こんにちは、らくからちゃです。
新しいキレイなお家に引越したら、テレワークの生産性も上がるかな!?と思っていましたが、実際にはお家が快適すぎて仕事なんてする気が起きませんでした。これってトリビアの種になりますか??
仕事のことなんて考えるつもりにもなりませんので、住宅購入の話でもしようかと思います。
古くから日本には『家を買うなら新築住宅!!』なる考え方があると言われています。
高温多湿で地震も多い環境では、前の住民がどんな管理をしていたか分からない中古物件よりも、新築物件を買おうと思うひとも多いでしょうし、そのため中古物件を売買するための市場も育ちにくい土壌でしょう。伊勢神宮だって20年おきに建て替えてますしね。
そして、処女信仰や新卒主義のように、一度「新築」で無くなった住宅は、一気に価値が下がる。と言われていました。これが「新築神話」なるものの一端です。
実際、マンションは購入した時から値段が下がり続けて、東京都区部では30年で半分くらい。千葉県だと3割くらいのお値段になります。
(出典:リセールバリューのベスト30、トップは都営地下鉄新宿線の「馬喰横山駅」の155.2%:首都圏、価格が下がりにくいエリア | ビジネスジャーナル)
私は、潔癖症とは真逆の価値観で生きてきますし、どうせなら安くなる中古のほうが良いんじゃね?」くらいの感覚でいました。ただどうも駅チカの大規模物件では中古だからといって安くなるどころか、値上がりしているようなケースも見られるんですよね。
10年住んでも値下がりしない家の条件
家を売却する時に、購入時からどれくらい値下がりしたのか示すリセールバリューという指標があります。売却価格÷購入価格で計算するのですが、4000万円で買った家が、3500万円で売れれば、87.5%分は価値が維持できた。というような考え方ですね。
2011年のちょっと古いデータになりますが、リセールバリューは駅からの距離と強い関連性が示されています。
(出典:不動産マーケット情報:中古マンションのリセールバリューって何で決まるの?|不動産購入・不動産売却なら三井住友トラスト不動産)
駅徒歩3分の物件なら、4000万円で買った物件が10年経っても3848万円で売れる。諸々の手数料抜きで考えれば、一ヶ月1.26万円で住めたことになります。一方で、徒歩20分以上の場合、3284万円でしか売れず、3分以内との差は564万円にもなります。
駅に近い方が、物件に占める土地の価格が大きく、価格が維持されやすいのかなあ?とも思うのですが、もう一つ面白いのがマンションの規模別の比較です。
戸数が200戸を超える大規模物件になると、10年でのリセールバリューは、なんと100%を超えます。つまり10年間タダ(管理費・修繕積立金等は別にして)で住めたということになります。
元記事を見ていると、こんな説明がありました。
やはり生活利便性を考慮すると、何でも揃っている大規模マンション(都心や近郊ではタワーマンションでもあります)は資産価値も高く維持されるようです。近年の大規模マンションは地震などの災害対策も進んでいますから、非常時の安全・安心を考慮しても、大規模マンション=マンションが大きいことは今後も選択されるケースが減少するとは考えにくい要素です。
大規模マンションのほうが利便性や安全性が高いという側面もあるでしょう。ならば、最初から高く売れるはずです。大規模物件のリセールバリューが維持されやすい理由としては、今ひとつ説明不足な気がします。
それは何故なのか、考えてみます。
新築マンション購入はIPOに近い
買って10年以内に元の値段を上回るんだとすると、元々の値段が市場価格に比べて安かったんじゃないの?ということが考えられます。それが、駅チカ・大規模物件で集中して起こるとすれば、それはどういった理屈なのか。
仕組みがハッキリしないと「たまたま不動産市況がよくて、都心の物件が好調だけだっただけだよ。いまの新築物件まで同じ状況が続く保証はないよね。」ということになりますよね。
色んな要因があって、簡単にコレ!と決められるものではないんでしょう。ただ駅チカの大規模物件が値下がりしないのは、販売方法にも理由があるのかもしれません。
大規模な新築マンションは、物件周辺にモデルルームや販売員の説明スペースのついた「マンションギャラリー」なる簡易の施設を建設して、そこで案内や契約作業を行うのが一般的です。
(いまとなっては非常に残念・・・というか大変なことになった晴海フラッグさんのマンションギャラリー。)
新築マンションと中古物件の販売が大きく異なるのは、「価格交渉」が無いことです。
通常、中古物件は売り手と買い手が交渉して、折り合える価格を探っていきますが、基本的に新築物件はデベロッパーの決めた価格で買うか否かです。
