ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

大人の教育は誰の責任か?

こんにちは、らくからちゃです。

毎年、年初に立てた目標三ヶ日が終わるまでには忘れ去るタイプの人間です。今年もすっかり何をしようとしていたかすら忘れ去ったにもかかわらず、偉そうにもマネ会様に『勉強時間と年収はめっちゃ関係あるで』なんて投稿させて頂きました。ブログなんてやってる場合じゃないのは、お前だお前。

さーて、そろそろ正月気分も抜けてきたので本気だすかな?なんて思っていたところ、人事部から"お前TOEICのスコア低すぎてワロタ"と研修参加の召集令状お声がけをいただきましたので、先日参加して参りました。I don't speek English well ('A`)

しかし気づけば周りの大半の先輩たちが海外案件に参加しており、後輩くんも1ヶ月間島流し・・・ではなく海外駐在員養成名目で現地スタッフの支援へと旅立つことが決まりました。今までパスポートを取らないことで必死の抵抗を行ってきましたが『えー、マジ海外案件童貞ー!?』『海外案件童貞が許されるのは20代までだよねー!?』と煽られかねない勢いでございますので、いきなりブログを英語で書き始めたらお察しください。I don't write English well ,too ('∀`)

話がそれましたが『新形式のTOEICで650点以上取るぞ!』という内容の研修に参加させて頂きました。なんでもTOEICの試験内容が色々と変わるらしく、"折角だしお前ら真面目に勉強して受けろよ"という趣旨のご様子。まー点数を取るのが目的になっては本末転倒ですが、試験対策をきっかけに勉強するのはいいことですよね。

お仕事が終わった後の18時から2時間半という時間設定は中々キツかったのですが、外部講師のお姉さんがノリノリで、脳みそにいい汗をかけました。裁量職なので残業手当は出ませんが、タダで本が貰えたから良かったなあ。めでたしめでたし。と思っていました。レッスンの最後に紙が配られるまでは。

じゃ、毎日この紙に勉強した時間を書いて続けようね!

 

工エエェェ(´д`)ェェエエ工

 

会社員は業務時間外も勉強するべきか問題

IT業界で活躍しているひとを見ていると、プライベートでもプログラムを開発・公開したり、最新のテクノロジーを勉強しているところを良く見かけます。コンサル職でも、日々資格取得に勤しんで居たり、通勤時間中に業界雑誌を購読したりと、いろんな方法で勉強をしている人を見かけます。なんというか日常生活の中に勉強の習慣が組み込まれている人とそうでないとの間には、残酷なまでのパフォーマンスの差があります

いやーもうほんま、コピペしか出来ないの?自分の書いたコードの意味分かってる?っていうか普通そんな実装しないよね?終わんねーできねーって愚痴たれてるけど、ほぼおなじ作業内容を指示した人みんな終わってるけど?

そういう人の仕事を見ていると、他の人から学ぶことなく、ほぼ同じ位置をグルグル回ってるだけだなーってことが大半です。ただそういう努力は、お給料のでない営業時間外にも行なうべきなのでしょうか。例えばこんな話があったとします。

寿司職人の太郎は、同期で働きはじめた仲間たちの中で一番仕事ができなかった。自分の弱さを乗り越えるため、誰よりも早く店に来て他の人の仕事のやり方を盗み、仕事が終わった後も最後まで残って努力を続けた。勿論残業代は出ていない。だが懸命の努力が実り、やがてお客様にも顔を覚えられるようになり、やがて店を代表する職人のひとりとなった。

この話を聞いて( ;∀;)イイハナシダナーと思う人は最近少数派になりつつあるんじゃないでしょうか。いやいやいや、職場に来て仕事に必要な訓練をしてるわけじゃん。ちゃんと給料は貰えよ(゚д゚)ゴルァ。つーか許可なくそういうのすんなよ。他の連中が真似始めたら完全ディストピアじゃん。って人のほうが多いかもしれません。でもこの話にこんな続きをつけるとしたらどうでしょう。

やがて店の管理を任されるようになった太郎は、このような働き方は非効率であり合理的でないと考えていた。そこで新しく採用した次郎には、閉店後もきちんと給料を払って、つきっきりで指導を行った。指導者としての才能もあったのか、次郎は太郎よりも早い速度で技術を磨き、会社が費用を出して参加させたコンクールでも高い評価を得ることが出来た。やれやれ、これで一息つける。太郎がそう思った矢先、次郎はライバル店に引き抜かれた。

(ノ∀`)アチャー

って感じですよね。まあでも往々にして良く起こりうることです。

教育は誰の責任か?

