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ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

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公衆トイレと自治体財政

経済・社会


こんにちは、らくからちゃです。

通勤先が、東京都中央区に移ってきてから、気がつけば二回目の冬を迎えるようになりました。あの、殺人的な東西線の通勤ラッシュには未だに慣れませんが、都心の環境にも随分と慣れてきた気がします。

移転してきた時に、一番驚いたのは、公衆トイレの多さ!駅から会社までの5〜6分の距離の間に、2箇所もあったのですが、気がつけばもう一個増えておりました(;´Д`)随分と多いもんだなあと思い、調べてみると、中央区内でなんと83箇所も有ります。

比較のために取り上げると、大阪市は環境局管理+公園管理で330箇所(参考:公衆トイレ)。土地利用の性質の違いなどもあるので、比較対象としては不適当かもしれませんが、あえて面積あたりの値を比較すると

  • 東京都中央区 ・・・ 8.129箇所 / 1平方キロメートル
  • 大阪市    ・・・ 1.479箇所 / 1平方キロメートル

となり、トイレ密度は5倍くらい多いという計算になります。

まあ、他のブログを見ているとトイレ見つからなくて大変な思いをした人や、同棲してる彼女が大変そうな人や、色々と危ない感じのする人(これは関係ないかw)も居るようなので、多いに越したほうが良いとは思います。ただ、近くを通り過ぎるときに見ていてもあんまり利用されているようには思えないんですね。

わたし自身、利用したことがあるのは、会社のトイレがいつまでたっても空かなくて、もう何だか色々と限界に達しようとしていたときに、『あ、そういや外にあった』と思いついて利用した時くらいです。

実際使ってみると、思った以上に綺麗でした。先ほどのページを見ていても、

中央区では、区内83ヵ所(内、だれでもトイレ61ヵ所)に公衆便所を設置しています。様式はすべて水洗式で1日に2回(銀座地区等6ヵ所は3回)の清掃を行っています。また、すべての公衆便所にトイレットペーパーを備え付けています。

となっており、うちの地元の『これ、下手すりゃ半年くらい掃除されてねーんじゃねーの?』と思うくらいの魔境感溢れる駅前の公衆トイレとは全くレベルが異なります。ですので、『汚いから使わない』ということは無いわけですね。

大都会にこれほど公衆トイレは必要か?

何故使われないのか?と考えてみても、別にわざわざ公衆トイレを使わなくても、他にトイレを利用できる場所はいくらでもあります。外でトイレに行きたくなるとすれば、会社かお店、それでなければ駅にでも移動をしている時ですよね。

何もわざわざ公衆トイレを使わなくとも、区内には22件も駅があります。すべてのお店が貸してくれるわけでは有りませんが、喫茶店等でもトイレを利用することも出来ます。果たして、わざわざ公衆トイレを設置する必要なんてあるの?と思うような状況です。

設置されているトイレは、車いすの方でも利用しやすいような作りにはなっているようですし全く不要だとは思いません。ただ田舎もんの目線としてはそういったトイレも、駅や大型商業施設の中にあるからいいんじゃないのん?と思ってしまいます。

少し古くなりますが、平成17年のデータによると、これらの公衆トイレの維持費用は、8,190万円(年間公共設備維持費 39億円* 公衆衛生 2.1% 参考:中央区財政白書施設編)。建設費は、1つ2,800万円といったところのようです。

思ったよりは安いなとは思いますしたが、それだけのコストをかけてまで維持するだけの価値はあるんだろうか?と疑問に思ってしまいます。

中央区って、お金が余っているんだろうか?そう思い、もう少し調べてみることにしました。

自治体財政の仕組み

中央区の財政状況について確認する前に、『特別区』という特殊な自治体の財政の仕組みについて振り返ってみましょう。世の中の税金というのは、大雑把に分けると以下の3種類に分けられます。

  1. 所得課税 ・・・個人の給与や会社の利益に対して掛けられる税金
  2. 消費課税 ・・・物を買う際に支払う税金
  3. 資産課税等・・・持っている資産に対して掛けられる税

それぞれの比率は、国・道府県では、所得課税と消費課税がメインになっていますが、市町村については、所得課税と資産課税がメインとなります。資産課税について、具体的な税目を上げると『固定資産税』と『都市計画税』がその大半を占めています。

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(出典:総務省|地方税制度|地方税収等の状況  国・地方の主な税目及び税収配分の概要)

固定資産税が基礎自治体の主要税目に据えられている理由ですが、ちょうど学生時代に取ったノートにその理由が書かれていました。(真面目に授業受けてて良かったなあ)

