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ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

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経済小説の泰斗 城山三郎の小説を片っ端から読んだのでおすすめ作品を紹介する



こんにちは、らくからちゃです。

皆さん小説は読む方ですか?わたしは、どちらかというとビジネス書とか科学読物などのほうが好きなのですが、たまに無性に小説も読みたくなることがあります。

といってもやはり、よく読む作品は、恋愛物よりビジネス系の『経済小説』と言われるものが多いような気がします。経済小説と言えば、『倍返しだ!』のセリフで一斉を風靡した池井戸潤さんや、ハゲタカシリーズで有名になった真山仁さんあたりが最近では有名でしょうか。

書店に言っても『経済小説』はひとつの大きなジャンルになっていますが、この分野を切り開き、『経済小説の泰斗』と呼ばれる作家がいます。それが城山三郎さんです。

城山三郎とは

 わたしが、城山三郎作品に初めて出会ったのは、大学3回生の時でした。当時、『官僚たちの夏』がドラマ化されていましたが、毎週欠かさず見ていました。

そして就職後、通勤電車で色んな本を読んでいた中、『あんな感じの作品を他にも読んでみたいなあ』とおもい、順番にamazonで注文していったところ、なんだかハマってしまってかたっぱしから読んだ結果、今に至ります。

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気がついたらなんかいっぱいあった(笑)

さて、同氏の作品の特徴の前に、同氏の経歴について書いてみます。

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(引用:追悼 城山三郎:日経ビジネスオンライン)

  • 1927年 名古屋市に生まれる
  • 1945年 現在の名古屋工業大学に入学、徴兵猶予があるにも関わらず海軍に志願し特攻部隊へ
  • 1946年 現在の一橋大学へ入学
  • 1952年 卒業後、愛知学芸大学で教鞭をとる
  • 1957年 『輸出』で文学界新人賞受賞
  • 1959年 『総会屋錦城』で直木賞受賞
  • 2007年 79歳で永眠

経歴の中で特筆すべき点は、海軍の特攻部隊として終戦を迎えた点でしょう。城山三郎の作品には、『何のために働くのか?』と自問自答する人物が多く登場します。そして彼らのことを心配して支える家族の姿が合わせて描かれています。これは、同氏の作品の多くに共通する設定です。

企業や官庁を舞台としながら、同氏が本当に描きたかったのは、そこで戦う人たちの生きざまと、それをめぐる周囲の人たちの姿のようにも思えます。そのため、時代は変わったとしても色褪せない作品が多い気がします。

さて、同氏の作品はAmazonに作家名で出てくるだけでも100冊以上有ります。その全てを読んだわけではありませんが、読んでみた感想を独断と偏見にもとづいたおすすめ度とあわせて書いてみたいと思います。また新しい作品を読み終わったあとは随時追記していきたいと思います。

ではでは、

いっくぞー( ・`д・´)

官僚たちの夏

国家の経済政策を決定する高級官僚たち――通産省を舞台に、政策や人事をめぐる政府・財界そして官僚内部のドラマを捉えた意欲作。

おすすめ度:★★★★☆

城山三郎の名前は知らなくとも、この作品の名前は聞いたことがある。そんな人も多いのではないでしょうか?

戦後、焼け野原となった日本には、世界と戦うだけの競争力は残っていませんでした。そんな日本を守るため、どんな産業をどのように育てていくのか?は、社会主義国家さながらに国が管理する体制が取られました。中でも中心的存在であったのが海外からは、Notorious MITIとまでいわれた通商産業省でした。

しかし、日本の経済発展とともに、情勢は変わっていきます。かつては日本の産業界をリードしてきた通産省も、いつのまにやら足を引っ張る存在に。なのに一部の通産官僚は過去の栄光を引きずり続け、自らこそが経済界をコントロールするのだと、指定産業振興法なるものの成立を目指します。

本作は、主人公の風越が、人事の力を通して通産省をまとめあげようとする中、色んな人の思惑の中で生まれる様々なドラマを描いた作品です。実話を元に構成された話ですので、当時の歴史の振返りにもなりますが、それ以上にそれぞれの登場人物の『働くこと』への考え方が参考になる一冊です。ただ、当時の事情を知るには、もうひとつ不足するところがあるかなあと思うので★4つ。

