こんにちは、らくからちゃです。
今日は1月15日です。小さいころ『成人の日』といえば1月15日のお休みの日のことでしたが、最近は1月の第二月曜日になるんですよね。いつからそうなったんだっけ?と思って調べてみたら、2000年から変わったそうです。今年成人式を迎えた若者たちが5歳の頃なので、1月15日が成人式だったことを知らない世代かもしれません。
さて、成人の日にあわせて新成人の人口に関する情報が総務省から発表されました。
新成人人口は 21 年ぶりに増加
新成人人口について,この推計を開始した昭和43年からの推移をみると,第1次ベビーブーム(昭和22年~24年)世代の昭和24年生まれの人が成人に達した45年が246万人で最も多くなった後,減少に転じ,53年には152万人となりました。その後,昭和50年代後半から再び増加傾向を続け,第2次ベビーブーム(昭和46年~49年)世代の人が成人に達した時に200万人台(最多は平成6年207万人)となった後,平成7年に再び減少に転じて以降は減少傾向を続けていました。
21年間、ずーっと減り続けてきた新成人の人口が、久々に増加に転じたそうです。ここまでの推移をグラフで表すと、こんな感じになるようですね。
(出典:前掲総務省発表資料)
20歳になると、『成年』として、色々な法律上の手続きが自分自身の意思によって行えるようになります。その他にも、お酒や煙草を堂々と買うことができたりもしますが、何より一番大きなものが『選挙権』でしょう。もっとも、最近は選挙権年齢を18歳に下げよう、なんて話も本格化し、次の参院選から適用になるみたいですけどね。
若者と政治
さて、政治に関するニュースで、ここしばらくネット界隈ではこのニュースが多くの人の関心と注目を集めました。
低年金のひとを対象に、3万円の臨時給付金を配る、という政策です。この政策、常識的に考えても幾つかの疑問点があります。
まず、年金という『収入』を基準にする理由が分かりません。低年金でも資産をたっぷり溜め込んでいる例もありますので、貧困者対策とするのなら、生活保護受給者など資産も含めて貧しい人を対象とすべきです。特に、高齢者であれば、収入格差より資産格差のほうが大きくなりますので、なおさらのことです。
次に、年金額を基準にすることにも疑問が残ります。年金が少ないのは、いままで収めてきた額が少ないからであって、しっかり収めてきた人からみれば不公平でしかないように思います。また、年金という制度そのものの支給額に問題があるのであれば、一時的な給付金で凌ぐのではなく、年金制度そのものに手を付けるべきです。
最後に、何よりも大きな問題は、今現在の高齢者層を優遇する施策でしかないことです。そして、年金受給者に給付金を配る一方、子育て世代に対して行われていた給付金は3千円ぽっちでしかなかったものがとうとう廃止の方向性で まとまってしまったようです。
これは、明らかに高齢者に向けた選挙対策ではないのか?という話も多く聞きました。現在、日本の有権者の中に占める高齢者の比率は4割を超えると言われています。(参考:第7回 日本人の人口構成から考える | 猫ときどき税金~税理士鈴木一弘のブログ | 鈴木一弘税理士事務所)ですので、政治家が選挙の際に、数の多い高齢者が喜びそうな施策を取るような行為を、『シルバーデモクラシー』なんていう風にもいう人が居ます。
さて、それぞれの年齢別の選挙権人口(内円)と投票者数(外円)に関するデータをまとめてみました。
(参考:第46回衆議院議員総選挙における年齢別投票率 より筆者作図)
確かに、選挙権人口に占める割合もそうなのですが、実際に投票所に足を運ぶ人の割合をみてみると、60台以上がほぼ半数を占めてしまっています。確かに、こんな状況では、高齢者向けの施策が主張され、若者の意見は通らず、ますます若者が政治に参加できる機会が減っていってしまいますので、『シルバーデモクラシー』という言葉は、現象として起こりうる話のように思えてしまいますね。
ですが、この言葉、ちょっとしっくりこないところがあります。それは、デモクラシー、つまり『民主主義』を、『多数派の喜ぶ政治を行うこと』という意味で使っていることです。
民主主義ってなんだ
以前、こんな記事を書かせて頂きました。
本来、民主主義とは、何でもかんでも多数決で決める、という考え方では無いはずです。いや、そういう考え方もあるのかもしれませんが、他の考え方も色々とある中のひとつであるはずです。そういう疑問を抱きながら書いてみたところ、インキュベさんから、本を一冊紹介して頂きました。
現在の政治のあり方と制度設計について、より現実的なところからまとめられた良書だとは思ったのですが、もっと色々な角度から『民主主義ってそもそもなんやねん』ということについてもっと見てみたいの、と思って手にとったのがこちら。
この本がテーマにしていることを説明するのは、目次を見ていただくのが早いかと思いますので、こんな感じです。
- 第1章 制度とデモクラシー
- 第2章 安定性とデモクラシー
- 第3章 国民とデモクラシー
- 第4章 公共性とデモクラシー
- 第5章 代表とデモクラシー
- 第6章 討論とデモクラシー
- 第7章 憲法とデモクラシー
- 第8章 重層性とデモクラシー
この本では、『民主主義とは何なのか』について、2人の男性が延々と議論を繰り返す、という内容になっています。まるで、はてなブックマークや2ちゃんねるでの議論を見ているようで、ちょっとわたしもこの中に首を突っ込んでみたくなるような感覚を得る面白い本でした(本当に苦手な人には厳しいかもしれませんが・・・)。
民主主義なるものの曖昧さ
190ページ、ほぼずーっと『議論』を繰り返さなければいけないほど、『民主主義』という概念は曖昧なところを多く含んでいます。勿論、それが『多数決』を最終決定手段とした意思決定の方法であることは、異論の余地は有りませんが、そこにたどり着くまでには、いろいろな『曖昧さ』があるんですね。
例えば、日本の国会議員の選挙権は日本に産まれた人に与えられますが、この国境はどうやって決められたのでしょうか?次に、様々な議論に対して、代議員を建てて間接的意思決定を取るわけですが、どうして直接民主制ではいけないのでしょうか?そして、その代議員は、どうやって決めるのが正しいのでしょうか?また、多数決で全て決めるのであれば、少数派の意見をどのように議論に取り込めば良いのでしょうか?