  1. 自治体が無駄遣いをする
  2. そうすると、将来固定資産が増税される予想が立つ
  3. そうなれば、収益の割引現在価値が下落する
  4. 結果として、固定資産税が減収する
  5. その為、自治体が無駄遣いをしないための抑止効果となる

と、回りくどく説明されて居ますが、市町村などの基礎自治体は、施策によって地価を向上させることができるので、その成果となる固定資産税は基礎自治体に帰属するのが良かろう。ということですね。

ただ、この図の中には特別区、いわゆる『東京23区』と東京都は出てきていません。それは、この二者だけ特別な構造となっているからです。

東京都の財政の仕組み

特別区と市で、また制度が若干変わってくるのですが、両者の関係は下記のようになっています。

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東京都では、消防やバス・地下鉄の運営など、他のエリアでは市町村の行っている業務の一部を東京都が行っています。特に、23区内においては、かなりの部分を東京都が担っています。23区にフォーカスし、細かい所掌についてまとめたものはこちら。

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特別区では、保健所が建築確認といった『中核市』レベルで行われている一部の業務も行っていますが、下水道や水道、都市計画や生活道路といった市町村レベルの業務を都が代行しています。特別区とは、『基礎自治体』としての性格と『東京都の一部局』としての性格の両者を持った組織ともいえます。

(出典:総務省|地方制度調査会|第30次地方制度調査会第8回専門小委員会)

この体制を支える財政の仕組みですが、通常基礎自治体に帰属する『固定資産税』、『市町村民税法人分』、『特別土地保有税』の三税が、特別区に限っては広域自治体である『東京都』に帰属します。これらの税は、都が45%、特別区が55%の比率で分配し、特別区間は人口、学校の数、管理している道路の面積etc...で調整・分配されます。

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(出典:都区の税財源と都区財政調整制度の関係)

もともと、戦時中に『東京市』と『東京府』を合併させた時の制度を引き継いだ結果、このような仕組みとなっております。ただ現実的に、地価はべらぼうに高いものの、昼間の住民の人数は非常に少ない千代田区が固定資産税を総取りしてしまうより、都や他の特別区で調整したほうが良かろう、ということが背景のようですね。

東京は豊かな自治体か?

さて、東京都の財政の仕組みについて、アウトラインを振り返ってみましたが、その上で『東京って金が余ってんの?』というところに戻りましょう。

各自治体の収支の状況を表す指標に『財源超過額』というものがあります。これは、見込まれる税収から、その規模感ならこれくらいの経費が妥当と国が考えたコストを差っ引いて求められるものです。これを元に、国から地方に渡される地方交付税の金額などが計算されるんですね。

東京都での値は下記の通り。

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(出典:27年度 東京都普通交付税の算定結果について|東京都)

集計にあたって、国の手心が加えられている!と、東京都側は随分ご立腹の様子ですが、それでも東京都の財政は恵まれているほうであるのは事実でしょう。その結果、広域自治体レベルでは、唯一の地方交付税非交付団体となっております。

ところで地方交付税ですが、『国から地方への仕送り』なんて表現がされることが多いため、『弱い自治体を支援するための開発援助かなんか』という風に捉えられがちです。ただ、総務省も言っているとおり、

地方交付税は、本来地方の税収入とすべきであるが、団体間の財源の不均衡を調整し、すべての地方団体が一定の水準を維持しうるよう財源を保障する見地から、国税として国が代わって徴収し、一定の合理的な基準によって再配分する、いわば「国が地方に代わって徴収する地方税」 (固有財源)という性格をもっています。

総務省|地方財政制度|地方交付税

 税収の発生源と行政コストの発生源にバラつきがあるため、一旦国がまとめて回収して、それを所定の比率にあわせて分配する、という性質を持っています。

最近だと、これだけでは『自治体間格差』を解消することが難しいようで、都道府県の財源である法人事業税や法人住民税について、一部を国税とし、各地方自治体に人口と従業者数で按分する仕組みができました。その結果、住んでいる人や働いている人の数の割に税収の多い東京都では、3000億円程の金額が他の地方へと分配される形となりました。

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(出典:平成27年度(2015年度)東京都予算(原案)の概要)

税収が減ることになる東京都は、大変遺憾に思っているようですが、東京都に他の県から通勤しているひとも多いことを考えると、ある程度は仕方ないんじゃないかなあと思います。

さて中央区の財政ですが、『納めてる固定資産税の割に、都からの配分が少なくね?』とご立腹のように思われる資料が掲載されていました

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それでもなお、全体の『歳入と歳出の状況』を見てみると、随分恵まれた状況のように思われます。

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(出典:中央区 財政白書)