落日燃ゆ

東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元総理、外相広田弘毅。戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人たちと共に処刑されるという運命に直面させられた広田。そしてそれを従容として受け入れ一切の弁解をしなかった広田の生涯を、激動の昭和史と重ねながら抑制した筆致で克明にたどる。毎日出版文化賞・吉川英治文学賞受賞。

おすすめ度:★★★☆☆

太平洋戦争終了後、行われた東京裁判。その中でA級戦犯とされた人を、みなさんどれだけご存知でしょうか?まあたいていの人は東條英機の名前しか出てこないんじゃないかと思います。

色んな批判や評価のある東京裁判ですが、その中でA級戦犯として絞首刑になったのは7人。そのうち6人が軍人でしたが、その中でたった一人、政治家が居ました。それが、主人公である広田弘毅です。

政治家といえば、いまでも世襲が多いものですが、当時は政治に関われるひとは、その殆どが名門の出身者や明治政府の立役者たちとその関係者に限られていました。広田は福岡の石屋に生まれながら、東京帝国大学に進学、外交官、欧米局長、外務大臣、総理大臣とまさに立身出世を極めます。

戦後、文民ながら戦犯とされた広田に大使、城山は極めて同情的です。他の戦犯とは違い、広田の問われた『何もしなかったことの罪』。時代の流れの中、仕方のないことが多かったので同情の余地が多いひとではあります。ただ、もう少し客観的な評価をしても良かったのでは?と思い、★3つ。文章としては面白いですし、エンターテイメントなので仕方ないところはあるんでしょうけどね。

男子の本懐

緊縮財政と行政整理による〈金解禁〉。それは近代日本の歴史のなかでもっとも鮮明な経済政策といわれている。第一次世界大戦後の慢性的不況を脱するために、多くの困難を克服して、昭和五年一月に断行された金解禁を遂行した浜口雄幸と井上準之助。性格も境遇も正反対の二人の男が、いかにして一つの政策に生命を賭けたか、人間の生きがいとは何かを静かに問いかけた長編経済小説。

おすすめ度:★★★★☆ 

東京駅の新幹線に乗換えるあたりでしょうか。ある変わったマークが有る場所があります。

そこは、1930年(昭和5年)11月14日、当時の首相、濱口雄幸が銃撃された場所です。この話は歴史の授業で聞いたことがある人も多いと思いますが、わたしはてっきり、その場で亡くなられたのだと思っていました。実際には、このことが原因ではあるものの、命はとりとめ、気力だけで内閣総理大臣としての仕事を全うします。

濱口は、総理大臣就任の際に、こんな言葉を残しています。「仮令玉砕すとも男子の本懐ならずや」現代語訳としては、たとえこの仕事を受けて死んだとしても、男として望むところだといった感じでしょうか。

濱口が取り組んだのは、『金解禁』という一大事業。その実現に向け、性格も境遇もも反対の井上準之助を相棒に選びます。その当時の時代と人間ドラマとしては面白いのですが、金解禁についての説明がもう少しあっても良かったのかな?と思ったので、★4つと致します。

粗にして野だが卑ではない

三井物産に35年間在職し、華々しい業績をあげた後、78歳で財界人から初めて国鉄総裁になった“ヤング・ソルジャー”──自らを山猿(マンキー)と称し、欧米流の経営手腕を発揮した高齢のビジネスマンは、誰もが敬遠した不遇のポストにあえて飛び込む。問題の山積する国鉄の改革を通し、明治人の一徹さと30年に及ぶ海外生活で培われた合理主義から“卑ではない”ほんものの人間の堂々たる人生を、著者は克明な取材と温かな視線で描いた。

『粗にして野だが卑ではないつもり』自分のことをそういう風に表現した男が居ました。彼の名は石田礼助。まあよくできた自己分析で、石田は行く先々で色んな『ぶっちゃけ』をしてしまい、色んな波紋をよんだ人物です。

