こんにちは、らくからちゃです。
家内と話をしていたら、ここ最近の大学では学生証に埋め込まれたICカードを入り口近くの読み取り機にかざすことで出席管理をするようですね。NFCの普及に伴い、管理端末もAndroidタブレットになったりと、色々と進化を遂げているようです。
しかし、学生も学生で、『代返』の代わりに『代理タッチ』するものが出てきたり、とりあえずタッチだけして撤収する『ピ逃げ』する輩が出てきたりと、いろいろとイタチごっこな状況になっているようです。
みなさんどう思います?いやあね、控えめに言って
と。
未だに出席管理なんて馬鹿げたことをしていることもそうなんですけど、『出席管理』が必要なほどの人数を大教室に集めて講義をするスタイルを大学が貫いていることについても、『ちょっといい加減考えなおしてみたら?』と言いたいわけですよ。
置いていかれる大学教育
代々木ゼミナールが撤退するなど、色々と厳しい状況の 予備校業界ではありますが、業績が好調な会社があります。ナガセです。ピンとこない人も多いと思いますが、この人の顔を見れば思い出されることでしょう。
『東進ハイスクール』『東進衛星予備校』の名前を知らない人は少ないでしょう。ナガセは、これらの衛生予備校を傘下に抱える企業です。余裕の現れか、IRページすらろくに作っていないので、中々実態を読み解くのが難しいのですが、売上高も利益も、綺麗に伸びています。
東進衛星予備校の評判や実情については、ゆきひー (id:ftmaccho)さんが詳細を解説してくれていますので、そちらを見て頂ければなあと思います。
本記事で必要な要点だけ抜き出すと、
「東進衛星予備校」とは、そんな有名講師たちの授業をDVDにやいて、それをパソコンで見ながら授業を受けるというスタイルのものです。
というような授業が受けられる予備校です。
こういったスタイルの学習方法は、今や珍しく有りません。わたしは、大学時代に『大原簿記専門学校』で簿記1級の授業を受けていました。その時も『講師の生授業』と『DVDブースでの録画授業の視聴』を選ぶことが出来ました。質問がある場合は、DVDで学習している受講生も、各校舎にいる講師の先生に相談をすることも出来ます。だいたい、『大原』でも『LEC』でも『TAC』でも似たようなことを行っているようです。
わたしは、『学習のリズム』をつけるために、なるべく『生授業』に参加するようにしていましたが、時間の調整がつかない時は『録画授業』も見ていました。生授業のほうが集中して取り組めたような気がしましたが、まあほとんど大差は有りません。
講師の先生が、定期的に自身の授業の受講生と録画授業の受講生の小テストの点数の比較なんかを紹介してくれましたが、自虐気味に『実は、ここに来てもらってわたしの話を聞いてもらっている皆さんより、全国統一のDVDを見て貰っている人のほうが点数が高かったんだよね・・・』と言っていたので、少なくとも大原においては学習方法による差異は無いものと考えられます。(先生が下手っぴだったのかもしれませんが・・・)
それ以上に、急な飲み会や、旅行の計画なども自由に調整がすることができ、都合のいい場所・タイミングで勉強が出来るというのは大きなメリットでした。
オープンコースウェアから十余年
時間やタイミングを自由に選べる学習方法への取り組みは、大学においても行われてきました。特に有名な取り組みが、すべての講義をウェブ上に公開しようと始まったMITのオープンコースウェアです。
大学の『商品』である講義を、全世界中にタダで配るというのですから、開始した2003年当時はそれなりに大きな注目を集めました。むしろ、注目すべきは『大教室の講義くらいタダで配っても問題ないと教職員が自信がもてるその他の授業の品質の高さ』だったような気がするのですが、結局そこに視点が向けられたことはなかったような気がするのが大変残念ではあります。
話を戻しましょう。オープンコースウェアの取り組みは、日本国内でも広がっており、
などを中心に活動は続けられています。ちょうど、この活動が盛り上がり始めた頃、わたしは大学生でした。こういった運動が広がれば、『大教室の授業は、わざわざ大学まで行かなくても家で講義を受けることが出来るのかな』なんて思っていたのですが、10年以上たった今でも、大教室の講義も出席確認もまだまだバリバリ現役のようです。
わたしが大学生の時は、『この授業を取るとこっちが取れなくなって、でもこれは必修だぞ?あー、でも◯◯キャンパスの開講科目か・・・。じゃあ、今期は諦めて来期に履修するか?』なんて、『履修登録』というパズルを半年に1回は行っていましたが、今の大学生もまったく同じことに悩んでいるすれば、ここ10年間で我々は何を学んできたのかと悲しくなってしまいます。
どうして、予備校や専門学校でもできることが大学では出来ないのでしょうか。
大教室という閉鎖空間を開放しよう
ちょっと考えただけでも、
- より自由な履修計画の設定
- 大教室の物理的サイズにとらわれないことによるひとりあたりコストの削減
- 設備の維持管理費用の削減
- 質問や課題管理の向上
などなど、色々なメリットが考えられます。しかし、それ以上に重要なのが、『大教室』というある種の閉鎖空間を開放することができることだと思うのですよ。大学での授業評価といえば、もっぱら『学生』からの授業評価が多いようで、教員間の評価となると事例紹介記事が出るほどの頻度でしか行われていないように思われます。
(参考:FD活動事例:教員相互の授業参観とその一分析)
これって結構問題な気がするんですよね。教授が、間違ったことを教えていないかどうかの品質管理って、どういう風にするつもりなんでしょうか。また、教育品質の向上の為には、評判の良い先生の授業から学ぶべきことも多いはずですが、そういった授業の進め方についての評価改善ってどういう風に行われているんでしょう。
映像として残しておけば、書籍にするのと同様に、検証をしたり後世に伝えていくことが出来ますし、その価値が有るだけの講義をして頂くためのプレッシャーになってくれればなお良いですね。
一昔前であれば、こんなことは考えられなかったのかもしれませんが、近年の飛躍的なICT環境の向上によって、いろいろなことに挑戦できる下地が整いました。ちょっと前のニュースになりますが、ニコニコ動画で有名なカドカワが教育産業に参入という発表もありました。
まずは高校から始めるそうですが、是非その映像インフラを大学教育のほうにも活用していただければなあと思うところです。
在宅勤務について大真面目に考えるのであれば、在宅授業の可能性ももっと真剣に調査研究してもいいんじゃないのかなと思うんですよ。大前さんのところなど、通信制大学として、取り組みは進んでいますが、通信が主ではない既存の大学においても、もっと教育品質向上の為にも、取り入れていってもいいんじゃないでしょうか。
やっぱり、学問や教育において一番大事なのは、顔を突き合わせての議論や実験だと思うんですよね。そのためにも、大人数で一斉に開講するような講義については、可能な限りオンラインで自由に受講できるようにしておいたほうがいいんじゃないのかなと思うんですよね。10年後には、『まだ大教室で消耗してるの?』なんて言わずに済むようになっていて欲しい今日このごろです。
ではでは、今日はこのへんで。