こんにちは、らくからちゃです。
お盆シーズンも後半戦に差し掛かりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?実家に帰って家族水入らずでのんびり過ごしている人も多いのでしょうか。
遠くに住んでいて、日頃ゆっくり話す機会が無い人は、たまり溜まった四方山話に花を咲かせたいところですが、お盆休みは家族の今後の生活について話し合うチャンスです。中には
- 不便ないまの家を売り払って駅チカに住み替えたい
- 定年退職後は地方に移住して農業をやってみたい
- パパな、HIPHOPで食っていこうと思うんだ
などなど、想像もしていなかった相談を受けた人も多いでしょう。
何をどうしようと本人の勝手ですが、まず先立つものはお金です。そして老後の生活において、多くのケースで一番の収入源になるのは農業やHIPHOPでの稼ぎではなく年金です。
公的年金制度には、会社負担分も含めて年収の1割近くを課金しているというのに、ほとんど理解していない人が多く見受けられます。また自称「お金のプロ」ですら、iDeCoやNISAについては、しょうもないことまで熟知しているのに、年金については基本的なことも、からっきしという人は多いような気がします。
「どうせ自分が受け取る頃には制度も変わってるだろうから」と及び腰になる人が多いのは当然だと思いますが、家族の生活・働き方に直結する人は少なくありません。私自身、あんまりちゃんと分かっていない所も多かったので復習も兼ねて整理したいと思います。
- 公的年金の種類
- 年金はいくら貰えるのか?
- 年金はいつから貰えるのか?
- 繰り下げ受給・繰り上げ受給
- 働いた場合はどうなるのか?
- 税金・社会保険料はいくらになるのか?
- 年金を理解することは資産運用の一番重要なテーマのひとつ
公的年金の種類
まずは簡単なところから復習しておきましょう。
日本の年金制度は「2階建て」と言われます。年金には、20歳から60歳の国民全員が加入する「国民年金(基礎年金)*1」と、会社員・公務員の加入する「厚生年金」の2種類があります。
(画像引用:日本の年金制度 | 年金の基礎知識 | 企業型確定拠出年金 | 野村の確定拠出年金ねっと)
第1号被保険者になる自営業者や学生、無職のひとは自分で国民年金保険料を払わなければなりませんが、第2号被保険者になる会社員は通常お給料から「厚生年金保険料」の名前で天引きされます。
「会社員も国民年金に加入することになってるけど、払った記憶がないぞ」という人もご安心を。会社員の国民年金(基礎年金)保険料は、厚生年金から基礎年金拠出金として負担されているので、自動的に支払い済み扱いになります。また会社員の配偶者で、所得が一定以下のひと(いわゆる専業主婦)も第3号被保険者として、国民年金は払っている扱いとなります。
整理すると
- 自営業者・・・国民年金
- 会社員 ・・・国民年金+厚生年金
- 専業主婦・・・国民年金
に加入していることになります。
国民年金は、毎年一定の「定額」を納め、受給時も全員一律の定額をベースに支給されます。厚生年金は、給料から「定率」で納め、受給時は今まで納めてきた金額に応じた支給が受けられます。
年金はいくら貰えるのか?
