ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

超ざっくり分かる会計用語の基礎知識

こんにちは、らくからちゃです。

個人的に応援させて頂いている『女騎士、経理になる。』が早いもので3巻発売です!おめでとうございます!

 

おかしい・・・。ファンタジーを読んでいたはずなのに、気がついたら簿記、会計、金融、経営の基礎知識まで勉強させられていたぜ!?という大変恐ろしい禁断の書でございます。1巻の感想はこちらに書かせていただきましたので是非!

お値段600円ぽっちで人生が変わるかもしれませんので、費用対効果も抜群だ!

どうも世間では、『会計』は小難しい専門用語が多いと思われているみたいですね。専門用語というのは、わかっている人には便利な代物ですが、わからない人にとっては苦痛以外の何者でも有りません。

たしかに、普段見たこともないような漢字ばっかりの謎の用語がたくさんあります。でも、考え方さえ理解できればそれほど難しいものでは有りません。今日は諸々沢山ある会計の用語について、『これは知っておいて貰ったらいろいろ捗るなあ』と思うキーワードについて、細かい計算式をあげるとキリがないのですが、なんとなくイメージがつくよう超ざっくりとまとめてみたいと思います。

どなたかのお役に立てば幸いです♪

1.貸借対照表(B/S)

イメージしやすそうなものから順番に話していきましょう。

貸借対照表、たいしゃくたいしょうひょう、と読みます。企業の持っている『持ち物』と、いずれ返さなければいけない『借り物』を全て書き出した資料です。と言われてもピンとこないひとも多いと思いますので、実物を見てみましょう。

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こちらは平成28年7月31日現在の『株式会社はてな』さんの貸借対照表になります。左側が資産、つまり持ち物とその金額が記載されています。右側の上半分には負債、借り物の情報があります。

会計の世界では、基本的にすべてのものを『金額』で評価します。貸借対照表に載せる資産の金額は、原則として買ってきたときの金額になります。これを『取得原価主義』といいます。

ソフトウエアが3097万円と記載されています。これは『それだけの金額をかけてソフトを開発した』といったことを意味し、その値段で売れるソフトがあるわけでは有りません。ところで『負債』の下の『純資産』がちょっと気になりませんか?次はその話です。

2.資本金

純資産とは、大雑把に定義を説明すると『資産 - 負債』の金額です。いくら資産が沢山あっても、借金も多かったら実質の価値は余り大きくありませんよね。3000万円で家を買いました。ローンが2000万円残っています。その時の純資産は1000万円です。

じゃあこの『純資産』の内訳ですが、基本的には『元手』『過去の利益』によって構成されていますたとえば、純資産のうち、500万円は最初に頭金として払った金額。残りの500万円が頑張って稼いで返した金額。そんなイメージですね。

企業に存在する全ての資産は、元を辿れば

  • 借金をして借りた
  • 元手として集めた
  • 商売をして儲けた

この3つのどれかの理由によって存在しています。

500万円の機械を銀行から借りたお金で買ったものならば、500万円分の借金がありますよね。100万円の現金があるのは、過去に200万円で買った商品が300万円で売れたからであれば、100万円の利益があるはずです。

『元手』の部分を『資本金』『過去の利益』を『未処分利益』と呼びます。発生した未処分利益は、『配当金』として『資本金』を提供してくれた人に分配しますが、資本金は配当にまわしてはいけません。

その為、『資本金が多い会社』=『借金として返すことも、配当金として流出することも無いお金が多い会社』と言うことが出来ます。そのあたりの話については、下記の記事で詳細に記載致しましたので、よろしければ是非。

www.yutorism.jp

貸借対照表上は、こうして、右半分と左半分の金額が必ず一致します。これを貸借一致の原則といいます。ちなみに、会計の世界では『右半分』『左半分』と言わず、別の用語を使います。次はその話です。

3.仕訳

会計の世界では、貸借対照表の金額を修正するために『仕訳』という独特の表現で説明します。

例えば、現金が100万円減ると、必ずその代わりに何かがおきます。

  1. 商品が100万円増加する・・・資産の増加
  2. 借金が100万円減少する・・・負債の減少
  3. 給料を100万円支払う・・・純資産の減少

ざっとこんな感じでしょうか。これをそれぞれ、こんな感じで記載します。

  1. 商品100万円 / 現金100万円
  2. 借金100万円 / 現金100万円
  3. 給料100万円 / 現金100万円

それぞれ『本来の位置』に書くと、『増加』を意味します。一方『反対側の位置』に書くと、『減少』を意味します。『左側』を借方・『右側』を貸方と呼びます。貸付金は借方、借入金は貸方に書く・・・というと不思議な感じがします*1が、『そういうもんだ』とおぼえて下さい。

