ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

最強のアクティブファンド『ジェイリバイブ』について考えてみる

この記事は割りと、アクティブファンドなんて聞いただけで虫酸が走る。体中にブツブツが出来るので止めてくれ!という人向けに書いたつもりなので、戻るボタンを押すのはもう少し後にして、おつきあい頂ければなあと思います。何か売りつけようなんて思っちゃいないからさ。

今年も新しく、夫婦で240万円分の非課税投資枠を頂戴したので、何を突っ込もうかなーと思案中です。だいたい投資信託やETFでほぼ埋める想定(BRKは買おうかなって思ってますけども)ですが、皆様ここ10年間でリターンが最も大きかった投資信託って何かご存知です?

直近10年間でリターンが最も大きかった投資信託

ちょうどそうしたデータをモーニングスター社が発表しています。こちらに生のデータがあるんですけど、募集停止になっているものを除きベスト5を拾ってみるとこんな感じ。

順位 名称等 ジャンル 10年年率リターン 10年合計リターン
1 ジェイリバイブ 国内小型バリュー 20.29% 527.31%
2 J-フロンティア 国内小型グロース 15.57% 367.80%
3 日本新興株オープン 国内小型グロース 15.20% 357.33%
4 JPMジャパン・テクノロジー・ファンド 国内小型グロース 14.93% 349.87%
5 スーパー小型株ポートフォリオ 国内小型グロース 14.49% 337.99%

(※2018年1月14日現在)

ジャンルとしては、圧倒的に『国内小型』が強い状況。10年・5年・3年リターンの上位20件で見ても、ほぼ全部が国内小型株アクティブファンドで独占されています。その中でも、頭一つ抜けて運用成績が良いのが"SBI 中小型割安成長株F ジェイリバイブ"。

評判は余り聞きませんが、国内最強のアクティブファンド、と評価しても差し支えない実績でしょう。

国内株式をターゲットにした投資信託としては、近頃『ひふみ投信』が大きな話題になりました。また最近、米国株へのインデックス投資が取り上げられることも多いので、その3者で比較してみましょう。*1

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 強い。

ひふみも確かに良い仕事してますけど、ジェイリバイブはそれを大幅に上回るリターンを叩き出しています。もう少し細かい期間でのリターンも比較するとこんな感じ。

ひふみプラス四半期リターン

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ジェイリバイブ四半期リターン

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まず年間レベルでは、ジェイリバイブはひふみプラスに負けなしです。四半期レベルでも、ジェイリバイブ15勝5負です。もちろん過去の運用実績は、将来のリターンを保証するものではありませんが、これだけの強さを見れば、どういう風にやってるんだろうなあって思いません?

ジェイリバイブの基本的な投資方針

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同ファンドの基本的な戦略は、一株あたりの利益は伸びている(EPS成長率が高い)のに、その割には株式市場からの利益の評価(PER)は低い企業を中心(つまりPEGレシオが低い)としたものです。

姉妹ファンドのジェイクールやジェイネクストは、どちらかというと成長性の高い企業がターゲットで、ジェイリバイブは安定性の高い企業がターゲットですね。狙いをつけた企業の株価下落局面で、株価水準が回復すれば、サッと短期で売り抜ける。逆張り投資を行うタイプのファンドです。

凄いなあと思うのが、

  1. 経営者への面談も含めたじっくり型の銘柄選定
  2. 目標水準に株価が達した場合さっくり型の銘柄選定

を両立してるところなんですよね。同ファンドは『エンジェルジャパン・アセットマネジメント』という投資助言会社から助言を受けて投資を行っていますが、同社では毎年1000件近く企業の経営者への面談を行っています。

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(出典:運用助言者に聞く、パフォーマンスの秘訣とは?)

じゃあ企業経営者とじっくり膝突き合わせて議論して、長期的な投資を行っていくのか?と言えばそうでもなく、妥当と考えられる水準に達すればさっくり売り抜ける機動力の高さも兼ね揃えています。

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(出典:長期運用で卓越した運用実績を誇るジェイリバイブ)

1年以上投資している銘柄(白い部分)はほとんどありません。食べごろをしっかりと見極め、美味しいところだけ掬っていく。そんな感じの運用ができているからこそ達成できた年率20%なんでしょうね。

ここが凄いよジェイリバイブ

継続して突出したリターンを出している点も勿論なのですが、それに加えて個人的に凄いなあと思うのが、ファンドマネージャーの顔が見えないところなんですよね。ここ最近話題にあがった国内の著名なアクティブファンドって、どこも看板となる名物社長みたいなひとがいるんですよね。

  1. ひふみ投信・・・藤野 英人
  2. さわかみ投信・・・澤上龍
  3. 鎌倉投信・・・鎌田恭幸

ま、どこまで実際の銘柄選定に関わってるかはわからないんですけど、あの人達が前面に出てくるのを見ると『このおじさんが倒れたり、耄碌しちゃったらどうなるんだろう・・・』という不安が拭えません。