石田は、漁師の家に生まれ、東京商業学校(後の一橋大学)に進学し、三井物産に入社。その後、世界を渡り歩く中で、若きソルジャーとしてビジネスの世界で戦い続けます。最終的には三井物産の取締役にもなり、華々しい功績を残し、あとはのんびり余生を過ごすはずだったところ、国鉄総裁の職を頼まれます。

当時、国鉄総裁は、面倒なだけでなんのメリットもない。そう思われていた中、石田は『国家のために』と二つ返事で引き受けます。そして、大した権限もない・・・そう思われていた中、石田は国会に対しても国鉄内に対しても、歯に着せぬ物言いで、どんどんと改革を勧めていきます。

誰からも一目置かれた爺さん。いずれこんな風になりたいなあと思うのと同時に、下記に大変好感を受けましたので、☆5つと致します。

石田は、月の半分は千代田区一番町にある国鉄総裁公館に泊まった。
国府津とは朝の日課も多少違ってくる。
体操こそできるが、木刀は振るえない。
富士や箱根の眺めの代わりに、散歩に出て、近くの女子高校へ通う生徒たちを眺める。
「何とも言えぬいい匂いがする。若返りの妙薬だ」

 

もう、きみには頼まない

無事是貴人――何事も無いのが最上の人生。この言葉を信条としながらも、頼まれたらどんな難事も引き受け取り組んだ実業家・石坂泰三。第一生命を日本有数の保険会社にし、労働争議で危機を迎えた戦後の東芝を立て直し、経団連会長として日本経済の復興を任され、国家事業となった大阪万国博覧会を成功に導く。まるで流れのままに身をゆだねるような人生を歩みながら、一方で、どんな権力者にもおもねらず、あくまで自由競争を旨としたその経営哲学を、城山三郎が描く。

財界、というと余り耳慣れない言葉かもしれませんが、経団連や同友会など経営者同氏が集まって行うコミュニティを指します。経団連は、経営者の代表として政治に対しても強い影響力を持っていると言われ、その会長は俗に『財界総理』とも呼ばるます。石坂泰三は、財界総理となった2人目の男です。

石坂は、東京帝国大学卒業後、郵政省に入省後、第一生命社長に請われて同社の社長秘書となります。その後、労働争議の機器を迎えた東芝で、労働者としっかり向き合い、立て直しに尽力するなど、経営者としての手腕を発揮します。

経団連会長の特殊な立場は、経営者を代表するものではありますが、それだけに広い視野を見る必要が有ることです。石坂は、経営・政治・労働者のそれぞれのどれにも一定の距離をおきながら、日本の先を見据えた行動を取りつづけました。

それ故に、それぞれの当事者にとっては何がなんだか分からない。というか、分かったとしても自分の領分を超えることだったりするので関わりたくない。本書のタイトルである、『もう、きみには頼まない』はそんな風にモゴモゴしていた大蔵大臣 水田三喜男に対して飛ばした激だそうな。

経団連会長としては、大阪万博の実現に注力し、6000万人を越える動員と200億円の黒字を生むことに成功しました。

思惑が絡まりやすく、誰もが躊躇したその仕事。それを成功させたのは、まさに石坂の本領とするところでしょう。混迷するプロジェクトを切り開いてくヒントになるかもしれない一冊です。

 

勇者は語らず

川奈自工の人事部長冬木と、その下請会社の社長山岡。かつて戦場で同じトラックに乗っていた二人を通し、戦後日本経済の勇者〈自動車産業〉の内部をリアルに重層的に描く。強大な力ゆえに海外から激しい非難の矢をあびせられながら、沈黙を守るメーカー。その下でより大きな沈黙を強いられる下請け。そんな構図の中に、戦後を生きぬいた日本人の縮図を透視した書下ろし長編小説。

 おすすめ度:★★★★☆ 

城山作品としては珍しく、川奈自工はホンダがモデルでは?とされているものの、登場人物について具体的なモデルの見当たらない作品。

いまでこそ、自動車といえば日本の基幹産業のひとつです。しかし、そこまでたどり着くには長い時間がかかりました。当初は『乳母車にエンジンをつけたようなもの』なんて言われ方もしていたとか。

