こんにちは、らくからちゃです。
今年は随分年収が下がった・・・なんて人も多いのかもしれませんが、そんなひとにも平等にやってくるのが「年末調整のお知らせ」です。
毎年やっているはずなのですが、年に一回しかしないぶん、毎回はじめて行う新鮮な気分になれますね。が、今回は本当に新鮮な何かがやってきました。
基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 です(舌噛みそう)。
所得と控除
まずは簡単な振り返りからしておきましょう。
国に収める税金は、貰っているお給料の額に応じて変わります。税率は段階的に増加していく累進課税になっている。ここまでは、義務教育の範囲でも教えてくれるので、大抵の人が知っているかと存じます。
所得税の場合、下記のように計算します。
えーっと、じゃあ年収300万円の人の場合は、300万*10%-97,500円で20万2500円?結構するなあ・・・。では有りません。
「課税所得」とは、お給料から諸々の「控除」を差し引いたあとの金額です。
年金や健康保険などの社会保険料はまるっと控除になりますし、お給料の金額自体も給与所得控除で圧縮してもらえます。あとは医療費控除とか生命保険控除なんかも差し引くことが出来ます。
年収300万円の場合、所得はざっくり120万円くらいになり、所得税は5.5万円ですね。
基礎控除控除のルールが変わります
控除は全部で15種類あるそうですが、その中でも全ての人が使える(た)のが「基礎控除」です。
基礎控除の金額は38万円から48万円にアップされました。ただ給与所得控除が一律10万円ダウンしているので、行って来いで一般会社員は変わりません。しょんぼり。
そしてもうひとつ「基礎控除の所得制限」なる珍妙なシステムも導入されました。
(出典:何が変わる? 2020年基礎控除・給与所得控除改正| Money VIVA(マネービバ))
合計所得金額が2500万円を超えるような人の場合、基礎控除は使えなくなります。
というわけで事前に「今年の年収ってどれくらいになるん?」というお尋ねの便りが人事から到着したわけです。はっはっは、こっちが聞きたいぜ。
それはさておき、基礎控除がなくなる=所得が増える=税金が増える。になります。
所得で2500万円となると、相当稼いでいるひとですので、一般庶民にはあまり関わりのない話のように思えます。では財政にはどれくらいの効果があるのでしょうか。
基礎控除の改正でどれくらい税金が増えるのか
税収はどれくらい増えるのん?というところをウルトラ概算で見積もってみました。
国税庁発表の情報は課税所得2000万円台のひとがまるっとまとめられていましたので、超甘く2500万円以上はうち半分くらい(実際にはもっと少ないだろうけど)とすると、ざっくり影響するひとは50万人くらいです。
で、一人あたりの増税額がどれくらいになるのか。
- 所得1800万円から4000万円・・・40%
- 所得4000万円超・・・45%
これに住民税の10%が加わります。計算しやすいように、まとめて50%だという風に寄せておきましょう。
32万円区間・16万円区間もありますが、誤差の範囲でしょうから全部0万円として想定すると、雑な計算ですが48万円の50%で24万円が一人あたりの増税額になります。
最後に、50万円×24万円で計算する、1200億円がこの制度変更での税収増となる見込みです。
去年の所得税収が7.7兆円だったそうなので、1.5%ほどの税収増でしょうか。高額所得者の人数は、かなりブレ幅も大きいと思うので、今年どうなっているのかは蓋を開けて見なければ分からないでしょうけど、インパクトとしてはそれくらいでしょうね。
一般庶民には影響を出さずに所得の多い層だけを狙ってくれたのはありがたいんですが、この新しい申告書に困惑しているツイートをみていると、もう少し別な方法は無かったんやろうか?と思うんですよね。
謎の多い所得控除
基礎控除に限らず、所得控除というシステムは「金持ち優遇」との批判の多い仕組みです。例えば医療費控除なんか、お金持ちが自費診療でインプラントを入れても、半分くらい戻ってきちゃう。それってどーなのよ、と。
ちなみに海外での例を見てみると、こんな感じになっているそうです。
アメリカ・イギリスは、基礎控除に上限を設けるような方式。ドイツ・フランスなどでは、一定の範囲の税率をゼロにするような累進課税の設計で対応。カナダは、所得じゃなくて税額控除、みたいな感じですね。
今回の変更は、アメリカ・イギリス型ですけど、計算の手間やわかり易さでいうと、累進課税の段階を低所得者により優しいようにするゼロ税率・税額控除方式のほうがわかりやすくていいと思うんですよね。
ただでさえ所得?控除?と分からなくなるひとも多いわけですし、一律の基礎控除ならまだしも、所得制限の刻みをつけるなら「累進課税」の概念に一本化して吸収できるならば、そのほうが良かったんじゃねえでしょうか。
子ども手当の件もそうですけど、こうした「所得制限」が厄介なのは「制度の理解」「自分が該当しない確認」「その証明」が無関係の多くの人に求められるようになるんですよね。
やりたいことの趣旨は分からんでもないのですが、「課税三原則」の公平・中立・簡素にそって、もう少し簡単に計算できる仕組みにもっていければ良いなあと思う次第です。
ではでは、今日はこのへんで。