何やら世間は、コインチェック社から数百億円規模の仮想通貨流出でど偉いことになってますね。犯人を追うハッカーが現れたり、『それくらい払えないと思った?』と言わんばかりに、コインチェック社が自己資金での弁済を発表したりと、部外者としては下手な経済小説よりもずっとワクワクする展開が続いております。
まーしかし、本当に返せるんでしょうかね?毎月、ひとりあたり数百万単位の紹介料をブロガーに配り、億り人を大量に生み出した会社ですから、手数料も自己勘定の含み益も大変なことになってそうですけど、さてどうなることやら。
それと同時に、会計屋(税務は専門外ですが)からすると、これって支払えたとすると課税区分ってどうなるんだろう?というのが非常に気になる。
課税区分のおさらい
給料から天引きされている税金も、配当や利子にかけられている税金も、実は同じ所得税だって知ってました?(住民税除く)所得税は、『個人』の『所得』に大してかかる税金です。所得は、下記10種類に分かれており、それぞれ最終的な税額を計算するまでの計算式が分かれています。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
1.の利子所得や2.の配当所得なんかは、他の区分とは別に計算する分離課税。そうじゃないものは、総合課税の対象となり、累進課税で所得が増えれば増えるほど税額がどんどん増えていきます。下記あたりご参考になれば幸いです!
仮想通貨の売買によって生じた所得は10の雑所得です。雑所得の中でも、先物取引やFXでの利益は特例として申告分離課税となり約20%の税率ですが、特例に該当しない仮想通貨売買は、最高税率45%(+住民税)の総合課税対象です。儲かっても半分は持っていかれるわけですね。キビシー!
一時所得ならどれくらい税金が安くなる?
で、個人的に気になっているのが、コインチェック社がちゃんと保証金をくれたとしたら、何所得になるのか?です。コインチェック社のリリースを見ると、下記のように記載があります。
コインチェック株式会社(代表取締役社長:和田晃一良、以下:当社)が運営する仮想通貨取引所サービス「Coincheck」において発生した仮想通貨NEMの不正送金に伴い、対象となる約26万人のNEMの保有者に対し、以下の通り、補償方針を決定いたしましたので、お知らせいたします。
まずこれは、不正に送金された被害に対する保証である。そう謳っているわけですね。さてこれがどれに該当するのか?国税庁サイトを眺めてみると、この辺に該当するのかもしれません。
9 一時所得
一時所得とは、上記1から8までのいずれの所得にも該当しないもので、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のものであって、労務その他の役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。例えば次に掲げるようなものに係る所得が該当します。
(1) 懸賞や福引の賞金品、競馬や競輪の払戻金
(2) 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金
(3) 法人から贈与された金品
ざっくりいうと、事前に予想していない一時的な所得、といった扱いのものになります。自分のコントロールの範囲外で生じた利益、って言ってもいいかな?もし一時所得に該当するとなると、税金の計算式が大幅に変わります。一時所得の課税対象額は、
- 一時所得=(総収入額 - 必要経費 - 特別控除額(最大50万円)÷2
となります。ポイントは、一番最後の"÷2"です。一時所得とみなされれば、課税所得が半分になります。つまり、最高税率でドカンと課税することになっていた人からすれば、大幅な課税額引き下げになります。累進税の仕組みからして、累進区分が下がれば納税額が半分以下になりますな。
まあ更に、損害賠償金扱いとなり、全額非課税となる可能性もありえます。
雑所得 vs 一時所得
こうしてみると、取らぬ狸の皮算用ではありあすが、普通に売買して決済するよりも、随分と『お得』な結果になるように思えます。
しかし、だからといってこれを『雑所得』扱いとして課税してしまうと、自分の好きなタイミングで売買して収益を得た人と、自分の意志と関係なく資産を奪われて強制的に現金化されてしまった人とを同一視して扱うことになってします。それもどーなのよって感じもしますね。
『本人の予期せぬところで発生した所得』にたいして、軽減策を用意するという一時所得の目的から考えても、やはり雑所得は無いなあと思うところです。ただ、なぜか仮想通貨の盗難と賠償金の支払いが増えるなんてことにならないと良いですね(;´Д`)
ところでこの雑所得と一時所得ですが、
- 株主優待・・・雑所得
- ふるさと納税の返礼品・・・一時所得
となるようです。株主優待は、『株主となってその企業の優待をゲットすることを目的として手に入れたもの』であり、投資の対価である。ふるさと納税の返礼品は『ふるさと納税を行うことによって自治体が自主的に送ってきたもの』であり、寄付の対価ではない。というのがお役所の"建前"だそうです。
さて今回の件には、どんな"建前"が出てくるのか。注目して追っていきたいと思います。