本作の主人公の山岡は、自動車部品の下請けメーカーの社長。かつての戦友ながら、発注元であるメーカーの人間という大きく立場の変わった冬木から『感受性訓練というものを受けてみないか?』と提案されます。

詳細についてはネタバレになるので避けますが、まあ大変そうなものです(笑)。ただこれは、実際に存在するもので、城山自身も作品の執筆前に受けたのだとか。だいたい受けると、仕事人間が生き方について考えなおすようになるんだとか。しかし多くの悩みを抱えながらも、仕事第一に生きることしか出来ない冬木と山岡。

大企業の管理職、中小企業の社長。そんな二人の仕事人間の生き様を描いた作品です。

価格破壊

戦中派の矢口は激しい生命の燃焼を求めてサラリーマンを廃業、安売りの薬局を始めた。メーカーは安売りをやめさせようと執拗に圧力を加えるが、それに打ち勝ち事業活動を大きく拡げる。(小松伸六)

 おすすめ度:★★★★★

 価格.comを見ていると、商売をしている人は、この一円を日々争って大変だなあと思います。しかしかつては、商品の値段は主にメーカーが決めるものであり、小売業者はただ決められた値段で売るだけでした。

本作は、そんな状況に立ち向かった『某スーパーの経営者』が主人公とのことですが、まあ間違いなくダイエーとその創業者山内さんがモデルでしょうね。薬品の安売りからはじめたというところも一致します。

確かに、産業が未成熟な段階では、メーカーが適切な利益を得られるように、定価を定めるということもわかります。しかし、定価という存在があることは、ひいてはメーカー間の競争を阻害し、消費者の生活の改善につながりません。

ありとあらゆる因習と戦っていく主人公の姿を見ていると、まだまだ日本にも打ち破るべきものは多いんじゃないのかなあと、そう感じてしまう一冊です。

役員室午後三時

80年の歴史に輝く日本最大の紡績会社華王紡に君臨する社長藤堂。会社へのひたむきな情熱によって華王紡の王国を再建し、絶対の権力を誇った彼が、なぜ若い腹心の実力者にその地位を奪われたのか? 帝王学的な経営思想をもつワンマン社長と、会社を“運命共同体”とみなす新しいタイプの経営者――企業に生きる人間の非情な闘いと、経済のメカニズムを浮き彫りにした意欲作。

 おすすめ度:★★★★☆

 2016年の新卒就職人気企業ランキングベスト3は、

  1. 電通
  2. ANA
  3. 伊藤忠商事

だそうで。このランキングは、時代によってかなり変わります。戦後すぐの頃は、繊維・砂糖・セメントを中心とする『三白産業』が日本をリードする最先端産業でした。本作の舞台となる『華王紡』はカネボウがモデルだと言われていますが、新興国の追い上げを受け、ビジネスモデルの転換が求められる頃のお話です。

主人公の藤堂は、ただ愚直に会社一筋に生きてきます。常に社業を第一に考えるその姿勢は、多くの人の尊敬を受ける一方で、ワンマンとも取られないような行動を繰返します。

もうひとりの主人公、矢吹は藤堂の腹心でありながら、そのワンマン経営に疑問を呈し、他の役員に根回しを行い、密かに藤堂に歯向かいます。ただ藤堂は、多くののワンマン社長とは異なり、会社を私物化するようなことなく、ただがむしゃらに会社のためにと働きます。

その為、一度は勝ち取ったはずの勝利が、色んな人の思惑によって覆り、そしてその後・・・。色々な波乱の展開のある社内政治物語です。

小説日本銀行

エリート集団、日本銀行の中でも出世コースの秘書室の津上は、インフレの中で父の遺産を定期預金する。金融政策を真剣に考える“義通”な彼は、あえて困難な道を選んだ…。(瀬沼茂樹)

おすすめ度:★★★★☆

もはや『インフレ』なんて言葉は、都市伝説か何かにしか思えない今日このごろですが、戦後間もないころは、多くの人がインフレに悩んでいました。

日銀がインフレ目標を掲げているのを聞いて、祖母はインフレの進行を大変心配していました。しかし、本作を読むまでは、どうして祖母がインフレを恐れているのかがわからなかったのですが、本作は『インフレとはどういうことなのか?』を肌で感じることが出来ます。

