ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

やましいことも無いのになぜ銀行口座マイナンバー紐付け義務化にモヤモヤするのか

こんにちは、らくからちゃです。

毎月の給与明細から引かれていく税金の金額を眺めていると、ふと「脱税できる富裕層は良いよなあ」なんて思ってしまう小市民でございます。

そんなお金も無いわけですが、どうも銀行口座とマイナンバーの義務付け見送りと言われると、モヤモヤしてしまいます。今回は見送られたようですが、皆様いかがお考えでしょうか。

www3.nhk.or.jp

インターネットの意見に目を通してみると「何もやましいことが無いなら反対する理由もねえだろ」「反対するやつなんて脱税しようとしてる金持ちだけだろ」みたいな意見が大勢を占めております。

わたし自身、銀行口座すべてにマイナンバーを紐付けろと言われれば、面倒くせえなあとは思いますが、なんてこったい困っちまうねコリャとは思わんですよ。

ですがねえ「反対するのはやましいことでもあるのか」「貴様、脱税でもするつもりか」みたいに言われると、それはそれでモヤモヤしてしまうんですよね。

マイナンバーはどこまで紐付いていくのか

確かに、マイナンバーで資金の動きを個人に紐付けて捉えることができるようになれば、脱税だの金融犯罪の予防には役に立つことでしょうなあ。でもそれ銀行口座だけで十分なの??という疑問が出てくるわけですよ。

例えばpaypayみたいな電子マネー。銀行口座がすべてマイナンバーに紐付いて不都合のあるひとは、そうじゃない手段で送金するようになるんじゃねえのん?

まあpaypayは限度額やらなんやらあるようですが、仮想通貨はどうなるの?Amazonギフト券みたいな電子ギフトも十分送金ツール代わりになりうるけど、そこは大丈夫なのかな?なーんて疑問が出てくるわけですよ。

もう少し考え方を広げてみたらメルカリみたいな個人間で売買できるシステムは不要?以前、見覚えのある肖像画付きの紙で作った「折り鶴」とか出品されてましたよね。

元々トラブルも多いので、買うにせよ売るにせよマイナンバー義務化くらいしても良いんじゃねーのと思わんでもないですが、みんなが売買した面白商品の記録がマイナンバーに紐付けられちゃってもそれで良いんでしょうか。

もっと言えば、犯罪予防って観点だと、携帯電話やプロバイダーの契約もマイナンバーに紐付けちゃえば、ネット犯罪の抑止にも役に立つかも?なんならTwitterのIDにも紐付けさせちゃいます?

うーんとまあ言い始めたらキリがないような気がしますが、少なくともマイナンバーに紐付いた銀行口座から引き落とされるクレジットカードを使って、Suicaにチャージしちゃえば、データを組み合わせたら移動履歴がマイナンバーに紐付けられますよねえ。

銀行口座とマイナンバーを紐付けること自体に拒否感をもつひとは余りいないでしょう。

でも「犯罪抑止のため」が罷り通るようになれば、ちょっと試してみたいだけのサービスや生々しい生活情報に直結するサービスもマイナンバーに紐付けなきゃならなくなるかもしれないし、そうならなくとも間接的に紐付いてしまうのは、なんとなく嫌だなあと思う人が居ても仕方のない気がしませんか。

ドネとモネ

また本当に悪さしようとしているひとほど、そうなったら現金以外の決済方法を取るようになりますわな。悪さするつもりじゃなくとも、センシティブ情報がマイナンバーに紐づくのを避けたい人は、別の方法を取りたがるようになるのかもしれない。

我が国でも「円」でお給料を受け取り、買い物をして、税金を納めるようになったのなんてほんの150年くらいの歴史のことですよね。それより前は、通貨はバラバラだったり、物々交換が多かったり、税も良くわからない基準で現物納付してたりしてたわけっすよ。

その頃から考えれば、どこに行っても「お金」を使って自由に取り引きができるのなんて奇跡に近い。

なので、マイナンバーと紐づくのを嫌った結果、富裕層が貨幣経済を投げ捨てて、良くわからない謎の「ポイント」が貨幣のように流行ったらどうなるんだろうと考えちゃうんですよね。

例えば金持ちポイントで「カネポ」とでも名付けましょうか。私は簿記の先生をして5カネポ稼いで、散髪をしてもらって2カネポ払ったとする。この時、所得税と消費税はいくらになるんですかね。

どんな単位であれ、他の貨幣との換算レートがあれば徴税は可能です。ただそれを、意図的に低く抑えられたら徴税システムが破綻します。

「1カネポは公式換算レートで100円で発行し、一日あたりの発行総額には制限をかける。そのレート以外での換金は使用権剥奪。」みたいにされちゃったら、実際どれくらいの価値なのかがボヤけやすくなる。

一般的なコモディティ商品と交換できれば、だいたいのレートは計算できます。だけど参加者を限定して、不動産や美術品、特殊な技能などの供給に制約のあるもののみに使用用途を縛れば、外的に価値を算定することが難しくなるんですよね。

「フラクタル」というアニメの中で、ベーシックインカムとして支給されるドネと、市場で使うことのできるモネという二種類の通貨システムを併用する世界が描かれていました。ライフログを送信することでドネが得られるので、生きていく分には困らない。でも豊かで享楽的な生活ができるのは、たくさんのモネを持っている人たちだけ。

ドルは実質無制限供給モードになってしまい、お金とは何かが分からない状態になりつつあります。

その行き着く先として「量産された工業製品しか手に入らない法定通貨」と「一品物を手に入る何かで、一部の富裕層だけしか手に入れられない何か」みたいなふうに社会が通貨システムから分断されたりすることが無いと良いなあ。なーんて考えるのは、ちょっと妄想のしすぎでしょうか。

やましいことが何もない人達へ

話が脱線しまくりましたが、銀行口座がマイナンバーに紐づくことそのものへの忌避感はありません。ただ間接的に諸々の情報が紐付いていったり、対象がどんどん拡大していくことが無いのかなあという心配はあります。そして自分自身がその心配をしていなくとも、他の人が行動を変えてしまうことへの不安感もあります。

まあだいたい、手間賃程度の上乗せをしてマスクを譲っただけでも逮捕されるようなお国ですから、お上が情報収集しやすくなっても良いことがあるとは思えんのですよね。

そういやもう随分前の話ですけど、アカウントIDと住所情報の紐付けを義務化しようとして大炎上した会社がありましてね。なんかそれとも似てるような気がするんですよ。

たしか「はてな」って名前だったと思いますが。

www.hatena.ne.jp

ではでは、今日はこのへんで。