ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

『女騎士、経理になる。』は簿記・会計の最強の副読書

こんにちは、らくからちゃです。

先月末は、全国各地にて日商簿記検定の2級・3級の試験が行われたようですね。当ブログは会計や簿記をテーマにした記事を扱っていることも多いので、今この記事を読んでいる方の中にも受験された方は多いのでは無いでしょうか?

わたしが簿記検定を受験したのはもう随分前の話になりますが、職業柄『簿記』や『会計』に関する話をする機会が多いので、入門書から専門書まで結構いろいろな『会計本』を読み漁ってきました。

そんな中、先日一冊の『マンガ』を読ませて頂きました。以前紹介させて頂いたスーパーはてなブロガーのRootprtさん原作の『女騎士、経理になる。』です。わたしは、本書を読み、激しく後悔しました。どうしてこれ、発売日に買わなかったんだろうと。

 なんか凄いリツイートされた(笑)。もう既に、3回位読みなおしてみて思ったのですが、本書は『教科書』というよりも『副読書』として、

  • 簿記の試験対策
  • 経理実務の理解
  • 会計学の学習

のために、かなりお勧めの一冊です。わたしも、会計に関する本はかれこれ100冊以上は読んで来ましたが、何も知らない簿記検定の受験者、実務に携わっているひと、学問として会計学を学んでみたい人まで、ここまでオールマイティに薦められる本もなかなか珍しいような気がします。

わたしが、拙いレビューを書くよりも『いいから黙って買えばよし』という感じもするのですが、せっかくですのでご紹介も書かせてください(๑•̀ㅂ•́)و✧

特殊スキル『簿記』を武器に、滅び行く世界を救え!!

 本書はTwitterで累計430万viewを獲得した(どういう計算なんやろ?)id:Rootport 氏の『女騎士、経理になる。』を漫画化したものになります。もともと、Rootport氏が、『ファンタジーの世界に会計や簿記がもしもあったら!?』というコンセプトでtwitter上に短文投稿していたシリーズが元ネタとなります。

ちょっとサブカルチャーよりの世界の話になりますが、SS(ショートストーリー)と呼ばれる、マンガやライトノベルを原作とした短文小説の世界があります。その中で、『女騎士』と『オーク』という組み合わせで物語が作られることが良くあるのですが、原作の一連のネタは、そのモチーフに沿って描かれたものです。とはいえ、特になんの前提知識も必要ありません

ファンタジーだからこそよく分かる

簿記や会計に関する物語といえば、『破綻しそうな会社を立て直す』とか『父親が急死していきなり会社を引き継ぐことになった』とか、あるような無いような、良くわからない設定で進められることが良くあります。

こういった本では、現実社会の枠組みの中で話を進める必要があるのですが、本書は『ファンタジー』ですので、そういった枠の中に収める必要性が全くございません

 しかし!ただ荒唐無稽な話を行っていくのかといえばさにあらず、真っ白なキャンバスの上に、ストーリー上、いま必要なものを、読者の理解できるペースで、しっかり丁寧に調理していく。それが本書の凄いところなのです。

コンセプトで言うと、ダンジョン飯に近いところはあるかもしれませんね。

[まとめ買い] ダンジョン飯
 

 異世界会計英雄譚というコンセプト

さて、すっかり話が横道に逸れてしまいましたが、本作のストーリーについてご紹介します。

120年前―― 新大陸を発見した「人間国」の人々は大船団を率いて植民を開始した。新天地は豊かな実りをもたらし、飢餓と貧困は過去のものになると思われた。…しかし。入植地の西方、山脈の向こうには魔族達が暮らし、独自の文化・社会を発展させていた。人間達は魔族の居住地域を「魔国」と名付け討伐軍を派兵した。こうして人間国と魔国との100年を越える戦争が始まったのである─―…。
そんな中、魔国でドジをし、オークに囚われることになった女騎士。オークから告げられた意外な言葉とは…!?

と、いうことで紹介文はここまでなのですが、もう少しだけ続きをお話させていただきましょう。捉えられた女騎士は、何故か『オークの会社』で『経理のお姉さん』として大量にやってくる受注と戦う日々を過ごすようになります。

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なんやかんやで、しっかり経理のお姉さんとして成長していく女騎士(笑)。そういや、差額が9で割れれば桁処理のミスの可能性があると、とかそんな小技ありましたねw

一方、この当時オークの国では高度に発達した『会計』の知識ですが、人間の国では怪しげな魔術かなんかの類として扱われていました。そんな謎のテクノロジー駆使し、途中で出会ったダークエルフと共に諸問題を解決していく。

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それが本作の大きな流れになります。

マンガという媒体の強み

Rootportさんの『女騎士、経理になる。』の原作は、同氏のブログ『デマこい』にて掲載されています。

完全に失礼を承知で申し上げますと、確かに面白いんです。面白いんですけれど、twitter短文投稿形式のまとめというのは、ちょっと読むのが途中からしんどくなってきてしまうんですよね。

それが、漫画化されることによって、かなりストーリーとしての頭に入ってくる度合いが高まったように思われます。例えば、このままでも確かに面白いのですが、

 こんな感じで画像になると、随分また変わってきますよねw

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見よ!圧倒的な情報量の差を!

