こんにちは、らくからちゃです。
テレビのニュースなどを見ていると『ダウ平均先物が続落』とか『日経平均先物は急反発』など"先物"というキーワードをよく耳にしますが、怖い・ヤバそうという印象があるだけで、あんまり良くわかっていない気がします。
そういや、先物ってどんな仕組みなんだろう?ETFや投資信託と比べて、どれくらいのコストなんだろう?現物の指数との関係はどうなっているんだろう?と気になったので調べてみました。
先物取引とは
まずは先物取引ってどういうものなのか、おさらいしておきましょう。先物取引とは、簡単に言えば『将来、何かを買う or 売ることを約束する』契約のことです。
売買の対象となるもの(日経平均とかダウとか)を『原資産』と呼びます。まずは下図を御覧ください。
(出典:先物・オプション|SBI証券)
これは『将来9000円で買う』ことを約束したケースですね。
売ってもらえる日に原資産が11,000円になっていれば、買ったあとそのまますぐに売れば2,000円の利益が得られます。逆に、8,000円に下落していた場合、9,000円で買わなければいけないので1,000円の損です。
なお
- 将来買う(売ってもらう)約束・・・買い建て
- 将来売る(買ってもらう)約束・・・売り建て
になります。約束の日まで待って、実際にその金額で売って貰っても良いのですが、この契約自体も売り買いできます。それが先物取引ですね。
先物取引の最大のメリットは、原資産を買うための元手が要らないことです。
実際に9,000円の株を買おうと思えば、9,000円のお金が必要です。先物取引は、将来『買い取る・売り渡す約束』を売買しているだけですので、その元手が必要有りません。
ただ将来に損失を出した際、お金が払えない!となると証券会社が困ります。そこで取引金額に応じた保証金を預けるルールになっています。保証金は値下がり下分をカバーできる金額で良いので、原資産より少ない金額でもOKです。
つまり先物取引では、手持ちの資金の何倍もの額の資産を売買するのと同様の取引が出来ます。少ない元手でより大きな取引が出来るレバレッジ効果が働きます。
先物取引のコスト
じゃあ先物取引ってどれくらいのコストが掛かるの?ってところも見てみましょう。
SBI証券の場合、ダウ平均先物は
- 手数料 :1枚あたり900円(税込972円)
- 保証金 :1枚あたり6万8200円
- 取引単位:指数*100円(25000ドルなら250万円)
となります。原資産となるダウ平均の価格を25000ドルとして考えると、
- レバレッジ・・・約40倍
- 手数料率(片道)・・・約0.036%
となります。
原資産は米ドル建てですが、現物と異なり米ドルは不要です。
SBI証券で米株ETFを購入する場合、通常1ドル4銭の為替コスト、1ドル100円で計算すると、約0.04%が発生します。そう考えると、手数料は大差ありませんね。
先物取引は、仕組み上3ヶ月おきに訪れる決済日(限月)で清算されます。そのため長期保有が出来ず、その都度コストが生じますが、高レバレッジ&低コストでの取引が可能です。
で、レバレッジが掛けられるのに信用取引とは違って金利は掛からないんですよね。
そう考えると、すっごいお得な感じがするじゃないですか。
でも実はカラクリがあって『先物の価格そのものに配当も金利も理論的に組み込まれている』ため、金利も配当も発生しません。それは、このように表現されます。
(出典:理論価格(株式先物) 〜 インフォバンク マネー百科)
(´ε`;)ウーン…
文字だけだとよくわかりませんね。というわけで、この『先物の理論価格』について、ざっくりとご説明したいと思います。
先物の価格ってどうやって決まるの?
