ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

失敗すれば即終了! 日本の若者がとるべき生存戦略 の感想を書いてみる 〜物語の無い世代の物語〜

こんにちは、らくからちゃです。

なんだか最近、noteやkindleで、自分の書いた文章で収入を得る人が増えてきましたね。この『ゆとりずむ』も広告収入という形でお小遣いを頂いてはおりますが、とてもとても売れるような物が書けるとは思えません。ただ、自分で書いた文章に値段をつけて売っているの人を見ると、凄いなあと思うとともに、『文章を売る』という遠い世界が、ずっと近づいて来たように思えます。

そんなこんなを考えていたところ、尊敬している人生のパイセンからこのようなメッセージを頂きました。

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うおおおお!こんな謎ブログに目を通して頂いているだけでも恐縮なのですが、先日上梓されたこちらの本をご送付いただけるとのこと。

失敗すれば即終了! 日本の若者がとるべき生存戦略

失敗すれば即終了! 日本の若者がとるべき生存戦略

 

 さて、Rootport氏のことをご存じない方も居らっしゃるかもしれませんので、簡単にご紹介致します。同氏は、政治や経済といった社会派ネタを中心としながらも、アニメや映画などの話題についても広く取り上げたブログを書かれております。

得意分野は、経理や会計。女騎士、経理になる。シリーズは、twitter等でも広くシェアされる大人気作となり、『Rootport、原作者になる。』となりました。 先日のわたしの調査結果によると、

  • はてな読者登録・・・676(71位)
  • feedly登録件数・・・4,399(3位)
  • 獲得ブックマーク総数・・・55,548(5位)

(数値は調査時点:読者登録数ランキング ・改 - ゆとりずむ)

いやー、バズりまくりですね。

えーっと、なんか気づいたこと有りません?ええ、芸風が『なんとかりずむ』ってブログにちょっと近いな〜と。そんなわけで、そういう意味で、氏は憧れのパイセンであり、参考にしたい師匠であり、そしていつか倒すべきライバルなんです(笑)。

さて、折角本を頂いたので、感想文のひとつでも書いてみたいなと思います。きっとここで、『超素晴らしい!絶対に買うべき!』とか書いたほうがよりお近づきになれるかもしれないし、レビュー依頼も行列ができるようになるかもしれません。が、やはり『目には目を、紙とインクには紙とインクを!』というわけで、読んで感じた率直な感想を辛口になるかもしれませんが、書いてみたいなあと思います。

書評

 本書の書き出しは、『虐待の横行した介護施設』の描写から始まる。少ない人数で、多くの高齢者を支えなければならなくなった現代、高齢者に対するケアも『それなり』になっていく。少子化と高齢化の進んだ先には、『まともな介護を受けられない老人』と『まともな環境で働けない若者』しか残らない。

統計データを見ると、世帯所得500万円が子供を作るかどうかの分水嶺となる。もし、少子化を食い止め、高齢化社会に対応しようとするのであれば、子育て世帯がこの境目を超えることができるかどうかが大きな分かれ目になる。

その方法は2つ。

  1. もっと熱心に賃上げを主張する。
  2. 女性の雇用拡大をすすめる。

本書は、この2つの議論を軸としながら、『日本の若者がとるべき生存戦略』について氏の過去の記事をまとめた内容となる。

第一章の『2050年、日本終了』では、我が国のおかれた看過できない現状について。第二章の『未来の仕事を考える』では、現代型の「働き方」の抱える問題点について。第三章の『結婚しない人の遺伝子』は、本書の中心議論となる「所得と出生数」の関係について。そして第四章の『ググレカスが世界を変える』では、本書のまとめてして、うつりゆく社会の中での『若者の生き方』について語られている。

さて、本書の最も中心となる議論は、第三章における『所得と出生数』の関係における、最適な子供の数に関する経済的分析である。あんまりこってり書きすぎてしまっても、『ネタバレ』になるし、どうしたものかなあと思っていた所、著者お手ずからほぼ全ての内容をご開陳されてしまった。

本論では、『経済的に豊かになった結果として少子化が進む』のではなく、『少子化の結果として経済的に豊かになる』ということを各種統計資料も用いながら示している。

出生率の改善で、こども一人あたりの投資量が増大する。その結果として、所得が改善する。出生率が改善したことで、子供を持つ人数を減らし、一人あたりの投資量がますます増える。多くの国でそういったサイクルが見られる。

しかし我が国では、若者に与えられる『育児に使える資源(資金・時間)』の量は限られており、しかも今後増える展望も無い。高度成長期においては、『明るい未来』があり、生涯で得られる『育児資源』増大への期待があった。だが、現代にはそれがない。明るい未来を語る『物語』が無いのだ。

結局、物語はひとりひとりが作るしか無い。本書では、無数の事実が述べられているが、巷の書店に多く並んでいる新書とはことなり、一貫した物語性がある。直接の関係性が無さそうな事項も、最後まで読み終えれば、ひとつなぎの物語となっていることに気が付かされる。

思ったこといろいろ

さて最後に、わたしの感想として、わたしの物語も付け加えたい。

本書では、比較的に経済を中心として議論が進み、出産や子育てを巡る環境についての議論が少なかったように思われる。また、具体的な解決策に繋がるような提案が必要だと感じた。そこで、過去の記事からわたしの考えてきたことをまとめてみたい。

女性の教育水準の向上自体は、氏が指摘するとおり、少子化の直接の原因ではないと思う。しかし、出産適齢期において、機会費用が増大することが経済的な負担につながっているのは間違いない。

そのことも含めると、高校⇛大学⇛社会人⇛出産というライフスタイルに固定されることにムリがあるんじゃないかと思う。そこは、ライフサイクルにあわせて、より自由な選択肢が取れるようにすべきだろう。

その方法として、大学教育をよりオンラインで受講できる仕掛け作りは必須だ。『リモートワークを進めてワークライフバランスの向上を!』と説く大学の講義が、未だ物理的な場所に縛られるのは、ちゃんちゃらおかしい。

また、500万円という水準を引き下げる努力も必要だろう。直接・間接のケアを社会的に行う仕組みも忘れてはいけないだろう。

そして、育児は母親だけのするものではない。『家族揃って晩ごはん』の実現は、個々の会社の努力に任すだけでなく、国としても力をかけていっても良いと思う。

社会全体を通して、『子育て』について、どう向かい合っていくのか?労働者が減るなか、働き方を変えない以上、社会の成長は見込めない。まずは、社会全体が若者に『育児資源』を与えることから逃げないことを考えなければならない。

まとめ

ざーっと書かせて頂きました。思い違い等があったら、大変申し訳ございません。先に謝っておきます。最後に、本書を読み終えて、ふと思ったのは『大学教授ってずるいなあ』ってこと。Rootportさんは、わたしの2つ上になられる方ですが、おそらく本書を働きながら執筆されたはずです。よくこれだけのものをと思う反面、大学教授が書いた文章は、もっとデータもオリジナル(お金払わないと手に入らない物)の物も多く、出典や引用も豊富です。

ただ逆に言えば、そういった分を埋めて合わせるほど、文章としての構成は素晴らしい本だと思いました。まー、こりゃあ俺には書けねーなーとは思いつつ、今度また別の記事を書く時に、(出典:失敗すれば即終了!日本の若者がとるべき生存戦略)ってつけた内容を書きたいなあと思う一冊でした。

最後になりましたが、らくからちゃは、日本のこれからについて関心を持っているすべての人に本書をお薦め致します。

ではでは、今日はこの辺で。

(1:49)