こんにちは、らくからちゃです。
先日、ぶらっとネットサーフィンをしていたところ、こんな記事を読みました。
厚生労働省が、従業員10人以上の企業で新卒の採用をしたおよそ1万5000社を調査した結果、大学を卒業してこの春、就職した人の初任給は平均で20万3400円でした。
これは去年より1400円、率にして0.7%増えていて3年連続の増加となりました。
男女別では男性が20万5900円、女性は20万円で、女性は統計を取り始めた昭和51年以来初めて、初任給が20万円に達しました。
まずはお給料が上がったのはめでたいことですが、この結果を見て『なんで男女で初任給が違うんだ?』と思ったかたいるようです。勿論、学生を採用する際に、男女で初任給の格差をつけるようなことをすれば、きっと色んな法律にひっかかることでしょう。
この結果は、『実際に受け取った初任給』の平均になります。そのため、女性より男性のほうが、より高い初任給を受け取ることの出来る会社に就職したということを意味します。もう少し言えば
- 総合職・一般職などの職種の違い
- 業界の違い
- 勤務地の違い
などに差があったのでしょう。新卒の段階で能力に大きな差がつくわけでもないでしょうに、この結果を見ると男女平等とはなんぞ・・・と思いますね。
あとこういった統計は、推移などを単純に眺めたりするには平均値でもいいと思いますが、じっくり比較するのであれば中の分布を見る必要があります。
大卒初任給 女性 初の20万円に | NHKニュース
くっ静まれ…我の中の中央値厨よ怒りを静めろ…っ!
2016/11/21 09:35
うん、なんでも中央値を見りゃあいいってもんでもありませんけど、これについてはちょっと気になりますね(笑)。このデータは、賃金構造基本統計調査という政府の行っている統計情報から出てきたものですが、ちょうど手許にデータがありましたので、分かりやすくグラフにしてみました。
大卒初任給の男女比較
(出典:統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103 より筆者作図)
今回発表された2016年の速報結果になりますが、詳細なデータが未発表でしたので、一つ前の2015年の結果となります。縦軸は、それぞれの階級別の人数ですね。
全体的に見て、男性は20万円台を中心として正規分布している感じ。女性は、17万円台から21万円台辺りまで平べったく分布している感じでしょうか。ちょっと面白いのが、高所得層ではあまり大きな差がありません。
項目 | 男 | 女 |
---|---|---|
第1・十分位数(千円) | 180.8 | 170.7 |
第1・四分位数(千円) | 195.3 | 184.5 |
中 位 数 (千円) | 205.3 | 200.4 |
第3・四分位数(千円) | 212.0 | 210.6 |
第9・十分位数(千円) | 227.9 | 226.1 |
十分位分散係数 | 0.11 | 0.14 |
四分位分散係数 | 0.04 | 0.07 |
第◯・◇分位数というのが、『◇分割した場合の◯番目に当てはまる数値の上限』とお考え下さい。平たく言うと、第1・十分位数だと、下位10%に当てはまるひとの境界値。第9・十分位数だと、上位10%に当てはまる人の境界値となります。
中位数(いわゆる中央値)より下の階級については、男女で1万円近く格差がありますが、上の階級については、千円程度の差しかありません。つまり、高所得層については男女間の差は少なく、低所得層については女性の方がより賃金が低い状況にあると言えそうです。
産業別の男女格差
初任給(男) | 初任給(女) | 初任給男女比 | 採用数(男) | 採用数(女) | 採用数男女比 | |
---|---|---|---|---|---|---|
鉱業,採石業,砂利採取業 | 222.1 | 203.5 | 109% | 4 | 1 | 400% |
建設業 | 210.3 | 207.8 | 101% | 1265 | 414 | 306% |
製造業 | 203.1 | 199.4 | 102% | 1850 | 804 | 230% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 196.9 | 198.4 | 99% | 54 | 15 | 360% |
情報通信業 | 208.5 | 209.8 | 99% | 1380 | 888 | 155% |
運輸業,郵便業 | 193.6 | 182.4 | 106% | 517 | 318 | 163% |
卸売業,小売業 | 204.2 | 197.4 | 103% | 3049 | 1902 | 160% |
金融業,保険業 | 206 | 197.5 | 104% | 1225 | 1562 | 78% |
不動産業,物品賃貸業 | 212.7 | 202.7 | 105% | 312 | 273 | 114% |
学術研究,専門・技術サービス業 | 212.2 | 212.2 | 100% | 435 | 338 | 129% |
宿泊業,飲食サービス業 | 201.2 | 188.1 | 107% | 163 | 271 | 60% |
生活関連サービス業,娯楽業 | 207.2 | 197.4 | 105% | 244 | 299 | 82% |
教育,学習支援業 | 207.4 | 196.4 | 106% | 218 | 578 | 38% |
医療,福祉 | 201.1 | 198.3 | 101% | 541 | 1538 | 35% |
複合サービス事業 | 169.2 | 173.7 | 97% | 220 | 159 | 138% |
サービス業(他に分類されないもの) | 200.1 | 199.8 | 100% | 499 | 305 | 164% |
ついでに業種別の初任給の比較を見てみました。こうやってみると、金融・保険は、女性の採用数が多く、男女間の賃金格差もそこまで大きくなくて、女性に優しい職場になるんでしょうかね。
ちょっと意外なのは情報通信業。女性の初任給が男性を上回っています。男性は待遇が悪い情報通信業にも就職するが、女性は回避するのでこうなるって感じなんでしょうかね。
そういや、東洋経済が大卒初任給ランキングを作っていました。見ていると、情報通信業、特にソーシャルゲームあたりを手がけている会社はかなり上位に来ていますね。
(出典:衝撃!これが「初任給が高い」トップ500社だ | 企業ランキング | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)
一位の商業開発が群を抜いていますが、まあ他は割りと常識的な範囲です。大卒初任給って、上位10%でも、たかだか23万円ちょっとなんですよね。個人的には、もうちょっと格差がついてもいいくらいじゃないかなあって思うんですね。
もっと給料で勝負する世の中にしてもいいんじゃない?