一方、ジェイリバイブの舵取りをしているはこの人達なんですけどね。

http://www.sbiam.co.jp/img/angeljapan.jpg

セミナーをしたり、テレビに出たりするわけでもないので、まーったく知らない人ばっかりです。で、こういった感じで判断しているらしい。

また、判断が難しい成長企業ゆえに、面談にはチーム全員で参加しています。チーム4人は年代も分散され、それぞれの視点で経営者との面談に臨んでいます。さらに毎夕会議で議論を重ね、合議性で投資判断を行うことによって、精度を高めています。こうした積み重ねこそが、エンジェルジャパン最大の強みとなっています。

チーム運用の意義は投資判断の精度だけではありません。中長期的に徐々にメンバーが入れ替わることによって、特定個人に依存せずに高品質なポートフォリオを永続的に提供することが可能と考えています。

(出典:運用助言者に聞く、パフォーマンスの秘訣とは?)

なんかこっちのほうが安心感ない?あとね、表に出てアレコレ言わない代わりに、毎週週報を出してくれるんですよね。月次レポートは、割りとドコでも出してますけど、これは珍しい。

アクティブファンドの一番"気持ち悪い"ポイントって、見ず知らずのファンドマネージャーに自分の資産を託すところじゃないですか。だからといって、おっさんの顔や有り難いコメントが聞きたいわけじゃないんっすよね。

投資価値のあるアクティブファンドは存在するのか

ジェイリバイブには、口数買付けしか出来ずNISA購入できないジェイリバイブ(無印)と、その他のファンドと同様に口数買付けが出来るジェイリバイブ2があります。(あと年金専用版)

それだけ聞くと積立投資もし易い2でいいじゃんと思うのですが、定期的に分配金を出すため投資効率がやや悪い・・・。id:shunponさんのブログのまとめが大変わかりやすかったので、下表引用させて頂きます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shunpon/20170816/20170816005708.png

(出典:分配金が欲しい!僕はジェイリバイブ2(jreviveⅡ)への投資を開始する - 共働きサラリーマンの家計簿)

そして一番のポイントが、信託報酬。

  • 無印・・・1.836%
  • 2・・・1.8144%
  • DC・・・1.62%

高い。

ETFの信託報酬値下げ競争の後に聞いたら、気絶しそうな数字ですよね。幸い、購入時手数料はかからないものの、100万円分保有していたら、何もしなくとも年間1万8000円くらいの費用がかかります。

市場が十分効率的であれば、ベテランファンドマネージャーでもサルでも大差はない。高額な手数料を徴収する投資信託は、すべからく詐欺師集団である。よって貧乏人は大人しく、インデックスを買うべし。

といった考え方はかなり当たり前になってきましたが、過去のよい実績が今後も続く保証はない一方で、コストは固定で発生するわけっすよ。単純比較はできませんが、固定でコストが生じるということは、ちょっと見方を変えると、1.8%の金利で借金をして運用するのと似たような状況です。

フラット35の金利が1.5%を割り込むこのご時世において、それだけのリスクを取って運用する以上、インデックスのリターンを上回るのは最低限とし、それを大幅に上回るだけの実績を残してくれないと困ります。

中小型アクティブファンドの泣き所

でもまあ、不調だった2016年以外は常に30%を超えるリターンを上げてるので、今後もコストの10倍を上回る利益が生まれる仕組みがあるのならば、投資対象としても十分検討しても良いんでねえの?とは思います。

ジェイリバイブは、中小型の株式を対象としていますが、そこでの"勝機"について下記のように触れています。

ジャスダック市場では9割、マザーズ 市場では7割の会社で企業を分析する証券会社のアナリストが1人もついていません。多くの機関投資家は 時価総額の大きな企業を投資対象とするので、このような状況が生まれるわけです。これは昔から変わっておらず、そのため本来の企業価値が正しく評価されない状況が常に発生しています。この状況が続く限り、 徹底した調査による収益の獲得は可能と考えています。

(出典:『運用助言者に聞く、パフォーマンスの秘訣とは?

ジャスダックで9割、マザーズで7割の会社が、機関投資家は全く相手にしていない。その結果、中小型株では企業価値が正しく株価に織り込まれずミスジャッジされている銘柄が多い。これらに対して、適切に投資を行うことで収益の獲得が可能。って考えてるわけですね。

似たようなことは、スパークスも言っていたような気がします。

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(出典:価値発掘 | SPARX Asset Management)

たしかに市場でのプレイヤーの多い大型株に関しては、財務分析をして市場を超えるリターンを目指すのは至難の業でしょう。一方、プレイヤーの少ない小型株は、誰かがちょっと個人的な都合で換金売りしたりしただけでも、妥当な価格から離れることも多いので、αを得る機会も多そうに見られます。いわゆる"小型株効果"ですな。

www.yutorism.jp

ただ、それが3年後、5年後も続くのかなあというと、小型株アクティブファンドが抱えている内在的な課題があるような気がするんですよね。

1.純資産総額の増加による効率性の低下

まず自身の規模拡大による効率性の低下です。

『100万円で30%のリターンが見込める案件』『100万円で20%(以下同文)』『100万円で10%(以下同文)』があったとするじゃないですか。

ファンドマネージャーが、最大限効率的な運用を行っているとすれば、手許の資金が100万円だけならば、一番リターンの大きい30%の案件のみに投資しますよね。一方で、200万円の資金があれば30%と20%で平均25%。300万円の資金があれば平均20%のリターンになります。

