ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

自分よりも資産を長生きさせるにはいくら必要か

こんにちは、らくからちゃです。

「あんたが遊びに連れてってくんと、お金が使えなくて貯まる一方やわ」なんて祖母の贅沢な悩みを聞いていると、世間で言われている2000万円問題って一体なんなんだろう?と首を傾げてしまいます。

うちのばあちゃんは、この年代には珍しく厚生年金受給者(本人曰く女学校卒のエリートだったらしい)のため、かなり恵まれている方だと思います。老後を豊かに暮らすのにゼニが必要なのは当然ですが、人によって環境はかなり異なるのに、十把一絡げに「2000万円」という金額だけがノソノソ歩きまわっているのも随分と気味が悪い。

というわけで、老後の生活に必要な数字を順番に整理してみました。

 2000万円はどこから来た金額?

まず例の金融庁のレポートを見ると「5万円」の赤字という数字が何度か出てきます。この数字は、総務省の行っている家計調査から夫65歳・妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計の状況から引っ張り出してきた金額です。

最新の2018年分の結果では、収入から支出を差し引いた赤字分は41,872円と前回から大幅に改善されておりますが、

  • 2017年・・・54,519円
  • 2016年・・・54,211円

となっており、当該資料は恐らく2017年版のデータを使ったのかなーと思います。

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(出典:家計調査報告2019)

で、月5.5万円の赤字→年間66万円の赤字→20年で1300万円、30年で2000万円くらい準備が必要だね!というストーリーですね。

でも当のレポートにもある通り、人それぞれライフスタイルも違うのに、平均のデータで比べても「平均的(≠標準的)」な像でしか見えてこないわけです。もうちょっと集計のメッシュを細かくしてあげないと、何がなんだか分からないですよね?

というわけで、もうちょっと細かくみていきましょう。

 年金・貯蓄別の資産取り崩し額の分析

家計調査は、毎月行われており最新の動向を掴むには扱い易い統計です。

しかし確認できる項目がやや粗く、もう一段踏み込んでデータを見たいときは、5年毎に行われる消費実態調査の結果を参照すると面白いデータが出てきます。

例えば、年間の年金額をベースに整理するとこんな感じになりました。

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(公的年金・恩給受給額階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出 2014 より筆者作表)

世帯主が無職の年金受給者で、その公的年金の金額毎に整理した結果です。

「収入」は公的年金給付だけに絞りましたが、80万円未満で月間8万円なのは本人分の他に配偶者分が入ってくるからかな?その点はさておき、支出の増加ペース<年金の金額の増加ペースとなり、「年金がたくさん貰えるなら赤字も少ない」という身も蓋のない結果が見て取れます。

また貯蓄額ごとの支出額も見ていきましょう。

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(貯蓄現在高階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出 2014 より筆者作表)

キレイに「取り崩せる貯蓄額が増えれば赤字(取り崩し額)が増えていく」関係性が見られます。

数字に変動が無いことが前提ですが、65歳時点で純資産額が1371.2万円(貯蓄額750〜900万円)の層が、毎月5.2万円取り崩していくと、純資産がゼロになるのは87歳です。ちょっとギリギリかな?65歳時点で純資産額が1968.4万円(貯蓄額1200〜1500万円)であれば91.4歳までは資産の寿命が持ちそうです。

この結果を見ると、だいたい65歳時点で2000万円くらい貯めておけば、90歳まで純資産を生き延びさせることはできすが、なければ無いなりに支出を減らしますので1300万円くらいでもまあなんとかなるかも知れません。

ただ支出の内訳をみてみると、2000万円くらい貯めておいたほうが、交通・通信費で月に4000円、教養娯楽費で3000円くらい余計に使えます。また住宅に掛けられる金額も3500円ほどは良い家に住めそうです(持ち家率は両者とも大差なかった)

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これからの若者の話は別

なおこの話は、統計結果から導き出した「いまの高齢者の話」でしかありません。

いまの現役世代は、支える若者の減少による年金の減少や、それに伴う引退の後ろ倒しなどなども考えていかなければならないのですが、長くなりそうなのでその話はまたの機会にしましょう。

ではでは、今日はこのへんで。