ちなみに学生時代に『便利な覚え方』として

りし

と背中合わせになる、なんてこじつけを教えてもらった記憶があります。また英語圏では、借方をDr. 貸方をCr.と略したりすることも多いので、覚えておいても良いかもしれません。

4.損益計算書(P/L)

給料の支払は、資産が増えるわけでもありませんし、負債が減るわけでもありません。よって純資産の減少になります。過去に積み上げてきた儲けが減る・・・といえば分かりやすいでしょうか。

企業の『利益』とは、ある一定の期間の『純資産の増加』*2です。とはいえ、『いくら増えたか?』だけではなく『何故増えたか?』重要ですよね。

そこで先程の『給料』のように、純資産を直接減らさないで、特定の費用として集計します。増えた場合は収益です。最後に、収益と費用の差分が利益となり、純資産の増加額と一致します。

この収益・費用を一覧で表示し、利益を計算した書類を『損益計算書』と呼びます。これも現物を見てみましょう。

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またまた『株式会社はてな』さんから損益計算書です。先程の貸借対照表は、『平成28年7月31日』というポイントでしたが、損益計算書は『平成27年8月1日〜平成28年7月31日』までのフローの資料になります。

損益計算書は『収益費用対応の原則』に従って作られます。

簡単な例をあげます。ある年200万円の商品を入荷して、翌年300万円で売れたとしましょう。その場合、初年度は200万円の赤字、翌年では300万円の黒字と考えるのではなく、初年度の費用を翌年度まで繰り越し、初年度は0円の利益、翌年度は100万円の黒字。というふうに『費用は収益が発生した期間に計上させて一致させよう』という考えます。

ではこの考え方に従った会計処理について、何点かみていきましょう。

5.減価償却

皆さん、家計簿はつけられていますか? 付けられていない方も一緒に考えてほしいのですが、『定期券の費用』って結構扱いが難しいですよね。半年定期なんかを買って、全てその月の費用にしてしまうと、大赤字になっちゃいますよね。でも無駄遣いやなんかをしたわけでは有りません。

企業経営の中でも、特にまとまった支出が生じるのが建物や機械などの固定資産です。毎年同じように使っていくのに、全て買った年の費用にすると、大赤字からの大黒字のように見えますよね。

そこで買ったのにかかったコストを使うことのできる年数(これを償却期間といいます)に応じて分割します。そうすると、まるでお金を借りて分割返済したかのように利益を計算することが出来ます。これを『減価償却の自己金融効果』なんて言ったりもします。

6.引当金

減価償却は、『もう既に支払ったもの』を分割払いしたように見せかける方法ですが、『これから支払う予定のもの』を払ったように見せる会計処理が『引当金』です。

日常生活の例だと『修繕積立金』に近いイメージになります。事前に『あとでこれくらいかかかるだろうな』と予測をして、費用として処理しておきます。その後本当に、費用を払った時に、既に計上済みの費用は、その期間の費用として負担せずに済みます。

ただ『将来発生するであろう費用を予測し、そのうち今期の部分として妥当とされるであろう金額を計算する』という処理は中々ハードです。

会計は『予想』を嫌います。何故ならば、自由に利益を増やしたり減らしたりすることができるようになるからです。

『難しさ』を理解していただくには、下記の記事が分かりやすいかと思います。

7.工事進行基準

ここまでは『費用』の話でしたが、『売上』に関しても時と場合によって、期間を調整することがあります。

例えば、大きな建物を作る場合、実際に完成してお金を貰えるのは、何年も先になることがあります。会計では、売上の金額は『確実にお金をもらえることが確定した時』に計上できますので、完成して引き渡し書類にサインをして貰った時に、初めて『売上』として計上することが出来ます。

発生する費用もまた、売上のタイミングまで繰り延べることが出来ますが、そうすると完成まで、一円も売上を上げることができなくなりますよね。そこで考えられたのが工事進行基準です。

簡単に言うと、『貰えるはずの金額を、発生した費用の見積費用に対する比率で按分して、事前に売上として計算しよう』という考え方になります。これもまた、見積が多いので色々と大変です(´・ω・`)

工事という名前になっていますが、システム開発やコンサルティング業務などでも、『複数年に渡って継続するプロジェクト』であれば使われます。

詳細については、下記をご参照下さい。

8.減損

基本的に費用は、『収益と一致するタイミング』で計上することになりますが、時には『もういつまでたっても売れないもの』が発生することがあります。

既に触れましたが、会計の世界では『資産は取得原価で計上し、金額を勝手に変えることは許さない』のが原則です。実際の取引に紐づく金額でないと、経理担当者の判断によって、恣意的に利益を増やしたり減らしたりすることが出来るからです。

