ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

「ゆとりの修行」をロスジェネが笑える日はやってくるのだろうか

こんにちは、らくからちゃです。

先日ぼけっとテレビを見ていると「コントの日」という番組がやっておりましてね。まるっと2時間半もコントを流し続けるというものでしたが、たまにはこういうお笑い番組も良いですね。たけしの老害感あふれるネタを除けば総じて良かった気がします。


コントの日CM~2時間半編~

お笑いのネタって、なんの突拍子もないものより、モチーフとなっているシチュエーションがあって、それを面白おかしく肉付けしているものも多いじゃないですか。元ネタによっては「それは笑えねーよ」「そんな風に弄られたくない」と思うひとだっていますよね。

今回の番組の中でヒヤッとしたのが「ゆとりの修行」というネタ。 ざっくりあらすじをまとめるとこんなお話です。

先輩寿司職人が準備をしていると「今日からお世話になります」と、ゆとり世代の若者が新人として入ってくる。先輩は「うちのボスは厳しいぞ。俺なんて10年修行しても、ずっと下働きだ。教えてもらえるなんて思うな。覚悟しとけ。」と諭す。

ところがボスは入ってくるなり、新人に手取り足取り優しく丁寧に指導を始める。挙句の果てに、先輩は10年経っても握らせて貰えなかった寿司を簡単に握らせ、更に先輩職人がいずれ一人前になったら譲ってもらう約束の包丁も、欲しいならやるよと新人に渡そうとする。

先輩がボスに理由を問いただすと「テレビの番組で、最近の若者は褒めて伸ばせって言ってた」などと言われ・・・

ざーーーっとまとめるとこんな感じ。

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どうです、笑えます?

「ゆとりの修行」のリアル感

コントって表情や演じ方などの要素が大きいものなので、文字だけだと面白さの大半が失われちゃいますけど、それを差し引いてもエグい話ですよね。この話の下敷きとなっているのは、2年ほど前に盛り上がった「寿司屋の職人問題」なのかな。

news.careerconnection.jp

「ゆとり」というより、「さとり」や更にその下の世代のようにも思えますが、最近の新入社員は入社当初より「ワーク・ライフ・バランス」「ハラスメント」対策がしっかりされ、わたしが入社した頃よりもうんと丁寧に扱われている印象があります。

一方で、我々の先輩世代、特にロスジェネと言われている皆様からは「人に聞くな。自分で考えろ。見て覚えろとしか言われなかったね」「20代の頃は終電まで働くのが当たり前だと思っていた」「代わりなんて幾らでも居るというプレッシャーが強かった」なんて話がバンバン出てくる。

ある意味「働き方は自己責任」から「働きやすさはコンプライアンス問題」という時代の変化を捉えた物語で、割りとどこの職場にもあるお話かもしれません。

ただこれ、10年経っても寿司一つ握らせて貰えなかった側からみると、心に突き刺さる話なんじゃないのかなぁ。

途切れたキャリアは誰がつなぐのか

モーレツに働けば、将来が約束されていたバブル世代までならばまだ笑ってみれるかもしれません。でも将来の保証も無いまま、あてのない仕事を不安定雇用で続けざるを得なかった氷河期世代、ロスジェネの人たちの目にはどう映るのでしょうか。

近年、40代前後の人材不足が話題に上がることが増えてきました。

今後「現場で生産ラインを回せないくらい人が足りなくなることを危惧」していて、「ないものねだりをしても仕方ないので、若い人を早く登用して育てていきます」との見通しを語っていた。

現在の30代後半~40代前半は、バブル崩壊後の不景気の中で就活を迫られた氷河期世代だ。この世代は、有効求人倍率が毎年1倍を下回り続け、新卒で職に就くチャンスが他世代より著しく低かった。更に、企業の新卒一括採用の風潮が今より強かったため、既卒者は卒業後、企業に門前払いされてきた。非正規やアルバイト等でなんとか食いつなぐ人も多かったため、キャリア採用で求められるような経験を積めていない人もいる。