本作の主人公、津上は日銀きってのエース。彼は、景気や雇用を差し置いても、インフレを徹底的に抑えこむドイツの中央銀行の考え方に、物価の番人として深く心酔します。ただその考え方は、日銀の中で、広く受け入れられる考え方というと、色んな思惑に絡んで必ずしもそうとは言えないものでした。

財務省や総裁、それぞれの立場の中から、様々な政治模様が行われる。その中で、『物価とは何なのか?』そういったことについて考えさせられる名作です。日銀内部の事情に、もう少し踏み込んだ取材があったほうが良かったのでは?といった声も聞かれますが、当時の時代を良く理解できる名作だと思いますので、☆5つとします。

 

雄気堂々

近代日本最大の経済人渋沢栄一のダイナミックな人間形成の劇を、幕末維新の激動の中に描く雄大な伝記文学。武州血洗島の一農夫に生れた栄一は、尊皇攘夷の運動に身を投じて異人居留地の横浜焼打ちを企てるが、中止に終った後、思いがけない機縁から、打倒の相手であった一橋家につかえ、一橋慶喜の弟の随員としてフランスに行き、その地で大政奉還を迎えることになる。

 おすすめ度:★★★★★

幕末の英雄といえば、坂本龍馬だったり近藤勇だったり人それぞれ思い浮かべる人は違うと思います。ただ概ね共通する点としては、武の力で社会の転換に貢献した人たちではないでしょうか?しかし、経済や経営を学んだ人間の中ではこの人の名前を挙げる人も多いのではないでしょうか。稀代の実業家、渋沢栄一です。

渋沢が設立に関わった企業は、ざっと挙げるだけでも

  • みずほ銀行
  • 東京ガス
  • 帝国ホテル
  • 京阪電車
  • サッポロビール

などなどの設立に関わり、全て挙げれば500以上もあるそうです。その中には、東京証券取引所や東京商工会議所などの公益性の高い団体や、数多くの学校もありました。

そんな渋沢は、農夫として生まれ、志を持って維新の波に身を投じます。その後、全く立場が逆のはずの徳川慶喜公に使えたり、横浜の異人館を焼き討ちしようとしていたにも関わらず貿易を振興する立場になったりと、それはもう波乱万丈の人生です。

本作の中で一番感動的だったシーンは、実の父親が息子にも関わらず『お大尽様』と扱うところ。不器用な父親な、自分の息子の立身出世を心から喜んでいることがひしひしと伝わってくるシーンですね。

気張る男

十歳にして、赤貧から志を持って家出。銀行、鉄道、紡績、ビール会社など、次々と創業し、“西の渋沢栄一”と言われた松本重太郎。関西実業界の帝王として名をはせた彼だったが、その後、倒産で私財をことごとく手放すことになる。常に走りつづけた男の、潔い生涯と、次の世代に受け継がれたその精神を描いた傑作長篇。

 おすすめ度:★★★★☆ 

戦前は、今よりも経営者と資本家の立場が近かったからか、大胆な経営を行う実業家が沢山いました。その中で、『西の渋沢栄一』とまで言われた男、それが松本重太郎です。

10歳から京都で丁稚奉公を始め、その後大阪の呉服商へ。そして様々なひとと交流を深めていく中で、第百三十銀行の設立に尽力します。新しい産業は、大量の資金が必要になります。松本は、自らの銀行で集めた資金を、果敢に運用し、様々な企業を興していきます。

しかし、時代の情勢が変わり、銀行は倒産。松本のすごいところは、その後、まさにほぼ無一文となるところまで、責任を取って、綺麗に自分の事業をしまったことでしょうか。その潔さも含めて、思い切りのいい人の気持ちのいい話です。