仕事を行うにあたって必要な勉強を、個人の努力に委ねてすぎてしまうとブラックな職場にも繋がりかねない状況に陥りやすくなります。とはいえ経営者サイドから見れば、コストを掛けて教育しても、転職されたら敵に塩を送ることにも繋がりかねない。そもそも企業による従業員の訓練にかけられるコストってだいたいどれくらいなのでしょうか。上場企業を対象とした調査にはなりますが、以下のようなものが転がっていました。

f:id:lacucaracha:20170216230030p:plain

(出典:2016年度(第40回) 教育研修費用の実態調査 )

結構佐賀でるもんだなーと思ったのが、1000人以上の会社で一人あたり4万円、300人未満の会社で2万5千円と、倍にはいかないものの大きな差がついています。で、お金をかけて何やっとんねんというところについてはこんな感じ。

f:id:lacucaracha:20170216230609p:plain

(出典:2016年度(第40回) 教育研修費用の実態調査 )

時代の流れ(?)を受けてか、メンタルヘルス対策やコンプライアンス教育の比重がかなり大きいようですが、技術技能者教育や、コミュニケーションスキル教育など、個人的なスキルを高めるような内容も広く行われております。

教育こそ政府の役割じゃない?

こうした学校以外の場で行われる仕事に関連した教育訓練の水準は、国際的に見ても、我が国の実施比率は高い部類になります。

f:id:lacucaracha:20170216224804p:plain

(出典:Databook of International Labour Statistics 2015)

ちょっと目につくのが、スウェーデンの値の高さですが、これは国レベルで『成人教育』それも職業訓練に力を入れた結果が反映された部分が多いように思われます。人口の規模が10倍以上も違う国を一概に比較することは出来ませんが、同国の『考え方』についてはすごく参考になる部分があるんですよね。JILPTの出した『北欧の公共職業訓練制度と実態』という資料が大変よくまとまっていて分かりやすいのですが、特に面白かった部分を抜粋します。

次に、成人一般が受けることのできる職業教育・訓練について述べる。その中で、規模も大きく重要性の高い職業教育は、高等職業教育および自治体成人教育である。これらの機関では、在職・無職にかかわらず、基本的に何歳からでも無償で、学習の再開またはキャリアアップ、キャリアパス変更を目的とした教育を受けることができる。

f:id:lacucaracha:20170217003302p:plain

日本で、政府主体の職業訓練といえば雇用保険での教育訓練給付制度がありますが、20%分しか支給されないケチな仕様です。それから考えれば『在職・無職にかかわらず、無償』というのは非常に魅力的な制度です。更に『学習補助』まで受けられる充実っぷり。ようやるわー、と思いながら文章を読み進めていくと、中々腹に落ちる記載がありました。

3.高等職業教育(YH)
スウェーデン政府は、若年者のキャリア形成が困難になっている原因の一つとして、労働の在り方や職業人として求められる能力が大きく変化していることを挙げている。
つまり、職業人として成長し続けるには、不断の変化に対応できる柔軟性が不可欠であり、高度の知識や経験を備えた人材が求められる。

(中略)

YH の目的は、第一に、労働市場のニーズに応える高等職業教育を提供することにある。 

(中略)

YH の目的の第二は、すべての中等教育修了者に高等職業教育を受ける機会を開くことにより、個々人が希望する分野への就職やキャリアアップ、転職や企業を可能にすることである。

そろそろ年金支給開始年齢を70歳まで伸ばさなきゃダメなんじゃね?といった議論が始まりつつありますが、学校を卒業してから50年近く働くのが当たり前の時代になりつつあります。勿論、どれだけ時間が経っても価値のあることを教えることも大切ですが、その時代時代に合わせた教育を市民が受けられる環境を整えることの重要性は益々高まりつつあります

大学教育の在り方を議論しているオジサン達こそ再教育の必要があるかもしれません。

問題はそれを、誰がどうやって行なうか?ですね。終身雇用が死語になりつつある中、『その企業内でしか役に立たないもの』や『短期的な視点でしか役に立たないもの』ならとにかく、『より幅広い視点で将来に渡って役に立つもの』へは(福利厚生の一貫として行われるものを除けば)個人の努力の範疇となる場合が増えるでしょう。でも時間的・金銭的に余裕のない層に、リスクを取って継続的な学習を行えるだけの余裕は有りません。

そこでもう一つの視点として『政府の位置づけってどうなるんだろう?』と考えてみるのもまた良い時期かもしれません。

いままで成人教育への公的支出といっても、せいぜいカルチャー教室が行いやすように公民館を増やすくらいが関の山だったように見えますが、これだけ大きく社会が変化し、かつ就労期間も長期化している中において、教育への公的投資は子どもたちだけに向けられるべきなのかを議論しても良い時期にあるのでないでしょうか。グローバル化が進む社会において、雇用はますます流動的になりますが、それは住民の流動性より高いものではないでしょう。政府が適切な教育プログラムを用意することは、失業率の改善などを通して社会の安定化を図ることに繋がるだけでなく、いま必要とされているスキルをもった人材を労働市場に提供し、企業を呼び込むことにも繋がります。

ソースコードコピペエンジニアがどの程度改善されるかは不明ですが、体系だった教育プログラムがあれば、多少なりとも良い方向に向かうのかもしれません。勿論、税金との費用対効果の検討も必要ですし、なんでもかんでも北欧から学べ!なんて言うつもりもさらさらありませんが、『大学教育の無償化』だけでなく、こういった『成人教育の強化』についても、これから先の国家戦略の中で考えていったほうが良くね?と思う今日このごろでございます。

ではでは、今日はこのへんで。