ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

参議院選挙の仕組みと役割と重要性についてまとめてみた

こんにちは、らくからちゃです。

通勤途中に、コンビニの前に並んだ新聞の表紙を見ていると『選挙』の文字が増えてきたような気がします。そういや次の選挙は、7月10日に行われる参議院選挙だそうですね。

思えば、わたしが生まれて初めて参加した選挙は、2007年の参議院選挙だったような気がします。しかし、その後の選挙は、仕事でヒィヒィ言っている間に、気がつけば終わっているものも有りました。

どうやら今年の選挙から18歳の若者にも投票権が与えられるようです。投票所に行ったら女子高生に会えるの!?やべぇ!!こりゃ若い連中だけに任せちゃおれん、模範を示さねば!なんて余計なことも考えてみたのですが、久々過ぎて『そもそも選挙ってなんだっけ?(´・ω・`)』状態になりつつあります。

インターネットで検索すると『学校で教えてくれない選挙の仕組み』なんていう『いや、忘れただけで習っただろ!』と総ツッコミが入るような資料もあります。

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(出典:学校では教えてくれない選挙のしくみ - Yahoo!きっず

ただ『仕組み』も大事だと思うのですが、その背景にある意味や役割については、案外ちゃんと勉強したことがないなあと思う次第です。そこで、色々と調べてみたり考えてみた内容について、覚え書きとして残させて頂きたいと思います。

※本稿は、あくまで個人の理解の範囲で書いた文書になります。各種法令や制度等について正確な情報が必要な方は、専門家にご確認頂きたく願います。

参議院とは何か?

さて次回の選挙は『参議院』の選挙となります。

参議院って、なんか地味ですよね〜。衆議院選挙は、その結果によって総理大臣が変わったりもしますが、参議院選挙はそういったこともない。たぶん、まじめに社会科を勉強しなかった人もそうでない人も、大半のひとはこういう認識だと思います。

衆議院>参議院

衆議院も参議院も、国会を構成する二院ですが、以下の重要な点で衆議院は参議院より強い権限を与えられています。

  1. 参議院で否決されても衆議院で2/3以上で再可決すれば法律になる(憲法59条)
  2. 予算案は参議院が否決しても衆議院の結果が優先(憲法60条)
  3. 条約(国と国との約束)は参議院が否決しても衆議院の結果が優先(憲法61条)
  4. 内閣総理大臣の指名は参議院が否決しても衆議院の結果が優先(憲法67条2項)

予算・条約・首相という3つの重要課題については、常に衆議院の結果が優先(両院協議会の後ですが)され、法案についても参議院で2/3以上で再可決すれば参議院の結果は覆すことが出来ます。

そのため、参議院なんてどうせあってもなくても同じようなもんでしょ?という考え方をする人すらいます。それが『カーボンコピー論』です。参議院の役割について、この本が中々しっかりまとまっていて面白かったので、引用いたします。

参議院とは何か 1947~2010 (中公叢書)

参議院とは何か 1947~2010 (中公叢書)

 

  日本国憲法は二院制を採用している。憲法の下で、一方の院である参議院の権限はもう一方の院である衆議院のそれよりも限られたものとなっている。この参議院が政治過程に及ぼす影響力については二つの見方が対立している。一つは参議院に大きな影響力があるとする「強い参議院」論である。もう一つは参議院に影響力は認めない「カーボンコピー」論である。

 とくに、カーボンコピー論はこれまで、参議院に対する有力な見方であった。カーボンコピー論とは、参議院が法案の修正をしたり、法案の成立を拒んだりすることが少なく「衆議院で採決された法案はそのまま参議院を通るもの」と期待できるので、参議院は政治過程で独自の影響力を発揮していないという見方である。

 この背景には、一九五六年十二月から一九八九年七月まで自民党が衆参両院で過半数議席を獲得していたことがあった。この時代、参議院での法案審議過程に注目する限り、自民党内閣が法案を成立させることに苦しむことはそれほどなかったのである。ところが、一九八九年七月の参議院選挙で自民党が大敗して以降、国会はたびたび「ねじれ」―与党が参議院で過半数議席を確保していないこと―の状態になる。「ねじれ」国会の下で、内閣はしばしば法案成立に悩まされることになる。

