こんにちは、らくからちゃです。
みんながあんまりにも良いって言うもんだから、見てきましたよ。『君の名は。』
いやー、良かった!
自分の語彙力のなさにがっかりするんだけど、もうそのひと言になっちゃいましたわ。本作については、予告編を見て、
- ああ、これは中高生が見て楽しいやつだな。
- ラッド・・・?あのブックオフとかでよく流れてる奴だっけ...
- なんか新海誠っぽくないなあ
よって『パス!』と決めておりました。ただ『アリ』という意見と、『ナシ』という意見が色々出てくるのを見ているとね、どっちなのよと見たくなるじゃないですか。で、実際に見てみたのですが、
君の名は
— らくからちゃ (@lacucaracha) 2016年9月22日
視聴前「なんか今回は新海誠っぽく無さそうだなあ」
視聴後「めっちゃ、新海やんけ(゚д゚)。」
うん。まー、違う感想の人も居ると思う。その辺はおいおい説明させて貰うとして、やっぱり思ったのは『なんか流行ってるみたいだし、どうしようかな』って思っている人には、是非映画館まで足を運んで欲しい。その理由について書いてみたい。
私自身、映画なんて殆ど見ない、ズブの素人だ。だけど、世の中大半の人がそうだよね。この記事は、そんな人に向かって公開されている情報だけで書いてみたい。なので深い考察があるわけではないので、その辺はご期待しないでくださいm(_ _)m
あらすじ
まずは公式サイトからあらすじだけ引用させてもらう。
千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。町長である父の選挙運動に、家系の神社の古き風習。小さく狭い町で、周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会への憧れを強くするばかり。
「来世は東京のイケメン男子にしてくださーい!!!」
そんなある日、自分が男の子になる夢を見る。見覚えのない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。念願だった都会での生活を思いっきり満喫する三葉。一方、東京で暮らす男子高校生、瀧も、奇妙な夢を見た。行ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだ。繰り返される不思議な夢。そして、明らかに抜け落ちている、記憶と時間。二人は気付く。
「私/俺たち、入れ替わってる!?」
いく度も入れ替わる身体とその生活に戸惑いながらも、現実を少しずつ受け止める瀧と三葉。残されたお互いのメモを通して、時にケンカし、時に相手の人生を楽しみながら、状況を乗り切っていく。しかし、気持ちが打ち解けてきた矢先、突然入れ替わりが途切れてしまう。入れ替わりながら、同時に自分たちが特別に繋がっていたことに気付いた瀧は、三葉に会いに行こうと決心する。
「まだ会ったことのない君を、これから俺は探しに行く。」
辿り着いた先には、意外な真実が待ち受けていた……。
出会うことのない二人の出逢い。運命の歯車が、いま動き出す
大雑把にまとめると
- 主人公 :瀧(東京の高校生)
- ヒロイン:三ツ葉(田舎の高校生)
の2人が、定期的に体が入れ替わるようになってしまうところから物語は始まる。『男女の体が入れ替わる』、という設定には真新しいところはあまりない。入れ替わる相手は、身近な相手が多いので、そこはちょっとだけ珍しいけれど。またストーリー後半の『意外な真実』というのも、それほど珍しいものではない。
多分、みんなが『どこかで聞いたことがある』ようなストーリーなんだと思う。
前半戦については『入れ替わり』のところについて、非常にコミカルに分かりやすく描かれていて、劇場の所々から定期的に笑い声も漏れていてよかったと思う。
気になったのは後半戦が始まって以降。のんびり眺めていると物語の展開に視聴者がついていけないような気がした。
例えば『意外な真実』に気がついたのは二人同時じゃないはずだ。果たしてどこからアチラはそのことに気がついたんだろう?ということが良く飲み込めないまま話が進んでしまったのが、ちょっぴり残念だった。
自閉症のテストで、『サリーとアン課題』ってあるじゃん
(出典:自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群) サリーとアン課題 – 心の病気について考えよう)
