こんにちは、らくからちゃです。
先日ぶらっとテレビのニュースを見ておりましたら『働き方改革で変わったこと』みたいな特集がやっておりまして
- 早く帰れと上司から言われた
- 残業しないようにとプレッシャーが強い
- 残業代が減った友人を飲みに誘いづらくなった
などなどと新橋のサラリーマンの皆様が答えていらっしゃいました。おいおい、弊社から直線距離で数kmも離れていないのにここは世界線が違うのか?と随分焦りましたが、皆様の会社はいかがでしょうか?
まあ確かに、ここ最近、長時間労働に対する風当たりは随分と強くなっていることは私も肌身で感じております。先日弊社でも『有休取得率70%に向けて有給を計画的に取得するように』と偉い人名義でメールが回ってきたりと、時代の波を感じております。
働き方改革は安倍内閣の重要課題でありますので、ここはしっかりとその意思を忖度し、効率的に定時ダッシュを決め込みたいところであります。が、そもそも現状ってどんな塩梅なんだろう?と思いまして、統計データを見てみました。
じゃじゃーん
働き方改革とやらで労働時間は減ったか?
世の中的には、新橋のサラリーマンがメジャーで、弊社がマイノリティなのかな?と若干ドキドキしてしまいましたので、厚生労働省の実施しております『毎月勤労統計調査』より、所定外労働時間の状況について過去10年間の推移を確認してみました。
やったー!\(^o^)/
残業しているのは弊社だけじゃないぞー!!
いや、喜ぶような話でもないのですが、念のため企業規模別でもみてみましたが、リーマンショックでがくんと落ち込んでから増加傾向のトレンドには代わりはありません。これを見る限り、長時間労働は少なくとも現時点で是正されている気配はありません。
まー、なんですかね。やっぱり幾ら総理が音頭を取ったところでそう一朝一夕にはどうにかなる話でもないですよね。ただちょっと気になるところがありまして、街頭インタビューの中で『残業代がなくなって困る』という声が結構多く取り上げられていたんですよね。
弊社では、(個人に選択権はありますが)裁量労働制で賃金が支払われておりますので、どんなに残業をしてもお賃金は変わることはありません。ところがどっこい、世の中には、残業代を生活の糧にしているひとがそれなりに居るらしく、『働き方改革』とやらは大変困るという意見の人も少なくない模様。
彼らの意見に耳を傾けますと
- 残業時間が減って残業代が減る
- 自由時間は増えるが使えるお金は減る
- よって経済活動が停滞する
あかん。残業減少不況や!
みたいなことを言っていたのですが、実際どうなんでしょう?
変わらない所定内賃金と増える所定外賃金
『残業代が減ると生活水準に直結する』といった意見は、定期的に耳にします。まあ実際に生活を維持する基本的な収入に組み込まれている人は少なくないでしょう。じゃあみんな実際、どの程度残業代に依存しているのかしら?と思いまして、ちょこっと調べてみました。
ででん!
年次推移で見てみました。月次平均で
- 所定内給与・・・30万6,036円(74%)
- 所定外給与(残業や休日出勤)・・・2万6,617円(6%)
- 特別給与(ボーナス等)・・・7万9,521円(19%)
となっており、所定内給与以外のところで得られている賃金が、かなり多いことが見て取れます。また給与総額は、2008年段階より1万円近く下落しております。我々の賃金はまだ、リーマンショックを乗り越えていないんです。パーセンテージでいうと2.5%ほどの下落でしょうか。
またそれぞれの金額の増減について比較してみます。増減額のイメージをつかむために、敢えて0始まり出ないグラフを使わせていただきます。
賞与の水準は、20年前の1997年よりただひたすら下落ペースです。平均で1万5,000円ほど落ち込んでおります。これは2008年にリーマンショックがおこったせいでしょう。
2001年頃には31万円近くあった所定内給与は、2008年以降、がくんと30.5万円に落ち込んでから回復の気配はありません。一方、少なくなった給与を下支えしているのは所定外給与。なんとか持ち直し2.5万円台を維持しております。
あくまで平均値ですので、皆様の給与明細とはだいぶかけ離れているかもしれませんが、日本全体でいえばこんな塩梅です。賞与は大きく下がったし、基本給は上がらない。こんな状況で『残業減らせ』と言うのもまた酷なような気がします。
基本給減税という思考実験
とはいえ今後、労働時間を短縮して『働き方改革』を進めるのは政権の至上命題の一つでもあります。経団連にお願い行脚をしてみたり、100時間以上の長時間労働を是正しようとしてみたりいろんな事をやってきました。
が、経済学を嗜んできた立場からすればやはり思うのが『インセンティブが必要じゃねえの?』ってこと。以前『残業税を取ってみたらどうなるんだろう?』という本を、ご紹介したことがあります。
(゚Д゚)ハァ?残業税?
