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ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

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サービス=無料って考え方はもう辞めようよ



こんにちは、らくからちゃです。

ここ最近、日本の経済成長や生産性についての記事をよく見かけるようになりました。我が国の1人あたりGDPは長らく低成長に陥っており、とうとうお隣韓国にも抜き去られる状況下にあります。

『生産性』と言われてもピンとこないかもしれないけど『お金につながる価値を生み出せていない』と言い換えれば分かりやすいかしら。人口減少社会において、労働者ひとりあたりにで処理できる仕事量が追いつかないのは、下記記事にもあるとおり、公共サービスの維持も危うくなっていくことを意味します。

そもそも、どの辺に問題があるのか。切り口は色々とあると思うけど、まずは業種別の時間あたり生産性について、日本生産性本部が面白い資料を作っていたので見てみましょう。

日本の生産性を引き下げているのは誰?

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(出典:日米産業別労働生産性水準比較)

アメリカだけが海外じゃないし、雇用環境や社会構造も大きく違うけど、イメージがつきやすくて、比較相手としては悪くないんじゃないかなと思います。

このグラフの面白いポイントは、横軸に付加価値のシェアを取っており、時間あたり生産性の低さが全体に与えるインパクトが分かりやすいところ。化学や機械では時間あたり生産性が上回っているけれど、そもそも経済全体に占めるウエイトは大きくありません。むしろ、全体としてのウェイトの大きな『サービス産業』の生産性の低さが目立ちます。

全体では、

  • 製造業・・・69.72%
  • サービス業・・・49.9%

こりゃ酷い(ノ∀`)アチャー

実際問題、いまや日本経済の中で付加価値を生み出しているのは『サービス業』なんですよね。

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(出典:経済活動別(産業別)GDPの構成比(名目))

ちょっと文字が潰れて読みにくいかと思いますが、2014年時点における経済活動別に生み出した付加価値において、サービス業は19.8%と製造業の18.7%を上回っているんですね。もうひとつ言えば、その比率は年々上昇しつづけているのもポイント。

日本経済の先行きは、サービス業の生産性に掛かっているとも言えます。

日本のサービス業の何がダメなのか?

じゃあ日本のサービス業は、どこを変えるべきなのか、何を改善すべきなのか。 良く日本のサービスは品質が良いと言われていますが、実際のアンケート調査を見てみても、日本のサービスの品質は日本人・米国人ともに非常に高い評価を得ています。

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(出典:同一サービス分野における品質水準の違いに関する日米比較調査)

圧倒的ではないか( ;・`д・´)

で、次にお値段の方についてお伺いしてみたところ、こんな感じに。

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う、(´ε`;)ウーン…

まあ品質がいいんだからお値段が多少高いのは仕方ないよね。でもまあ、満足して貰えているのならいいじゃない。

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うわぁ...(´・ω・`)

品質が高いのならば、価格も高いと思われても当たり前...ではあるんだけど『別にそんなんせんでもええんけど』と言われてしまえば、結局のところ、やる必要のないことをやっているだけに過ぎないんですよね。

宅配便の『割高感』がNo.1ですが、荷物が早く届くのは有り難いことですが、時間が倍になってもいいから値段を半分に下げてよ!と思うこともあります。

どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。

『おもてなしの精神』の呪縛

完全に個人の主観ではありますが、その背後には日本のサービス業全体を支配する『おもてなしの精神』があるんじゃないのかなあ、なんて思うんですね。

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2013年、東京オリンピック招致の際に滝川クリステルさんが、謎の動作とともにツイートし、一躍流行語となった『おもてなし』という単語。それ以前からも、日本のサービス業が目指すべきものとして、多くの企業で掲げられていた『おもてなしの精神』。果たしてその正体って何なのでしょうか。

比較対象として、海外でよく用いられる『ホスピタリティ』という言葉との違いについてまとめられた研究ノートがありました。

本論では、『ホスピタリティ』とは教会での慈悲と奉仕の精神に基づく行為であり、『おもてなし』とは茶道文化に基づく思いやりの心に基づく行為であり、起源においては無償性という意味においても同質のものであったとされています。

西洋では、教会などに立ち寄りながら巡礼を行いましたが、その教会が現在における『ホテル』や『病院』として、後のサービス業の礎となりました。その中で、『ホスピタリティ』という語に含まれる『無償性』という意味合いは薄れ、今日のような対価を伴うサービスを包括する概念として進化しました。

日本では、茶の湯の世界において、小さな空間・短い時間の中でも、相手のことを思いやり、満足させるという価値観が『おもてなしの精神』の下地となりました。

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(出典:上記考察)

有償・無償だけでなく、『ホスピタリティ』が"誰であっても心地よく受け入れる"ことに主眼をおいているのに対し、『おもてなし』は"相手のためにしっかりと準備を怠らないこと"を含んでいるところにも違いがあるのかな、なんて思います。

