ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

住宅ローンを変動にするか固定にするか悩んだら考えておきたいこと

こんにちは、らくからちゃです。

先週は、日銀の突然の金融緩和政策の修正により、7円近く円高に振れたり、日経平均も700円近く下がるなど波乱含みの一週間でした。

「金利が上がる」と聞き、特に変動型の住宅ローンを返済している方はドキドキしたんじゃないでしょうか。

幸い、変動金利の基準となっている短期金利がすぐに上がるわけではないので、そこまで心配しなくとも大丈夫なようです。

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とはいえ、今後固定型の住宅ローンは金利が上がっていきます。

新しく住宅ローンを組むひとは今までより金利が高くなる固定にしたほうが良いのか、いまローンを返しているひとも固定に乗り換えたほうが良いのか悩むことになるでしょう。

一般的な、元利均等返済型の住宅ローンだと、固定型の場合は契約時点から毎月の返済額は変わりませんが、変動型の場合は金利の変動によって返済額が上下する可能性があります。

保険など諸々の条件によっても変わりますし、金利が低いと年収や借入比率の条件が厳しい場合もありますが、2022年12月現在ですと35年ローンの変動型で0.5%、固定型で1.5%くらいの塩梅でしょうか。

1%の差というと、大したことないように聞こえますが、4000万円を35年ローンで借りてボーナス払い無しの場合、月々の支払額は

  • 変動型:¥103,834
  • 固定型:¥122,474

と、1万8640円も差がつきます。

また変動金利がずーーーっと変わらない場合、35年間での利息支払い額は

  • 変動型:361万円
  • 固定型:1144万円

となり、783万円もの差になります。

皆さん考えることは「少しでも支払う金額を減らしたい」です。

契約時点では、変動型のほうが金利が低いので、金利が上がらなければ変動型のほうが有利ですし、金利が上がっていくのであれば固定型のほうが有利になります。

「どっちのラーメンのほうが旨いか」といった話ではなく、金額で評価できる話のため、変動固定のどちらが良かったかはローンを返し終えた時点では必ず白黒がつきます。

ただ来年のことすらどうなるか分からないこのご時世に、ずっと先の変動固定の優越を断言できるひとは居ないでしょうし、私も「こっちを選ぶべき!」なんてことは口が裂けても言えません。

一般論としては「金利が少しでも上がると返済が厳しくなる場合は固定」「十分な貯蓄があって金利が上がった場合繰り上げ返済が出来るのであれば変動」みたいな話を良く聞きます。ただ長い返済期間の中でどうなるかを予想するのって難しいですよね。

ここでひとつ、固定か変動かで悩んでいる人に考えてみてほしい事があります。

その家に何年住むつもりなのか?

です。

金利が上がるタイミングの影響

金利は上がるのか?上がるとしたらどれくらい上がるのか?も重要ですが、もうひとつ重要なのは「いつ上がるのか」です。

返済の初期で金利が上がると、返すべき債務がたくさん残っているので、金利上昇による支払い額の増加は大きくなります。極端な話、借りたその次の年から一気に金利があがれば大変ですが、最後の年に上がっても大した影響はありません。

例として変動0.5%と固定1.5%を前提に、借りてから5年後・10年後・15年後に変動金利が2.5%に上がって、そのまま最後まで2.5%だったケースで考えてみましょう。

支払う金利の総額は

  • 固定1.5%     1,144万円
  • 5年後に2.5%    1,560万円
  • 10年後に2.5%   1,186万円
  • 15年後に2.5%   934万円

となります。

10年後に2.5%のケースと固定1.5%の支払利息総額が近いところをみると、ローンを組んでから10年間、固定に対して1%金利が安ければ、その後25年間1%金利が高くなってもほぼ同じ程度。。グラフにしてみるとこんな感じですね。

一番条件の厳しい5年後に変動金利が0.5%→2.5%に上がったケースでも、支払利息の総額が固定1.5%を上回るのは10年後です。35年間返済をし続けた場合、固定にしておいたことによって416万円の支払いを抑えることができます。

そのローンは何年払うのか

ただここが重要だと思うんですけど、本当に35年間もローンを返済し続けるんでしょうか?ここで対照的な2つの家庭を想定してみたいと思います。

A家

両親ともに20代後半。父は市役所勤務、母は病院事務。子供は3歳と1歳。母方両親の家の近くの郊外に戸建てを購入。将来的には祖父母との同居も視野。

B家

両親ともに40代前半。父は大手コンサル、母はIT企業勤務。子供は小学6年生。2人の職場にも近く、将来の値上がり益も期待し、都内駅チカマンションを購入。

A家は、転職や転勤をする可能性も低そうですし、母親の実家にも近く、この家から離れる理由って多分かなり少ないですよね。何かあっても、なんとかしてこの家に住み続ける方法を探りそうです。

一方、B家は転職や転勤すれば手放す要因にもなりますし、子供も就職・結婚で家から出ていくタイミングで売ることも考えそうです。そして、比較的売りやすい物件ですので、比較的簡単に売却することができそうです。

もちろんすぐに引っ越す可能性があるのであれば、そもそもローンを組んで家を買う可能性は低いでしょうけど、10年、20年のスパンでどういう住宅を選んで行くのかは、それぞれのライフスタイルにかなり依存すると思うんですよね。

せっかく高い金利差を払って固定型にしていて、やっと変動型に対して旨味が出てきたなと思っても、それからすぐに諸々の事情で家を手放すことになり住宅ローンも一括返済することになれば、固定にしたメリットはありません。

先程の例を元に、固定を選んだ場合の利益を整理するとこんな感じですね。

当然、これよりも早いペースで金利が上がる可能性もありますので、このグラフのようになるかは分かりません。ただ「金利が上がった場合に備えて固定を選ぶメリット」は長く借りれば借りるほど大きくなることだけは間違い無いでしょう。

最近は都心の駅チカ物件を中心に不動産の値上がりも続いていましたので、B家のようにある程度の期間は住むけど、ライフスタイルに合わせて買い換えも視野に入れつつ、半分投資目的で不動産を取得するひとも増えたように思います。

そこまで極端なケースでなくとも、子供の独立や自分たちの退職を機に、住む場所を見直すこともあるでしょうし、そうしたイベントが住宅ローンの返済期間に起きる可能性が高い場合は、その点も考慮に入れたほうが良いでしょう。

繰り返しになりますが、本稿は「変動型もしくは固定型のほうが良いよ」というつもりは毛頭なく、あくまで「検討の材料に加えてみては」が趣旨ですので、ご理解いただければ幸いです。

ではでは、今日はこのへんで。