こんにちは、らくからちゃです。
保険というものはリスクに備えて加入するものです。通常、人件費を筆頭に諸々の諸経費も掛かるため平均支払額は期待リターンよりも大きくなってしまいます。そこで基本的に、保険に入るよりも自身で運用したほうがお得です。
もちろん万が一の事態が起こったときでも生活を破綻させるような状況に陥らないように、損を承知で加入することも重要です。ただその場合も、必要最小限の金額での加入に留めて「支払った保険料が無駄にならない」なんて甘言に惑わされず掛け捨て型にすべきですね。
我が国には強力な公的医療保険制度、年金制度、介護保険制度があるため、個人で保険にはいる必要がないひとも多いでしょう。 しかしそういう人でも「保証とかどうでも良いから、定期預金代わりに使って保険料控除だけ寄越せ」を戦略に活用出来る保険も何種類かあったりします。
そうした保険について、面白半分に調べてみたので整理しておこうと思います。
医療保険控除の仕組み
まず、医療保険控除の仕組みについて確認しましょう。
現在の医療保険控除制度は2012年に改正され、金額計算の区分けが大きく代わりました。古い話をしても仕方ないので、現在の制度のみについてみていきましょう。
医療保険控除という大きな枠の中に、
- 新生命保険料控除・・・遺族への給付など
- 介護医療保険料控除・・・介護保険や医療保険など
- 新個人年金保険料控除・・・個人年金など
がそれぞれの枠として設定されます。
枠の中で、支払った保険料に応じて税控除として使えます。課税対象となる所得が減る分、税金を安くできます。ただし全額が対象になるわけではなく、支払額に応じて控除額が減っていくイメージです。また所得税と住民税では控除できる金額も異なります。
所得税の控除について、関係を整理するとこういうイメージですね。
また医療保険控除全体での上限額も存在します。所得税は、4万円*3種類=12万円が全体の上限とも一致しますが、住民税は全部使い切った場合、8.4万円分ではなく全体上限の7万円の適用になります。
医療保険控除はどれくらいの節税になる?
ただこの金額は「控除額」であって、実際の節税額ではありません。実際に戻ってくるのは、上記の金額に税率(限界税率)をかけた金額です。税率は課税所得に応じて増えていきますので、稼いでいるひとほど高くなる=節税額は大きくなることになります。
控除枠を限界まで使い切った想定でシミュレーションしてみると下記のようになりました。
年収400万円の人なら、節税額は13,100円、500万円・600万円はともに19,300円、700万円の人の場合、31,500円となる計算です。
税金の処理自体は、年末調整のときに、保険会社から送られてきた資料を人事に提出するだけなので、対して面倒な話ではありません。ただ加入のときの手間などを考えると、ちょっと微妙な金額かもですね。
ただまあ、中にはリスクほぼゼロで控除だけ狙える保険もあるので、そうしたものを使ってみるのも良いかもしれません。
具体的にどういう商品があるのかも見てみましょう。
新生命保険料控除編
まずは「保険で貯蓄&節税」のため"だけに"あると言っても良いこの商品。
TVCMも多く流していますし、ご存知のかたも多いでしょう。
まず強いのが「いつ解約しても支払った額が100%返ってくる」という点ですね。
普通の保険は、解約した場合に戻ってくる返戻金は、加入期間が短い場合100%を切る(支払い総額よりも少ない)場合がほとんどです。いつでも100%返ってくるというのは、何も考えずにとりあえず入れる上に、税控除だけゲットできることになります。
またそのままずーっと寝かせて置くと10年後に103%になって戻ってくる設計ですが、一方不慮の自己で死亡してしまっても、払った額の110%しか戻ってきません。よくぞまあ、これが保険料控除の対象として認可されたものです。
1口5,000円単位でしか加入できないため、キレイに控除を使い切れるように設定出来ず年間払込額は120,000円になりますが、年収500・600万円代の期待節税額年間6433円で計算すると、5.36%相当のリターンが得られます。
