ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

夏の甲子園の裏事情をホテル側から描いた『アテンド』が面白い

こんにちは、らくからちゃです。

先日、大阪まで出張に行ってきました。同じ日本なのに、日差しの強さがまた違う気がしますね(;´Д`)。

日差し以上に大変だったのが、宿の手配。全然空きがないんですよねぇ(´・ω・`)。世間は夏休みな上に、海外からの観光客も沢山いらっしゃっているようで、どこも満員御礼。なんとか少し遠い場所に切り替えて、予約することが出来ました。

ただ今の時期の大阪には、ちょっと変わった『団体様』がいらっしゃるようです。

『いやー、いつも予約している朝ごはんの美味しいホテルを取りたかったんだけど、全然空きが無くてさ。今日来る時に前を歩いていたら、◯◯高校御一行様って幟が出ていて、その前で坊主頭がストレッチしてたわ。』

と上司のおじさんが言っていましたが、ちょうどこの時期開催されている、全国高校野球選手権大会、いわゆる『夏の甲子園』に参加するするため、全国から高校球児が集まります。

試合に参加する高校生たちも大変ですが、迎え入れるホテルの人達も大変です。

  • 選手 ・・・ 18名
  • 監督 ・・・ 1名
  • 部長 ・・・ 1名

の合計20名分の宿泊費が、一泊4000円分高野連から支給されますが、そのほかにも複数の関係者が同行します。これだけの人数を受け入れる宿を出場決定後に決めるのは大変なので、高野連側で、各県別に事前に宿を抑えているようなんですね。

これがいわゆる『甲子園の定宿』です。

毎年県単位で、同じ宿を取るそうです。決まった定収入があるのは羨ましいのですが、練習をさせてあげる場所も確保してあげなきゃいけないし、食べ物にも気を使わなきゃいけないので、一般の団体客よりよっぽど大変です。

更に大変なのが、他の団体客と違って何連泊するのか誰にも分からないんですよね。決勝まで行けば20連泊くらいになりますが、初戦敗退となればすぐに出て行ってしまいます

良く勘違いされているそうですが、高校野球は高校生のスポーツ大会であり、商業イベントではないので、高野連はテレビ局から放映権料を取っていません。資金も潤沢にあるわけではなく、『キャンセル料を支払わないこと』を前提として宿も抑えられています。

また宿泊についても、高校生のイベントらしくあまり過度なサービスとならないように宿泊費の上限も抑えられており、相場の半額ほどにしかなりません。

この時期であれば、観光客も多いですし、もっと儲かるお客さんは沢山います。多くの宿では、そういった採算をある意味無視しながらも高校生を受け入れている。それは何故か?

そんな夏の甲子園の裏事情をホテル側から描いた『アテンド』という作品が非常に面白かったので紹介してみたいと思います。

アテンド

 物語は、東京銀座でホテルマンとして高い実績を上げてきた香住秀夫が、大阪中之島のホテルに異動させられるところから始まります。

何よりも効率を重視し、誰よりも数字を上げてきた香住。いきなりの『左遷』とも言えるような人事に不満を抱きながらも新任地へ向かいます。

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赴任早々、いきなり様々な仕事をおしつけられる中で、『アテンド』という仕事を任されます。ざっくり言うと『高校球児のお世話係』ですね。

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もともと、現場での業務より裏側での管理を得意としてきた香住。最初はその仕事を拒否し、客室管理の仕事を望みます。しかし、そこには驚愕の客室管理の実態が・・・。

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同ホテルでは、途中で敗退してしまいキャンセルが出た時の『保険』として、1つの部屋を二重三重にも予約していたんですね。部屋が明かなかった場合は、頭を下げて他のホテルへの振替を依頼するなどして乗り切ってきたようで。

さっさと負けてしまえば楽ですが、逆に勝ち進めるほど自分たちの首をしめていくことになります。プライドの高い香住としては、高校生の相手をするのも嫌だけど、そんな仕事はもっと嫌だ。というわけで、『アテンド』を引き受けることになります。

甲子園とは何か

しかし始まった『アテンド』の仕事は最初から多事多難。

何より、選手・監督・受付スタッフ・調理スタッフetc...様々な人の間を取り持ちながら仕事を進める必要があります。

自分一人のキャパシティで仕事をするには無理がある。だから、他の人の様子も伺いながら、『協調性を持って』仕事をしていく必要がある。自分に任された役割をしっかりと果たすことを信条としてきた香住にとって、それは今まで何よりも苦手としていた仕事でした。

しかし、球児たちのために、お互いの役割を越えて働く同僚たちの姿を見て、だんだんと考え方が変わっていく。

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高校野球は、勝ち負けが全てのシビアな世界でも有ります。その一方で、『教育』という側面も持ちます。プレイそのものにも『協調性』は必要とされますが、それ以上に、周囲の沢山の人に支えられ、初めて出来る『祭り』です。

ひとりひとりが自分の守備範囲の中だけでプレイしていたら、イレギュラーな自体には対応出来ない。だから、仲間の状況をしっかり読んで、『困ったときはお互い様』で動いていくことが、勝つために必要なことである。

それは、球場に立っている選手だけでなく、周囲の人全員が学ぶことが出来る。そんな想いが込められた作品でした。

作品まとめ

なお、本作は下記URLより第一シーズン分が無料で読むことが出来ます。

確か、去年か一昨年くらいに、コミコのベストチャレンジで連載されていたような気がしますが、現在コミコプラスで続編が連載中です。

『えーっと、打ったら右に走るんだっけ?』くらい野球の知識は皆無のわたしでも、だいたい30分くらいで読み終えることが出来ましたので、是非、野球に興味のある人も、ない人も読んでほしいなあと思う作品です。

まだまだ熱い日が続きます。高校球児もそうですが、くれぐれも水分補給を忘れずに、頑張ってください。

ではでは、今日はこの辺で

参考資料