さて年金の種類について復習できたところで、本題である「いくらくらい貰えるのか」について見ていきましょう。
国民年金の受給額
まずは国民年金ですね。国民年金の受給額は、ざっくり分かりやすく言うと、満額受給額*(支払年数÷40年)で計算されます。もう少し細かくいうと、計算は月単位、免除期間等が有る場合は、支払年数は免除率で調整されます。
満額受給額は物価や賃金によって増減しますが、2019年現在では780,100円です。
20歳から60歳まで満額収めていた場合、2ヶ月に一回偶数月の15日に約13万円、月額換算で6万5千円を受け取れます。例えば、学生の間は納付特例制度を使って払っていなかった場合は満額未満になります。
最大の480ヶ月に満たない場合は、「任意加入」を利用し、60歳以降も支払い続けることにより満額受給に近づけることができます。
厚生年金の受給額
次に厚生年金です。まあ一言で言えば「カオス」です。相次ぐ制度変更を繰り返した結果、初見の人には何がなんやらさっぱりわからない構造になっています。細かい部分は抜きにして、大雑把なところを抑えていくと、
- 報酬比例部分
- 定額部分
- 加給年金額
の3点から構成されます。
先に書いたとおり、厚生年金は給料に対して定率で天引きされますので、その分受け取るときも過去の支払額が大きい人ほどたくさん貰える仕組みになっています。その給料に比例する部分が「報酬比例部分」ですね。
平成15年(2003年)を境に「給料」にボーナスを含めるのかどうかの計算式が変わったため、若干計算式が変わりましたが、基本的なコンセプトは変わりません。
若いうちから退職するまでの平均年収が500万円の場合は、平均報酬額は約41.7万円になります。すべて平成15年以降で40年間働いていたものとすると、年間の年金額は約110万円、月額9万円ほどになります。
上記とは別に国民年金が支給されます。しかし国民年金は40年以上加入できない仕組みです。そのため20歳未満60歳以降に厚生年金を支払った場合には、40年分を超過してしまい、損をしてしまいます。この「余計に払った国民年金相当分」の年金を受け取る仕組みが「定額部分」と言われている箇所ですね。
で最後の「加給年金額」というのは「年金を受け取る歳になったのに、まだ年金が貰えない歳の主婦や、子供がいる人は大変じゃろう」とつけて貰えるオマケです。
年金はいつから貰えるのか?
金額は分かったところで、次は「いつから貰えるのか」です。
我々は75歳以上じゃないと貰えねえんじゃねえの?みたいな話ありますが、現在年金の受給開始年齢は国民年金・厚生年金ともに65歳からです。
国民年金は昔からずーっと65歳でした。厚生年金は55歳から段階的に国民年金と同じになるように開始年齢が引き上げられてきました。いきなり10年ドカンと引き上げると老後の生活設計へのインパクトも大きため、定額部分と報酬比例部分で別々に、徐々に引き上げを行ってきました。年金機構の資料を見ると、こんな風に記載されています。
分からん!!
なんでこんなに分かりづらいのかを考えたのですが、
- 既に済んだ話も含んで書いている
- 表記が和暦で計算しづらい
- 結局、何年から貰えるのかが見えづらい
からかなーと思ったので、整理してみました。
うむ、すっきり(※個人の感想です)。
西暦1959年度、昭和34年度生まれの60歳男性が報酬比例部分の年金を受け取れるようになるのは64歳=2023年からで、国民年金も含めて全額受給出来るのは2024年から、みたいな見方ですね。
繰り下げ受給・繰り上げ受給
この年齢は、標準で年金が貰えるようになる年齢です。
定年後の就職先が見つからず生活できそうにない場合などにはは、前倒しして年金を受取る「繰り上げ受給」が選択できます。ただし、前倒しした場合は受け取ることの出来る年金が一生減額されつづけます。
65歳から貰えるものを5年前倒しして60歳から受け取ると、30%も減額されます。
一方逆に、受給開始年齢を遅らせる「繰り下げ受給」を選ぶと、受け取ることが出来る年金が一生増額され続けます。
どちらがお得かと言えば、基本的に「長生きするならば繰り下げ」ということになります。ただ繰り下げをすれば、それだけ「高額所得者」という扱いになり、支払うべき税金が増えます。
逆に65歳から70歳までも働き続けるつもりがあるのなら、給与所得との合算額を増やさないために、受け取りを後ろ倒ししたほうが得するケースもあるため、そう簡単な話ではありません。
何にせよ年金は「長生きに対する保険」なので、損得だけで考えずリスクへの対応という観点から「使わずに済むなら後ろ倒しにしておく」がセオリーなのかなあと思いますね。
働いた場合はどうなるのか?