参議院とは何か 1947~2010 (中公叢書) P5-6

 本書でも述べられていますが、カーボンコピー論の一方で、『参議院は強い権力を持ちすぎていて、正常な国政運営に悪影響を与えかねない』という考え方もあります。それが『強い参議院論』です。

注意して聞かなければならないのが、『カーボンコピー論』も『強い参議院論』のいずれも、参議院の存在が目障りなひとからの視点で語られた意見です。それは誰か?

内閣総理大臣です。

参議院の役割

民主主義の原則は、ひとりに権力を集中させ過ぎないことだと言われています。我が国においてそれは、『立法』『行政』『司法』の3つの権限を分散させる『三権分立』の仕組みにおいて、それぞれをチェックしあう、という体制を取っている・・・。と、されています。

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権力分立 - Wikipedia

こういう図、どこかで見たことがあると思います。でも本当にそうかなあ?我が国では、議院内閣制の下、衆議院での与党の代表者が内閣総理大臣になることが原則です。基本的に『衆議院』と『内閣』は一心同体の存在です。となると、衆議院の与党は立法権も行政権も持った存在となってしまいます。

しかし、法律は衆議院の可決だけで作ることが出来るわけではありません。参議院での賛成も必要になる。そのため内閣=衆議院与党は、参議院の意向を無視して政治を行うことは出来ないんですね。

一般に日本は統治システムとして議院内閣制を採用していると考えられている。議院内閣制の本質は、行政府が議会の信任に依存する一方で、議会に対し解散権を有することである。言い換えれば、議院内閣制の特徴は行政府と議会の存廃が相互の意思にかかっていることで、議会は行政府に対し不信任決議案の可決を通じて総辞職を求めることが出来る一方、行政府は議会を解散できる。このため、行政府と議会が対立することによって生じる国政の停滞を避けること可能になっている。つまり行政府と議会の意思は合致することが予定されている。行政府と議会は融合しているのである。この結果、行政府は自らが提出する法案に対し、議会からの支持を期待できる。

 ただ、日本は二院制を踏まえ、右に述べた議院内閣制の本質に照らして、日本の統治システムについてあらためて考えてみたい。内閣と衆議院の間には議院内閣制の関係が成立している。衆議院の多数派の指示を獲得した国会議員が首相に指名され、その首相が内閣を組織する。一方、衆議院は内閣不信任決議案を可決することが出来る。不信任決議案が可決された場合、内閣は衆議院を解散するか総辞職するかのいずれかを選ばなくとはならない。また、不信任決議案が可決される場合以外にも内閣は衆議院を解散できる。

では内閣と参議院の関係はどうか。むしろそれはアメリカの大統領制における行政府都議会の関係に近い。そもそも、内閣は参議院の新任に依存しておらず、参議院には内閣に総辞職を求める権限が認められていない。たしかに参議院は内閣に対して問責決議案を可決することは出来る。しかし問責決議案は政治的意味しか無く、内閣が辞職を迫られることはない。一方、内閣は参議院を解散することは出来ず、参議院議員は六年の任期が保証されている。

参議院とは何か 1947~2010 (中公叢書) p17-18

衆議院と内閣は、基本的に一心同体の関係です。一方参議院は違います。

『衆議院はアクセル、参議院はブレーキ』なんて言い方をすることも有りますが、参議院は、世論や民意が加熱しすぎたときに、それを覚ますように制度が設計されています。

衆議院は、首相の判断で解散することが出来ます。つまり『いつでも選挙が出来る』→『いつ選挙が行われてもいいようにしたほうがいい』→『なるべく選挙民の意見を聞こう』というマインドが働きやすくなります。

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政治が国民の意見を取り入れることは大切なことですが、いっときの感情に流されて、極端な政治となることば避けなければなりません

