせておくべきではなく、運用してリターンを追求すべきです。じゃあ仮に、平均して5%のリターンが得られる運用手段があったとしましょうか。期待値としては、5000円の運用益が得られますね。
ここで確認したいポイントは「その運用は、保険に入らずに出来るんですか」というところです。
一般に、平均リターンの高い運用方法は、リスクも高い傾向にあります。今回のコロナショックでもガクンと下げましたが、株式インデックスなんてのは最高値から3割りくらい下落することは、割とよくあります。
もし1%の確率で事故がおきて、10万円の支払いが必要になったときに大暴落している可能性は無きにしも非ずです。保険に入らずに資産保有でリスクに備える場合、その運用方法も自ずとリスクの無いものとなります。
そう考えると、資産額に対して1%分のコストを払うと、5%の運用が取れるってことです。損して得を取れですね。ヒャッホウ!!
とまあ、これもまたそんな単純な話でも無い笑
例えば、複数種類のリスクに備える場合、それが同時に生じるものでなければ、それぞれ保険に入るのではなくひとつの保有資産でカバーできるのであれば、コストを圧縮できます。現金は何にでも使えますので。
また「運悪く価格が下落してるときに事故が起きた場合は、旅行の積立金からカバーするんじゃい」みたいな話もあるでしょう。その場合、比較対象は 保険のコスト vs 旅行に行けないリスクになります。事故が起これば旅行どこではないと考えると十分比較する意義のあるシナリオのような気がします。
意思決定会計のススメ
何にせよです。きっちり損得計算をしようと思ったら、「保険会社が儲かってるから損」なんて単純なものではなく、結構複雑な話なんですよね。そんなん回転寿司で「●●のネタは原価が高いから損」みたいなことをいうようなもんですよ。(そういや書いたなー)
いいですか。大事なのは「あなたが得をするのか損をするのか」です。
ある決定が儲かるのか損するのかといった計算は、簿記を勉強していると「意思決定会計」という分野で延々とやることになります。ポイントは、その決定によって影響する全ての範囲を洗い出すことです。
例えば「家を貸したら毎月10万円儲かるぜ!!」みたいな話は「おいおい、この家を貸しちゃったら俺はどこに住めば良いんだよ。」みたいな話とセットで考えなければ意味がありません。
経済学部に入った学生が一番はじめに教えられることの一つに、「大学に通う費用は学費だけでない」という話があります。つまり高卒で就職していたら得られたはずの賃金も含め、それを上回るメリットがあるかどうかで判断しなければなりません。
例えばこんな例ですね。
年会費1000円のクレジットカードを作ると、ある商業施設の商品が全部5%オフになる。さて幾ら以上買い物するのであればこのカードを作るべきか。
ここで1,000円÷5%=20,000円と計算するのは、ちょっと条件が足らないですよね。さてこれは、そのカードが無かった場合、どうやって決済するつもりだったのか、も含めて考えねばならない。
現金で払っていたのであればその式で良いのすが、また別のカードで払っていたのであれば、そのカードを利用する利益は別のカードとの差分になりますよねえ。仮に3%還元のカードを持っていたとすると、2%分しかアドバンテージがないので、50,000円以上利用しないと損であるといえるかもしれません。
メメント・モリ―死を忘れるなかれ
保険には、即時支払可能な安全資産の保有量を圧縮できる効果が期待できます。
あくまでマネーの観点から見るのであれば、ハイリスク・ハイリターンな運用手段に資産を振り分けられるということを意味しますし、もっとカジュアルに言えば「貯めずにお金を使える」ということも言えます。
起こってしまえば個人ではカバーできない事象への備えは当然ですが、仮に預貯金でカバーできるリスクであっても運用方法次第では、敢えてコストを払うことでリターンを最大化できる余地は無いとは言い切れません。
人生において最大の損失とは、使いきれなかった大量のお金を残して死ぬことです。
意図して家族に遺したい分はさておき、死ぬ時期がわかっていたら使い切っていたお金を遺して死ぬのは、それだけの額をドブに捨てるのと同義です。資産運用の究極の目的とは、できるだけ上手に死ぬまでにお金を使い切る計画を立てることなんじゃねえのかなあと思うんですよね。
健康に生きていると忘れがちですが、人間はいつか死にます。それも多くは自分の意図したタイミングと異なるときに。
古代ローマでは「メメント・モリ」(死を忘れるなかれ)なんて言葉が凱旋式で言われたらしいのですが、生きているうち楽しめるものは生きているうちに楽しんだほうが良いですね。
生命保険でも存在保険でも医療保険でも、保険という商品は上手に使えば加入することによって必要な備えの分を圧縮し、生きている間に使える金額を増やすことができます。
ただ漫然と「お金が沢山あったほうが何かと安心だから」と資産を積み増していくのではなく、必要に応じて上手に保険も活用しながら、生きたお金の使い方ができるほうが、マネーリテラシー高めなんじゃねえのかなーのんて思う今日このごろでございます。
ではでは、今日はこのへんで。