ところが環境の変化によって、余りにも『実際の価値』と『帳簿に記載されている価値』に乖離が生じた場合、資料を読む人が混乱しないよう実際の価値まで金額を減らすことが可能です。

この処理が減損です。

下げることは有りますが、上げることは有りません。会計の世界では保守主義の原則といい『リスクは早めに伝えるべし』という考え方があります。減損もまた、この考え方に基づいた会計処理です。

9.キャッシュフロー計算書(C/F)

今まであげてきた考え方によって、会計の利益と現金の増減が一致しないことがあります。会計の世界では、『会計は意見。キャッシュは真実。』という言葉すらあります。会計上の利益とは、あくまで経営者の"意見"にすぎない。ということですね。

企業が『倒産』してしまうのは、利益は一切関係なく、現金がなくなったときです。『勘定合って銭足らず』なんて言葉もありますが、『儲け』があっても『お金』が伴わないことがあります。

そこで役に立つのが、『キャッシュ・フロー計算書』。『実際に現金が稼げているのか?』についてのデータをまとめたものです。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュ・フロー計算書

の関係について、ざっと図に直すとこんな感じですね。f:id:lacucaracha:20161102014715p:plain

この『会計上の利益』などの考え方については、下記の記事にまとめましたので、よろしければ是非。

10.税効果会計

会計上の利益と現金の収支に加えて、更にもう一つ別の『利益』があります。それが『税法上の利益』です。

税法の世界では、『利益』に該当するものを『所得』と呼びます。『所得』は『益金 - 損金』の差によって求めます。『収益』と『益金』、『損金』と『費用』は概ね一致しますが、税の考え方と会計の考え方で、ぴったり一致はしません。

例えば『減価償却』で生じる費用について、税の世界では『公平性の観点』から、一律の『法定耐用年数』で計算することが求められます。一方、会計の世界ではより実態に近い『償却期間』で計算することが求められます。

会計のルールでは、来年の利益になるものの、税法のルールでは今年の利益になる。そんなケースが発生します。その場合、『会計のルールで計算した来年払うべき税金を今年に前倒しして払う=来年の税金を減らすことができる』という風に考えます。この将来の税金を減らすことが出来る金額を『繰延税金資産』として計上します。こういった調整は『税効果会計』と呼ばれます。

比較的わかりやすいのは『繰越欠損金』でしょうか。これは所得の赤字を、一定期間『繰越』ができる制度です。今年100万円の赤字でも、来年100万円の黒字になる予定の場合、赤字分を繰り越し来年の黒字を0円にできれば、その分税金を減らすことが出来ます。

しかし繰越には有効期間が決められています。大企業と中小企業で違うのですが、こちらにまとめておきましたのでよろしければぜひ。

過去の赤字は『将来の税金を減らす資産』になりますが、有効期間切れとなると価値を失います。時たまニュースで流れる『繰延税金資産の取り崩しで赤字』なんていうのはこういったケースでも起こりえます。

11.連結会計

会計は、ひとつひとつの会社単位で行いますが、大きな会社であれば、複数の子会社を抱えていることもあります。子会社の役員は、株主である親会社が選ぶことが出来ますので、思い通りに動かしやすい立場にあります。

その結果『売上が予定よりもちょっと足りないから買って♪』なんてことがしやすくなります。子会社から見たら損な取引を押し付けることもできますが、子会社の業績が悪化すれば、回り回って親会社の業績も悪化します。

そこで考えられたのが連結会計の仕組みです。これは『親会社と子会社をひとつの会社と考えて貸借対照表や損益計算書などの書類を作る』という考え方です。親会社から子会社に貸した借金は、相殺すれば結局貸し借りはなくなります。親会社と子会社の取引もまた、企業全体としては利益のつけかえにしかなりません。

例えば、子供にお小遣いをあげたとしても、それは親から子供へお金が動いただけで、家計全体でみれば特にプラスマイナスは発生していないのと同じです。

12.監査と内部統制

会計には、いろいろと複雑な仕組みがありますが、すべては『正しい資料を作り、正しい判断を行うため』に行われています。作られた資料は、多くの人が参考にするため、そこに嘘や誤りがあると、重大な結果に繋がります。

とはいえ、一般の人には書かれている内容が『本当に正しいのか?』を判断するすべがありません。そこで広く資金を集める上場企業や、大企業では、専門の資格を持った『公認会計士』のチェックを受けることが義務付けられています。これを『財務諸表監査』といいます。