参議院は、時の政権に対して反対の意見を言ったとしても、無理やり解散させられることは有りません。『国民の支持があるのであれば一挙に解散して民意を問えば法案を成立させることが出来る』というわけではないため、内閣からみれば衆議院の野党より参議院の与党のほうが怖い』場合すら有ります。

参議院議員の任期は6年間ですが、一度に全員が入れ替わるわけではなく、半分ずつ入れ替わります。つまり、世論が多いに盛り上がったとしても、一度に全員が入れ替わらないので、3年間分はじっくり考える時間が発生します。

これらの観点から、参議院は『衆議院与党の行き過ぎに対してブレーキを掛ける役割』を持つとされています。法案が参議院で否決されてしまうと、衆議院で2/3以上の可決が必要になりますし、スムーズな国政の運営が出来なくなりますので、内閣総理大臣は、状況によってはは衆議院以上に参議院の動向に注目する必要があります

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この、内閣=衆議院与党に対する牽制、言い換えれば『世論の暴走を抑えること』こそが、参議院の一番の役割といえるのではないでしょうか。

衆議院選挙と参議院選挙

 とまあ、全体論はこれくらいにして、実際にわたしたちが参加する選挙の仕組みについて振り返ってみたいと思います。衆議院選挙にせよ参議院選挙にせよ投票所に行くと、2種類の投票用紙(あと最高裁判所裁判官国民審査のやつ)が渡されます。

衆議院選挙

衆議院選挙の場合、一枚の紙は『小選挙区の候補者の名前』。もう一枚の紙には『比例代表の政党名』を記載して投票します。

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(出典:総務省|投票)

『小選挙区』では、もっとも得票数の多い候補者が当選します。『比例代表』では、得票数の割合に応じて各党に議席の数を割り振り、その数だけその党の候補者が当選します。

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この辺は、教科書に載っているとおりだと思うのですが、衆議院選挙は小選挙区と比例代表の重複立候補が可能で、『復活当選』という仕組みが有ります。

比例代表選挙において、各党に割り振られた議席は、事前に各党が提出した名簿の順位によって決まります。有権者が直接、誰を比例区で投票させるのかを選べない仕組みを『拘束名簿方式』といいます。

小選挙区にも同時に立候補することも出来ますが、小選挙区で落選してしまった場合、比例代表で当選すれば議員になることが出来ます。比例代表の『順位』は一部『同順位』とすることが可能です。その場合、『惜敗率(最多得票者数に対する得票率の割合)』が高い人が自動的に上の順位と見なされます。

この辺が『なんだよ、落選したと思って喜んでたら、比例区で復活しやがった』と色んな人を 苛つかせる結果になっているような気もしますが、ひとまずこれはそういう仕組なんです。

参議院選挙

参議院選挙でも、2枚の紙が渡されます。1枚の紙には『選挙区の候補者名』を、もう一枚の紙には『比例代表の候補者名 or 政党名』を書きます。

http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/img/naruhodo04_03.gif

(出典:総務省|投票)

参議院の選挙では、選挙区と比例代表の重複立候補は認められていません。その為、復活当選という仕組みも有りません。

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選挙区は都道府県単位(鳥取島根、徳島高知は2つで1つ)で決められます。そして、それぞれの人口に応じて1人〜6人まで『当選者』の枠が決まっています。ちなみに、1つの選挙区から複数名の当選者を出す方式を大選挙区、1人だけ当選者を出す方式を小選挙区といいます。

また、比例代表については、衆議院と異なり、名簿の順位は有りません。じゃあどうやって決まるのかというと、比例代表の選挙で立候補者の個人名を書くことが出来ます(党名でも可)。その結果、得票数の高かった人から順番に当選していきます。