そのことを改めて考えさせられた記事があります。

u-note.me

本記事で"心得るべき"とされた『3つのこと』を抜粋致しますと、

  1. 想定外の気遣いをすべし
  2. 見返りを求めるなかれ
  3. 「考える時間」をつくるべし

となるそうです。

『おもてなし』は甘え

確かに、『おもてなしの精神』をビジネスに持ち込もうとするとこうなるんですよね。

相手のことを理解するために『考える時間』は必要です。その上で、相手の期待や想像を超える何かを自分で考え出さなければいけません。更に、それは『おもてなし』であって見返りを得て行うものであってはいけないんですよ。

サービスを提供するにあたって、想定・準備すべきことが増える一方、それに対する金銭的な見返りは発生しません。こう書くと『なんとブラックな...』となりそうですけど、サービスを提供する側にしては案外居心地が良かったりするんですよね。

きちんと内容と対価を決めて行うのであれば、そこに評価と競争が発生しますが、そういったものの対象に直接ならずに済みます。サービスの受け手としても、内容が曖昧であれば、自分の求めるサービスの内容をねじ込んでいくことが出来ます。

そうすると声の大きい人の要求がサービスに組み込まれ、その他の人にとっては過剰な内容になっていく危険性を孕んでいるんですよね。この話、どこかで聞いたことありませんか?まさにイノベーションのジレンマじゃありません?

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

 

 ご存じない方のためにざっくりまとめると

  1. 顧客第一で製品開発を行う
  2. それを繰り返した結果、顧客のニーズを超えた製品が出来上がる
  3. 新規市場開拓が遅れ、市場そのものが消失したあとに打つ手がなくなる

こんな感じ。サービス業でいえば『お客様の声』にだけ従って経営していけば、評価軸も定まっているので非常に楽ですが、全く別のサービスの事業化が遅れると、既存顧客の需要そのものがなくなった際に対処ができなくなります。

サービス=無料ではない

日本のサービス業が『おもてなしパワー』によって高品質であると評価されている点については素晴らしいことです。問題は、その価値が正しく評価されていないことなんですよね。

日本では『サービス』というと、『無料』『割安』『おまけ』みたいな意味合いに使われることがありますが、この使い方は和製英語なんですよね。

解説:
日本人はよく
「無料で修理する」「ただで進呈する」という意味で,
「これはサービスです」「サービスしておきます」といいます。
しかしこのようなserviceの使い方は和製英語であり,
正しい英語では,lt’s free. となります。

英語のserviceには「無償」の意味はありません。
例えば
「店で少しサービスしてくれた」
「リンゴを1個サーピスしてくれた」は,
The shop threw in a little extra.
The grocer’s threw in one extra apple・
となります。
「モーニング・サービス」の朝食は,
breakfast at a special reduced price,
a special reduced price in the morning
といいます。

さ行の和製英語・カタカナ英語

ちなみに所謂『サービス残業』はこんな風に言うそうです。

なお、「無料奉仕で組織に貢献する(滅私奉公?)」という意味で生まれたと思われる「サービス残業」は、英語で言うなら”unpaid overtime”。

和製英語に気をつけよう(8)? 「サービス」(前編)

日本語風に言うと『賃金不払労働』でしょうか。なんかサービス残業はポップすぎる感じがするので、これから積極的に使っていきたいと思います( ・`д・´)

話が脱線しましたが、こういう使われ方をするようになった背景には、日本では完来『サービス=おもてなし=無料』という前提から生まれてきた語法のような気がしますね。

サービスの価値が正しく評価する下地が無かった結果、一部の顧客層にはウケが良くともその他には過剰すぎるサービスが生まれることになったのかもしれません。

サービス業は、消費地と生産地が一体であり、グローバル化の中からは取り残されてきましたが、人の移動自体が自由になった今日において、その影響から逃れることは出来ません。より多くの人にとって、分かりやすく・納得できるビジネスでなければ、生き残ることは出来なくなりつつあります。

またメニュー化されない『おもてなし』は、属人化を伴いやすい構造にあります。更に言えば、正しく体系化されないサービスは、次に引き継がれないリスクも伴います。ただ安いだけのサービスではなく、持続的に継続が可能なビジネスを望む消費者も少なくありません

今後、サービス業がより生産性を高めていくためには、

  1. 過剰なサービスを廃止する
  2. 評判のサービスは別メニューで体系化する
  3. 新しいサビースを開発し続ける

ことが必要じゃないのかな、なんて思います。例えば、宅急便などであれば『18時以降の再配達は有料とする代わり、24時まで再配達可能にする』とか、何でもかんでも『無料』にするのではなく、きちんと『付加価値のあるサービス』を提供していくことが大事なんじゃないかなあと思う今日このごろです。

ではでは、今日はこのへんで。