大人でも、簡単に結論の出せないテーマが山のように出てきますね。高齢者の意見ばかり通るような体制。それが民主主義であるとするのであれば、それは正しいのでしょうか?そこに皆さんが参加することの意味はあるのでしょうか?
民主主義の正しさとは何か
かつて、こんなふうに語った政治家が居ました。
これまでも多くの政治体制が試みられてきたし、またこれからも過ちと悲哀にみちたこの世界中で試みられていくだろう。民主主義が完全で賢明であると見せかけることは誰にも出来ない。実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。 ウィンストン・チャーチル
(訳語参考:民主主義 - Wikiquote)
民主主義とは、政治の決定プロセスのひとつです。人間がひとりひとりで生きていくのは難しいことが多いので、人間は国(及び自治体)というもの作りました。そして、国の意思決定について、王様がひとりで決めたり、お金持ちの貴族たちや、賢い学者や官僚が決めるのではなく、全員で考えるのが民主主義の仕組みです。
民主主義は、その他の人による意思決定と比べて正しいのでしょうか?一定の条件下において、多数の人が参加して下した意思決定のほうが正しいという主張もあります。
ただ、本来的には、そこで下される結論が正しいのかどうかというよりも、その結論によって拘束されるひとびとが、納得できるかどうかが、重要なポイントだと思うんですよね。
まずは模範を示さなきゃいけないんじゃねえの?
さて、選挙年齢が18歳に引き下げられるという話ではありますが、日本の教育は、政治のことについてどれだけきちんと教えてきたのでしょうか。ただ、表面的な制度を説明しただけで、具体的にどういうふうに考え、誰に投票すべきか?なんて議論は無かったような気がします。
わたしは、特定の政党を支援していたり、所属しているわけではありませんが、『高校の無償化』や『子ども手当』といった政策は、今後の社会をより良くするためにも必要不可欠だと思いましたので、民主党の議員さんに票を入れていました。
おもに、投票先を選ぶ基準としては、
- 政策が自分の考えと合っているか
- その政策の実行力があるのか
- 候補者が人間として信頼できるか
といったものがあるような気がします。そこで、どう選ぶかはひとりひとりの判断だと思いますが、ただ自分の利益になるかどうかだけを考えてしまうと、結局選挙というのは、多数派の意見を正当化するだけの場になってしまうような気がするんですよね。
若者の投票率が低い、このままじゃ高齢者の思うままの世の中になってしまう。だから選挙に行こう!っていうのは、ちょっと違う気がするんですよね。それって、いわゆる『シルバーデモクラシー』の逆(ヤングデモクラシー?)を行って、対抗しよう!っていうことでしょうか。
若者の声、ってなんなんでしょうか。何故それが必要なのでしょうか。
世の中には、子育てをしながら一生懸命働いている人たちがいます。病気で苦しんでいる人が居ます。新しい技術を、なんとか世界に広げていきたいと考え、会社を経営している人も居ます。
もし、自分に直接関係が無かったとしても、手助けが必要なひとたちが、沢山います。選挙に行くのは、自分一人の意見を通すためではなく、自分の身の回りのひとたちのために、少しでも良い社会にするために行動することだと思うんですね。そうして、より多くの人の意見を反映することで、みんなが少しでも納得できる世の中にするために貢献する。それが、大人になるってことなんじゃないかなあと思うんですね。
若い世代が投票所に足を運ぶかどうかは、大人の世代がどのように民主主義を運用していくのかに掛かっているように思われます。もし、それぞれが自身にとって利益のある候補者のみを選び、少数派の声を汲み入れないのであれば、いまや少数派代表である若者は、民主主義という体制そのものについて疑問を抱くのは自然な流れです。
まずは、上の世代が率先して、若い世代が政治に期待を持てるような世の中にしなければならないのではないでしょうか。
ではでは、今日はこの辺で。