こうした背景を踏まえ、小堀氏の一連の発言は無責任だと批判する声が多い。氷河期世代に採用を渋ったのに、今更人手不足と嘆くのは虫が良すぎる、という訳だ。

「40代前半がいない」人手不足を嘆く旭化成社長の発言に就職氷河期世代の不満爆発「自分たちが採用しなかったくせに」「当たり前」 | キャリコネニュース

どこもかしこも人手不足と言われる昨今においても、この年代は未だその恩恵が届いていないという話はよく耳にします。このコントのように、大事に育成されているのは若手だけで、40代前後の社員は「実力主義」の名の下で放置され続けているケースも多いんじゃないでしょうか。

だったら海外に活路を求める!という人もいるっちゃいるのやもしれません。

nyaaat.hatenablog.com

確かに海外で働く日本人自体は、かなり増えてるんですよね。

海外で働くには、日本企業に就職して駐在員として派遣される方法と、現地企業に直接採用される方法があります。特に近年、現地採用者数は凄い勢いで伸びています。

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(出典:変容する海外で働く日本人―現地採用者に着目して―)

若い層を中心に、場合によっては国内での就労経験が一切無い若者が「新卒」として海外に働きに出ているものが多いとか。確かに、私の身の回りでも、そういう人は何人かいます。彼らは皆、技術力も語学力も高く、世界のどこに行っても通用する人材です。

ですが、いままで十分にキャリア形成が出来てこなかった人にとっては、より厳しい市場になっていくことでしょう。

また若くて相対的に低所得の国からの労働者は、将来的に蓄えをためてお引取り願う選択肢もあります。歳をとっていて相対的に高所得の国からのひとは、母国に戻るだけの資金を貯めるのも難しく、社会保障費を増大させる可能性も高く、受入国側からすればお引取り願いたいタイプになるでしょう。

恨みをどうすれば乗り越えていくのか

この世代を取り上げた話題にふれると、この世代で不遇な立場にあるひとの「被害者意識」「損をした感」は激しいものを感じます。

ちょっと怖いなあと思うのが、こうした番組が「世代間対立」を煽るようなものになってない?ってところなんですね。

実際、たまたま生まれた時期が悪くて不幸な目にあっている部分も多いでしょうから、割りを食っている面が大きかったのは事実でしょう。統計結果に目を向けてみると、改善されるどころか悪化している若者の現状も見えてきます。

www.yutorism.jp

 このテーマで記事を書いたときに「ロスジェネの頃は受験戦争も今より厳しく、大学進学率も低かった。その努力が報われなかった想いが強い」という反応を何件か見ました。

その"想い"はわかるのですが、大学進学率が上昇し、奨学金の利用率が上昇した現在においても、若者のお賃金はいまだ低いままです。つまり学費分だけ生活の負担が増えてるんですよね

苦しんできたひとたちから「君らは楽をしている!」なんて言われるようなことは無かったけども、その他の人たちから「君らは、あの最悪の世代よりはずっとマシだ」と言われることは割りと多かったんですね。しかし改めてデータを見ると、マクロでは、経済的にはむしろ悪化している状況なんです。

そもそも社会環境が何から何まで異なる世代を、共通の軸で比較できるわけがないんですよ。にもかかわらず「今年の新入社員の特徴」みたいに、色付けをして世代間の分断を煽るような言説は「分断して統治せよ」の最たるものです。

コントの中でも、先輩職人が新人とのあまりの扱いの差に憤慨しても「いや、君は厳しいのに慣れてるから大丈夫でしょう」と言われ愕然とするシーンがあります。これこそ「笑えない」ひとが多い場面だったんじゃないでしょうか。

これってまさに「呪い」だよね。

レールに乗れないひとは、成長の機会を失う。最初にレールに乗れなかったら、二度とレールに乗ることは出来ず、環境を乗り越えるチャンスも与えられない。これこそ、この物語を笑えなくしている一番の要素なんじゃないだろうか。

考えてみれば、社会の変化のサイクルはどんどん早くなっているし、70まで働くことが求められるようになる時代で40前後はまだまだ折り返し地点手前。まだまだ新しいことにチャレンジできる世の中じゃないといけない。

この呪いが早くとけて「ひどい時代もあったんだよ」と、笑って過ごせるようになることを切に願うのみでございます。

 

ではでは、今日はこのへんで。