こんにちは、らくからちゃです。
なんだかここ最近、「GDP」をキーワードにした流入が多いなあと思ってアクセスデータを見ていましたが、何やら大変なことになってるみたいですね。
日本経済がマイナス成長に転じた。内閣府が15日に発表した2015年10-12月期の国内総生産(GDP)は前期比0.4%減で、年率換算では1.4%減だった。課題相次ぐ政府の経済改革に、またひとつ問題が加わることになった。
内訳をみていますと、総生産に対する四半期名目ベースの寄与度で見ると
- 民間最終消費支出 -0.5
- 民間住宅 -0.0
- 民間企業設備 0.2
- 民間在庫品増加 -0.1
- 政府最終消費支出 0.1
- 公的資本形成 -0.1
となっており、家計の消費の弱さが大きく影響を与えた結果となりました。
(参考:2015(平成27)年10~12月期四半期別GDP速報 (1次速報値))
四半期ベースの短期の結果ではありませんが、三本の矢をぶっ放して、国内総生産成長率3%を実現するとか言っていたような気はしますが、大丈夫なんでしょうか?
(出典:アベノミクス「3本の矢」 | 首相官邸ホームページ)
そういや先日も、黒田日銀総裁が『マイナス金利』なんて、いまいち素人には良くわからないことを言っていましたね。そこがまさに『大胆な金融政策』にある「金融緩和で流通するお金の量を増やし、デフレマインドを払拭」というところになるんだと思いますが、家計はいまだ「デフレマインド」が強く残っているように思われます。
何で物価を上げたいのさ
そもそも、「デフレマインド」は何故払拭しなければならないのか。ちょっと長くなりますが、黒田日銀総裁の講演から引用しましょう。
企業からすると、デフレのもとでは、製品やサービスの価格を引き上げることができないため、売上や収益は伸びません。そこで、人件費や設備投資をできるだけ抑制することになります。家計においては、賃金が上がらないため、消費を抑えようとします。家計が消費を抑えると、企業は、消費を取り込むために、製品やサービスの価格を引き下げざるを得なくなります。
また、デフレは企業の投資判断にも影響します。企業にとって、設備投資を決定するに当たって重要なのは、名目ではなく実質金利の動向です。デフレ期待が定着すると、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利は高止まりします。すなわち、名目の借入金利が変わらなくても、価格の下落が続くと予想されれば期待される収益は少なくなりますので、実質的にみた借入金の返済負担は高まります。そうしたもとでは、企業の設備投資意欲が削がれるのは当然です。家計にとっても、将来、物価が下落すると予想すれば、価格が下がってから商品やサービスを購入すればよいので、消費をできるだけ先送りしようとする傾向が強まります。
一方で、デフレ下では、現金や預金を保有していることが相対的に有利な投資になります。デフレは、事業への投資や株式などのリスク性資産への投資の収益率を低下させる一方で、名目額が目減りしない現金や預金の実質的な収益率を高める方向に作用します。そのため、企業や家計にとっては、設備投資や消費を抑制する一方で、余剰資金については現預金として保有するということが合理的な行動になります。
このように、デフレのもとでは、企業や家計のリスクテイクが消極化する中で、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が続くことになりました。
ここまでは、割りと様々なところで耳にするポピュラーな解説になるかと思います。でもさ、物価だけあがったら生活が苦しくなるだけだよね?そういう疑問に、黒田総裁は下記の通り答えています。
