ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

スマホに保険は必要か? 『モバイル保険』について考えてみた

こんにちは、らくからちゃです。

ここ最近、スマホの調子が良くありません・・・。電源ケーブルを繋いでも、うまく充電できないことが度々発生するようになってしまいました。

修理したいなあとは思うものの、MNPに乗り換えて使っているもので、どこに相談したらいいのかもよくわからず、いっそ買い換えたほうがいいのかな?と悩んでおります。

こうなると『次に買い換えるときは保険に入ったほうがいいのかな?』なんて思うのですが、SIMフリーなスマートフォンでも入れる保険ってどんなのがあるのでしょうか?と思って調べてみたら『モバイル保険』というものが見つかりました。

mobile-hoken.com

果たしてこれ、入ったほうがお得なものなのでしょうか?ちょっと色々と気になったので調べてみました。

保険の概要

 基本的なスペックについてまとめてみると、保険料は月額700円、年10万円を上限に、3台まで

・破損
・損壊
・水漏れ全損
・故障
・盗難

の際に修理費用が支払われます。そういや一般的なキャリアの保険ってどんな感じだっけ?と思って改めて調べてみるとこんな感じ。

キャリアDocomo
最新機種
Docomo
その他
auSoftbank
名称 ケータイ補償サービス ケータイ補償サービス 安心ケータイサポートプラス あんしん保証パック
月額 500 300 380 500
紛失 対象 対象 対象 対象外
全損 対象 対象 対象 対象外
負担金 7500 5000
※初回
5000
※25ヶ月未満初回
なし
※外装修理の場合は10%+1500円負担

 こうやってみてみると、結構違うもんですねー。ドコモは、最新機種とそうでない古い機種とで価格が違います。ソフトバンクは、紛失や全損が対象外である代わり、自己負担は発生しない。条件だけみると、auが一番良さそうな感じかな?

それはさておき、これらのキャリアの保険と比べると、何点か違うところがあります。

1.3台まで対象にできる

まずキャリアの保険では、それぞれの回線契約毎の契約になりますので、一契約の保険対象は当然1台ですが、『モバイル保険』では、一契約で主端末1台に加え、副端末2台の最大三台まで同一金額で保険をかけることができます。かける対象ができるものは、『Wi-fiかBluetoothが付いている端末であれば何でもOK』とのこと。

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2.対象はいつでも切り替えられる

キャリアの保険では、購入したその場で保険をかけ、保険はその商品にひも付きますが、『モバイル保険』では新しい商品を購入後に、その商品に保険を切り替えることができるそうです。

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3.保証上限額がある

キャリアの保険では、基本的に保証上限額のようなものはありません。というか、仮に全損交換扱いでも、10万円を超えるようなことはありませんからね。一方『モバイル保険』では、年間で最大10万円分までしか保証されません。

また注意したいポイントとして

  • 全損・盗難の場合の保険金額は最大25,000円
  • 副端末の保険金額は30,000円。全損・盗難の場合は、最大7,500円。

と、『副端末は登録できるものの、主端末と同じ保証内容ではない』『全損・盗難の場合、保証金額は安くなる』というところがミソのような気がします。

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保険の常識

月に700円ということは、年間で8,400円。主端末が、3年以内に全損扱いのトラブルに巻き込まれるか、3端末分合計で25,000円を超える故障に見舞われる可能性があるのであれば『元が取れる』計算になります。

この金額が妥当かどうか、いろいろと調べていると、こんな記事をみつけました。

記載の内容を簡単にまとめると

  1. 保険とは基本的に、保険会社の経費( 付加保険料)が発生するので確率的に見れば、必ず損をする契約。
  2. それでもなお保険が社会に存在するのは、病気や大黒柱が働けなくなった時、あるいは他人に損害を与えてしまった時に、資金ショートを避けるためである。
  3. 上限十万円程度の損失に備えるための保険など必要ない。

って感じでしょうか。

例えば誰かひとりが1000万円損をすることが明らかな場合、1000人から1万円ずつ集めて保険は成り立つでしょうか?保険料を集める人がタダで働いてくれれば可能かもしれませんが、そりゃあ酷な話です。

当然、保険を維持管理する人のお給料を払わなきゃいけないので、実際に加入者に支払われる保険金よりも、集める保険料は高くなければなりません。この差額が、いわゆる『付加保険料』ですね。

でも、必ず損をすることがわかっているのに、何故ひとは保険にはいるのか?

