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ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

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弟子の育て方(OJTにおいて『教える側』として気をつけたこと)

仕事


こんにちは、らくからちゃです。

先日、はてなブログ界隈をうろついていたら、中々面白げな記事を発見いたしました。

■「メモを取れ」ほど非効率なものはない
よくOJTで「メモを取れ」という人がいる。私はいつもこれが理解できない。メモを取るほど重要なことならば、なんで教える側の人間が要点をまとめたメモを事前に作っておかないのか?自分の怠惰を押し付けているだけではないのか?メモをとることで意識が手先に移り、重要点を聞き逃す可能性は考えないのか。
そもそも、その仕事を教えられるほど熟知している人間と、何もわからない新人のどちらが重要なポイントを把握できるだろうか。初めて聞いた仕事内容で瞬時に重要なポイントを書き出せるスーパーマンはそんなに居ないと思う。

 最初に言っておきますが、どんな仕事においても『ちゃんとメモをとること』は大切な技術です。お客様からの電話を受けるとき、打ち合わせで議事録を取るとき、自分のタスクを整理するときetc... メモを取ることは、要点を記録するだけでなく、それを頭のなかで整理することにも役立ちます。そのへんのことについては、下記の記事が分かりやすかったかなあと思います。

でも、こと『OJT』に関しては、『メモを取れらなきゃいけない』ような教え方ってどうなのよ?ということは、OJTで教える側を担当した立場としても思うところでは有ります。今日は、わたしが『弟子』をOJTで育てた時の話でもちょっと書いてみたいなあと思います。

とあるコンサルタントの憂鬱

わたしがこの業界に新卒として入社したのは、今から6年位前のことです。弊社は、様々な企業の社内システムの構築・運用を支援するいわゆる『SIer』と言われる会社になリます。入社当初からずっと、『色んな人と会計の話がしたいっす!』と言い続けてきた結果、導入後のサポート部隊に配属されることとなり、そこでシステムコンサルタントとして色々なお客様の四方山話と日々格闘する毎日です。

さて、システムコンサルタントというと何だか『強そう』な名前ですが、実態はただの御用聞きです。弊社では、『営業』というとお金周りのことと契約周りのことを担当する職種であって、システムの中身についてはほとんど全くと言って知りません(select文もHello Woldも書けないでしょうね。。。)

システムコンサルタントのお仕事は、業務課題について具体的な解決策を提案することです。例えば、

  • 償却費は機械の稼働時間に応じて按分したい
  • 原材料については標準単価、包装材については実際原価で仕訳処理したい
  • 先行してインボイスのみ発行したい

などなどの『こういうのしたいんやけど』という話を聞いて、『じゃあ、このパラメータをいじれば多分あれがこうなってそうなります』『ほんなら、こんな外部モジュールつけないけませんわ』みたいなことを提案するわけですね。

弊社は、会計周りの部隊はどちらかというと主流では有りません。配属当初、サポート部隊は5〜6人くらいだったのですが、会計担当はわたし1人。すぐ、即戦力として現場にぶちこまれました。

ええ、大変でしたよ。

その他の部隊は各顧客毎に担当が決まっているのですが、会計担当はわたしひとりで全社の問い合わせを受けなければなりません。決算の時期とか、リアルに両手に内線握りしめてそれぞれ保留ボタンを駆使しながら対応したり、サーバ室で寒いよぅ寒いよぅと言いながらエクセルで検算したり、『御社の勘定体系図が如何にイケてなく、故に不適切差額が出るのか』を三連休を三連勤しながら紙芝居(ぱわぽ)にまとめたりする日々でした。

忙しくとも楽しい日々・・・ではあったのですが、お客様に御迷惑をかけるわけにもいきません。そこで『なんとかしてちょ』と上司に直訴したところ『じゃあ、アシスタントをひとり付けてやる。但し自分で育てろ』と言われました。入社2年目のことでした。

アシスタントと弟子

わたしにアシスタントとして割り当てられたのは、わたしより3ヶ月位前にサポート部隊に入っていた派遣技術者さん。年齢で言うと一個上、会計の知識はというと『借方って何ですか?』というレベル感。

どうしたものかなーと思ったのですが、まず最初にしたことは、彼を『弟子』として宣言することでした。まず、年上で社会人歴でも先輩ではありましたが、仕事の話をするときについては、彼に『敬語』を使うのをやめました。そして、ことあるごとに周囲の人に『彼が自分の弟子である』ことをアピールしました。

いまだに、どうしてそんなことをしようとしたのか?と言われれば自分でもよく分かりません。ただ、当時わたしが欲しかったのは、わたしの手足となる『アシスタント』ではなく、ひとりでも動ける『弟子』だったんですね。あときっと、彼の教育担当としての責任を明確にしたかったんでしょうね。

メモは取るな

彼の教育担当になったものの、実はわたし自身、自社の製品について十分理解しているかというと怪しい状況でした。幸い、大学で会計の勉強はしていたので、少しくらいはお客さんの話は分かったのですが、自社の製品について教えられるほどの知識があったわけでは有りません。

ひとまず、彼への教育として、簿記の一般的な考え方については、簡単に説明しましたが、大事なのは製品についての知識です。動作仕様書などの資料はあるのですが、どこに何が書いてあるのか、そもそもどんなキーワードで資料を読めば良いのか、読み解くためには独特のセンスが必要となる代物です。

そこで、彼への教育として行ったのは、どんどん実戦に投入して場数をこなさせて行くこと。もう最初は大混乱。そもそも、お客さんのメールに書いてある内容の意味すら分かりませんからね。

