こんにちは、らくからちゃです。
どうやら今日は成人の日だそうですね。全国各地で、20歳の若者の貴重な時間をオッサン・オバハンたちが糞の役にも立たない話を聞かせて浪費するという、国家的損失が行われていると聞き及んでおります。
それだけじゃ、若い衆があまりにも不憫ですので、もしかしたら将来の役に立つかもしれないゼニの話でも書いてみたいと思います。
20歳になったら、いろんな権利と共に義務が与えられる。みたいな話は飽きるほど聞いてきたことでしょう。そんな抽象的なことを言われてもよく分からない!って人にも非常に具体的で分かりやすい義務がひとつ生じます。
年金です。
年金っていくら払うの?
二十歳になったら、学生も年金を払わなければなりません。国に支払う年金は、大雑把に
- 厚生年金
- 国民年金
の2種類に別れます。
1は会社員が払う年金で、お給料に応じて払う金額が決まり、払った金額で受け取れる金額が決まるものです。2はその他の人が払う年金で、お給料に関係なく決まった金額を払い、払った年数で受け取れる金額が決まります。(ちなみに1を払うと、2も自動的にセットでついてきます)
最近は、高校卒業後約7割の人は大学・専門学校などに進学するようですので、新成人の過半数は、国民年金を支払うことになりますね。君たちが払わなきゃいけない金額は年額(2020年)で
198,090円也
学生納付特例制度って何?
バイトのシフト詰め込んで、昼飯代を切り詰めても厳しいのに、年間20万円も払えるわけね―だろ!!というのも当然の話で、学生生活を営んでいたら払えるわけありません。
そういう学生のために「いま払わなくても良いんだよ」と用意されている制度が"学生納付特例制度"です。本制度を利用すると、一旦年金は払わなくて済みます。ただし支払そのものが無くなるわけではなく、"一旦保留"に近いイメージです。
整理するとこんな感じ。
区分 | 障害基礎年金 遺族基礎年金 |
老齢基礎年金 (受給資格期間) |
老齢基礎年金 (金額計算) |
---|---|---|---|
納付 | ◯ | ◯ | ◯ |
学生納付特例 | ◯ | ◯ | ☓ |
免除 | ◯ | ◯ | 一部 |
未納 | ☓ | ☓ | ☓ |
1.障害基礎年金・遺族基礎年金が受給できる
一番重要なポイントがココ。障害を負って働くことが出来なくなったときに、障害年金というお金を受け取ることが出来ます。もらえる金額は、2級で年間80万円くらい、1級で年間100万円くらいです。
障害年金は、障害が発生した日の段階で年金を払っていないと貰えません。
つまり学生納付特例制度を申し込んでおかないと、学生生活の中で運悪く障害を負ってしまった場合、そのままずーーーーっと年金を受取ることが出来ません。申し込みの手間を惜しんだ結果を一生後悔することになります。
これだけで学生納付特例制度を利用する十分な理由になります。
2.老齢年金受給資格期間にカウントされるけど金額は変わらない
お年寄りになったときにもらえる老齢年金は、最低10年間納めないと受け取れません。学生納付特例制度に加入していた期間は、払ってなくともこの10年のカウントに含めて貰えます。
ただし、入っていても受け取れる金額は未納の場合と同じです。
10年間のカウントは、余程例外的な働き方をしていない限り満たせるでしょうから、あまり大きなメリットではないかもですね。
3.追納可能な期間が10年間になる
年金の支払をバックレていた(未納)場合、あとになって「やっぱ払おう」(追納)と思っても、その期間は2年後までです。学生納付特例制度を利用して、後払いする場合は10年後まで期限が延長されます。
ただ遅らせたぶん、延滞料みたいなもの(たいした額ではありませんが)も発生するのでご注意ください。
追納そのものは義務ではありませんが、10年以内に払わなかった場合、将来の受け取れる年金が安くなりますので、どうするかは思案のしどころですね。
年金は払ったほうがおトク?