家計の実感として、「物価が上がるのは好ましくない」と感じることは、極めて自然なことです。日本銀行が家計を対象に実施している生活意識アンケート調査をみると、「物価が上昇している」と感じている回答者のうち8割程度の方が、「物価上昇は望ましくない」と答えています。これは当然の結果です。物価だけを取り出して聞けば、回答者は、賃金を含むそれ以外の条件は変わらないものと想定して答えるのが普通でしょう。もし賃金が変わらないのであれば、物価は下がる方が望ましいに決まっています。
しかし、賃金が上昇せずに、物価だけが上昇するということは、普通には起こらないことです。商品やサービスの価格の上昇により、企業の売上が伸びて、収益が増加すれば、それに見合って、労働者に支払われる賃金は増加します。労働者は、企業の収益の増加に自分たちが貢献した分は、賃金として要求しますので、マクロ的にみれば、名目賃金の上昇率は、物価上昇率と労働生産性上昇率との合計になります。そうでなければ、物価の上昇に伴って、労働者の取り分である労働分配率が下がり続けることになってしまいます。こうしたことは、一時的にはともかく、長く続くとは考えられません。
おー、なるほどですね。物価上昇は賃金上昇とセットの上、物価が上昇すると実質賃金も上昇する。そういうことが言いたいわけですな。
物価と賃金と非正規雇用
うーん、でもどうでしょう。皆さん、お給料が上がっている実感ってあります?やっぱり、お給料が上がったかどうかの実感って、『実質賃金』なんて良くわからないものではなく、口座に振り込まれた金額だと思うんですよね。
上記は、総務省統計局発表の『家計調査』の結果から、可処分所得と非消費支出の結果を抽出したものです。今回は、特に貯蓄係数が低くて消費に貢献してくれそうな低所得世帯を中心にデータを見てみることにしました。本データは、調査対象を所得別に5階級に分け、その中で最も所得が低い階級の結果をもとに、勤労者ひとり当りの結果に直した値になります。
ざっくり言うと、非消費支出とは、税金や社会保険などの給料から天引きされる費用。可処分所得とは、いわゆる『手取り』の給料を意味します。低所得者層の可処分所得は15年前では19万5,000円程度ありました。それが現在では、16万6,000円程度まで継続して下落しております。その一方で、税や社会補償の金額はほとんど変わらず、収入全体に占める比率は年々増加しています。
こうやってみてみると、生活の実感という観点からは、実質賃金よりも名目可処分所得のほうがよりリアルな感覚に近いような気がします。負担については確実に増えていく中、収入については先が見えない。随分とそんな日々が続いてきました。
そんな中、『物価が上がるぞ〜!』なんて言われても『なんだって!じゃあ早く買わないと!』というよりも『へえ、じゃあ貯金して備えておくか』といった心理のほうが強く出てくるような気がします。
さて、ここ最近の企業業績は悪くない上、『金余り』の傾向を持っています。にも関わらず、黒田総裁が主張する『賃金としての要求』は余り見られないような気がするんですね。
そこで、企業の労働分配率の推移を見てるとなかなか興味深い結果が見て取れます。
労働分配率は年々減少していますが、その内訳を見ていると、
- 正社員をパート等に置き換えた結果、一般マンアワー要因が減少しパート分が増
- 時給要因では、正社員のプラス幅が大きいが、パートの分は限定的
結果として、『正社員は春闘で賃上げを勝ち取ったとしても、賃金についての要求がしづらい非正規の労働者の比率が増加したため、全体としての労働分配率が低下した』ということが言えるのかな、と思うんですね。
(参考:日本経済2015-2016 - 内閣府)
まずはお給料を上げて欲しい
個別企業で事情は違うものの、社内現預金が残っているいまこの現状において、『マイナス金利にするぞー!!』といっても、『な、なんだって!?投資を前倒しにせねば!!』となるよりも『わーお。金庫でも買うか』となるのが現状ですよね。
だいたい、将来に明るい見通しも無い中で物価が上がると言われたても『よーし、今のうちに旅行でも行くかな』となるよりも、財布の紐をダイヤモンドよりも固く締めるしかないなと思うのが自然な気がします。となると、当然企業も投資を増やす環境にはならない。
