こんにちは、らくからちゃです。
株や投資の世界には色んな格言があります。その中のひとつに『国策に売りなし』というものが有ります。これは国が行おうとしている政策に関連した銘柄は上がりやすい。といったことを意味する言葉です。勿論、相場に絶対は有りません。しかし、社会からの関心も多い企業には、資金も集まりやすいのは事実でしょう。
保育に関する政府・自治体の施策
さて目下のところ我が国の重要な『国策』のひとつとして、待機児童問題の解決が挙げられます。政府の2017年度の予算案は
1兆1,495億円(+2,072億円)
その内訳をみると下記のとおりです。
項目 | 金額(億円) |
---|---|
子どものための教育・保育給付 | 7,879 |
事業所内保育所の推進など | 1,313 |
地域子ども・子育て支援事業 | 1,238 |
保育の受け皿拡大 | 689 |
保育人材確保 | 203 |
その他 | 173 |
合計 | 11,495 |
(出典:平成29年度保育対策関係予算の概要 を元に筆者作表)
従前から行ってきた保育園の運営費などに加え、保育園そのものの数の拡大も図ります。更に対策を行なうのは、政府だけでは有りません。各地方自治体も、状況の改善に向け、大きく動き始めています。東京都を例にとると、以下のような独自対策を行います。
- 都独自に整備費補助をアップ
- 都独自の賃借料補助を創設
- 一時預かりを継続的に利用して、長時間保育を行う定期利用保育を促進
- 借地を活用した保育所等の整備を進めるため、借地料に対する補助を拡充します
- 都有地活用の仕組み・情報提供を充実します
- 民有地や空き家等を活用した保育所等の整備を進める
- 宿舎借り上げ支援の対象期間(5年間)を独自拡大します
- 子育て支援員を増員します
- 保育コンシェルジュの増員を支援します
- 認可外保育施設の利用者負担軽減(バウチャー等)を支援
- 認可外保育施設の質の向上を図るため、巡回指導チームを編成
(出典:待機児童解消に向けた緊急対策 より)
株式会社が運営主体となる保育所の状況
しかしこれらの政策を実現するためには、まずなによりも保育所の数が増える必要があります。古くから保育所を運営してきたのは、地方自治体や社会福祉法人でした。一部、社団・財団・NPOや、学校・宗教法人なども運営に参加してきましたが、いずれも非営利法人でした。
多くの補助金を受け取る『公益事業』として行なう保育業への株式会社の参入が認められたのは比較的新しく、2000年のことです。
(出典:幼児教育・保育分野への株式会社参入を考える より筆者作図)
未だに全体の比率としては大きくは無いものの、2007年当時118ヶ所だったものが927ヶ所となり、爆発的なペースで増加しています。とはいえ、まだトップシェアの企業でも167億円ほどの売上にしかなっておりません。やや古いデータですが、売上での上位10社は下記のとおりです。
企業名 | 売上高 | 営業利益 |
---|---|---|
JPホールディングス | 11,867 | 1114 |
こどもの森 | 7,387 | |
サクセスホールディングス | 6,006 | 362 |
ピジョン | 5,990 | 152 |
ポピンズ | 5,837 | |
アートチャイルドケア | 2,964 | |
小学館集英社プロダクション | 2,799 | |
アイグラン | 1,908 | |
テノ.コーポレーション | 1,522 | |
コビーアンドアソシエイツ | 1,500 |
※単位は100万円
(出典:保育業界 業界別M&A動向 - M&A/事業承継のM&Aキャピタルパートナーズ【東証一部上場:6080】 より)
保育園に投資するには
株式会社が、保育所の運営に参加するのであれば、大きく分けて
- 私立の認可保育園となる
- 公立保育園の運営受託を行なう
- 自治体支援制度のもとの保育園となる
- 企業内保育園などの運営を行なう
などなどの方法があります。丁度分かりやすい図がありましたので、拝借致します。