順を追って説明していきましょう。
現物価格からスタートする
将来、株を売買する約束をするとき、その時の金額はどのように決めるのが良いでしょうか?『将来株を買う約束』をするひとも『将来株を売る約束』をする人も、どちらもが納得できる金額でなければならない。
でも将来いくらになるのかなんて、タイムマシンでもない限り、誰にもわかりませんよね。どんなに考え込んでも仕方ないので『現在の株価』で『将来売買する』前提としてスタートします。
そもそも株価は、将来起こりうると想定される事象を組み込んだ上で決まります。
もし『将来値上がりする!』と見込んでいるひとが多ければ、現在の株価はそのぶん高くなります。一方『将来値下がりする!』と見込んでいる人が多ければ、現在の株価はそのぶん安くなります。
つまり現在の株価は、市場への参加者の将来への思惑が全て入り込んでいるので、まずはここをスタートラインとして考えます。
配当・金利の反映
次に、配当について考えてみましょう。
現在100円の株を3ヶ月後に売買するものとしましょう。この期間に発生する配当は、いま株を持っていない『将来買う側』は受け取ることが出来ず、株を持っている『将来売る側』が受け取ることになります。
これは『将来売る側』にとって、非常に有利な条件ですよね。
現在の株価は『配当も受け取れる』ことを前提として決まってます。その金額で将来売る約束が出来て、しかも配当の部分だけはちゃっかり受け取れる。配当だけタダで受け取れるようなもんです。
逆に『将来買う側』にとっては、非常に損な条件です。
配当付きで決まっている価格なのに、配当の部分は貰えなくなるとなるのは損ですよね。こんな金額で約束するくらいなら、信用取引(お金を借りて株を買う)をすれば良い。そうすると配当も貰えます。でも今度は『借金の利息』が発生しちゃいますよね。
先物取引の価格は、信用取引をした場合と同じような金額になるように落ち着きます。具体的に言うと、
- 受け取れなくなる配当を差し引く
- 借金をして買った場合の利息を加味する
ことで計算されます。
考えてみると『先物取引』と『信用取引』というのは、天秤の上に載っているような関係にあります。
将来、値上がりするかもしれない!でもお金が無い・・・となったときに
- 先物取引・・・将来買う約束をする
- 信用取引・・・お金を借りて買う
そのどちらかを選ぶことになります。
先物は、金利が掛からないが配当も受け取れない。信用であれば、配当が受け取れるが金利が掛かる。
先物が有利だ!となると買いが殺到して、先物価格が上がります。一方、信用が有利だ!となると売りが殺到して、先物価格が下がります。
そのため先物取引と信用取引は、つりあいが取れるような関係になるのです。
先物理論価格の計算
じゃあ実際に、この考え方に従って計算してみましょう。
1月 | 2月 | 3月 | |
---|---|---|---|
現物価格 | 100 | 100 | 100 |
配当 | 10 | 10 | 10 |
金利 | -8 | -8 | -8 |
先物価格 | 94 | 96 | 98 |
ちょっと極端な数値ですが、毎月配当金が10円、利息が8円掛かるとしましょう。
1月の段階では、将来受け取れる配当の総額は30円、支払うことになる利息の総額は24円ですので、
- 現物価格 100円 - 配当総額 30円 + 利息総額 24 = 先物価格 94円
が理論価格になります。
調整すべき金額が減っていきますので、2月になると96円、3月になると98円、決済日には利息も配当も関係なくなりますので、現物と先物は同じ金額となります。
信用取引は、あくまで借金をして現物を売買する仕組みですので、現物と同じ市場で取引を行います。一方、先物は当然原資産の価格の影響を受けますが、基本的には別物として売買します。
実際には、先物自体の需給の影響も受けますので、理論価格どおりにはなりませんが、先物の利息や配当ってどうなるの?を考えるにおいては参考になるでしょう。
先物取引の有利なポイント
掛からないと思ってた金利が掛かるのなら信用取引と同じじゃん。そう思うかもしれませんが、先物取引には信用取引にない大きな魅力があります。
それは『理論金利の安さ』です。
信用取引をする場合、3%近い金利が要求されます。また多くの証券会社では、担保の3倍までしか取引が出来ません。
それは、あなたが信用力の低い個人だからです。
一方、先物取引は多くの機関投資家が利用しています。彼らは、非常に有利な条件で資金調達が出来ますので、計算時に使われる理論金利もプロ向けの短期金利が前提となります。
先物取引にも金利が組み込まれますが、信用取引よりも有利な金利が利用できます。
それゆえに、先物取引は『個人投資家が最後に辿り着く金融商品』なんて言われ方をすることもあります。
もちろん高いレバレッジを掛けて取引をすることは、大きなリスクがあり、初心者にオススメできるものではありません。しかし、こうした世界や考え方を知っておくことは損にはならないと思います。
どこかで誰かのお役にたてば幸いです。
ではでは、今日はこのへんで。