そういや海外ってどうなっているんでしょうね。そもそも、初任給ってなんって言うんだろう?と思ってgoogle先生に聞いてみたところ"starting pay"とか"initial salary"なんて言うみたいですね。どれくらい貰ってるんだろうなあと思って見てみると、あらびっくり。
Median starting pay | Median mid-career pay | |
---|---|---|
Petroleum Engineering | 102,300 | 176,300 |
Chemical Engineering | 69,600 | 116,700 |
Computer Engineering | 67,300 | 108,600 |
Nuclear Engineering | 67,000 | 118,800 |
Computer Science & Engineering | 66,700 | 112,600 |
Electrical & Computer Engineering | 66,500 | 113,000 |
Electrical Engineering | 65,900 | 107,900 |
Aerospace Engineering | 64,700 | 107,900 |
Electronics & Communications Engineering | 64,100 | 113,200 |
Materials Science & Engineering | 64,000 | 105,100 |
Computer Science (CS) & Mathematics | 63,200 | 101,400 |
Mechanical Engineering | 62,100 | 101,600 |
Industrial Engineering | 61,900 | 97,200 |
Software Engineering | 61,700 | 99,800 |
Computer Science | 61,600 | 103,600 |
(参考:College Majors With Highest Starting Salaries - Business Insider)
どう違うんだろう...という専攻もありますが、初任給でも普通に600万円くらいは貰えるんですね。
こんな記事もありました。
私は、米国のビジネススクール(ダートマス大学タック経営大学院)を30年前に卒業し、今では同校のアジア地区のアドバイザリーボードのメンバーをしています。数年前に学校側からあった説明では、授業料が1年で7万ドル近くに上昇しているというのです。2年制の大学院ですからその倍の学費がトータルでかかります。もちろんそれ以外にも生活費がかかりますから、卒業までには最低でも2000万円くらいの費用がかかります。多くの学生はローン(MBAローン)を組むなどして資金をねん出します。
しかし、無事卒業さえできれば、それはすぐに取り戻せるのです。実は、卒業生の卒業後3年目の平均サラリーは18万5千ドル(約1900万円)なのです。これは優秀な人だけの数字ではなく平均です。3年後でこのレベルですから、それ以降はもっと稼ぐ人ももちろん大勢います。中には億円単位で稼ぐ人も少なからず出てくるのです。
一方、日本では、一流大学を優秀な成績で卒業し、一流企業に入り順調に出世して部長レベルにまで出なって、ようやく先ほどのビジネススクール卒業後3年目程度の給与です。それも、かなり給与の良い会社ではないでしょうか。
「Japan is cheap」日本人の給料が破格に安いという認識が企業にはない | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online
うーんこの差である。
社会保障制度の違いもありますし、欧州はもう少し厳しそうですが、どうしてこうなってしまったのか。いろいろ考えてはみたのですが、やっぱり思ったのが、日本の学生の『給料』に対する意識の低さなのかもしれませんね。
その背後にいる大人たちの責任が大きいような気がしますが、就職活動をしていても『やりがい』とか『安定性』とかを全面に押し出し、『給料』『労働環境』についてはなるべく触れないようにしていたような気がします。
勿論、それらも働く上で重要な要素でしょう。けれども、学生が、自分の経済的価値から目をそらしてしまうと、学業についても費用対価値の観点が疎かになります。そうすると企業もうかつには高い賃金を出すわけにはいかず、なんだか感情論が支配するいまいち良くわからない労働市場が出来上がります。
ちなみに、initial saralyで検索したときに表示された『お勧めの検索キーワード』はnegotiationでした。
この辺の考え方の違いもいろいろと差を生み出しているのかもしれませんね。
ではでは、今日はこのへんで。