特にこの『ファンタジー』『会計』という、抽象的な世界観は、マンガという媒体にのせることによって、さらに多くの人に読みやすくなったように思います。

最重要コンテンツは『女騎士でも屈しない会計講座』

漫画内にも、簿記や経理を理解するための重要なポイントが整理されてまとめられていますが、本書が『ただそれだけじゃない』のは、『女騎士でも屈しない会計講座』という話と話の間に挟まれる、作者補足です。

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ちゃんとした会計の教科書には載っていることも多いのですが、小説風の作品などで、ここまで掘り下げた内容を書いてあるものは見たことがありません。

ただ、実務寄りの技術を理解するだけでなく、その背景にある理論や歴史などの知識についてもカバーされているのは、なかなかお目にかかった事が無いですね。強いてあげれば、『女子大生会計士の事件簿シリーズ』くらいでしょうか。

女子大生会計士の事件簿〈DX.1〉ベンチャーの王子様 (角川文庫)

女子大生会計士の事件簿〈DX.1〉ベンチャーの王子様 (角川文庫)

 

初心者にもわかりやすく伝えるということ

さーて、本書ですが、これだけぎっしりつまって、お値段はたったの680円でございます。下記にAmazonのリンクをはらせて頂きますが、リンク先からかなりのページ数が試し読みできますので、まずはちょっと覗いて見てもらってからでも良いかもしれません。

女騎士、経理になる。  (1) (バーズコミックス)

女騎士、経理になる。 (1) (バーズコミックス)

 

 なお電子版ですと、更にお安く600円でございます。

女騎士、経理になる。 (1) 【電子限定カラー収録】 (バーズコミックス)

女騎士、経理になる。 (1) 【電子限定カラー収録】 (バーズコミックス)

 

前作の『失敗すれば~』は、ご紹介してアレなのですが、主張がわたしの基本的なスタンス(マクロな分析よりミクロな工夫が必要)と合わなかったことや、『ブログでも読めちゃうしなあ』というところから、正直言ってしまうと、全力でお勧めする気にはなれませんでした。ですが、本書は全力でお勧め出来ます

ひとつここは、らくからちゃに騙されたと思って、ご購入して頂ければ幸いです。払ったお金以上の価値はあると思います。

会計の『教科書』としては、以前まとめさせていただいた記事で紹介したものが相変わらずお勧めですが、あわせて本書も『副読書』として読んでいただければ、理解がより深まるかと思います。

さてわたしも、『初心者にもわかりやすく』ということに関しては、かなり努力と研究を重ねてきたつもりでございます。どうしたら、とっつきにくい世界がとっつきやすくなるのだろう?まずは、興味だけでも持って欲しい・・・。

その為には、内容をぎっしり詰めるよりも、『あそび』の部分を残さなきゃいけない。あまり、枝葉の説明に入ってしまうと、興味が持たれなくなる。かといって、過剰に端折ってしまうと、正しく伝わらずに本末転倒。また、本当に伝えたい部分を手を抜くわけにはいかない。

『初心者が知っておくべき知識』を並べただけの入門書を書くのは簡単だけれど、本当に『読んで良かった』とまで思わせるものは並大抵の努力では作れません。Rootport氏の『興味を持って貰いたい』その想いを痛切に感じずにはいられません

原作者あとがきから引用します。(本当は全文載せたい文章なんだけれど抜粋にさせてもらいます。)

ファンタジーと会計を組み合わせたネタが、偶然にもリツイートで回ってきた。それに触発されて、私も似たようなネタをいくつか投稿した。偶然にもバズり、偶然にも幻冬舎コミックス編集者の目に止まった。偶然にも私のスケジュールが空いていて、すぐに打ち合わせを組むことができた。数えきれないほどの『良い偶然』の上に、この一冊は成り立っている。

(中略)

この作品を通じて、読者の方に簿記・会計に興味を持って頂けたなら、原作者冥利につきる。この漫画との出会いが、あなたにとって『良い偶然』になることを祈っている。

ではでは、今日はこの辺で。

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