みたいなツッコミどころについて、ひとつひとつ丁寧に解説をしていった中々面白い一冊ではあります。
が、やはり『残業を適切に申告させる』ということは難しいような気がするんですよ〜。で、ここで逆に発想を『残業を罰する』=『非残業を有利にする』というふうに置き換えて考えてみることにしました。それが基本給減税です。つまり『基本給を増やすよう税制上のインセンティブを与えたらどうなるんだろう』と思ったわけですね。
ざっくりとしたアイデアとしては
- 年初に賃金の計算方法と基本給額を税務署に提出する
- 所得税を計算する際に、基本給の部分は半額で計算する。
- 法人税を計算する際に、基本給の部分は二倍で計算する。
みたいな感じです。基本給減税をする前と税収が変わらないように、所得税率・法人税率を調整すれば、追加の財源は必要ありません。これをすれば、例えば同じ30万円の賃金を支払うにしても、
- 基本給30万円
- 基本給20万円+残業手当5万円+賞与5万円
みたいなケースでは、使用者・雇用者ともに、前者のほうが課税額が少ないようになります。
で、何が狙いなの?
賞与は大幅に減額される一方で、基本給は伸びない。そんな状況下で残業を減らせ!と言われても、労働者は唯々諾々と従うでしょうか?業務の能率を改善したところで、見えるのは生活の潤いを失うことだけです。
一方で、ますます消費者の財布の紐が硬くなる中で、経営者に『残業を減らすために人員を増やせよ』というのもどうなのでしょか。25%の法定割増賃金(これが安すぎるのも一因でしょうけど)を支払うか、利益が出ても賞与で還元しようという考え方をとることに不思議はありません。
でもそれって、経済全体で見ると不幸な流れですよね。
基本給が増えないと、支出全体を増やそうと思いづらいですし、増えたところでそれは一時的なものです。一時的な需要に対応するために、経営者は人員を増やそうとは思いませんし、固定費となる基本給は増やさず賞与の増加で還元しようとします。そうするとやはり収入の波が大きくなって・・・と、ループが続きます。
基本給減税の狙いは、『残業手当』や『賞与』で支払うよりも『基本給』で支払うことを奨励し、社会の安定的な支出の増加を増やし、経済を拡大させていくことです。
既存労働者の賃上げ効果も狙う他、不安定な(いわゆる)非正規雇用からフルタイム型雇用に切り替える効果も狙います。また残業代計算の元になる基本給そのものが増えれば、残業抑制効果も期待できるでしょう。
長時間労働は健康への悪影響などを通して、社会全体への悪影響ももたらしますし、基本給の増額は逆に好影響に繋がりますので、論理的な整合性はあるような気がします。
給与の支払い形態も多様化しておりますので、それにマッチしているのか?といった問題もあるでしょうし、基本給の定義の仕方やら基本給増を前提としたサービス残業の取り締まりなど、考えなきゃいけない問題は沢山あるとおもいますが、それでもまだ残業税よりは実現性はあるのかな?なんて思うのですが、どないでっしゃろ。
早くお賃金をあげさせよう。それも安定して。
人不足の問題が・・・とか、景気は回復局面に・・・なんて話を耳にすることもありますが、いまいちわたしの周囲にはそのムーブメントは届いておりません。そりゃあやっぱり、銀行口座に振り込まれる額に変わりがないか、増えていても長続きしないとみんな考えているからでしょう。プレミアムフライデーで消費拡大!なんて言われても、寝言は寝てから言えよ、としか思えないんですよね。
以前もボヤきましたが、仮に2%物価が上昇しても、せいぜい預金口座の残金が多少増えるくらいの効果はありません。
我々の消費マインドを高めていくために必要なものは、物価上昇ではなく、名目賃金上昇が必要なんじゃねぇの?と思うのですが、そのへん如何なんでしょう、黒田東彦総裁。
働き方改革を行い可処分時間が増えていくとすれば、それは大変ありがたい話ではありますが、それに伴い可処分所得も増えていかないと、ますます節約型志向にみんな進んで行くんじゃないの?と思うんですね。
まずは過重労働とサービス残業の排除からなんでしょうけど、ちゃんと残業なしでも生活と経済が成り立つように税制からの支援があっても良いんじゃないのかな?と思う今日このごろでございます。
ではでは、今日はこのへんで。