(出典:株式会社JPホールディングス2017年3月期 第3四半期決算説明会資料 より)
今後、子供の数が大きく増える可能性はないとは思いますが、働く女性の人数が増えれば、保育園のニーズは増えていきます。また各地方自治体が個別で運営するよりも、株式会社で合理的に運営したほうが、必要な場所に労働力を集めやすくもなります。そのため、今後ますます市場拡大のチャンスが見込める業界といえます。
この業界は、非上場の企業や非専業企業も多いのですが、保育関連の企業に投資したいのであれば、以下のような企業があります(クリックでヤフーファイナンスへジャンプ)。
それぞれどんな会社なのか、簡単にまとめてみました。
JPホールディングス
- PER・・・46.42倍
- ROE・・・19.37%
- 時価総額・・・243億円
業界最大手の会社です。PERは46倍とかなりお高くなっておりますが、それを裏付けるだけの売上高・営業利益をあげ、ROEも19.37%を達成しています。
業界最大手だけあって、首都圏の比率は多いものの、全国に広く展開を行っております。また、保育園事業だけでなく、学童保育や児童館なども手がけております。その一方で、トップ企業らしい(?)悩みとして、保育士の確保が追いついていない現状を課題にあげています。
ただ逆に言うと、この課題は国がいま総力を上げて解決しようとしているものでもありますので、社会的な追い風は十分吹いている状態とも言えます。賃金だけでなく、働く安い職場づくりなど、保育士の待遇改善や育成にも積極的なようですので、今後とも頑張って頂きたいところです。
(※各画像は同社発表の2017年3月期 第3四半期決算説明会資料より)
サクセスホールディングス
- PER・・・12.22倍
- ROE・・・18.5%
- 時価総額・・・82億円
大手人材派遣会社ライク(旧ジェイコム)のグループ企業(50.1%連結子会社)です。規模としては業界第3位。事業の特色として、病院内保育が強い点が挙げられます。
他にも、親会社が人材派遣会社だけあって、企業内保育園の受託も大きく伸びています。この分野もまた、社会的なニーズが非常に高い分野ですので、今後もその役割は大きいでしょう。ただ会社の売上全体で見ると、ボリュームが大きいのは公的保育事業です。
病院内保育については、もう完全に市場を押さえた形になっておりますので、今後はこの分野での伸びが期待されます。
(※各画像は同社発表の2017年4月期第2四半期決算説明資料より)
グローバルグループ
- PER・・・18.93倍
- ROE・・・25.91%
- 時価総額・・・124億円
2016年上場のいまかなり勢いのある企業です。そのためグラフが作れなかったので、同社資料より抜粋致しました。同社は基本的な戦略として、首都圏集中(ドミナント)戦略を掲げています。
主に、東京都・横浜・川崎を中心に事業を展開しています。もちろん、これらのエリアの需要が非常に大きいことも理由ですが、それだけでなく人員や各種経営リソースを効率的に配置することによって得られる効果を期待してのものでもあります。確かに、新規展開を行なう際に、分析をしたり折衝をするにも地域は絞ったほうが良さそうです。
四季報を見ておりますと、給食事業なども展開するようですので、そうした周辺事業にも十分期待が出来ます。
(※各画像は平成29年9月期 第1四半期決算補足資料より)
ピジョン
- PER・・・35.62倍
- ROE・・・21.81%
- 時価総額・・・4,203億円
ここまで専業企業を中心に見てきましたが、大手企業の中でも哺乳瓶でお馴染みのピジョンさんは、傘下にピジョンハーツなどの企業がありますが、業界第4位の規模を誇ります。
会社全体でみても、売上・営業利益の凄まじい伸びに驚かされますが、いったいどこで稼いでいるんだろう?と思えば、もう売上の半分以上は海外(と中国)なんですよね。
それでも子育て支援事業だけでも、80億円を超える売上がありますし各事業との親和性も高いでしょう。