いまやコンビニやファーストフード店に行っても、70代近い高齢者が元気に働いている姿をよく見かけます。ただ年金を貰いながら働こうとした場合、年金額が減らされる「在職老齢年金」という仕組みがあります。
まず70歳までは、既に年金を貰っていようが会社員として働き続けるなら厚生年金を払う必要があります。
65歳未満の話は割愛し、65歳以上でポイントだけ言えば「厚生年金の報酬比例部分+月収 > 47万円 」の場合、超過分の半額分年金が減額されます。あくまで厚生年金の報酬比例部分の話であり、国民年金はそのままです。
最近は「なんでマジメに働いているだけで、自分の権利である年金を減らさねばならんのや」と評判も良くないため、見直しの方向で話は進んでいます。
個人的には、稼いでいる高齢者の負担は税の問題であって、年金の受給額をへらすのおかしいでしょという考えと、そもそも年金は働けなくなったときの生活の保証なんだから稼いでいるなら支給しなくても良いでしょという考えのどちらもアリだよなあという感じはします。
将来どうなるかはさておき、現状のルールとして知っておいたほうが良いでしょうね。
税金・社会保険料はいくらになるのか?
最後に税金の話です。
「え、年金にも税金ってかかるの?」とお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、ちゃーんとお給料と同様に、源泉徴収て天引きされます。
ただし全額が課税されるわけではなく、「公的年金等控除」がつきますので、それに伴い税金額もディスカウントされた金額になります。最近の改正でまたややこしくなりましたが、年金以外に収入のない場合、
- 65歳未満・・・年間70万円
- 65歳以上・・・年間120万円
までは全額控除されるので無税です。それ以上の金額を貰っている時に、税金が生じます。
あと高齢者も健康保険料を払わなければなりません。健康保険に関しては更に難解です。ざっと整理してみるとこんな感じです。
まず75歳以上は全員、65歳以上の障害者のうち希望するひとは後期高齢者医療制度を利用することになります。保険料は都道府県ごとに異なりますが、全国平均で均等割4.5万円と所得割が8.8万円になります。
上記に該当しない人で、
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 雇用期間が継続して1年以上見込まれること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと
- 常時500人を超える被保険者を使用する企業(特定適用事業所)または500人以下で加入について労使合意した企業に勤めていること
に該当する場合は、被用者保険(会社の健康保険)の対象になります。この場合、現役時代と同様に、お給料から天引きですね。保険料は加入する保険で異なりますが、東京都の協会けんぽで4.45%になります。
ここから先は色んなケースに分かれてきますが、一番おトクなのが子供や配偶者の扶養家族になって、その人の加入している保険の被扶養者扱いになること。この場合はゼロ円ですね。
他には、元々働いていた職場の保険を「任意継続被保険者」として加入することもできます。保険料は、会社負担分も自己負担になるので、ざっくり退職時の2倍になります。ただし、標準報酬の上限が30万円になるため、それに伴い上限額も35.6万円となります。
最後にいずれにも該当しない場合は国民健康保険に加入することになります。保険料は市町村ごとに異なりますが、全国平均で均等割3.2万円に所得割が9.55%です。
例えば、年間300万円の年金を貰っている場合
- 公的年金控除を差し引き190万円
- 住民税基礎控除の43万円を差し引き147万円
- それに所得割を掛けた14万円に均等割を3万円を足して約17万円
という金額が健康保険料になります。そのまま税金も計算すると
- 公的年金控除を差し引き190万円
- 医療費控除を差し引き173万円
- 住民税は基礎控除43万円を差し引き130万円に10%をかけて13万円
- 所得税は基礎控除48万円を差し引き125万円に5%をかけて6万円
300万円の年金が合っても手取は、36万円ほど引かれて274万円といったところでしょうか。現役世代ほどではないにせよ、まあまあ沢山持っていかれます。
年金を理解することは資産運用の一番重要なテーマのひとつ
とにもかくにも複雑でややこしい話だらけの年金制度ですが、今後の生活設計を考えていくにあたって、無視できない内容が満載です。年金の他に2000万円必要といった議論が世間を賑わせましたが、こうした話も前もって知識がなければ理解が進みません。
さて直近に発表された「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、月額の年金受給額は全国平均で
- 厚生年金・・・147,051
- 国民年金・・・55,615
という金額だったそうです。
こうした数字も頭に入れながら、将来のことについて考えてみるのを「夏休みの宿題」にしてみるのもよいかなあと思う今日このごろです。
ではでは、今日はこのへんで。
*1:厳密には国民年金と基礎年金は範囲が異なるため別のものだが、本文中は国民年金に表記を統一する