アクティブファンドは、受け入れる資金の量が増えるほど効率性が低下するさだめにあります。特に、一番おいしい所を狙っていく小型株ファンドならばなおのこと、です。実際、過去に何個ものファンドが募集停止になってますしね。

インデックスファンドの場合、受入金額が増える=単位経費が下がり効率性が改善する なので何の問題もないのとは対照的ですね。

2.新規事業者の参入

またそんなに儲かるなら・・・と、別の新しいファンドが立ち上がるの可能性もあります。インデックスファンドなら経費率の競争になりますが、アクティブファンドの場合、経費率に加えて投資対象の奪い合いにもなる。さらに言えば、競争力の厳選のひとつでもある『経営者との面談の機会』も、限りあるリソースです。

まともに小型企業の経営者と面談を申し入れようとするひとが今後増えていけばどうなるのか?ぶっちゃけジェイリバイブの運用方針って、株価を長期的に下支えしようとしているワケではないので、経営者から見れば、話をする相手の優先度としてはそんな高そうに見えないんですよね。

ここ最近、中小型株への注目度が高まりつつあるなか、より資金力のある運用会社が似たような戦略を取ってきた場合、果たして同じ戦略が取れるのか?は疑問符が残ります。

3.市場効率性の改善

あとさらに、知識の乏しい個人投資家や、頭の悪いクズファンドが存在してくれることが、中小型株市場が『非効率』である前提です。しかし残念ファンドや個別株投資から、効率的なファンドに資金が移っていけば、存在基盤である非効率な市場が失われます。

楽観的に考えれば、市場が効率的になることによって、小型株市場の成長性も高まるといった見方もできますけど、いまの市場環境が将来に渡って続くのか?といわれるとやっぱりそこは疑問が残るポイントです。

インデックス投資を宗教にしてはいけないと思う

ここまで、色々書いてくると『で、結局これはオススメなのかどうなのか。ハッキリしろ』って怒られちゃいそうな気もするんですけど、その件に関しては『自分で考えてみてくれや』としか言いようがないんですよね。

よく『99%のアクティブファンドはゴミ』だっていいますよね。確かに、ファンドの本数で言えば、証券会社が、新商品!って言いたいがために作ったような謎のテーマファンドなんかゴロゴロあるわけですよ。例えば、こんな分析があるんですけどもね。

アクティブ運用をうたいながら、中身はほとんどインデックスと変わらないようなファンドって、実は沢山あるんですよね。それって、スーパーで買ってきたパスタを適当に茹でて出すのと同じようなもんじゃない?だったら家で茹でるっつーの、と。

そうした存在意義がいまいち分からないものまで母数にカウントした上で、本数ベースでみてると、ダメファンドだらけになっちゃうけれど、そうじゃないものを見ているとなかなかおもしろいものも見つかります。

あとインデックスに関しても『時価総額加重平均』が本当に正しいのか?を考えてみるのも面白いですね。S&P500対象銘柄を、単純平均で買うRSPというETFがあるのですが、2003年からの最長チャートで比較すると本家S&P500を上回るリターンを出しています。

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直近1年に絞ると結果が逆転したりするんですけどもね。まあでも、時価総額加重平均が、最も効率的なインデックス構成の方法なのか?は研究しても面白いかもしれませんね。

以前はわたしも

  1. 購入手数料はゼロ
  2. 分配金はなし(再投資)
  3. 信託報酬は可能な限り安め

を前提にファンド選びをしていました。同じようなルールで運用しているひとは、絶対に投資対象にならないファンドでしょう。

個人的には、自分で十分に組成ルールが理解できないインデックスに連動するファンドをおすすめしようとは思いませんけど、まあひとまず預金口座で寝かせるよりは・・・でとる選択肢としては、それで良いと思います。

ただ、アクティブファンドも検討するのであれば、特に『ひふみは別腹』とか言っている人は、だったらもっと色々見て回っても良いのでは??と思わんでもないですね。勿論、ひふみとジェイリバイブでは運用方針が全然違いますので、そこも含めて、です。

『証券会社や銀行がオススメするファンドは手数料をぼったくるだけなのでやめておけ』は、確かにその通りですよ。でも結局、著名人の意見をつまみ食い(それもキーフレーズだけ)しながら運用するのであれば、信じる神様が変わっただけじゃねーの?それ。

投資対象としてのおすすめはしませんが、いろいろと検討する際の比較対象としては、なかなか面白いんじゃないかなあと思いますので、よろしければ是非。

*1:米国株インデックスについては、S&P500に連動する『i-mizuho先進国インデックス(ヘッジ有)』で比較してみます。i-mizuhoのデータが取れる2013年9月から2017年12月末までを比較してみました。