でも、そんなことはもう何十年も前にアメリカの自動車屋さんが気がついていたんですけどね。
1914年、日給5ドルを提示し、従来の賃金のほぼ2倍として世界を驚かせた。オハイオ州クリーブランドの新聞は、この発表について「この不況下の暗雲を突き抜けて目をくらませるようなロケットを放った」と評した。新たな労働者を雇う必要がなくなり、デトロイトで最上の機械工が集まったため、生産性が向上し、職業訓練コストが低減した。日給5ドルを発表したのは1914年1月5日のことで、熟練労働者の最低日給を2.34ドルから5ドルに引き上げるというものだった。また資料によって詳細は異なるが、1週間の労働時間も減らした。1922年の自伝によれば、週に6日間、1日8時間で48時間と記されており、1926年には週5日間の40時間労働となっている。
デトロイトはアメリカの中でも高賃金の都市だったが、フォードの賃上げのせいで競争相手は賃上げするか熟練労働者を失うかという状況に追い込まれた。さらに給料が増えた労働者は自分達が作っている自動車を購入できるようになり、経済的にもよい波及効果をもたらした。フォードはこの方針を賃上げというよりも利益分配だと説明した。フォードに日給5ドルを進言し納得させたのは当時のデトロイト市長 Couzens とも言われている。
会社の益々の発展のためには、労働者の賃金を上げていって、自分の会社の製品を買えるようにならなければならない。自分の会社の製品が沢山の人に売れれば、さらに景気が良くなる。言うは易し行うは難しの典型例なんだけれど、そうやっていかないと世の中お金は回っていかないですよね。
ただ、一歩踏み出す誰かがいないと、そのサイクルは待てど暮らせどでてこない。そこで最近、政府が旗振ってやれやと『賃金ターゲット』を主張するような話も出てきました。
わたしはもう、ずーーーーっと『さっさと物価の前に給料引き上げろ(゚Д゚)ゴルァ』と言っているんですが、やっと視点が向いてきてくれたのかな、とちょっとうれしく。
しかも「インフレ・ターゲティング」は物価上昇が2%に達すれば、そこで目標が達成され、タイムラグのある賃金上昇の前に政策がしぼむ危険がある。これを防ぐために日銀だけでなく、政府も「賃金ターゲティング」を公約とするのです。例えば今、自民党は最低賃金の引き上げを検討していますが、こうした賃上げのための政策に本腰をいれることが必要でしょう。
ただ、どうやってそれを実現するのか?ですよね。いろいろな手段があると思いますが、『最低賃金の引き上げ』というのはひとつ方法として興味深いと思うのです。
最低賃金ターゲット論
今のところ『最低賃金ターゲット論』なんてキーワードを入れて検索しても、出てくるのは弊ブログの過去記事くらいなのですが、例えばそれはこんな感じ。
- まず最低賃金を全国で1000円に統一する。
- それを、毎年50円ずつ引き上げていくことを公約にする。
ね、簡単でしょ。
まずは、都道府県ごとにバラバラな最低賃金を『分かりやすい数字』で統一する。累進課税の税率が変わるポイントや、各種控除金額は全国で一律なのに、賃金本体に地域差をつけるのもおかしな話。また地域別でバラバラになっていると、上がったかどうかというのがいまいち見えづらくなってしまう。
『地方の産業が衰退する』とか『低所得者層の失業率が上がる』という話もセットで考えなきゃいけないけれど、そもそも生活保護程度の所得も生み出せないような産業をどうしていくのか?というのは、それはまた別のお話。
また、本来賃金は自由競争の中で決定されるべきで、ムリに最低賃金を設定してしまうと、職業選択の自由や産業の萌芽を壊してしまう可能性がある。そんなことは百も承知でこんなことを書いてみたのは、この記事を読んでから。
コストコという『空気よめない会社』が、最低賃金より大幅に高い時給を設定して募集をかけたところ、慌てて周囲の企業が時給を引き上げたという心あたたまる物語。
