こんにちは、らくからちゃです。
知っているひとからすれば「何がそんなに難しいんだろう」と思うものの、知らないひとには「どうしてそうなるのかサッパリ分からん」ということは数多とあります。
「金利が上がると債券価格が下がる」
という話もその一つでしょう。
どうも直感的に掴めないひとが多いらしく「金利が上がったんだったら人気が出て債券の価格は上がるんじゃないの?」と言われているところを多数目撃してきました。
説明している証券会社のページをみても、イメージつきづらそうな単語での説明でよくわかんないんですよね。
これを超雑だけどイメージつきやすく説明するとこんな感じでしょうか。
「性能(金利)のいい新モデルが発売されたら旧モデルは値下げせざるを得ないから〜」
(※チコちゃん風)
債券ってなんだ
金利と債券価格の関係も理解していないのに「銀行預金なんてしてても雀の涙の利息しか貰えなくてインフレ分損だから、米株インデックス買っといたほうが良いよ」なんていうひとの多いこと(雑煽)
と無駄に敵を増やす発言はおいといて、まずはそもそも「債券」ってなんなの?というところから始めましょうか。
債券とは、いろんな会社や機関が発行している利息付の借用書みたいなもんですが、金利は当該通貨で最も安全だとされている国債に信用度の違いを乗っけて決まります。
ですので「債券の金利が」と言った場合には、特段注釈が無い限りはベースとなる「国債」のことだと思って良いでしょう。
ところで皆さんは国債を見たことがありますか?
私はありません笑。
ペーパーレス化されてますんで、現物を見たこと有る人のほうが少数でしょうね。ただまずどんなものなのかを知っておくのは重要でしょう。
(出典:個人向け国債窓口トップページ : 財務省)
上記は証券会社等で販売されている個人向け国債のご案内です。なかなかしょっぱい金利ですね。
どれが一番人気なのか気になりますよね。
2021年度で
- 変動10年・・・1兆2799億円
- 固定5年 ・・・2302億円
- 固定3年 ・・・5231億円
と圧倒的に変動金利の変動10が人気です。ま、この金利で5年も持っておく理由もないですしね。
ところで全部足しあわせても2兆円しか(??)ありませんね。
日本の年間国債発行額がそんな程度のはずないですよね。
これは「個人向け国債」だけのお話だからです。
(出典:令和4年度国債発行計画の概要)
財務省の計画では、2022年度は諸々合わせて215兆円(!!)が発行される予定です。
おや内訳区分に個人向け国債にはあった「変動」「固定」の文字がありませんね。
基本的に何もついてなければ、国債は固定金利です。(物価連動債はなんとも説明しづらいですが)
よって債券(≒国債)の話をするときは、固定金利が前提だと仮置すると分かりやすいです。*1
その前提で、あなたが金利1.0%で1年物の国債を100万円分買った翌日に、金利が2.0%に上がったとしましょう。
嬉しいですか?
「うわー、損した。1日待てば1年後には1万円分余計に貰えたのに。トホホ。。。」
と思うでしょうね。
つまりこんな感じ。
債券は必要に応じて売却出来ます。
金利1%で買った債券を売ろうと思ったとき、2%で買った人も同じ用に売ろうとしていたら、金利分は値下げしないと売れないですよね。
これが「金利が上がると債券価格が下がる」理由です。
満期まで保有するのであれば、特に違いはありません。
ただ何か理由があって売却しなければならない場合、買ったときの金額よりも安い金額しか受け取れない可能性があります。
もしかしたら多くのひとがイメージするのは、変動金利型の国債で「金利が上がったらハッピーなんじゃね?そしたら沢山売れて価格は上がるんじゃね?」と思うから分かりづらいのかもしれません。
そこで
「性能(金利)のいい新モデルが発売されたら旧モデルは値下げせざるを得ないから」
とイメージしておくと分かりやすいような気がします。
金利=受取額÷支払額
さすがにこれだけだと怒られそうな気がするので、もう少し掘り下げてみます。
そもそも「金利が上がる」と「債券価格が下がる」というのは、一つの現象をコインの表と裏を見ているのと同じことだと思うんですよね。
財務省は国債を毎月入札で売却して資金を調達しています。
下記はかつて発行されていたTBと呼ばれる短期国債の入札結果です。*2
ちなみに債券の世界では
- 1年以内 ・・・短期
- 1年〜5年・・・中期
- 5年〜10年・・・長期
- 10年以上・・・超長期
と呼びます。
35年ローンを借りていると、10年なんて短期やろと思っちゃいますが、この10年債を「長期国債」と呼び、いろんなところでの登場頻度が一番高い気がします。
TBは、ゼロクーポン債と呼ばれる利息のつかない国債です。
代わりに、満期時に受け取れる金額よりも低い金額で売られているため、その差額が利息になります。というわけで割引債なんて呼び方もします。
入札の結果、443回(黄色いところ)では、期間1年物が100円に対して平均価格99.774円で売れました。
逆算(100÷99.774)すると1.0022651となり、平均利回りは記載の通り0.22655ですね
その一つ前の442回(水色のところ)は、平均99.559で売れたため、逆算すると0.4441%になりました。
金利のつく国債(利付債)の場合、同様に計算した利回りに、定期的に受け取れる表面利率を乗せた金額が実質利回りになります。
つまり金利と債券価格の関係って「速いから早くついた」と「早くついたから速い」みたいなもので、同一の現象をどちら側から見ているのかといえるでしょう。
市場では日々多数の参加者によって多額の債券が売買されています。
発行時に決められた「表面利率」は固定で、その表面利率も毎月1回の発行のときしか変わらなくとも、日々動く価格によって金利は変わるのです。
金利を見ると経済はもっと面白い
では債券価格=金利は何によって変動するんでしょう。
ひとつは景気です。
経済の先行きが明るく、株価がドンドン上がっていきそうなのであれば、債券なんて売っぱらって株にしたほうが儲かります。
そして債券が売られる=債券価格が下がりそうなら、先回りして売っておいたほうが損をしなくて済みます。
逆もまた然りで、株価が下がりそうなのであれば、資金を債券に逃げ込ませておいて嵐が止むまで待ち、償還まで保有すれば購入時の利回りを一旦確保することが出来ます。
こうした関係から、株と債券は補完関係(負の相関)があると言われてきました。
金利って面白いなあと思うのが、株式みたいに市場メカニズムの見えざる手だけでなく、むしろ政府や中央銀行などの政治的判断によって左右される点なんですよね。
ここ最近も、アメリカでは高まるインフレ圧力を抑え込むために、どれくらいのペースで金利を上げていくのかについて盛り上がっていましたし、拡大する日米金利差を受け日銀はどこまで円安を受け入れるのかについてもいろんな議論やバトルがありました。
SBI証券で眺めていると、3年弱の米国債の金利が実質2.839%ですか。
ここから先、金利がどうなっていくのかは素人には良く分かりません。
まあでも、どうせ為替リスクを取って米株にするなら、一部はこういうものをポートフォリオに組み込んでおくのもいいのかもですね。
(来年分のNISA枠でのETF買付分とか)
金利の世界は、とても凡人には理解の及ぶところではありませんが、いろいろな思惑と結果が結びつきやすく、ニュースを見るときに「へえ、そういう動きをするんだなあ」と思いながら眺めると、より経済が楽しめる気がしますね。
ではでは、今日はこのへんで。