「未納」はあり得ない選択肢なので論外として、
- 学生のうちに頑張って納付する
- 10年間支払い猶予してもらう
- そのまま支払わない
の3つの選択肢のうち、どれが一番おトクなんでしょうか。特に、1のメリットが大きいなら早めに決断しなきゃいけませんよね。
「将来年金は本当にもらえるんだろうか?」という疑念は一旦脇に置いておくとして、学生のうちに払う年金を後で支払ったらどれくらい増えるものなのかをおさえておく必要があるでしょう。
大学を0浪0留で入学・卒業して、2年間分の年金を学生納付特例で猶予して貰ったケースを例に下記に整理しておきました。(数値は去年のものですが、ほとんど金額は変わらないのでそのまま使えると思います)
重要なポイントを抜粋すると
- 2年間分の年金は約78万円
- 払うと年金が年額3.9万円増える
- 約9.5年受給すれば元が取れる
- 65歳支給なら74.5歳まで生きれば得
といった計算になります。
ただこれは「今の金額」が前提です。また年金を払うと、そのお金は自分で資産運用して増やすことはできませんよね。株式などで運用した場合に得られるリターンとも比較しないと、本当に得か損かは分かりません。
鬼が笑い死ぬレベルの先の話ですが、思考実験と割り切って
- 年金は今後1%ずつ増えていく
- 運用した場合に得られるリターンは3%
と仮定して、30歳にまとめて2年分を納付する or 自分で運用するケースのどちらがおトクか計算してみましょう。すると65歳で支給が開始するとして、82歳が損か得かの分かれ目になります。
数字だけ聞くと、ちょっと微妙な感じですよね。日本人の平均寿命から考えれば、もっと長生きする可能性は高そうですが、みなさんが年金が貰える頃には支給開始の年齢も後ろ倒しにされているでしょう。またもらえる額もずっと減っているかもしれない。
仮に支払った額よりも受け取れた額が減ってしまったとしても、いわゆる「長生きのリスク」に備える必要もあります。そのあたりも鑑みてどうするかは決めても良いと思います。
未来のことは全く分かりませんが、ほぼ間違いなく言えるのは、学生のいま、頑張って自分で年金を払うのは損ってところでしょうか。
知らないと損する社会保険料控除の話
これも去年のデータで恐縮ですが、年金を後払いした場合に取られる延滞料に相当する金額がどれくらいなのかをまとめたのが下記の表です。
年度 | 支払う金額 | 当時の金額 | 追納加算額 | 倍率 |
---|---|---|---|---|
2009年分 | 15280 | 14660 | 620 | 104% |
2010年分 | 15540 | 15100 | 440 | 103% |
2011年分 | 15320 | 15020 | 300 | 102% |
2012年分 | 15170 | 14980 | 190 | 101% |
2013年分 | 15150 | 15040 | 110 | 101% |
2014年分 | 15300 | 15250 | 50 | 100% |
2015年分 | 15620 | 15590 | 30 | 100% |
2016年分 | 16280 | 16260 | 20 | 100% |
2017年分 | 16490 | 16490 | 0 | 100% |
2018年分 | 16340 | 16340 | 0 | 100% |
最長10年引き伸ばしたとしても、10年前時点での支払額と4%しか違いません。ざっくり年利0.4%相当ですな。これなら、その場で支払うよりも、ちょっと手堅い方法で運用に挑戦して、後で払っても十分にリターンのほうが上回るでしょう。
で、もうひとつ重要なのが「社会保険料控除」です。
学校を卒業して働き始めたら税金を納めなければなりません。税金は、給料から諸々の金額を差し引いたあとの課税所得に対してかかります。そして、差し引けるものの中には「年金」もあります。(社会保険料控除)
分かりやすくいうと「年金を払うと税金が減る」ってことです。年金を払うと、税金計算上の年収が下がります。その分だけ、節税になるって話です。じゃあどれくらい減るのかと言うと、年収+追納金額が以下の金額の場合、右側の割合で節税になります。(住民税含む)
- 130〜440万円:15%
