ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

出世する気のない会社員の生存戦略

こんにちは、らくからちゃです。

赤ちゃんが産まれてから、ちょうど4ヶ月になりました!!

一生懸命ズリバイの練習をしたり、興味深そうに鳥さんを眺めたり、喃語のバリエーションも増えてきたり、毎日元気いっぱい成長していく姿に癒やされております。

こうして毎日成長を見守ることが出来るのも、半年間の育児休業のお陰なので、制度を作ってくれた先人たちや送り出してくれた職場の皆様には感謝感謝です。

育休開始当初は「私が居なくなってグチャグチャになってないかな。みんなの不満が爆発して帰る場所なくなったりしないかな。」と不安で一杯で、貸与スマホを定期的にチェックしていましたが、幸いうちのチームは残ったメンバーで躓きながらも上手に回せているようでほっとしました。

最近は月例部会にオンライン参加したり、後輩から面白事例の相談を受けたり、ご隠居様みたいな形で会社との関係を持っていますが、私よりさらに長い育休を取得して復帰した先輩がすぐにバリバリ働いているところを見ると、中途半端に1〜2ヶ月だけ休むよりも「わしのことは、流れ弾に当たって逝っちまったもんだと思って頑張ってくれ」とガッツリ抜けたほうが何かと捗るのかもしれませんね。

本当に求めているのは早期リタイアですか?

この国は、子育て支援全般は手薄いのに、育児休業に関しては世界トップクラスの手厚さを誇っています。

www.yutorism.jp

有給休暇の付与日数もそうですし、健康保険も明らかに組合健保のほうが手厚く、ここ最近は長時間労働に対する規制も年々厳しくなってきています。

FIRE(Financial Independence, Retire Early)という、「さっさと仕事を引退して金融資本で食っていくんじゃい」なんて話がブームになっていますが、会社員天国のジャパンでそれを目指す必要性がよく分かりません。

それより「辞めようと思えばいつでも辞めることの出来るだけの金融資本をキープしながら、キツくて割りの合わない仕事はなるべく避けて長く働ける環境をゲットして労働資本を最大化しつつ、労働者としての権利はフル活用していく」が良いんじゃねえでしょうか。

資本所得とその取り崩しだけで食っていくには、よほど収入が多いか実家が太くない限り、若いうちにしか出来ない経験すべてを犠牲して蓄財に励まねばなりません。ならば良い感じにぬるい労働環境を築くほうに賭けたほうが満足度は高そうです。

そこで重要なのが「いかに出世せず無難に働くか」だと思うんですよ。

いかに出世せず無難に働くか

エン・ジャパンの出しているアンケート結果を見ても、30代に入ると出世なんてもんに興味を示す人は大きく減少しております。

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(出典:第53回アンケート集計結果「「出世(ポジション・役職を高めること)」について」|エン ミドルの転職)

その理由のトップ3を見ると、出世なんてしても「金銭的に見返りが小さく」「やりたい仕事ができなくなり」「生活への負担が大きい」実情が見て取れます。

c) a)で「出世にはこだわらない」「出世したくない」とお答えの方にお伺いします。その理由は何でしょうか?---【年代別グラフ】

(出典:同上)

"やりがい"とか"周囲の評価"とかに意義を感じているのならばさておき、そんなもんラベルの面を上にして横スマッシュでふっ飛ばしてやりたいと思っている一般ワーカーには、無意味どころかむしろ有害です。

ただリストラリストの最右翼に記載されてしまうのも会社員生活を失うリスクが上がります。丁度よく平々凡々な会社員生活を送るにはどうすべきか。個人的には、努力や能力とか関係なく、お仕事のポジショニングが一番大事じゃねえかと思うんですよ。

会社は色んなお仕事がございます。傍目から見て「なんかあそこは楽そうだな」と思われるような部署もありますが、直接話を聞くと、そういう視線を浴びながら働くのは、案外ハードだったりします。

狙うべきは「なんか知らんけど大変そう」と思われてるけど実は忙しいフリをしてるところじゃあねえでしょうか。もっと言えば「偉い人があんまり関心を持っていない仕事」だとおもんですよね。

偉い人の考えているであろうこと

やたら情報処理技術者試験で出てくる(なんでなんやろ)プロダクトポートフォリオマネジメントに沿って、経営者の目線を追ってみると、だいたいこんな感じじゃ無いでしょうか。

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左上の「花形」た、会社の屋台骨を支える最重要セクションであり経営者が注視していることが多い。右上の「問題児」のところも、将来の会社の主軸になり得るセクションのため期待が大きく、右下の「負け犬」はなんとかせねばと意識されやすい。

会社によって濃淡に差はあるでしょうけど、左下の「金のなる木」は、安定して手間が掛からず、問題を起こさず無難にやっていってくれていれば特に何も言うまいと、偉い人から放ったらかしにされがちです。