なので、手取り足取り、『多分お客さんが言おうとしているのは、この画面のこことあの画面のあれの金額が一致してないっとことじゃないのかなあ。』『だったら次に見るべきはどのデータかわかる?ひとまずそのキーワードで集計してみて。』『ほらほら、ここの数値が処理されていない。〆処理したあとに追加したんだろうね。』ひとつひとつ、ただひたすら根気よく、一緒に問題を解いていきました。

この時、意識したのは『メモをとらせないこと』でした。

彼は、比較的『メモ魔』で何事もわりと記録に残す方でしたが、あえて『メモは取るな。体に覚えさせろ』という方針を採りました。

余談の多いOJT

振り返ってみると、あまり学習効率が良くなかったかもしれません。ただ、『メモは取らなくていい。その代わり何回でも何度でも覚えるまで聞いていい』ことをルールにしました。忙しい時にもバンバン質問は飛んできましたが良かったこととして、『彼がどこまで理解できたのか?』は手に取るように見えました。また、意識して『質問されたこと以外』のことを付け加えて返すようにしました。

『ああ、そこの処理の方式を変えたいんだね。だったら◯◯の区分をAに変えて貰って。』『ちなみに、Bにするとどうなるか知ってる?』『気づかなかったかもしれないけど、実はこの間やってもらったX社さんがBなんだけど、Bをやると注意しなきゃいけないことがあってさ』

もうずっとこんな感じ。正直言うと、メモを取らせなかったのは自分の伝えた内容に100%の自信が無かったのも理由ですが、それより一番大事にしたかったのは、自由なコミュニケーションを重視するということです。

  • 困ったときにはすぐに聞けるようにする
  • きちんとハラオチするまで伝える
  • 知識の関連性を広げていく

そんなことを重視したOJTでした。

苦労したこと

一番苦労したのは、彼のモチベーションを維持することでした。もともと彼は、他の先輩が別の分野のプロフェッショナルとして育てようとしていました。先輩の思想は、『エンジニアたるもの、土日を潰してでも自己研鑚に励むべし』というマッチョなもの。彼は、比較的ワーク・ライフ・バランス重視派でしたので、そんな先輩から落第点をつけられた上で、私のもとに回ってきました。

最初のころは、『そんな仕事、師匠がやっつけたほうが100倍早いじゃないですか。なんで、わたしが残ってまでしなきゃならなきゃいけないんですか。』と言われ続け、何度『うるせえ、黙ってやれ。業務命令だ。』と言いたい気持ちを押し殺したか分かりません。

その都度行ってきたのは、ただひたすら『この仕事が出来るようになったら俺が助かる!』『俺を助けると思って頑張ってくれよぉぉぉ』『全力でサポートするから!』といってひたすら泣きつくことでした。

思えばそうですよね。残業をしてまでわざわざ付き合う義理は彼には無いんです。でも、そこをなんとかしてもらわない限り、現状は改善されません。そこで、ただひたすら『気持よく仕事してもらうこと』を意識しました。

彼が何か仕事をする度、『凄い。このパラメータ、俺教えた記憶ないけど、良く気がついたね』とポイントを指摘して褒めちぎり、何かを指摘する際も『90点!ただ、100点にするには、ここにこの文章を入れてあげるともっといいかな!』と『ダメ出し感』が出ないように意識しました。

先輩の前でも、『そのレベルの問い合わせであれば、うちの優秀な弟子が代わって対応します』と、持ち上げつつも理解のレベルにあわせて責任のある仕事を代行していってもらうようにしました。

人を実らせるために

そんなこんなをやっているうちに、気がつけばわたしが知らないうちに、上司や諸先輩方から彼に直接仕事が入ってくるようになりました。もう彼は、わたしの右腕でもアシスタントでもなく、ひとりのコンサルタントです。

彼を育て始めた頃、ある先輩に言われた言葉が有ります。『頑張っているようだけれど、一生懸命やっても、彼を君のようにすることは出来ないよ。教えられるほうの資質が大事だからね』と。

その場では、『うーん。色々難しいっすね〜』とヘラヘラ笑って済ませましたが、この時『なんとしても、彼を一人前に育てて先輩を見返してやる』とかたく心のなかで誓いました。それは、『教える側の資質によって、いくらでも人は伸ばすことが出来る』と自分の限界に挑戦してみたかったからです。

結局、彼の資質が良かったのか、私の資質が良かったのかは分かりませんが、彼の成長のおかげで、『教えるのが得意な人』という評価はゲットすることが出来ました。いやっほーい。

ところで、OJTを行うにあたって、『コーチング』という考え方は、多いに参考にさせて頂きました。

目からウロコのコーチング―なぜ、あの人には部下がついてくるのか? (PHP文庫 は 46-1)

目からウロコのコーチング―なぜ、あの人には部下がついてくるのか? (PHP文庫 は 46-1)

 

コーチングの基本は、 相手に教えるのではなく、相手の能力を引き出すこと。弟子を育てるにあたっても、最重要視したのは、何かを教えることではなく、自分一人でも考えて答えを出せる力を伸ばすことです。

そういえば、その昔こんなことを言っていた人が居ましたね。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ

山本五十六が語ったと言われる有名なセリフですね。さて、この部分は有名なのですが、その続きがあります。

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず

山本五十六のことはあまり好きではないのですが、この言葉は教育、特にOJTについて核心を突くものだと思います。

業種や状況によってそれぞれだと思いますので、わたしの『メモをとらせない』指導が役に立つかどうかは分かりません。ただ、伸び悩んでいる弟子がいるようでしたら、ちょっと試して貰ってもいいんじゃないのかなあと思う今日このごろです。

さて、どうやら近いうちにまたひとり弟子が増える事になりそうです。今度もまた、色々挑戦してみてフィードバック出来ることがあれば、お伝え出来ればなあと思います。

ではでは、今日はこの辺で。