黄金の日々

戦国の争乱期、南蛮貿易によって栄える堺は、今井宗久、千利休ら不羈奔放な人材によって自治が守られ、信長や秀吉たちもその豊かな富に手を出すことができなかった。今井家の小僧、助左衛門は危ない仕事を何でも引受けることで戦国武者たちの知遇を得、大船を仕立てて幾度かルソン(フィリピン)に渡り巨利をなす。――財力をもって為政者と対峙し、海外に雄飛していった男の気概と夢。

 おすすめ度:★★★★★

いまは真田丸が人気ですが、戦国時代のヒーローといえば、やはり戦国武将でしょう。しかしこの時代は、ヨーロッパと直接交流の始まった時期であり、多くの商人たちが活躍した時代でした。そして、その中心になった街が堺です。

本作は、そんな商人が自由闊達に海をまたいだビジネスを繰り広げていた当時を、個性豊かな登場人物達に表現させています。中には、石川五右衛門や利休など、見知った名前が出てきます。

まあ史実に基づいていないところも多いかと思いますが、エンターテイメントとして大変読みやすく、『自由な商売』というものが如何に大事なものなのかが分かる一冊です。

指揮官たちの特攻

神風特別攻撃隊第一号に選ばれ、レイテ沖に散った関行男大尉。敗戦を知らされないまま、玉音放送後に「最後」の特攻隊員として沖縄へ飛び立った中津留達雄大尉。すでに結婚をして家庭の幸せもつかんでいた青年指揮官たちは、その時をいかにして迎えたのか。海軍兵学校の同期生であった二人の人生を対比させながら、戦争と人間を描いた哀切のドキュメントノベル。城山文学の集大成。 

城山は、『伏龍』とよばれる特攻兵器の隊員として終戦を迎えます。酸素ボンベを背負って、水の中に潜って、敵の船に直接爆弾をぶつけるとか。まあなんだかとんでも感あふれる感じですね。

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そういった経歴から、この特攻というとんでもない行為について記録しなければならない。本作はそんな思いで書かれた一冊です。

本作は、特攻隊第一号に選ばれた関行男大尉と、玉音放送後に『最後』の特攻隊員として沖縄へ飛び立った中津留達雄大尉の二人の『指揮官』です。

彼らは共に、新婚であり、それぞれ新妻を残したままこの世を去っています。サブタイトルにあるように、『幸福は花びらのごとく』散ってしまった二人の若者と、そして残された人々の想い。その残酷な状況を克明に描き切っている為、胸が締め付ける想いのする作品です。

本作について評価をつけることは差し控えます。ぜひ、読んで頂いた上で考えてください。

そうか、もう君は居ないのか

最愛の妻・容子が逝った……。特攻隊から復員した学生だった頃の奇跡的な出会い、文壇デビュー当時の秘話、取材旅行の数々、甦る人生の日々。そして衝撃のガン告知から、二人だけの最期の時間。生涯、明るさを失わなかった妻よ、君は天から舞い降りた妖精だった……。少年のような微笑を浮かべて逝った著者が遺した感涙の手記。

本作は、城山の死後発見された、城山が妻の死後に、自らの妻との二人の思い出を書き残した手記を元に出版された作品です。

城山と妻の容子は、運命的ともいうような出会いで結ばれます。その後、二人は仲睦まじく、二人三脚でその人生を歩みます。しかし、容子さんは癌のため先に世を去ります。

城山の作品を見ると、陰で支える家族、特に奥さんがかなりのウェイトをもって出てきます。主人公たちも、仕事に没頭しつつも、なんやかんやで家族のことを想う姿が描かれています。 きっとこういった作品となった背景には最愛の妻、容子さんの存在が大きかったことが、これでもかというほど思い知らされる作品です。

もう既に70を超えた歳で書かれた作品のはずなのに、本当に奥さんのことが好きだったんだなあ、ということがひしひしと伝わってくる、恋愛小説のような印象も受けます。

ある意味では、彼の全ての作品に共通する設定の『ネタバレ』とも言えるような作品です。本作も、評価をつけることは差し控えます。

終わりに

さて、ひとまず今まで読んだものの中で、書ける分を書いてみました。また随時、思いついた時に追記していきたいと思います。

すべて個人の感想にすぎませんが、どなたかの参考になれば幸いです。