中古物件で同じ部屋を買いたいと言った人が複数名出てきた場合、より良い条件を出した人と交渉が進みます。新築では(最初のうちは)一定期間申し込みを受付けたあと抽選になり、抽選に当たった方が購入権を得ます。(あの花をつけるやつですね)
なるべく申し込みが被らないように販売員が誘導しますが、買う方も数千万円を超える買い物になりますので妥協をする気は有りません。良い部屋があれば、当然複数の希望者が立つこともありますし、逆に売れ残る部屋も出てきちゃいます。
ここが重要なのですが、売れなかったからと値下げすることは基本的に有りません。
値下げをすると、同じマンションを先に買った人からすると「何勝手にそっちの部屋だけ値下げしてるの。俺の部屋も下げてよ。」と考えますよね。特に同じような条件の部屋の多いタワマンなんかだと尚の事です。以前には、裁判となったこともあります。
オプションを無料にするなどなどの方法で、実質値下げをすることはありますが、厄介事を避けるためにも、通常はおおっぴらに「値下げしました!!」と広告を出すことは控えます。
大規模な新築物件は、数百戸を効率的に販売できるため、中古よりも販売コストも大きく減らすこともあるのですが、同時にきっちり売り切れるように購入者が「買っても良いかな」と思える値段よりちょびっと安めにするモチベーションが働きます。
これって何かに似ていると思いませんか?IPO(新規公開株の売出し)に近いんですよね。
申込者が殺到するくらいの値段をつけておいて、抽選販売で確実に売り切る。それは、IPOと非常に近いものがあります。売る側にとっても、不確実性が高い分、多少利益が減っても確実に売り切れるような価格付けを行うモチベーションが働きます。(スミフでも無い限り)
新築マンションを買える人の条件
また買い手側の抱える不確実性は、IPO以上のものとなります。
地価の高騰と建築技術の向上に伴い、いまや駅チカの物件の多くが高層物件となりました。ただ技術が進んだといえ高層マンションの建設には未だに長い時間が掛かります。
ここ最近、界隈を賑わしているパークタワー勝どきですと、引き渡しは2024年の4月になります。で、販売はもう今年の11月から始めちゃう予定だそうです。約3年半後ですね。
駅まで地下通路まで引いちゃおうっていう贅沢仕様の物件ですが、これは特別長いってわけでも有りません。タワマンは、用地取得なんかも含めると、5年以上かかることも珍しい話ではありません。で、実際に作り終える前に、売り切るケースが多い。
新築マンションを買えるのは、こうした長期間の拘束についていけることが条件です。
抽選になるような人気物件ですと、物件価格1割の頭金が要求されます。4000万円の物件ならその場で現金400万円が用意できないひとは、最初から相手にされません。
また額が額ですので、大半の人は住宅ローンを利用することになるでしょう。
ローンを組むには、健康状態は勿論、勤務先も見られます。実際にローン契約を結ぶのは2〜3年後になるわけですが、事前に提携銀行との仮契約を結べないと、やはり売買契約に進めません。
また仮にローンの契約ができたとしても、3年先の生活の見通しなんて立たねえよ!どこで働いてて、誰と一緒に生活しているかなんか分かるわきゃねえ!!なんて人にもオススメできないでしょうね。
すぐに頭金が用意できて、心身健康優良で安定した勤務先に勤めていて、ライフプランがしっかり決まっている。
それがこの取引に参加する条件です。参加条件が厳しくなる分、お金はあるが条件は満たせない人が排除されるため、これも価格の引き下げ効果を産みます。
家選び2.0
ここまでの話を整理すると「駅チカのタワマンが10年経っても高く売れる理由」は諸々あるかと思いますが、ひとつの説として「構造的に、新築市場におけるデベロッパーの販売価格は販売側の条件が厳しいため、中古市場での価格と比べると安めに設定されやすいから」という理由が考えられます。
住宅購入は、いままで以上に、自分自身の健康と経済的信用をゼニに変える行為になってきています。ネット銀行の変動金利は0.4%代になり、残高に対して1%の住宅ローン減税を下回り、借りた分だけ得をする状況です。
しかし枠に入れない人は、値下がり上等で買うか、自己居住用よりずっと金利の高い不動産投資ローンのコストを間接的に負担して賃貸住宅に住むのかを選ぶことになります。
ただこれは比較的視野の狭いミクロな世界での話になりますが、今後の人口減少や、テレワークの進展など、マクロな部分で大きな変化があれば、ガラッと流れが変わることは幾らでもあり得ます。
私が思いつく程度のことは価格に織り込み済みかもしれませんが、家選びの際に「そんな話もあったなあ」と頭の片隅に残していただければ幸いです。
ではでは、今日はこのへんで。