ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

『支持政党なし』と直接民主主義について考えてみた

こんにちは、らくからちゃです。

先日、下記の記事の中でも少し取り上げてみたけれど、『支持政党なし』という変わった名前の政党が話題になっているみたいですね。

確かに今日も「どこに投票しようかなー」といろんな記事を読みながら考えこんでしまいましたけど、もうどこでもいいよー(´Д`)ハァ…と思いたくなる時もありますわな。選挙区は誰かに入れたとしても、比例区はもう『特に無し』でいいよ・・・というひとも多いのかもしれません。

前回の選挙では、

  • なし・・・無効票扱い
  • 支持なし・・・支持政党なしへの一票

となったそうですが、果たして今回はどうなるんでしょうね。

さてこの『支持なし』ですが、議席を得た場合、法案の採決の際には、自分たちの判断ではなく、ネットで行った投票結果を元に行動すると言ったことを政策として掲げています。

なるほどねえ。選挙で一票を入れたところで、選挙の時に言っていたことは実現してくれないし、だいたい全然関係のないことまでし始める。だったら、全部ネット投票にしやがれ(゚д゚)ゴルァと言いたい気分のひとも多そうですな。

『支持政党なし』は、『直接民主主義への挑戦』を標榜し、国民が直接政治に参加する方法を提案しています。インターネットが普及し始めたころから、『もう国会議員に決めさせるより、ネット投票で全部決めたほうが良くね?』みたいな意見は度々出てきたし、言わんとすることは分からんでもない。

国会議員のお仕事

もう国会議員なんかいらへんで!全部ネット投票で決めるんや!と言うのはいいけれど、議員のお仕事って、国会で議決権を行使することだけじゃないよね?

法案提出はどうなるんだろう?

『議決権を行使する対象』になる法案は、官僚が代筆するケースも多いけど、国会議員が法案を作って、提案する『議員立法』の件数も少なく無い。

直近の第190回国会では、内閣提出法律案が56件・議員立法が72件と件数では上回ってすらいる。成立件数では内閣提出法律案が50件に対し議員立法は18件と大きな差があるのはまあ事実なんだけど、国会議員も自ら法案を提出して作ることが出来るわけですな。

(参考:最近における法律案の提出・成立件数 / 内閣法制局)

こういった法案を書くお仕事をどういう風にするのか?『支持政党なし』のホームページを見てもあんまりよくわかんないんですよね。もっとも法案提出には最低20人の仲間が必要だそうなのでそれをクリアするところが難しいのだろうけど。

審議はどうなるんだろう?

あと提出された法案は、ただ『賛成!』『反対!』って投票するだけじゃないよね?普通は、各委員会で『これってどういうことよ?』と議論し、必要があれば修正案も行う。その前に、与野党間で事前協議をすることもある。

そこの議論への参加の仕方ってどうなるんだろう?それも全部ネット投票で『聞くこと・確認すること』みたいなのも集計して、票数が多かったものから優先して聞いていくって感じになるんだろうか?

聞くだけならいいけど、相手の答えに対して、再度確認・質問を行う内容ってどうやって決まるんだろう。

法律の問題点は誰が考えてくれるんだろう

あと市民が政治に直接参加する!っていうのは、理想的ではあるんだろうけど、本当にそんなことができるんだろうか。

例えば、今国会で成立したこちらの法案

国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等及び外国公館等の周辺地域の上空における小型無人機の飛行の禁止に関する法律案

すんげーざっくりまとめると『大事な施設の近所でドローン飛ばすなよヽ(`Д´#)ノ』ってことなんだけど、数えてみたら6000文字くらいある。簡単な法案に見えるかもしれないけれど、きちんと読み込まないと『大事な施設』の範囲がすごく広く設定されてしまい、大変不便なことになったり、誰かが損をすることになるかもしれない。

そんなのいちいちやってられるんだろうか。

『興味のあるものだけ参加する』ってスタイルになるのかもしれないけど、よくわからないうちに、なんだか大変なものが可決されちゃったりしないのだろうか。

同党のページを見ていても、なんだかその辺がしっくり来ないんだよなあ。

直接民主主義の課題

たしかに、いまの政治家がみんなちゃんと、上に書いたようなお仕事をやってくれているのか?と言われると怪しいし、この人法案ちゃんと読めるんだろうか・・・と思いたくなる人もいる気がする。

でも、『直接民主主義』のほうがよりマシなんだろうか。

例えばイギリスのEU離脱を決めた国民投票。どれだけのひとが、正しく判断するだけの知識を持っていて、本当に真剣に考えたうえで投票したんだろうか。

政治には、いろんなコストがかかる。それは、国会議員の給料や選挙にかかるお金だけじゃない。目には見えないけれど『政治のことを考えるために必要なコスト』だって掛かる。ざっくり言えば、投票所に行く時間をすべて時給換算すれば大変なことになるよね。とかね。

あとこれは何度でもいうけれど『民主主義=多数決』じゃないんだよね。一応過去記事のリンクものっけておく。

議論の前にしっかり勉強して、いろんな人で話し合って、ちょっとずつ妥協しながら折り合いのつく地点を探していく。それを全員でやろうとすると、とんでもない『コスト』がかかってしまう。だから代表を選んで代わりにそれをやってもらう。

もし、直接民主主義的な方法取った場合、『物凄いコストが掛かる』か『物凄く適当な政治』のどちらかになってしまうんじゃないだろうか。

もちろん、公約として直接民主主義を掲げるのはアリだし、そういったことを目指す政党を応援するのも自由だと思う。わたし自身も、本当にこの人たちは仕事してくれているんだろうか?と思うこともあるし、全然選挙のときに言っていなかったことをし始めたりと、もういっそ直接民主主義でもいいんじゃね・・・と思う時もある。

だけど、『支持政党なし』に投票をするのであれば、「このひとたち、採決の時以外は何をするんだろう?」くらいは考えたほうがいいと思うんだよね。

そこからもう一歩踏み込んで、『本来、国会議員の果たすべき役割ってなんだろう?』『どういった人を議員に選ぶべきなんだろう?』そういうことを考えるのはアリなんじゃないのかな、と思う。

投票日は明後日。まだ時間は残っているので、じっくり考えないとね。

ではでは、今日はこのへんで。