『 船は一隻、家は一軒、命は一つ』という有名なことばがありますが、リスクを背負って戦うために、万一の場合も最低限再チャレンジ出来る、残された家族が露頭に迷うことが無いように、保険は生まれました。まさに、保険は常に冒険とともにありました

保険と冒険 - ゆとりずむ

 なーんて昔書いた記憶がありますが、大きな出費に備えて資金を固定する必要が無い、あるいは資本が小さくとも商いを始めることができるというのは、統計的には多少損をしたとしても、得るだけのある『価値』です。

それに引き換えると、スマホの保険は付加保険料を払うだけの価値があるのか?と言われれば、いくら高いとはいえ家計が行き詰まるレベルのものでもないし、それくらいだったら貯金したほうがいい気がしますね。

というわけで、こんなもん入るくらいなら貯金をしましょう。解散!

でもそれが結論でいいんでしょうか?

保険の価値とは何か

この『モバイル保険』。特に注意すべき点は『修理』というところに力点がおかれているんですよね。

現段階では『修理を行うお店はどこでやっても良いので、勝手にやってもらって修理レポートだけもらっておいてね』ということになっていますが、将来的には提携修理店であればキャッシュレスで修理が出来るようにする構想があるようです。

私はここに『モバイル保険』のキモがあるんじゃないのかな、と思うんですね。

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繰り返しになりますが、『モバイル保険』を、金融商品として考えた場合、その価値は高くありません。でも、『エージェンシーサービス』と考えた場合、ちょっと見え方が変わってくるような気がするんですね。

スマホが故障する経験なんて、そう何度もすることではありませんので、多くの人はどうすべきか?について情報を持ちあわせていません。『どこなら安心して依頼することができるのか?』『どれくらいが適正な価格なのか?』なかなか分かんないですよね。

ここに、『保険会社』というエージェントが入ると、それぞれにとってメリットが発生します。

  1. ユーザー ・・・ どの会社なら安心して依頼できるのか?が分かる
  2. 修理店  ・・・ 大口の契約を取ることで稼働率を上げることができる
  3. 保険会社 ・・・ 複数の企業を競争させて、修理費を下げられる

まあここまで上手くいくかどうかはさておきとして、世の中にある全ての保険に共通することですが、保険とは『起こることが稀なもの』にたいして対応するサービスです。電子機器の故障なんてその代表例でしょう。

このサイクルが上手く回れば、付加保険料分だけより良いサービスを得られる可能性も出てくるかもね、なんて思います。

そういったサービスが開始していない以上、現状としてはちょっとがっかりな感じもしますが、『考える価値すらねえよ!』ってことはないかな?今後については注目してもよいような気がします。

最近は自動車保険をみても、事故後の対応力をアピールしている会社も多く見受けられます。保険とは基本的に、発生頻度の低い事象が生じた際に、『情報弱者』となる人を助けるためのサービスという側面を強めてきているような気がします。

保険で市場を作れるか?

現在、『スマホ修理』の市場規模はどんどん拡大しているようです。

理由はいろいろあるのでしょうが

  1. 端末が高価格化している
  2. 製品の進歩速度が落ち着き、買い換えでのスペックアップが少なくなった
  3. キャリアからMVNO事業者への移転が進んだ

色々とかんがえれば出てくるような気がします。ただそれと同時に『安心して頼める』だけ市場が成熟しているのか?と言われると、まだ不十分かな?という感じがします。

これはちょっと古いデータになりますが、2014年の段階において街の修理事業者の利用者は、たったの0.3%でした。MNPへの乗り換えが進んでいる中、キャリアでの修理ができない人たちに対しての需要は拡大していきます。

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(出典:携帯電話の修理実態

本当は、メーカーや販売店が率先して修理事業を行ってくれればいいのですが、彼らは彼らで新製品も売りたいでしょうから、後手に回ってしまうのはちょっと仕方ないかな?と思います。

でも、こういった保険サービスが拡大することによって、サードパーティーでの修理市場も成長する余地があります

これは健康保険などでも言えることなのですが、保険には市場を作る力があります。これから先、もっと修理市場が活性化して、物を長く使い続けることが出来る社会になればいいなあ、なんて思う今日このごろです。

ではでは、今日はこの辺で。