- 440〜640万円:25%
- 640万円以上 :35%
※この先もあるのですが、割愛。
金額の計算は、下記記事が参考になるかと思います。
学生の皆様は、税金は払っていないケースがほとんどでしょう。ということは、今払っても税制メリットは受けられません。でも就職して30歳の時点で額面年収が562万円超えていたとしたら、年金78万円を追納すれば、その1/3超の27万円分が帰ってきます。
これもまた絶妙な金額感ですよね。10年後の自分の年収なんて分かりませんし、絶対ムリな金額でもなければ絶対イケそうな金額でもない。確実に節税したいならば、親に払ってもらうという選択肢もあります。(その後、どう返すかなどは家族でじっくり議論が必要そうですが)
所得税法にて
居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払つた場合又は給与から控除される場合には、その支払つた金額又はその控除される金額を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
所得税法74条
と定められていますので、同一世帯の子供の年金を負担した場合、親の社会保険控除に含めて計算することが出来ます。最近の世相を鑑みると、親の側もそれほどあるかどうか絶妙なラインですが、十分に所得が高く税金も支払われているのであれば、選択の余地はあります。
そういや子供の年金を負担した場合、贈与とかにならないの?と思ったので調べてみたのですが、ざっくり言うと「年金は食費や家賃と同じレベルの生活必需品費なんだから特に関係ない」って話みたいです。
将来相続の心配が必要なくらいにお金持ちなご家庭の人も、検討する価値はありそうですね。
知っておくと得するかもしれない付加保険料の話
また親が払う場合「付加保険料」をつけておくと更におトクかもしれません。
これは年金を月額400円余計に払えば、年間に貰える年金が200円*払った月数余計に貰えるオプションプランです。これ、真面目に国民年金を納めているひと向けのご褒美みたいな仕組みなので、基本的はかなりお得なしくみです。
つまりですね。2年間分24ヶ月分9,600円払うと、年間の年金が200*24ヶ月=4800円増えます。なんと2年で元が取れます。
ただ物価変動には対応していないので、いくら物価が上がろうとも受け取れる金額はまーったく変わりません。40年後の4800円に如何程の価値があるのかは、随分と怪しげですが、2018年の段階で過去40年間で消費者物価の上昇幅は4倍だそうで、同じくらいのペースで物価が動くとしても、実質8年で元が取れる計算です。
どうせ2年で1万円なのでオマケにつけてみるのも悪くないかもしれません。ただ付加年金は、学生納付特例を使った場合は利用できません。つまり、自分か親が払う場合にのみ使える仕組みです。
(出典:年金機構資料)
さて話が長くなりましたので、ここまでの話を整理してみると、こんな感じでしょうか。
新成人に考えてもらいたいお金の話
とまあ、新成人にはちょっと難しいところもあったかもしれませんが、大人として自分で自由にお金を使いたいのであれば、自分のお金については自分で責任を持たなければなりません。
書店にいけば、iDeCoだのNISAだの、色んなマネーと税金の本が並んでいますが、若い諸君が最初に学ぶべきお金の知識は「社会保険のシステム」です。
資産運用は、ある程度種銭がたまらないと始まりませんし、始めるタイミングも自由です。一方、社会保険は問答無用にあなたの生活に関わってきます。
それと同時に、あなたの親や将来のパートナーや子供たち、そして一緒に遊びに行っている友達、見ず知らずひとも含めたすべてのひとが、安心した生活ができるかどうかに関わってきます。
まずは、いまの制度について理解するのが第一歩です。でもこれからの日本の将来を背負っていく君たちには、そこから一歩進んで、いまの制度が取りこぼしている人はいないのか。問題点や不足点は無いのか。そこまで考えられる「大人」を目指してほしいなあと思うんですね。
そして、我々オッサン共も、若い子たちにきちんと背中を見せられるような大人にならなきゃなあと身を引き締めていかねばと思う次第であります。
ではでは、今日はこのへんで。