ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

NISAのロールオーバー上限撤回が役に立つ条件はメチャクチャ厳しい

こんにちは、らくからちゃです。

先日も書きましたが、2014年に始まったNISAも今年で5年目を迎えました。無印NISAは5年間を上限に、配当・譲渡益が非課税になる仕組みです。今後、運用中の資産については、

  1. 翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバー)
  2. 課税口座へ移す
  3. 売却する

の3つの選択肢があります。

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そろそろ現金化しようかなあと思っているひとはさておき、このまま投資を継続しようか悩んでいる人は、年内にどうするのかを決めなければなりません。

ここで重要な点は、ロールオーバーをする際に、含み益が移行先の120万円の枠をはみ出たとしても、翌年の非課税投資枠に移せることです。

NISA口座では、毎年120万円(2015年以前は100万円)分の金融商品(株式や投資信託など)が購入可能です(この120万円のことを、このウェブサイトでは「非課税投資枠」といっています)。各年に購入した金融商品を保有している間に得た配当金や、値上がりした後に売却して得た利益(譲渡益)が購入した年から数えて5年間、課税されません。非課税で保有できる投資総額は最大600万円となります。
非課税期間の5年間が終了したときには、保有している金融商品を翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバーする)ことができるほか、NISA口座以外の課税口座(一般口座や特定口座)に移すこともできます。
なお、ロールオーバー可能な金額に上限はなく、時価が120万円を超過している場合も、そのすべてを翌年の非課税投資枠に移すことができます
現在、NISAは2023年までの制度とされていますので、金融商品の購入を行うことができるのは2023年までです。2023年中に購入した金融商品についても5年間(2027年まで)非課税で保有することができます。

NISAの概要 : 金融庁

 売却することなく次の枠に移行でき、また5年間非課税で運用できます。さてここで、大きくわけると2つの選択肢が発生します。

  1. 含み益込みでそのまま移行
  2. 一旦売却し、より良い資産に乗り換える

例えば、2014年に投資し、幸いにも含み益が50万円あるシチュエーションを想定しましょう。ただ、ここ5年間の間に色々と良いファンドも増えているので、売却して乗り換えたいとも思っている。

乗り換えることによって、運用リターンは改善出来るかもしれない。しかし、ロールオーバーをすれば、本来の上限である120万円の枠を超えて資産を非課税で運用できます。さて、この状況下で、どうすれば良いでしょうか?

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ロールオーバーの条件

そもそもロールオーバーを行うには、

  1. 2019年度も無印NISAを利用する(つみたてNISAに切り替えてる人はNG)
  2. 2014年度と同じ証券会社を利用している(証券会社を切り替えた人はNG)

が最低条件です。また2014年時の元本を移行できるわけではなく、含み益分のせいで120万円の枠をはみ出てしまったとしても、非課税扱いになるという条件のようです。つまり「一部現金化、残りは切り替え」みたいなことをしたい場合、先に含み益込みのロールオーバー分で枠を消費していきます。

つまり下の図のように、一部現金化して引き継いだのであれば、上限撤廃の恩恵を受けることは出来ません。

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基本的に、上限撤廃でメリットを受けるのは、「全額ロールオーバーする人」だと思ったほうが良いでしょう。

ロールオーバーをすべきひとの条件

じゃあどんな人がロールオーバーを検討すべきなのかの条件について考えてみましょう。

まず2018年末の段階で、NISA 2014で投資した金額の評価額が120万円以下の場合、すべて売却して他の資産に乗り換えたところで枠内に収まりますので、そのまま売却してしまっても問題ありません。

なお2014年からの5年間で、100万円が120万円になるための年率リターンは約3.71%です。市況も良かったので、これはクリアしているひとも多いでしょう。じゃあ例えば、年率5%で運用していた場合で考えてみましょう。

この場合、2018年末の段階での評価額は1,276,282円です。別資産に乗り換えると、120万円の枠に収まりきらなかった76,782円分は一般口座で運用することになりますね。変わらず5%で運用できたと仮定すると、2023年の時点では一般口座の97,357円であり、差益は21,075円になります。これに税率が20%(税制変更や復興税とかは考えず)だとすると、課税額は4,215円です。 

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この4,215円が、運用リターンが5%のまま変わらない前提で、ロールオーバーをすることによって生まれる価値です。随分と少ないですよね。

だって

  1. 120万円を超過する部分の
  2. 5年間の運用後の利益分の
  3. 更に20%

でしかないわけです。これくらいなら、もうちょっとリターンの良い資産に乗り換えるだけでもパフォーマンスは改善します。それをまとめたのが下表です。

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当初5%で運用できている資産を、5.05%の資産に乗り換えるだけでも、税額が増える分を上回る利益が期待できます。なおNISA2016移行の当初から120万円の枠が与えられている場合には、評価損が出ていない限りそのまま移行のメリットが発生しますので、課税損失を上回るリターンを手に入れるためのハードルは上がります。

とはいえ、5%で運用していた資産を5.21%に乗り換えられれば、一旦売却して乗り換えるメリットが発生します。それぞれ必要になるリターンは下表の通り。

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NISAのロールオーバー上限撤回が役に立つ条件

最後にもう一度、NISAのロールオーバー上限撤回が役に立つ条件を整理しましょう。

  1. つみたてNISA/運用会社変更していない(元の会社に戻せばOK)
  2. ロールオーバー対象の資産の評価額が120万円以上である
  3. 今後とも有望銘柄で、ごく僅かなパフォーマンス改善の余地がない

これだけの条件を満たさなければならないんですね。ぶっちゃけこれに該当するのって、個別株で運用していてモノタロウクラスの大当たりを引き当てたひとくらいしか居ないんじゃないでしょうか。

ファンドで運用しているひとは、ここ5年間で優良なものも多く出てきていますし、選択の幅も随分と広がっているので、たいていのひとが見直したほうが、良い成績になるかと思われます。

ご参考になれば幸いです。