そしてなによりこの会社、決算報告資料の数値の見せ方が凄い・・・。高い計数感覚を持っているひとがトップにいるんでしょうね。保育事業のもうも、是非伸ばしていってやって欲しいところです。
(※各画像は同社2017年1月期(60期)決算第6次中期経営計画説明会 資料より)
ベネッセホールディングス
- PER・・・-倍
- ROE・・・-4.50%
- 時価総額・・・3,524億円
お次はこどもちゃれんじでお馴染みのベネッセ。最近では、顧客流出騒動などもあり苦しい状況が続いておりますが、こちらも保育事業を展開しています。
ベネッセと言えば、やはり通信教育を思いつかべる人も多いのかなあと思うのですが、かなり前から介護事業に力をいれています。セグメント分類については、介護と合算ですので、いまいち規模感が掴めませんが、
を見る限り、50施設ほど運営しているようです。もともと『設備運営事業』については、かなりノウハウのある会社ですし、伸び悩む教育・互角事業の穴を埋める成長事業ですので、今後の展開に期待ですね。
(※各画像は同社2017年3⽉期 第3四半期補足資料より)
学研ホールディング
- PER・・・16.86倍
- ROE・・・4.23%
- 時価総額・・・310億円
こちらもまた学習塾でおなじみな感じの学研さん。やはり同社も、介護と保育を同一カテゴリとして計算しています。
高齢者事業との比率がわかりませんが、売上高でみると2年間で1.5倍近くになっており、凄い伸び幅です。施設運営件数は40件くらいでしょうか。
どうしゃもまた、本業の部分での成長が中々厳しくなってきています。子供の数が減っているだけでなく、学習塾についても今までよりも高い実力が求められつつあるなか、『学研の先生』だと物足りない保護者も多いんでしょうね。ライバルの公文とくらべても、やや見劣りする感じもありますし。
ただ古くから、小規模拠点での学習塾展開に力を入れてきた会社ですので、これから『保育ママ』のような制度の拡充が広がるのであれば、大きなチャンスがあるのかもしれません。巻き返しに期待です。
(※各画像は同社2016年11月25日「決算説明会」 より)
幼児活動研究所
- PER・・・7.6倍
- ROE・・・10.63%
- 時価総額・・・60億円
最後は、直接保育園を運営するのではなく、保育園の運営を支援する会社です。何だか怪しげな名前ですが、保育園や幼稚園で行われる『体育の授業』を支援する事業を行っている会社です。
これから、保育園の数が増えていけば、汎用的な知識をもつ保育士だけでなく、専門的な知識をもつスタッフも必要になってきます。同社では、
- 授業の一環として体操の先生を幼稚園・保育園に派遣
- 課外授業としてスポーツクラブ・サッカークラブ・新体操クラブなどの運営
- 自然活動などのイベント規格
- 保育園の運営
などを通した事業や、保育園・幼稚園運営のコンサルティングを行っています。都内では、園庭などをもてないケースも増えてくるでしょうから、そうしたなかでも子どもたちに運動の機会を提供するノウハウはかなり活かせるようにも思えます。
以前、こちらでも紹介させて頂きましたが、こういった小型株は、値動きが読めないところもありますが、今後の大きな成長にも期待できる楽しみがあります。
まとめ
『国策に売りなし』とは言いますが、公的な支援も多い一方、逆に言えば政治の影響を大きく受ける分野であり、決して『必ず儲かる』なんて保証はありません。繰り返しになりますが、投資は自己責任でお願い致します。ただこれまで『テーマ』とされてきた国土強靭化やマイナンバーといったものよりも、長期的なニーズも期待されますし、その動向は注視に値すると思います。
保育園のことで苦しんでいる人もいる中で、それでお金を儲けようだなんて・・・という人も中にはいるかもしれませんが、自分のお金を増やしていくことを考えれば、少しでも社会的なニーズのある分野に回していくことは、投資家としてのひとつの社会的な指名でもあるように思います。
子どもたちとともに、これらの企業もしっかりと成長していけばいいなあ、なんて思う今日このごろでございます。
ではでは、今日はこのへんで。