政府直轄領東京都

話を整理致しますと、『中央区の財源は、一旦東京都に回収され、分配されている。東京都の財源は、他の都道府県に分配されている。それでもなお、中央区・東京都の財源は豊かである。』ということが、言えるのかな、と思います。

話は変わりますが、わたしが高校生の頃、『総合学習』の時間にて、それぞれテーマを決めて調査報告をするという時間がありました。わたしがテーマに選んだのは『首都移転計画』。色々と調べていく中で思ったのは、『首都機能を移転すれば、東京の相対的な影響力が下がるかもしれないけど、国全体のメリットになるのか?と言われれば微妙だよね』ということでした。

確かに、東京が『首都としての便益を独占している』という主張は理解出来ます。でもその結果として、『日本の成長のエンジンである東京の活力を失わせることは正しいとは思えない』と思ったんですね。

そこで考えたのが、『東京が国民全体で共有すべき利益を独占しているというのであれば、東京を国の直轄エリアということにすれば?』ということ。当時考えたのは、こんな感じのお話。

  • 都心五区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)以外の市町村は、神奈川・埼玉・千葉に割譲するか、新設する『多摩県』の所属とする。
  • 東京都庁は、内閣府の外局とし、東京都知事は内閣総理大臣が任命する。
  • 東京都の税収はすべて国税とし、必要経費もすべて国家財政から捻出する。
  • なお、島嶼部についても政府直轄領東京都の管轄とする。

『東京が国の看板なら、インドみたいに首都圏は政府直轄にしたらええやん。あと、沖ノ鳥島みたいな、外交的な観点から維持する必要のある島嶼部も、国が責任持ったほうが良えんとちゃう?』みたいなことを熱弁を振るっていたのですが、色んな人から( ゚д゚)ポカーンとされた記憶がございます。

あらためて思えば、いろいろと突っ込みどころ満載です。インドだって、首都圏の税収を国家レベルで管理するために政府直轄にしているわけじゃなく、アメリカンのワシントンDCのように、他の州の影響を受けないように独立させることが多いのですが、それと同じものだろうしね。

まあ、『政府直轄領東京都』という響きが気に入って使っていたという側面が大きいのですが、振り返ってみればこのプラン、思考実験としては考えてみても面白いんじゃないのかな、と思うところはあります。

その固定資産税は誰のもの?

大手町・丸の内・有楽町を合わせた『大丸有』に本社を置く企業の売上は、日本全体の24%に及ぶそうです。勿論、その利益のすべてが東京都や千代田区に収められるわけではありませんが、このエリアから生じる固定資産税は相当な金額になるでしょう。

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(出典:都市開発事業の状況と に期待される役割について)

東京都には、弊社も我々の生み出した『付加価値』の一部から、固定資産税を収めさせて頂いております。しかし、その利用法について、住民票が都外にある我々からは、特に口出しをすることが出来ません。

勿論、住宅地だけでなく商業地も大きな行政コストがかかっていることは理解できます。とはいえその価値は、広いエリアから働きに来ている人努力や国家全体の方針によって築き上げられて来たものではないのでしょうか?

と考えると、商業地の固定資産税こそ、地方法人特別税のような枠組みで、市町村の枠を超えて共有できる仕組みを用意してもいいんじゃないの?とも思うんですね。

よりよい都市と地方の関係のために

さて、我が国において、『国』と『地方』の関係については、財政の面からみるとかなり『地方分権』が進んでおります。歳入や歳出の比率で見てみると、アメリカやドイツといった連邦制型国家と同レベルまで、地方自治体に税収も歳出も移ってきているように思われます。

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(出典: 地方財政システムの国際比較について : 財務総合政策研究所 地方財政の国際比較)

その一方で、都市と地方の財政格差は、広がる一方のように思われます。それが、『公衆トイレ』程度の格差であればとにかく、財政破綻した夕張のように、学校や教育といった、国民が等しく受けられるべきサービスにまで広がっていかないように、我々は注視すべきでしょう。

東京一極集中と地方の衰退はまた別の次元の話として考えるべきです。不用意に東京の活力を削ぐような施策はとられるべきでは有りませんが、東京で生まれる『果実』は、それをより必要とされる地方に分配されるべきとちゃうの?と思うんですね。東京は、PPMでいうところ『金のなる木』であり、そこに再投資をしていくよりも、次の『花型事業』を生み出すため、収益の分配を考えてもいいでしょう。

個人的には、次に公衆トイレを作るのであれば(なんかまだ増やそうとしているみたいなんですけど)、東京からもボランティアが沢山行っている福島にでも作ったほうが、まだ都民にとってもよいんじゃないのかな、と思う今日このごろです。公衆トイレをみると、県内全体でも中央区全体の1.5倍くらいしか無いみたいだしね。

ではでは、今日はこの辺で。