とはいえ、10年後まで寝かせても3%しか増えない。年率換算だと0.26%と定期預金に毛の生えた程度にしかならないので、そこもまた考えものです。
更に加入はネット申し込みが出来ず、保険のお姉さんとお喋りしなきゃいけないらしく、わざわざ年間6000円、5年間でも30,000円のためにやるほどのことかどうかは判断が分かれるでしょうね。なおコーヒー代とかは出るそうですし、お姉さんと会いたい人には良いかもしれません(笑)。
もうちょっとマトモな保険が良いのであれば全労済の共済なんかも良いかもしれませんね。
満期時に貰える満期金を自分で設定して作れるのですが、満期金を100万円、死亡共済金を限界まで絞り込むなどすれば、似たような保険を作れます。ほんのちょっぴりですが、増えるみたいですね。
返戻金は「じぶんの積立」ほど好条件ではないはずですが、シンプルな内容で税控除が欲しく、一応保障も欲しい。なんて人には良いかもしれません。
新個人年金保険料控除編
お次は、個人年金。これもJA共済の「ライフロード」という超有名商品があります。
基本的には年金商品なので、受け取りは60歳以降の商品です。利率が変動するタイプの商品ですが、契約時の予定利率は当初0.5%、5年目以降0.75%と、定期預金と比べると、だいぶマシな利回りです。
試しにちょっとシミュレーションしてみました。
32歳の現在から60歳まで毎年10万円ずつ支払い、60歳から5年間年金を受取るものとしてみました。支払いは280万円、受け取り総額は360万円ほど。
この金額はJA共済が「最低保証」と謳っている金額です。現在の運用状況での予定利率は、直近で1.47%ありますので、もう少し期待が出来ます。
それに伴い、解約時の返戻金の金額もそこそこ悪くないんですよね。いまの利回りだと10年で100%を超えるそうなので、老後の備えとしてだけでなく、いざとなったときに動かしやすい資金としても扱いやすく、大した額ではないものの税控除も狙っていけます。
介護医療保険控除編
最後に残ったのは「介護医療保険控除」ですが、ここに関しては生命保険・年金保険のような、貯蓄としても使える美味しい商品を探してみたものの、これといってピンとくるものが無いんですよね。
まず思いつくのが、メディカルキットRのような支払った保険料が、使わなければ全額戻ってくるようなタイプの商品。
でもこの手のタイプの商品って、肝心の(?)税控除の対象にならないんですよね。
以前は、JAのガン共済あたりが「保険会社の社員がコッソリ入っている保険」として有名でしたが、返戻金も廃止されてしまったいまでは節税のために入る意味は殆どありません。
そもそも返戻金の情報って、ほとんど公開されていないのですが、珍しく公式にサンプルを出しているソニー生命の「総合医療保険」の場合、こんな感じ。
(出典:総合医療保険)
短期だと確実に大赤字になるし、長期でも節税額を割り込む水準しかない上、他の方法で運用すれば得られた運用益も得られません。
まあ医療保険については、ケチくさいことを考えずに素直に保障の内容で選ぶか、どうせ住民税枠もあふれるので気にせず捨ててしまって良いような気がします。
まとめ
というわけで、貯蓄性が高く節税にもなる保険について整理してみました。
そもそも保険料控除自体大した金額ではありませんし、手間暇をかけて狙うほどのものでもないのですが、現状でも60歳まで余命宣告されようと資金拘束が確実で、将来の税控除がどうなるのかの確約もないiDeCoと比べれば「まず最初に考えてみる節税プラン」としては悪くないやもしれません。
ただ預金保険のついている銀行預金と異なり、運営母体の信用リスクもあるので、そこも頭には入れておいたほうが良いでしょう。
また期待値がマイナスであれ、収入や資産の状況、家族構成によっては保険は便利な金融商品です。改めて、考えなおすきっかけにしてみても良いかもしれませんね。
ではでは、今日はこのへんで。
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