もし出世を望むなら、一番の近道は「花形」の部門で手柄をあげることです。

注力分野のため案件の規模も大きく、顧客やライバルのレベルも高い分、討ち取ったときの評価もデカい。また脂の乗り切ったエース級人材や大量の若手が投入されているので、上手に立ち振る舞えれば有能な味方も増やしやすいため、出世街道の王道ルートでしょう。

チームプレイより個人技に自信があるならば、「問題児」で事業化に成功して一旗あげるもよし、「負け犬」の立て直しを狙っていくのも良いでしょう。一方で「金のなる木」は"出来て当たり前"で、優れた結果を残しても、会社の将来への貢献はイマイチと、評価されづらい。

そういうと良いことが無い感じがしますが、会社員ライフを過ごすに当たって非常に大きな利点があります。

「偉い人があまり関心を持っていない」という点です。

こうした"枯れた"セクションは、徐々に投入される要員も減らされ、偉い人の関与も減っていく。「市場成長率・低」&「市場シェア・高」というより、「事業規模・小」&「利益率・高」として考えていったほうが良さげな気がしますが、「なんだかよく分からんが儲かってるからヨシ!」という視点で見られやすい。

偉い人があまり関心を持っていないということは、情報の非対称性が生まれやすい。時間の面でも費用の面でも「いやいや、これくらいはかかりますよ」といった意見を通しやすく、無理な数字を飲まされにくくなります。

また取引先とも、深く長い関係を築くことになるため、現場担当者間では相見積を入れずに結託してサボり・・・じゃなくて、戦略的互恵関係を維持しやすい。

また「面倒事だけは起こさんでくれ」と思われているぶん、属人化を避けるためのバッファを積んでおく余地も大きいし、会社標準手順を強制されがちな大規模プロジェクトよりも「うちはコレで行くんです!」と新しいことにもチャレンジしやすい。

「金のなる木」を育て方

これはどの部門に配属されるのか、といった話だけでなく、各個人の仕事上でのポジショニングの話でもあります。よく探してみれば、「花形」の部署の中にも「金のなる木」っぽい仕事をしている人が見つかるでしょう。

そうしたポジションを確保するには、たまたま転がり込んでくる幸運を期待するだけでなく、自らその場所プロモーションしていくことが大事じゃないのかなーと思うんですよね。

私の場合、ある分野の仕事をやってみたいので、そういった仕事があれば是非やらせてくださいと「ともあれカルタゴ滅ぶべし」くらいの勢いで繰り返してきました。

すると諸先輩方から「やりたいならやらせてみるか」と、その分野だけ切り取って仕事を回して貰えるようになりました。

ぶっちゃけ、その分野に深い造詣があったわけではなく「なんとなく好きだから」レベルの話でしたが、繰り返し仕事していると他の人よりは分かるようになってきます。

いまでもド素人に毛の生えたようなものですが、それでも部内ではその分野の第一人者というポジションを確立し、今度は「私のところで仕事を止められねえ」と主張して、アシスタントを1人ゲットしました。

とはいえ、部内に2人分の手を埋めるだけの作業量はありません。アシスタントも専属ではなく、専門外の仕事をすることも多い状況が続きました。

今度は部外も当たっていると、まとまってその分野の作業が定期的に入ってくるお仕事がありました。向こうがちょうど手離れしたがっていたので、それにかこつけて専属アシスタントも1人追加でゲットしました。

何度か「花形」の前線ポジションを任されそうになりつつ「それよりお前は後方支援でもやってくれ」と、後輩の指導に回ったりしながら、いまに至る。という感じです。

こうして、小さいながらも「自分の城」があったのは、育児休業を取得するにあたっても大きな武器になりました。育休中も、こっそりアシスタントや後輩たちを見ていると、随分一丁前のことを言うようになったもんだなあと苦笑いです。

エコノミック・モートを掘ろう

さて「城」というと、オマハの賢人ことウォーレン・バフェットが、しばしば使う表現にエコノミック・モート(経済的な堀)という言葉があります。

競争優位を生み出すための参入障壁といった意味合いになりますが、企業だけでなく会社員もそれぞれ自分のモートを掘っておくことは、身を守る武器のひとつになるでしょう。

障壁なんていうと大変な努力をしなきゃならんのかと思われがちですが、城壁や堀って、何があっても撃退するつもりであれば、強固で堅牢なものが必要でしょうけど、「あそこに攻め込むのは止めとこ」と思わせる程度のものであれば、それなりのもので十分です。

会社員なら「この分野では実績がある」までいかなくとも「この分野をやったことがある」「この分野を勉強していたらしい」でも十分なときすらあります。

むしろ城が立派すぎると、お宝があるのではないかと疑われたり、期待を持った住民が逃げ込んできて、ますます壁も堀もますます高く・深くせねばならんので大変です。(雑な例え)

気づけばこの城も随分大きくなってしまいましたし、ひとつの分野に賭けすぎるのもアレなので、会社員ライフを継続するためには育休復帰後にはもう一個新しいお城が作れるくらいの気持ちでおらねばならんなあ、なんて思う次第ではあります。

ではでは、今日はこのへんで。