参議院選挙の特徴

さてこうやって並べてみると、似たような似ていないような仕組みですが、衆議院選挙と参議院選挙で決定的に違うものが有ります。それが、当選者数の数です。

  • 衆議院選挙・・・小選挙区295人、比例区代表180人
  • 参議院選挙・・・大・小選挙区73人、比例代表48人

もともと参議院のほうが人数が少ないのと、参議院は一回の選挙で半分ずつ改選することから、当選者は1/4くらいになってしまいます。いわゆる『一票の格差問題』もありますので、地域ごとに差はありますが、単純計算すれば、ひとりの候補者が向き合う人数は4倍ということになります。

また、小選挙区であれば、ある程度狭いエリアの中で政治活動をすればすみますが、参議院選挙は大選挙区となっている選挙区もあります。比率だけでいえば、有権者100人の選挙区で1人を選ぶのも、有権者1,000人の選挙区10人を選ぶのも同じことですが、立候補者から見れば、向き合うべき有権者の数は10倍に増えるわけです。

また、比例代表についても個人名で当落が決まりますので、個人の人気が重要な要素になります。その為、参議院議員には、ニュースキャスターやスポーツ選手などのいわゆる『タレント議員』が多くなる傾向にあります。有名なひとをあげると下記のような人たちでしょうか(敬称略)

  • 三原じゅん子(元女優)
  • 谷亮子(元柔道選手)
  • アントニオ猪木(元プロレスラー)
  • 丸山和也(弁護士ですがテレビにも良く出てましたね)
  • 蓮舫(元タレント)
  • 丸川珠代(元テレ朝アナウンサー)
  • 山本太郎(元俳優)

あわせて、『その時々の政策的な争点』については、衆議院ほど重視されないところがあるため、『知名度』がモノを言う世界となりがちです。

参議院議員に誰を選ぶべきか

さて世の中では『選挙に行け』とはよく言われます。その一方で、『どういった候補者に投票すべきか』については余り問われることがないような気がします。

もちろん誰に投票するかは、個人の自由です。

選挙ポスターの写真写りで決める人もいるかもしれませんし、画数のよい人に投票するひとも居るかもしれません。ただ一般的には『候補者や党の政策』や『個人のプロフィール』なんかで決めるひとが多いでしょう。最近では『マスゾエしなさそうな人』というひとも多いかもしれません。

ところで、少し前の選挙の結果になりますが、こんなデータが有りました。

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(出典:選挙におけるインターネット活用実態調査)

これは、2012年12月に行われた衆議院選挙の結果についてまとめたデータからの抜粋です。投票には、各政党の政策やマニフェスト、党首の人物像や限度などが大きく影響しているようですね。

ここからは、完全に個人の意見になります。

参議院議員は、その時々にテーマとなっている話題への取り組みで選ぶべきではないと思うんですね。参議院議員は、一度選ぶと特に何もなければ6年間は国政を任せることになります。小学生から中学生になるまでと同じくらいの期間を任せるわけですから、その間にはいろんな事が起こるでしょう。

そう考えると、参議院議員として一番重要な資質は、参議院の本分である『内閣=衆議院=世論』の暴走を食い止めることが出来るのか?ということのような気がします。その為には、周囲からの意見に流されず、きちんと自分の意見でNOといえる人。そんな人が必要な気がします。

もうひとつ、気になるデータが有りました。

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(出典:選挙におけるインターネット活用実態調査)

調査結果によると、投票する政党や候補者を決めたのは、4割のひとが投票日前日・当日だそうです。更に、投票日当日に政党や候補者を決めた人の3割近くが5分以内で決めてしまったとのことだそうです。

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(出典:選挙におけるインターネット活用実態調査)

今後、6年間国政の一翼を任せる人を選ぶのに掛ける時間が、こんなもんでいいのでしょうか?とはいえ、自分を省みても、30分くらいは調べてみたりしたかな・・・?って程度だったような気がします。

選挙で審判を受けるのは、候補者だけでは有りません。国民ひとりひとりも、成熟した民主主義が行えるのかを問われているのです。

幸い、選挙までは日があります。これから考える時間はたっぷり有ります。今年から新しく選挙権を得た若者たちを失望させないためにも、一生懸命頑張っていきたいと思う今日このごろでございます。

ではでは、今日はこの辺で。