物語を外側から見ている視聴者は『意外な真実』を知っている。だけど、登場人物の1人はそのことに気がついていない瞬間があったはずで、その時にどういった理由でそういった行動をしたんだろう?というのが、一回の視聴では良くわからなかった。これから見る人は注意して見てもらったほうが楽しめるかもしれない。
新海誠らしさとは何なのか
本作について、『新海誠らしくない!』というコメントを多く聞いた。中には、『あいつ、裏切りやがって!』みたいなものもあったかな。多くの人がそう感じたことについては、分からなくもなかった。だけどやっぱり私にとって本作は『新海誠らしさ』がたっぷりつまった一作だった。
そもそも、本作の監督でも有り、原作者でもある『新海誠』とは何者なのか?彼が、初の劇場公開作として手がけた作品が『ほしのこえ』である。
国連宇宙軍パイロットとして遥か8光年先のシリウスまで向かうことになったミカコ。想いを寄せるノボルに最後の戦いの前にメッセージを送るが、それが届くのは8年後。そんな超遠距離恋愛の悲劇の物語。
もちろん作品も素晴らしかったんだけれど、これを作ったのが『新海誠』がPower Mac一台で作り上げたということに、世の中は驚愕した。
確か本作が発表された2002年、私は中学生だった気がするけれど、その頃はまだyoutubeも無く、ウェブ上には個人がFlashで作ったパラパラ漫画のような動画が盛り上がっていた頃だ。
Power Macは、確かに民生用機としては高性能であることは違いない。でもまさか25分の、しかもこんな綺麗な映像を、個人が作るだなんて、どれだけ途方も無い話なんだ。それこそシリウスまで行くくらいの覚悟がなきゃ出来んぞ。っと呆気にとられた記憶がある。
その後も、
- 『雲のむこう、約束の場所』(2004)
- 『秒速5センチメートル』(2007)
- 『星を追う子ども』(2011)
- 『言の葉の庭』(2013)
と作品を次々と出しているが、その全てに共通するのが、圧倒的な描写の美しさだろう。象徴的な空の美しさだけでなく、いかにも日本的な町並みの景色や、自然の風景から、何から何までが美しいのだ。
良い作品は良い観客が作る
本作でも、その力量は全て発揮されている。
この有名なワンカットだけでも伝わると思うけれども、もう全て端から端まで残すことなく、新海誠ワールドなんだ。それを見て私は『めっちゃ新海やんけ』と思ったのかもしれない。
キャラクターデザインは田中将賀・安藤雅司のトップアニメーターの力を借りたし、音楽はRADWIMPSの力を借りた。だからといって、『新海らしさ』が薄まったわけじゃない。おせちが三段重になっただけで、一段目には今ままで以上に、ギッシリと詰まっているのだ。
あとこれは余談なんだけど、これって『ハッピーエンド』なんだろうか。今までの終わり方が、物語がそこで終わってしまっていたのに対して、物語がまだ続く形で終わっているのは、ハッピーといえばハッピーなんだけど、ゼロスタートになることはどこまで『ハッピー』と言っていいものなのだろうか。
と話は脱線したけど、確かに本作において、セリフやキャラの動かし方などの『表側の部分』についてはちょっと手薄になってしまった感じはあった。だけどそれを補って余りある以上に、映像美が特徴的な作品だった。
日本におけるアニメ映画の歴代興行収入ベスト5はこんな感じになるそうだ。
1位 千と千尋の神隠し 304.0億円 2001年
2位 アナと雪の女王 259.2億円 2014年
3位 ハウルの動く城 196.0億円 2004年
4位 もののけ姫 192.1億円 1997年
5位 崖の上のポニョ 155.0億円 2008年
本作も興行収入は100億円を超え、この枠の中に十分に食い込むことも出来る勢いだ。度々『聖地巡礼』が盛り上がり、定期的にアニメを使った町興しの話題が出ることからも分かるように、描写の妙は、新海誠だけではなく、日本アニメ全体の特徴でもある。
この一覧の中に『君の名は。』が日本を代表するアニメ映画の一作として載れば、今後よりいっそう、ストーリーだけでなく描写の美しさが評価基準として意識されることになるのではないだろうか。
きっと今までも、新海誠にあこがれて、アニメーターを目指した若者たちも多いはずだ。本作の大ヒットは、彼らの目標になるだけでなく、彼らに期待する観客の数を増やすことにも繋がるんじゃないだろうか。
本作では、『結び』というキーワードが多用されていた。
物語は一旦ここで終わってしまう。だけど『物語を作る』という営みは、またここから新しく始まっていくのだ。本作もまた、次に世にでる作品と観客を結びつける作品であって欲しい。そんな風に思う今日このごろです。
小説版も買ってみるかなあ