他の地域は、コストコ出店でどのような影響を受けたのか。中部地方1号店のコストコ中部空港倉庫店が2013年8月にオープンした愛知県常滑市では、地域の賃金相場が底上げされたという。15年10月7日付け中日新聞電子版によると、パートの時給は10年前に中部国際空港(セントレア)ができてから上がり、コストコ出店後はコンビニなどで時給1000円が普通になった。市内の居酒屋や製造業は、求人に苦労しているようだ。
これを見て思ったのは、『なーんだ、やろうと思えばあげられるのね』ということ。誰かが背中を押してあげれば賃金は上げていくことが出来る。景気回復のサイクルに回していくことが出来る。
政府は、所得拡大促進税制など、今までにも色々と手を打って来ました。でもその結果どうなったのかというと、どうにもなった感じはしない。というか、大抵の人が『へぇ、そんなんやってたの』といった程度の認識じゃないでしょうか。
勿論、最低賃金をいじくり回す前に『コストコを連れてくる』でもいいのですが、今必要な政策って、『将来確実に自分たちの手取りが増えていく実感』が湧く政策だと思うんですよ。
賃金が増えれば消費も増える。消費が増えれば労働者が不足して雇用も増える。物が売れれば企業の収支も改善する。物価が上がるという暗いところから始まる物語よりも、明るい話から始まる物語のほうが、きっとみんなの頭には残りやすい。
景気よくお給料が伸びていく話。そういやそんな政策を語っていた人が居たような気がします。
おっと失礼、同姓同名だったので間違えました。こちらです。
『所得倍増計画』は、1960年に池田勇人総理の下で策定されました。
国民所得倍増計画は、速やかに国民総生産を倍増して、雇用の増大による完全雇用の達成をはかり、国民の生活水準を大巾に引き上げることを目的とするものでなければならない。この場合とくに農業と非農業間、大企業と中小企業間、地域相互間ならびに所得階層間に存在する生活上および所得上の格差の是正につとめ、もつて国民経済と国民生活の均衡ある発展を期さなければならない。
もっともこれは、日本の産業構造を抜本的に改善して経済成長を実現していこう、という話になりますが、やっぱり政治家の口からは、こういう『将来に向かっての明るい展望』が聞きたい今日このごろ。
明日はきっといい日にしよう
そういや最近また別に気になったニュースがこちら。
裏返せば満タンにしても一回当たりの支払いが3割以上安くなる計算。その分、浮いたお金の使い途として、選択肢になるケースが多いのが、回転ずしなどの外食という。大手の回転ずしチェーンは、地方の国道沿いで大型駐車場完備の店が中心で、車での来店が多い。実際、ほとんどが郊外型の「はま寿司」を展開するゼンショーホールディングスの担当者は「ガソリン価格が下がると、郊外店での来店客が増えるのは間違いないですね」と話す。足元のガソリン価格の下落を受け、はま寿司の既存店の来店客数はレギュラーガソリン価格が1リットル当たり130円を切った昨年12月頃から前年同月比でプラスに転じており、ガソリン安が進んだ年明け1月以降は、さらに客足が伸び始めているという。
黒田日銀総裁は困った顔をしてましたけど、庶民の目から見れば昨今のガソリン価格の下落は干天の慈雨に違いないわけですよ。
(出典:原油・商品市況下落でも2%達成必要、必要なら追加緩和=黒田日銀総裁 | ロイター)
お金さえあれば、美味しいものも食べたいし、結婚もしたいし、子供も産みたいし、もっと勉強もしたい。そんなひとも結構多いような気がするんだよなあ。
政府はいままでしっかり最低賃金も上げてきたし、労働市況も改善しつつある。ただやっぱり『物価が上がるぜー』とだけ言っている状況では、何だかあんまり明日がよく見えない気がします。
明日はきっと良い日になる。そんな風に思える日が来ると良いなあ。
高橋優初監督MV作品「明日はきっといい日になる」オモクリ監督エディットバージョン(Short size)
ではでは、今日はこの辺で。