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企業の出す報告は、莫大な量のデータから作られます。よくシステムの世界では『ガベージイン・ガベージアウト』なんていい方をしますが、いい加減なデータを元に資料を作っても、いい加減な結果しか出来上がりません。しかし、ひとつひとつのデータをくまなくチェックすることは不可能です。

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そこで大切なのが『データを作る仕組みを正しくする』ことなんですね。例えば、一度入力したデータが勝手に書き換えられないか?あるいは、対応するデータに対応する文章が適切に管理されているのか?そういったところが正しく管理されていないと、新ラインできるデータは作られません。

かつて多くの企業で『不正会計』が問題になりました。それは、直接その企業に投資する人だけでなく、経済全体の混乱や投資の冷え込みに繋がります。そこで、『ちゃんとデータが作られることを確認する』ことを担保する仕組みとして財務諸表だけでなく、内部統制システムそのものの監査が義務付けられるようになりました。

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13.会計基準

きちんとチェックの仕組みもあるから安心!と云われても、何にあっているのか?をチェックするのかが重要になりますよね。

税金であれば、法律にルールがありますが、会計では『会計基準』と呼ばれるものになります。これは国会で作られた法律ではなく、財務会計基準機構という民間団体で作られています。言ってしまえば『業界ルール』みたいなものとして、政府からは一定の距離を取っています。

最近ではIFRS(国際財務報告基準)なんてものも出てきて、世界的なルールに集約しようとしていますが、これも民間団体の手によるものです。というのも、政府に基準づくりを委ねてしまうと、いろいろな思惑によってルールが捻じ曲げられてしまうことがあるからなんですね。

バブル崩壊の余韻の残る1998年、土地再評価法という法律が制定されました。土地の値段は買ったときの金額で評価されますが、通常はいくら値上がりしても、売却するまでは『利益』とは出来ません。バブル崩壊後に大きく値崩れしたものの、戦前から保有していたような土地には多額の含み益が含まれていました。

そこで、景気対策の一環として『土地に対する含み益』を利益として計上することを許したものが土地再評価法です。ルールを捻じ曲げてまで、景気対策に繋げようとしたわけですね。そんなこんながありまして、一時は日本基準で作られた資料を英訳して使う場合には『この会計基準は一般的なものじゃなくて、日本基準だよ!』なんていう文言を入れるべし、なんて屈辱的な要求がされたりもしました(レジェンド問題)。

この辺のお話については下記の本が詳しいので、ご興味があればぜひ。

国際会計基準戦争 完結編

国際会計基準戦争 完結編

 

 ここ最近でも、リーマンショックの際に『大きく値下がりをした株価を、そのまま評価を下げてしまうと余計に景気が冷え込む』なんて理屈から、外部からの介入がありました。

でも、そんなことをしてみたところで、資料の本来の利用者である投資家にとって有益なものでなければ、むしろ不信感を高めるだけですよね。

会計にとって、いちばん大切なものはなんでしょうか。

14.真実性の原則

会計の世界で最も重要なこと。それは『真実を伝えること』です。わたしの好きな本の一説に、こんなものがあります。

私たちは経済の世界に一つしかない鏡なの。企業の良い所も悪い所もそのまま写し出す真実の鏡。鏡は決してしゃべらないし動かない。でも、絶対嘘はつかないから、みんな信頼して鏡を見てくれるのよ。

(女子大生会計士の事件簿 1巻より)

 ところが難しいのが、会計の世界において『真実は常に一つ』とは限りません

例えば、自動車の減価償却を行う場合、何年間で行うのが正解なのか?製品保証費用の引当金を計上するときに、いくら計上するのが正解なのか?様々な見積が入る要素があります。

しかし、会計基準のルールの冒頭には、こんな文言が書かれています。

企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

企業会計原則

 『嘘はついちゃダメよ』。そんなことわざわざ書くこともない話じゃないか。そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。

でも会計というのは、解釈の仕様によって、同じ事象であってもかなり異なる結果になりうるものです。その時、最も正しいと考えられるものを選ぶ必要があります。会計とは、そういった危ういものの上に成り立っているものであり、信頼性を担保するのは、作り手の責任であることを警告する一文のような気がします。

 

さて色々長々と書いてみましたが、何かお役に立つものがあれば幸いです。あくまで、素人の雑文ですので、これをきっかけとして色々と調べてみてもらう契機になれば幸いです。

ではでは、今日はこのへんで。

*1:ちなみに元々、貸借対照表はお金を貸している銀行側の目線で作られていた。銀行から見ると、貸し借りの関係が逆になるので、辻褄が合う。

*2:厳密に言うとそのうちの損益取引での増分